軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

偽の盾の勇者

コウがお義父さんにお説教をされてから、しばらく経ちました。

「兄ちゃん! 料理の販売はしないのか?」

キールが行商でのアイデアをしてきましたぞ。

「うーん……ガエリオンちゃんが炎を吐けるようになってるみたいだから馬車を屋台にする事は可能なんだけどね。それもどうなのかなー……とも思うんだよね」

「串焼きでも良いから売れると思うぜ! クレープ食いたい!」

「神鳥の聖人の通り名が神鳥の屋台になりそうで怖いんだけどね」

「それではフィロリアル様を調理しているように聞こえますぞ!」

あらぬ誤解を招きますぞ。

確かにフィロリアル様には食肉用と呼ばれて処分されてしまうのは居ます、この元康、心が裂けるような痛みを毎回、食肉となってしまったフィロリアル様を見て思いますぞ。

それを事もあろうにお義父さんが行っている行商で売っていると思われては我慢など出来ようもありませんな。

「ギャー!」

そんな会話にコウが叫び声を上げて震えますぞ。

「絶対に反対ですぞ! 見てください。コウが怖がっておりますぞ!」

「元康くんがそこまで言うなら見直しをした方が良さそうだね……まあ、お金にはそこまで困っていないし、良いか。コウはトラウマになっちゃったか……」

「良い案だと思ったんだけどなー」

「顔を隠して調理するってのも大変だし、しょうがないよ」

色々と大変ですな。

何せ外に出る時は基本的にローブで姿を隠さねばなりません。

盾の勇者が神鳥の聖人だったと判明するのはもう少し後の事なのですぞ。

などと話をしていると村に到着したのですが……。

「ははははは! ほら! さっさとその金を寄越せ!」

「な、何をするんだ!」

「俺達は盾の勇者一行だぞ! 素直に金を寄越せば痛い目に遭わないで済むかもしれないなぁ」

などと言いながら村人に脅しをしている奴がいましたぞ。

あれは……おそらく、盾の勇者を騙る三勇教徒の刺客ですかな?

大きめの盾を持ち、顔は日本人顔ですな。

過去に勇者が召喚されているのですから、その血が混じった者でしょうか。

後ろには違和感のある亜人奴隷がいます。

……おそらく奴隷紋で縛られているのでしょう。

「あれって……どうする? 兄ちゃん」

「うーん……俺達が本物であるのを証明する事は簡単だけど、助けても見捨てても、どっちに転んでも悪名が広がりそうだよね。というか、なんで悪事を働く人間が自分の正体を暴露しているんだよ……」

そうですな。

この頃のお義父さんは神鳥の聖人=盾の勇者とは認識されておりませんでした。

一応、リユート村から口コミで今回の盾の勇者は悪人ではないという話が広まりはしたようなのですが、あくまでそれは口コミの領域だったそうですぞ。

本格的に国民が盾の勇者を信用してくれたのは、三勇教の陰謀で婚約者をお義父さんが誘拐した=神鳥の聖人が盾の勇者であると判明した時からですからな。

ここで飛びだして本物であるのを証明しても、お義父さんの評判が上がる事は無いでしょうな。

仮に捕まえたとしても、本物に盾の勇者を騙るように命じられたと言うでしょう。

現に未来の俺がお義父さんを騙る偽者を倒した時に、そのような事を言っていたのを覚えています。

お義父さんにメリットがまるでありませんがな。

「盾の勇者は悪名高いんだっけ?」

助手がお義父さんに尋ねるとお義父さんは頷きました。

「この国は人間の国だからね。亜人の国が信仰している盾の勇者は敵みたいなものらしいんだ」

「じゃあ、私達が倒してくる?」

「う~ん……神鳥の聖人として倒しても問題はなさそうだね」

「ですな」

「じゃあサクラちゃん達、お願い」

「わかったー」

サクラちゃん、ユキちゃん、コウが飛びだしてお義父さんを騙る愚か者へと突撃して行きましたぞ。

「な、何者! 俺は盾の勇者だぞ! 何を――うげ!」

先陣のサクラちゃんが両手に持った剣で偽者を十字切りしましたぞ。

それだけで盾が四つ切になり、追撃にユキちゃんがかかと落としをし、コウが残った相手を蹴散らしました。

「あ! 神鳥の聖人様!」

その光景をキールが馬車から歯がゆそうに見ておりますぞ。

「で、出遅れた……サクラちゃんの早さにはまだおいつけねー」

「ピヨー!」

ルナちゃんがキールを慰めるように頭を撫でておりましたぞ。

「く! 舐めるなー! 俺は盾の勇者だ!」

おお、ユキちゃんが手加減して蹴ったお陰か、お義父さんを騙る偽物は立ち上がりましたぞ。

お義父さんはそんなに弱くありませんぞ。

というか、自分の正体を叫びながら罪を犯す愚か者がいるのですかな?

少なくとも俺達はそんな事をしたりしません。

「盾も無いのに盾の勇者?」

既に盾はサクラちゃんに四つに切断され、地面に転がっております。

完全に偽者ですな。

そもそも四聖の武器は破壊不可ですぞ。

「ガウ!」

いつの間にか助手が馬車から降りていて、魔物と共に後ろから圧し掛かっています。

「うわ! な――ど、ドラゴン!?」

「ガエリオン」

「ガウ!」

恐怖に彩られた表情をしている偽者に助手は冷たく言い放ちます。

「喉笛を食い千切れ!」

「ガウ!」

大きく顎を広げた魔物が喰らいつく瞬間。

「う、うわあああああ! や、やめろぉおおおお!」

「ストップ」

「ガウ!」

正直に言えば嫌いではある魔物ですが、その意思、表情にはお義父さんに敵対する物に遠慮などしないと言うものがあります。

この点で言えば……認めてやっても良いかもしれませんな。

「貴方は本当に……盾の勇者?」

「そ、そうだ!」

「盾も無いのに?」

「う……」

助手は拷問するように告げ、満面の笑みを浮かべますぞ。

「私の魔物は嘘吐きが好物なの。ねえ、本当に盾の勇者?」

ぽたりと助手の魔物が偽者に向けて涎を垂らしますな。

「ウィンディアちゃん、いつの間にあんな事を覚えたんだろう?」

「この前、兄ちゃんが俺の尻尾に噛みついたコウを叱りつけた時じゃないか?」

コウがビクンと反応しました。

あの時の事がトラウマになっているのでしょう。

ですが安心して良いですぞ。

お義父さんは調子に乗っていたコウに教育を施しただけなのです。

良い子にしていれば、その分、優しくしてくれますぞ。

「……アレは俺の真似なの?」

「ついでにドラゴンの父親の真似かもしれねーぞ」

「話を聞く限りだと割と溺愛してたみたいだから違うんじゃない? って脱線をしてる気が」

などとお義父さんとキールが馬車の中から分析している間に、助手の脅迫は続きましたぞ。

いや、アレは本気ですな。

何処かで人間を軽蔑しているのが噴出したのでしょうか?

「ガエリオン」

「ガウ!」

魔物が偽者の腕に噛みつきました。

ボキボキっと嫌な音と共に血が出ますぞ。

「ギャアアアアアアアア!」

「盾の勇者の癖に防御力無いのね? ねえ、本当に盾の勇者なの?」

「ガウガウ!」

「私の魔物が嘘吐き美味しいって言ってるわよ?」

「ヒ、ヒィイイイ! ち、違う俺は、盾の勇者じゃねえ! だ、だから命ばかりは――」

「そう……ガエリオン!」

ゴスッと魔物が偽者の腹部を強く叩きましたぞ。

「う――」

偽物は失神したのかぐったりとしております。

「という訳で、この盾の勇者は偽者ね」

ポツリと呟いて、助手は馬車の方へ戻ってきましたぞ。

サクラちゃん達は唖然としております。

「ギャー! 解体怖い……」

コウに至っては恐怖で震えはじめていますな。

助手はお義父さんを手招きしますぞ。

「早く治療した方が良いと思う」

「あ、ありがとうね」

お義父さんはローブを羽織って馬車から降り、失神した偽者の治療をしていますぞ。

「どうやら盾の勇者の偽者のようだ。白状させるためとは言えやりすぎましたね。君達、大丈夫?」

「さ、さすがは神鳥の聖人様! 盾の勇者を騙る者を白状させるとは! 私達は怪我ひとつありません!」

「そう……それは良かった。出来ればこいつ等を自警団に突き出してくれないかな?」

「はい! 任せてください! ……しかし、何故盾の勇者の偽者が現れたのでしょうか……?」

などと呟きながら、失神した偽者は村人によって連行されて行きましたぞ。