軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

馬車作り

「ブー」

魔法屋に着くと年老いた豚が怪訝な目でお義父さんと俺を見ましたぞ。

その目もすぐに柔らかく変わりましたが。

「ブブー」

「えっと……魔法資質って得意な魔法の系統を見てくれるんですか?」

「ブー」

「お義父さんは回復と援護の資質があるそうですぞ」

見てもらう必要はありませんな。

俺は未来でお義父さんの資質に関しては聞いていましたぞ。

未来のお義父さんはとても優秀な援護魔法を習得しておりました。

「ブブー? ブブブブ?」

「見てもらってもあんまりお金が無いので……」

問題はそこですな。

行商の為に色々と準備はしておりますが、金銭となると今の俺達の懐は厳しい状況なのですぞ。

「ブーブブブブブブ?」

「魔法の玉? なんですかそれは?」

これは覚えていますぞ。

冤罪を被せられ、俺に金を投げたお義父さんが出て行った後、クズが残った勇者達に特別報酬として魔法を習得できる玉を授けてくれたのですぞ。

入門用としては良い物でしたな。

後は必要になったら頼めばくれたので、環境はとても良かったですな。

ですが魔法を玉で習得すると、魔法書で習得した時よりも威力が低いんですぞ。

細かな調節も出来ませんし、あの方法だけで覚えて居たら間違いなくリベレイションクラスの魔法は習得できなかったと思いますぞ。

「大口?」

「魔法を簡単に習得できる玉の配布がお義父さんが出て行ったあとにあるのですぞ」

「そ、そうなんだ……何処まで差別する気なんだか……」

「ま、金銭に余裕があったら魔法書を購入すればよいのですぞ」

「ブー」

キールが魔法屋の奥にある水晶を見つめている様ですぞ。

サクラちゃんはお義父さんに付き従う様にジッとしております。

前のサクラちゃんと違ってとても大人しいですな。

まあ、サクラちゃん自体、おっとりとした子ではありますがな。

「ブー」

魔法屋は店の奥の方へ手招きしますぞ。

その後、ガサゴソと奥で漁り始めましたな。

しばらくすると見覚えのある機材が出てきましたぞ。

糸車の様な機材、確かに、あの機材は魔力を糸に変えてくれる物ですな。

「元康くん。アレの代金ってどれくらい掛る?」

「ブーブブブブブヒ」

「あ、親父さんがおまけしてくれるんですか? 助かるね」

これは……俺が渡しておいた武具を下取りしてくださるようですな。

武器屋の親父さんが色々と根回ししてくれているみたいですぞ。

「ありがとうございます」

「ついでに魔法書は下さらないのですかな?」

「ブブヒ」

「元康くん。さすがにそれはお金を集めて買ってほしいって」

しょうがないですな。

お義父さんには魔法を覚えてもらいたい所ではありますが、習得が難しいですぞ。

これは後ほどゆっくりと覚えてもらえば良いですかな?

「ブー」

「あ、はーい。ちょっと待っててー」

サクラちゃんが前に出て、部屋の隅で服を脱ぎ、フィロリアルクイーンの姿になりましたぞ。

変身前にお義父さんが気を使って背を向けていましたな。

ああ、やはり惜しいですな。

フィーロたんとは真逆の色合いですぞ。

魔法屋が驚いているようですな。

ぐるぐるとゆっくり糸車を回してサクラちゃんは糸を紡いで行きます。

おっとりしているサクラちゃんは前回と同じようにスローで、みんな退屈になってきていますぞ。

幸いにして前回の様に眠くなる訳ではないですが。

「サクラは遅すぎますわ」

「えー……」

「まあまあ、人それぞれあるんだからユキちゃんも我慢して」

「ですが……」

「そうだ。暇なら元康くんと一緒に馬車の調達とか頼めない? その間にサクラちゃんの作業は終わると思うからさ」

「そう言えば、そろそろですな」

忘れていた訳ではありませんぞ。

ただ、馬車の調達はそれはそれで面倒ではあるのです。

あまり派手に動かない程度で馬車をとなると自作した方が早いですな。

もしくは、馬車を持つ盗賊辺りを襲撃して奪うのが手っ取り早いのですが……応急処置として、荷車辺りを買えば良いですかな?

アレなら安めで購入出来ますし、木の方を調達して馬車に改造すればどうにか出来ますな。

うん。

「では馬車を調達してきますぞ」

「任せたよ」

「ハイですぞ。大きさはどうしますかな?」

「それなりに人数がいるから少し大き目で良いと思うよ」

「分かりましたぞ。ではユキちゃん、コウ! 行きますぞ!」

「わかりましたわ」

「はーい!」

俺とユキちゃん、そしてコウは荷車を調達するために魔法屋を後にして出発したのですぞ。

リユート村近隣の山に向かい。木を槍で伐採しますぞ。

俺の攻撃力では木など豆腐を切るのと同じなので、木を切って荷車に仕立てて行くのです。

フィロリアル様は馬車を引くのが大好きな方々です。

何だかんだで俺は荷車は元より馬車も作った事がありますぞ。

少々面倒なのは車輪の製作ですな。

完全木製の荷車でしばらくは持たせるとしましょうか。

必要になったらフィーロたんがお気に入りにしていた金属製の馬車を親父さんに作ってもらいましょう。

何を隠そう、俺が武器屋の親父さんを評価しているのはフィーロたんの馬車を作った点ですな。

相当な腕前なのは知っております。

武器屋なのに馬車とか……とは思いましたがフィーロたんがそう自慢しておりました。

「キタムラー車輪のサイズ合わせよー」

「コウ。もう少しヤスリを掛けないと座り心地が悪くなりますわ」

「分かった」

「艶を出すのですわ」

ユキちゃんとコウが荷車作りに励んでおりますぞ。

そして、羽で艶を出す様に、木材に細工をしていきますぞ。

「軽く炙ると良いのですぞ」

俺は火の魔法を調節して木材に加工を施して、車輪のカタヌキをして組み合わせましたぞ。

峠をしていた手前、最低限の機能は必要ですからな。

左右に曲がれる細工くらいは当然しますぞ。

そうして荷車は完成し、後は幌を付けて馬車に仕立て上げますぞ。

「出来たー!」

「みんなで作ると喜びも倍増ですわね」

「完成ですな!」

俺の目にはキラキラと光って見える見事な馬車が出来ていましたぞ。

と言う所で空を見ると日が落ちかかっておりました。

思いのほか時間が掛ってしまいましたぞ。

「ではお義父さんの元へ戻りますぞ」

「はーい!」

「私が引きますわ」

「コウが引くー」

ユキちゃん達が馬車の取っ手の奪い合いをし始めますぞ。

「順番ですぞ。最初はユキちゃん。城下町まで半分くらいになったらコウに引いてもらいますぞ」

「わかりましたわ」

「わかったー!」

馬車に乗って、俺達はお義父さんの元へ出発しましたぞー。

城下町の魔法屋の前でお義父さん達は待っていましたぞ。

「お、お帰り……新品の馬車だね。結構値が張ったんじゃない?」

「自作ですぞ」

「す、凄いね。元康くんは馬車が作れるんだ?」

「槍で木など容易く切れますからな」

「へー……」

お義父さんは俺が作った馬車に手を添えて確認していますぞ。

「じゃあこれから出発だね」

「ブー!」

キールが馬車を興味津津に見ておりますな。

サクラちゃんは眠そうにしておられるご様子。

普段から眠そうな感じではありますが。

「あ、元康くん。一応、魔力で作られた糸を布にしてもらったけど、この後どうする? 洋裁屋に通しても良かったけど」

「私が作りますぞ。サクラちゃん」

「んー? えっとねー……ユキちゃんが着てるみたいなのは、やー」

「どういう意味ですの!?」

サクラちゃんのリクエストにユキちゃんが反応しましたぞ。

ユキちゃんの怒りはどこ吹く風、サクラちゃんはお義父さんに目を向けます。

「サクラちゃんはワンピースは嫌いですかな?」

「んー……嫌いじゃないけど好みじゃ無いのー」

「ではコウみたいのが良いですかな?」

コウはオーバーオール風の服装をしていますぞ。

やんちゃな感じがして、とても良いですな。

「それも何か違うー」

「では普通の服が良いのですかな?」

道行く町人の服装を指差して俺は尋ねますぞ。

「そんな感じー」

ふむ……お姉さんが鎧の下に着用していた感じの服で良さそうですな。

アレをイメージしましょう。

「わかりましたぞ。ではお義父さん達、馬車に乗り込むのですぞ」

「あ、うん。後はシルトヴェルトの使者が用意してくれた商業通行手形を貰いに行くだけだね」

「そうですな。では約束通りに受け取りに行きますかな?」

「うん。じゃあ乗り込もう」

お義父さんの指示に従ってサクラちゃんとキールが馬車に乗り込みましたぞ。

「では出発ですぞー」

俺の声に馬車を引いていたコウが楽しげに走り出しました。

ゴトゴトと馬車は日が沈む前に城下町を出て進んで行ったのですぞ。

一時間もしない内に、キールが乗り物酔いでダウンしてしまったのは余計な事ですかな?