軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

取引

深く考えていたお義父さんが顔を上げて口を開きました。

「フィロリアルを直接買ったら幾らだ?」

「……成体で200枚からですかね。羽毛や品種などで左右されます。ハイ」

「成体という事はヒナはもっと安いのか。更に卵の値段だけで、育成費は除外だとすると……得なのか?」

「いえいえ、あそこにあるのは他の卵も一緒でございます」

「なるほど……くじと言っていたからな。飛竜の値段は?」

「相場ですと当たりを引いたら金貨20枚相当に匹敵します」

「ちなみに確率は? その竜の卵の出る奴だけで良い」

「今回のくじで用意した卵は250個でございます。その中で1個です」

お義父さんは深く考え込みましたぞ。

250分の1とは……中々に倍率が厳しいですな。

まあドラゴンなど俺達に必要ありませんが。

「見た目や重さで分からないよう強い魔法を掛けております。ハズレを引く可能性を先に了承してもらってからの購入です」

「良い商売をしているな」

「ええ、当たった方にはちゃんと名前を教えてもらい。宣伝にも参加していただいております」

「ふむ、確率がな……」

「十個お買い上げになると、必ず当たりの入っている、こちらの箱から一つ選べます。ハイ」

「課金重視のゲームに似て……さすがに騎竜とやらは入っていないんだろう?」

「ハイ。ですが、銀貨300枚相当の物は必ず当たります」

ガクリとお義父さんは肩の力を抜きましたぞ。

小声でコンプガチャと呟きました。

「うーむ……」

それから俺の方を振り返ります。

「元康くん、ちょっと」

お義父さんが手招きしますぞ。

「なんですかな?」

「元康くんはわからないかもしれないけど、たぶん、未来の俺はここで卵くじに挑戦したと思う。推測だとそこでフィーロって子を当てた可能性が高い」

「何故ですかな?」

フィーロたんを選ばずに……何故ハズレがあるかもしれないのを選ぶのですかな?

全く理解できませんぞ。

「仮にハズレだとしてもここは魔物商が管理している取引所だ。役に立たない魔物でも育てて売れば良いとか絶対に考えたと思うんだ。さっきキールくんの値段が跳ね上がったけど、同じ理由で連れていた奴隷がいて、同じ事を言われた直後なら尚更ね」

お義父さんは一拍置いて更にくじを指差しますぞ。

「だから安く、それでありながら、戦力が増強出来る確率に挑戦する……元手が無くて、味方が一人しかいない俺だったらやりかねない」

なるほど、つまりお義父さんはフィーロたんをくじで手に入れた可能性が高いとの話。

これは盲点でしたぞ。

もしかしたら魔物商は魔物くじに混じっているフィロリアル様は数に入れなかった可能性があるのですな。

「ふむ……では挑戦料である銀貨100枚ではなく、200枚支払うからフィロリアルとドラゴン以外を外せ」

「それは……さすがに勇者様でもお応えできませんです。ハイ」

「……ふむ、ではここで一つ取引をしようじゃないか」

「と、言いますと?」

魔物商にお義父さんは耳打ちをしますぞ。

そしてサクラちゃんを指差しました。

「サクラ、魔物の姿に変身するんだ」

「えー? サクラちょっとここじゃなりたくないー……あ、でもナオフミがサクラの名前を呼び捨てにしてくれたからがんばる」

ボフンとサクラちゃんがフィロリアルクイーンの姿に変身しましたぞ。

それだけで魔物商は仰天したように目を見開いております。

「という訳だ。どうだ? 銀貨100枚で、フィロリアルとドラゴンの卵だけにして見せてくれないか? 産まれた卵から出たフィロリアルかドラゴンは定期的にここに報告へ来るぞ。この情報を安く見るか高く見るか……お前はどっちだ?」

魔物商はしばし考えた後、頷きましたぞ。

「わかりました。ではフィロリアルと飛竜以外の卵は除外させていただきますです。ハイ!」

「サクラ、もういいぞ」

「うん!」

サクラちゃんが天使の姿に戻りましたぞ。

さすがお義父さんですな。

金で無理なら情報を売って無理を通しましたぞ。

俺では考えつかない手段ですな。

魔物くじの中にある卵が次々と外されて行きます。

「では、これがフィロリアルとドラゴンだけのくじとなりますです。ハイ」

それなりに穴だらけになったくじにお義父さんは俺を手招きします。

この中にフィーロたんがいるかどうかを探れという事ですな。

ですが俺はフィーロたんの幼体時の匂いは覚えていないのですぞ。

それでも今までの嗅いだ匂いから絞って行きますぞ。

嗅いだ限りでは、前回購入した卵も混じっているようですな。

その中で弾いて行った所、数個の卵が出てきましたぞ。

俺がそれとなく指差し、お義父さんは迷った挙句、卵を一つ選びました。

全部では無いのですかな?

俺が視線を向けるとお義父さんは首を横に振りました。

そして小声で、増えすぎるのは現状だと厳しい。

と言われてしまいましたぞ。

まあ、日々食料を調達するのが大変ですからな。

わかりました。

この元康、我慢しますぞ。

「ではコイツを頂こう。残りのこれとこれ……この辺りはキープしておけ、後で買う」

「わかりましたです。ハイ」

これで予約も完了ですな。

さすがお義父さん、抜け目は無いですぞ。

俺の様に買い占めてもフィーロたんを手に入れられなかったのとは手腕に差がありますな。

確かにキープさせているなら、フィーロたんを誰かに奪われる可能性はグッと減りますぞ。

「既にフィロリアルを所有しているという事は契約の方法もご理解なさっていると思いますです。ハイ」

「ああ」

お義父さんは魔物商が用意した孵化器に卵を入れて受け取りますぞ。

「もしも孵化しなかったら違約金とかを請求しに来るからな」

「ハズレを掴まされたとしてもタダでは転ばない、交渉上手の勇者様に脱帽です!」

やはり魔物商はお義父さんの事を気に入っているようですな。

俺の時とは明らかにテンションが異なりますぞ。

ですがお義父さんはそろそろ限界に近付いているのが俺やキール、サクラちゃんは理解できますぞ。

なんとなく歩調が怪しいですからな。

「口約束でも、本当に来るからな。白を切ったら俺の奴隷である槍の勇者が暴れだすぞ」

「勇者を奴隷? 勇者は奴隷に出来ないのでは?」

「そうなの? ふん……何も魔法で縛るのだけが奴隷じゃない。こいつは俺の言う事ならなんでも聞く様にしてあるんだ。な?」

「その通りですぞ。お義父さんの命令とあらば、こんな場所、すぐにでも廃墟にしてやりましょう」

お義父さんの命令ならば、この元康、フィロリアル様の卵を奪った後、このテントを消し炭に変えて見せますぞ。

「なるほどなるほど! 勇者まで奴隷とは盾の勇者様の手腕、想像を遥かに超えております。ハイ」

お義父さんは魔物商に銀貨100枚渡しましたぞ。

こうして、新しくフィロリアル様だと思わしき卵を購入するに至りましたぞ。

「ふう……やっぱり慣れないなぁ。あの人は……商売人としては話が出来るけど、近寄りたくない」

「兄ちゃん、よくあの人の相手出来るよな」

「気難しい人じゃないんだけど、こう……付き合って行くと深みに引きずり込まれる気がして怖い人だね」

「そうなのですかな? 私の時は妙な距離感がある方ですぞ」

「まあ……元康くんじゃね」

お義父さんが何やら理解した様な表情で頷いております。

どういう意味ですかな?

「親切なんだけど寒気のする感じだよな!」

「その感覚で間違い無いよ」

「んー……嫌な空気はある」

サクラちゃんも感じていたのですな。

しかし、優良な店であるのは未来のお義父さんの話では確かなのですぞ。

まあ、フィロリアル様を購入するのに良い店は他にもありますがな。

「言われてみれば確かに……他の露骨に悪意がある商人とは雰囲気が違うよな。あの人」

「そうなの? 奴隷になった事は無いから良くわからないけど」

キールの返事にお義父さんが尋ねましたぞ。

奴隷商ですかな?

確かにこの国にはそのような職種がいるというのは昔、お姉さんを助けようとした辺りで聞きましたな。

お姉さんに怒られた後、俺も多少は調べたのですぞ。

メルロマルクという国は亜人を奴隷にするという物がありますな。

あの魔物商以外の店も僅かに俺は行ってみた事がありますぞ。

……なんと言いますか、あの魔物商と他の奴隷商には奴隷の扱いに差があるのは確かだと思いますぞ。

「兄ちゃんに買われる前に居た所なんて同じ亜人なのに俺に鞭で打ってきた奴がいたんだぜ! なんかお気に入りなのか売れ残りなのか知らねえけど、奴隷の商人に命じられて笑顔で俺を叩いてきたんだ」

「うわ……」

魔物商の所に居る奴隷達は覇気こそ無いですが、見世物として店内での鞭打ちとかの行為はしてない様に感じます。

配下に屈強な大男が何人もいますが、他の奴隷商では亜人奴隷がその役目をしていたりします。

その辺り、節度があるのかもしれませんな。

「それがあの奴隷商の所じゃなかったんだ」

「じゃあ、あの奴隷商は奴隷同士での上下関係の構築とかを阻止しているのかもしれないのかな? 虐待はあくまで客がする事……とか弁えていたとか……」

「良い人じゃねえけど、悪い人なのかとも区別が付かねえ気持ち悪い奴だ」

「否定はしないよ」

とまあ、お義父さんとキールの話は終わりましたな。