軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

フラッシュバック

「あのような人様を騙している化け物、この元康がこの世から消してやりましたぞ」

とりあえず宣言しますぞ。

何せ、ビーストスピアが勝手に攻撃したと言っても、この元康の槍がやった事ですからな。

まあ大した事のない雑魚でしたがな。

「そう……か」

自信満々で言ったのですが、どうも気になる視線を向けながらタクトという鞭の勇者は玉座の間を出ていきましたぞ。

なんだったんでしょうな。

「何か品はあるけど気難しそうな人だったね」

「そうですな。警戒をした方が良いですぞ」

「元康くん、何か心当たりでもあるの?」

「良く思い出せませんな……ただ、あまり良い事ではなかったような気がしますぞ」

「へー……」

その後、鞭の勇者は狐の化け物の死体の調査をした後、飛行船に戻って休んだそうですぞ。

ただ、飛行船の方から物音と啜り泣きが聞こえたとシルトヴェルトの者達が話しておりました。

「あんまり話が出来そうになかったね」

飛行船を遠くで見ながらお義父さんと話をしていますぞ。

「そうですな」

「うーん……どうも俺の勘なんだけど、何か信用しちゃいけない相手だと思うんだ。あの化け物の調査って言いながら何かを確認しに来たように見えるんだけど」

「まあ、どちらにしても何かを仕出かすようなら死なない程度に身の程を教えるまでですぞ」

「……そうだね。信用しない様にして泳がせておけば良いか。今夜は歓迎パーティーが開かれるってさ」

こうして鞭の勇者の歓迎パーティーが開かれましたぞ。

奴が何をするか、見物ですな。

「此度は遠い所から良くおいでなされました。鞭の勇者様と一行の方々、此度はその歓迎の宴、是非お楽しみください」

鞭の勇者一行が何やら暗い様子ですが、シルトヴェルトが用意した料理がテーブルに運ばれて行き、平らげていきますぞ。

「波が近いのに、無理して来国した俺達を歓迎してくれてありがとう」

お義父さんや国の重鎮達が鞭の勇者達と世間話をしております。

ですが、鞭の勇者とその一行は何やら俺を時々気になる感じで睨みつけますな。

豚共の視線が気持ち悪いですぞ。

もしもお義父さんに注意されていなければこの場で消していますな。

「毒とか入って無いから安心して」

「毒程度、鞭のスキルでどうとでもなる。気にするな」

「そ、そう?」

しかし……お義父さんの気遣いを先程から無下にするその態度、段々不快になって来ましたぞ。

もう少し、この世界の生きとし生ける者はお義父さんの顔色をうかがわないと、いけないのですぞ。

その点で言えば、鞭の勇者は赤点ですな。

「むー……」

サクラちゃんがお義父さんに擦り寄って不快そうにしていますな。

ユキちゃん達も同様です。

「どうしたのですかな?」

「あの鞭の勇者の仲間にドラゴンとグリフィンが居て、ずっとこっちを睨んでるのですわ」

「なんと……」

フィロリアル様達の敵はこの元康の敵。

ですが、お義父さんが飼っていたドラゴンと同じく、敵では無い者を断罪する事は出来ませんぞ。

縄張りの関係でユキちゃん達は不機嫌なのですな。

ですが鞭の勇者は魔物と協力して戦う勇者らしいので、それもしょうがないのかもしれませんな。

ですが!

フィロリアル様を育てないというのは問題ありですぞ。

俺と勇者の武器の話をする時があったら説教いたしましょう。

「……で、明日の波が来る前に作戦会議を俺達の飛行船でやりたいのだが盾の勇者様と槍の……勇者様達とで出来ないか?」

「うん。そうだね。波に関して俺はよく知らないし、元康くんは詳しいみたいだから話をしよう。じゃあ今からする?」

「いや、今日は酒が入っているから……明日の波が来る少し前にしよう。飛行船に良い機材が積んである。この国の会議室で測定するよりも早く話し合いを出来るだろう」

「そっか……じゃあお邪魔するね」

なんとも不快な歓迎の宴はこうして過ぎていきましたぞ。

しかし、なんなのでしょうな。

この違和感は。

何かを思い出さなければいけない様な使命感に囚われますぞ。

「波まで後少しだね……」

翌日、お義父さんがポツリと呟きましたぞ。

波に挑む前に鞭の勇者と作戦会議でしたな。

一応、ユキちゃん達で対処する事は可能ですぞ。

ですが連携は重要ですな。

鞭の勇者の仲間たちもそれなりの猛者が混じっているとの話、何でもシルトヴェルトは元より、フォーブレイの方でも有能な仲間を沢山抱えている勇者なのだそうですぞ。

「ブー!」

シルトヴェルトの重鎮に呼ばれて行くと豚が待っていましたぞ。

何を言っているか良くわかりませんな。

「『盾の勇者様と槍の勇者様……タクト様がお待ちです。飛行船にある施設で波に関して話をしましょう』って招いているみたい」

お義父さんが訳してくださいました。

確かに波までそんなに時間は無いですぞ。

こんなギリギリになるまでお義父さんを放置するとは笑止千万。

命を以って償ってもらいますかな?

「元康くん、殺気を放ちながら付いてくるのやめて」

「わかりましたぞ」

作戦会議としてお義父さんと俺、そしてユキちゃん達、シルトヴェルトの重鎮が招かれますぞ。

城から少し離れた場所に飛行船は停泊していて、階段が設置されています。

シルトヴェルトの使者も、文化形態の違いか、飛行船内をキョロキョロと見ておりますな。

思いのほか広い様ですぞ。

快適性を追求した作りという奴ですな。

やや長めの廊下を抜けて、大きめな展望室のような場所に案内されましたぞ。

そこでタクトが部屋の奥で足を組んで……身分を理解せずに偉そうにふんぞり返っていました。

部屋の隅には豚共が何やら整列しておりますな。

「ようやく来たか」

「えっと……招かれてきたけど、ここで波の作戦会議をするんだよね?」

「あ? 波の作戦会議? まだそんな事を言ってんのか?」

何やら不穏な空気ですな。

お義父さんも事態を察したのか眉をよせますぞ。

「どういう事?」

「こういう事だよ!」

豚共が、背後から銃器を取り出して、俺達に向かって射撃を致しましたぞ。

「死ね! トゥリナの仇だ! お前等みんな皆殺しにしてやる!」

銃声が鳴り響き、高速で弾丸が俺達に向かって飛来しましたぞ。

ですが、シルトヴェルトは亜人の国で、その中でもエリートが集まっております。

俺程には対応しきれておりませんが、即座に戦闘態勢に入って獣人化をする者多数。

そして、お義父さんも僅かに反応してスキルを展開しています。

「エアストフェザーシールドⅤ!」

以前のお義父さんが似た様なスキルを使っていましたが、異なる盾を出しました。

羽が生えている盾です。

フィロリアル様の羽ですな!

……違うようですな。

匂いでわかります。

ですが、念には念を。

この元康が飛来する全ての弾丸を叩き落としますぞ。

「大風車!」

一番前に出て槍を回転させ、飛んでくる弾丸をスキルの波動で殆ど迎撃しましたぞ。

その事実に驚いているのか、鞭の勇者が声を荒げます。

「何! 最低Lv250の者達が放つ弾丸が弾かれた!? まだだ!」

鞭の勇者、タクトの手が怪しく光り輝き……スキルを放ちましたぞ。

「ヴァーンズィンクロー!」

一筋の軌跡による、攻撃……。

ですがその、スキルを見て俺は心にドス黒い感情が蘇ってきました。

記憶がフラッシュバックして行きます。

遥か上空を旋回していた鳳凰を滅した閃光。

その後、地上近くを飛んでいた鳳凰の自爆攻撃……あの攻撃は勇者であろうとも、お義父さんであろうとも耐えきれない死の攻撃でした。

あの爆発で、俺は掛け替えの無いフィロリアル様達を失いました。

レンジくん、グレープちゃんにハイロちゃん……他にも亡くなったフィロリアル様は沢山います。

全てはお義父さんが、原因の相手……タクトに地獄を見せた事で、この元康も怒りを抑えたのです。

あの時、俺の槍には憤怒の槍……ラーススピアまで至りましたが、全てはフィーロたんによって抑えられたのです。

フィーロたんが亡くなった者達に対して悲しんでおられたあの姿を見て、更にお義父さんが悲しんでいる姿を見て、この元康は怒りに飲まれない様に自制し……乗り越えたのですぞ。

今――俺はあの時の記憶を思い出しました。