軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

赤豚の動向

「年齢的に無理やり仲間にしたんじゃないですか?」

「……どうしても俺を犯罪者にしたいようだな」

お義父さんが不快そうに樹に答えます。

「この子達を無理やり波に参加させるつもりは無いし、怪我なんて絶対にさせないよ」

「兄ちゃん……うん! 俺、がんばる!」

お義父さんの言葉にキールが感動しています。

現在は子犬の姿ですが、気持ちはよくわかりますぞ。

こんなお義父さんだからこそ、忠義を尽くそうと思えるのです。

「この子はキールくん、今は獣化しているけど立派な亜人だよ」

「おう! ちょっと前に変身できる様になったんだぜ!」

「人語を解す魔物じゃなかったのか……」

「それはこっちのサクラちゃん達の方だね」

ボフンとユキちゃんが変身してみせます。

すぐに天使の姿に戻ると、錬と樹は驚いた表情を浮かべました。

「それでキールくんは俺達が召喚される前、メルロマルクで最初に起こった波で住んでいた村を失った子なんだ」

「そうだ! だから波には絶対に負けられないんだ!」

「サクラ……」

サクラちゃんが一歩踏み出して、自分の名前を告げて下がりましたぞ。

「皆さんは知っていますか? 尚文さんは強姦をした前科を持っているんですよ」

「樹!」

お義父さんが堪え切れずに睨みました。

錬が溜息を吐きます。

するとそこでキールがケラケラと笑いました。

「兄ちゃんが強姦? 無い無い! 兄ちゃんがする事なんて精々サクラちゃんの裸をチラ見するのが精いっぱいだよ!」

「キールくん! いや……まあ信用してくれるのは嬉しいけど……」

「ナオフミはサクラに強姦してほしい?」

「サクラちゃんも何を言っているんだ! 女の子なんだからそういう事言っちゃダメだよ!」

嘆かわしいと頭を振ってから、お義父さんは樹を見据えます。

「何を言おうと俺はやっていない。俺を信じて付いて来てくれている人達を冒涜する様な真似をしないでくれ」

「どうだか……マインさんの涙を見て疑えると思えるのですか?」

豚の涙。

そんなおぞましい物を見て、何を思えば良いのかさっぱりわかりませんな。

精々早く作業を済ませようと考える程度だと思いますぞ。

「奴は豚ですぞ。農家が家畜の命乞いなど見ても心が揺れ動く事は無いでしょう? そもそも豚に犯されたらダメージを負うのはお義父さんですぞ。汚れるではありませんか」

「そうですわ。元康様が信じているナオフミ様はそのようなお方ではありませんわ! 私も一緒に見聞きしている手前、ナオフミ様がそのような事をする様な方とは決して思えませんわ。むしろ押し倒される方ですわ!」

「ちょっ」

俺の言葉にユキちゃんが続きます。

そうですぞ。二人でお義父さんを弁護致しましょう。

「元康くん、ユキちゃん! あんまり刺激すると碌な事にならないから……特にユキちゃん! 誰が押し倒されるって?」

「どこまでも非道な……各地で悪さをしていると噂になっていますよ。勇者同士で争うなんて御免ですからね」

ああ、あのガセ情報ですか。

どうやら樹はその情報を信じている様子。

「身に覚えが無い事を咎められても、知らないとしか答えられないよ」

「白々しいですね」

お義父さんが呆れる様な表情を浮かべました。

そもそも、どうして樹はここまで頑なにお義父さんが強姦をしたなどと決め付けているのでしょうか?

まあ、最初の世界で俺も同じだった訳ですが……。

おそらく赤豚が樹にお義父さんの心象が悪くなる様な事を言っているのでしょう。

それに……樹は正義バカだとお義父さんが言っていた気がします。

他人の悪事を指摘するのが目的とすれば、それが偽りの情報であろうとも信じてしまう。

ましてや現在の樹は赤豚の味方ですからな。

赤豚から得た情報を無条件に信じてしまうでしょう。

そうなれば、偽者の盾の勇者が行なった悪事は全てお義父さんがした事だと考えてしまうのでしょうな。

「はぁ……いつまでここで無駄話をするつもりだ? さっさと用事を済ませたいんだが?」

今まで黙っていた錬が不快そうに割り込んできて言いました。

ニヤニヤと俺達の不和を見て笑っていた豚は錬が割り込んで出た瞬間に真面目な表情をした様でしたな。

所詮は豚。

下劣で下品で愚かな所は全く隠せておりませんがな。

「クラスアップをさせてくれ」

「ブブヒー」

豚の鳴き声と共に、建物の奥の方からぞろぞろと人がやってきますな。

それから錬の仲間のクラスアップが行われて行きますな。

「クラスアップで選ぶのは敏捷を重視しろ」

ああ、こんな感じで指示していたのを覚えていますぞ。

お義父さんの様に配下の者の自主性を重んじる事は無いのです。

俺はこの当時、豚共の自由にさせていた覚えがありますな。

ちなみに樹は錬と同じく、それぞれ指示をしていましたぞ。

俺達は少し離れた所で、錬の仲間たちのクラスアップを見つめていましたぞ。

やがてクラスアップが終わると樹が前に出ますぞ。

「では僕達の仲間もお願いします」

「ブブー」

さも当然のように豚が樹の仲間たちのクラスアップの儀式を行って行きますな。

樹の仲間……燻製は秘密裏に抹殺しましたが、どうなっていますかな?

そう思って樹の仲間を見ます。

先ほども思いましたが赤豚がいません。

「赤豚はどうしたのですかな?」

「赤豚? 誰の事を言っているのですか?」

不快そうに樹は答えますぞ。

勇者で無ければ痛い目を見せている所ですな。

パラライズランス辺りで苦しめるのが妥当でしょうな。

「……元康がそう呼ぶ奴はきっと王女の事だろう」

「マルティ王女ですか? 彼女は僕達の後方支援を担当してくださるだけで、一緒に行動はしませんよ。城に行く事で色々と援助してくださるのです」

なんと! 樹の仲間として共に行動するのではないと。

おかしいですな。

過去の俺と一緒の時は共に行動していたはず。

俺と樹では何か違いでもあるのでしょうか?

……ありえるのは樹と共に行動すると自らの悪行のボロが出ると踏んでいる、とかですかな?

もしくは樹の行うウザい行動について行けないのでしょうか?

考えてみれば赤豚は俺について来て、時々後方援護をしてくれるだけでしたからな。

基本は応援だけでしたぞ。

となると樹の戦闘スタイルから考えて楽が出来ないと踏んでいるのでしょうな。

だから戦いからは一線引いて、後方支援という名の姫スタイルにしているのでしょう。

などと結論付けていると樹の仲間達のクラスアップが終わった様ですな。

以前暗殺したので燻製はいませんな。

居たら逆に恐いですが。

あまり自己主張はしていないようですが、差がわかりませんな。

確か……樹の相棒をしているストーカー豚がいたはずですが、どうやらいないようですぞ。

最初の世界でもこの頃にはいなかった覚えがありますな。

さて、錬と樹の仲間のクラスアップは終わりました。

この後、下準備を終えた錬と樹はポータルスキルを手に入れると同時にゼルトブルへ向かったのは容易く想像できます。

龍刻の砂時計から砂をもらったのはクラスアップの後です。

お義父さんが出て行ってからすぐの事だったので覚えています。

あの時も錬がお義父さんの分は? と聞いていましたが、後で渡す、などと嘘を言っていました。

「……」

そういえば、過去にお義父さんはこの国でクラスアップが出来なかったと愚痴っていた様な気がします。

錬と樹の仲間がクラスアップを終えたこの場で、それを言うのは一つの手かもしれませんな。

そうすれば、少なくとも錬は……。

「では次はお義父さんの仲間のクラスアップをさせてもらいますぞ」

「え……?」

お義父さんが変な声を出しました。

任せてくださいと俺が視線を向けると、お義父さんは理解した様に頷きます。

既にクラスアップ済みですが、ここでブラフを掛けるのは悪い手ではありませんからな。

「ブブ!?」

そんな俺の言葉に豚が呆気に取られたような鳴き声を出しました。

「クラスアップ出来るのか?」

「ギリギリ可能なのですぞ」

Lv30まで上げればギリギリクラスアップが出来る状態になるのです。

もちろん、選べる項目に問題があるのですが、ゲームの場合は何も上限まで上げなくても良い場合があったのですぞ。

この知識を昔は使っていましたし、錬達もその辺りの認識はあるのでしょう。

思いのほかアッサリと道を譲ってくれました。

お義父さんにはこの話を事前にしてありますが、キールとサクラちゃんは首を傾げています。

「なあ兄ちゃん、俺達って――」

「しー」

キールに静かにするように指示してからお義父さんは顔を上げます。

「とりあえずどんなのが選べるかを見ておきたいんですよ。30だと選べる項目が少ないそうですが、波も近いですし、クラスアップしておいた方が世界の為だもんね」

「ブヒ! ブヒブ!」

「ん? なんで40まで上げる事を義務みたいな言い方をするんだ? 俺の仲間だって修練が足りずにさせようと思っていたクラスに行けるギリギリラインの35がいるんだぞ? そうなると俺の仲間もダメのはずなんだが……」

「ブブ……ブヒヒ!」

錬が豚の反応に疑問を持ちましたぞ。

これを狙っていました。

確か未来のお義父さんは勇者なら本来必要の無いクラスアップ代金と紹介状の話をしておりました。

金銭はありましたが、紹介状が無くてお手上げだった様ですが……。

錬と樹の仲間をタダでクラスアップしてくれた手前、この状況では断れませんぞ。

さあ、どう出ますかな?

前回のお義父さんのお言葉、ループで得た知識を使った攻撃ですぞ!

「尚文が王に謝罪しない限り許可しないだと? あの時の茶番をいつまで根に持っているんだ?」

「そうです! 実の娘を強姦されそうになったんですから許可するはず無いじゃないですか!」

「あの茶番は証拠不十分でうやむやになっただろ」

「そう思っているのは錬さんだけです!」

樹の畳み掛ける様な口調に錬は溜め息を吐いてから会話を再開しました。

「はぁ……それが仮に事実であったとしても、波と戦わなきゃいけないのに尚文の仲間だけクラスアップ無しとか、さすがにおかしいだろ」