軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

善行の結果

翌日。

「うーん……」

お義父さんと共に魔法で隠れて近くの村の様子を見に行くと城の兵士が立て札に人相書きで、お義父さんと俺を指名手配している様でしたぞ。

最初お義父さんは不安そうに茂みに隠れるか提案しましたが、俺のリベレイションクラスの隠蔽魔法とスキルの併用で見つかる事はありえませんぞ。

という事で問題なく隠れきれておりますな。

「盾の悪魔であるナオフミ=イワタニが近衛騎士を虐殺し、第二王女を誘拐して逃亡中である。生死は問わない。賞金は――」

経緯に差こそあれど指名手配の内容に変化は有りませんな。

ただ、決定的な証拠が無いのであくまで証言の領域ですぞ。

「本当に盾の悪魔が王女を誘拐したのか?」

「そうだ。盾の悪魔に会いに行くと告げて第二王女は行方知れずとなった。これが動かぬ証拠である」

ですが村人達はピンとこない様な態度ですな。

そうでしょうとも。

決定的な証言も無く行方が知れないでは犯行を断定するのは難しいですからな。

そもそも騎士共の死体は既に俺が処理しましたぞ。

消し炭にしてやりましたからな。騎士達の死骸すら証明に出来ません。

「盾の悪魔の元へ向かった第二王女と騎士はそれぞれ消息を断っているのだ」

「じゃあなんで虐殺されたって話があるんだよ。行方が分からないんだろ?」

「国の命令に逆らうのか!」

村人の疑問に兵士が逆切れしてますぞ。

お義父さんが呆れ気味に溜息を吐きましたな。

「……懸命に戦った騎士が命辛々逃げ出して証言したのだ!」

その場限りの言い訳にしか聞こえませんな。

先程と言っている事が変わっていますぞ。

しかし懸命? おかしくて笑いがこみ上げて来ますな。

いきなり先制攻撃をし、他の連中は脱兎の如く逃げただけですぞ。

まあ、俺のスキルの射程外に逃げる事が出来ませんでしたがな。

どちらにしても当初の予定通りに計画を進めているのは誰の目にも明らかですぞ。

「なんて野郎だ! 盾の悪魔の所業、ぜってー許せない! 盾の悪魔が来たらみんなでぶち殺してやろうぜ!」

腑に落ちないと思って首を傾げている村人の中に殊更激昂している者がいますな。

段々とその者につられて村の連中はお義父さんを殺せというムードに移りつつあります。

こやつ等は……なんとも単純ですな。

来るなら来い、ですぞ。返り討ちにしてやりましょう。

「それで? 盾の悪魔は今まで何処で何をしてたんだ?」

「国中で悪さをしていたじゃないか! 冒険者や村人から強奪を繰り返していた!」

「盾の悪魔の仲間をしている亜人もいるぞ! これが人相書きだ」

と、キールらしき人相書きが張られると村人のテンションが途端に下がり始めましたぞ。

「おい……コイツは……」

更にサクラちゃんやユキちゃん、コウ、ルナちゃん、などフィロリアル様達の姿を描いた絵が貼り付けられていきますぞ。

「見慣れない鳥の姿をした邪悪な悪魔に馬車を引かせている。見たものはすぐに国へ連絡するように」

兵士が告げると同時にざわめきは一層強くなりましたな。

なんでしょうか、この反応は。

「そう、国中に善意と見せかけた洗脳の力の宿る作物を振りまき、薬を売りつけるのが今回現れた盾の悪魔の所業である。国民よ! 目を覚ますのだ!」

兵士の証言に村人達は一旦静かになりました。

そして先ほど激昂していたサクラ(サクラちゃんに有らず)が大声を出しました。

「そ、そうだったのか! 神鳥の聖人が盾の悪魔だったんだ! あの野郎、善人のフリをして碌でもない奴だ」

その人物の大きな声が広場に響き渡り、少し間があった後、他の者達も口を開きました。

「なんて酷い!」

「おお……明日の食事もとれないと思っていた時のあの施しが悪意だったんなんて!」

「神よ……」

やがて村人は声高々に賛同していって、兵士とそのサクラを囲って行きますぞ。

お義父さんは非常に残念そうな表情をしております。

もう確認の必要はなさそうですな。

と思ったその直後――

「なんて言うと思ったか!」

「ふざけんな! 神鳥の聖人様は無償で俺達を治療し、格安で食料を提供してくださったんだぞ!」

「神鳥の聖人様がいなかったら今頃、この子は飢えて死んでいたのよ!」

村人達は激高した様子で兵士とサクラに詰め寄っております。

兵士とサクラは思わぬ反応に困惑しておりますな。

「それが悪魔の策略なのだ! 飢饉も病も悪魔が広めているのだ! 国民よ、騙されるな!」

「うるせー! 聖人様を悪く言うんじゃねー!」

「恩知らず! 神鳥の聖人様から食料がもらえなかったら、みんな死んでたんだぞ! どうせ無かった命! 俺は盾の勇者を信じるぜ!」

「これは国の陰謀だ! 扇動しようとしてんだな!」

などと言ってサクラをリンチにし始めました。

村人達の拳や蹴りがサクラに集中します。

「うげ! ぐは!」

その様子に兵士達は反論とばかりに再度、大きな声を上げます。

「国の意向に逆らうのか! 盾の悪魔は第二王女を誘拐したのだぞ!」

「どうせそれも国と三勇教がグルになって盾の勇者を嵌めようとした陰謀だろ!」

「無礼者共が! 貴様ら、非国民だな! 国が許さんぞ!」

「うるせー! 盾の勇者様を守るんだ! みんなが困っている時に重税を課しやがって!」

「神鳥の聖人様は盾の勇者であり、自身の身分を偽って俺達に救いを与えてくださったんだ!」

「「「おおー!」」」

兵士と村人の抗争が展開して行きましたぞ。

村人の中に武の心得がある者が兵士を倒して吊るし上げております。

俺達はその集団リンチの光景を唖然とした表情で見つめていました。

やがて村の教会にある三勇教のシンボルが破壊され、村人達はシンボルを踏みつけました。

そして村人はこれ幸いにと管理している貴族の屋敷に詰め寄って行ったようでした。

「えっとー……信じてもらえて凄くうれしいけど……これ大丈夫、じゃないよね……?」

お義父さんがその光景を冷や汗を流して眺めております。

「とりあえず、戻ろうか」

「そうですな」

村から出て俺達は馬車の方へ戻りましたぞ。

それから、革命がメルロマルク国中で起こっているとの話が、数時間もしないうちに町の近くで人々が噂し始めていました。

神鳥の聖人が盾の勇者であるというのは国中に広まり、メルロマルク全土に衝撃を響かせる結果となったのですぞ。

まさに、三勇教には思いもよらぬ結果となってしまったと言えるでしょう。

みんな盾の勇者は善意で国中に食料を届けていると認知しているようで、国への不信感を募らせている様子。

元々怠け豚の領地で栽培している、出土が明らかになっている植物の実であり、怠けると枯れるという教訓めいた種の効果もあって、人々は神鳥の聖人の聖人足る態度に信頼を寄せていたのですぞ。

しかも格安で薬を売り、病人を治療して行くその姿を見ない者の方が少なく、例え姿を偽っていたとしても伝承に存在する神鳥の聖人の再来と重なり、盾の悪魔と罵られる存在であっても人々を救った偉業が汚れる事は無かったのです。

「兄ちゃん達、様子はどうだった?」

「俺達の活動が実を結んだのか、三勇教の陰謀にみんな気付いてはいるみたいだったよ。指名手配されていてもそこまでは怖くは無さそう……かな? 最悪、女王が帰還するのを何処かで待っているのが良いかもしれない」

「へー……だってさ、メルティちゃん」

「……」

婚約者は元気無さそうにサクラちゃんに寄りかかっていますな。

「大丈夫、きっと何とかなるから。俺が君を守ってあげるから安心して」

「そうだけど……」

「メルティちゃんは国の事を思っているんだね。まあ……この陰謀もすぐに沈静化すると思う。何せこっちには未来の事を知っている元康くんがいるんだしね」

「そうですぞ。今回の事件は全て三勇教が関わっていて、クズと赤豚は完全に外野なのですぞ」

何故か婚約者が俺から視線を逸らしましたぞ。

む、もしや俺と婚約者が宿命のライバルである事に気付いたのでしょうか?

やがて俺を指差しながら、お義父さんに言いました。

「この人、頭大丈夫かしら?」