軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

羽飾り

「元康くんしっかりして!」

気が付くとお義父さんに後ろから羽交い締めにされていましたぞ。

何故、俺はお義父さんに押さえつけられているのですかな?

「元康くん、俺よりも遥かに強いんだから理性を無くされると困るんだけど!」

何やらお義父さんが懐かしい感じで不機嫌なご様子。

「おや? どうして私はお義父さんに押さえつけられているのですかな?」

「元康くんが現れたフィロリアルに向かって飛びかかって行ったんじゃないか。挙句『大きなフィロリアル様!』って奇声を発しながら抱きついて……」

「これは失態ですな。ですが堪えようもありませんぞ」

「はぁ……」

お義父さんは大人しくなった俺に目隠しをしましたぞ。

視界が遮られて真っ暗ですな。

しかし周囲から感じられるフィロリアル様の気配とかほりが……。

「何故お義父さんは私に目隠しをするのですかな?」

「元康くん、覚えてないの? 一度そうやって理性を取り戻したかと思ったら、また大きなフィロリアル……伝説のフィロリアルに飛びかかって行ったんだよ」

「まったく……キタムラ殿は自重してくれ。それでユキ、この者達は何の目的で集まってきたのだ?」

「私達に勝負を申し込みに来たそうですわ」

「ふむ……強さを認めさせるとかか? キタムラ殿、何か心当たりがあるようだが知らないか?」

「確か未来のお義父さんが話しておりましたぞ。強さを認めることで、大きなフィロリアル様の後を継ぐ資格を得られるのですぞ」

「世代交代の儀式か何かか?」

その通り、大きなフィロリアル様はフィロリアルの中のフィロリアル。

言うなればフィロリアルの頂点に在らせられる存在。

フィーロたんやユキちゃん達をフィロリアルの女王とするならば、真の女王ですな。

それに大きなフィロリアル様に認められるのは、地位ばかりではありません。

「同時に特別なクラスアップを出来るようにしてもらえるのですぞ」

「何? それなら戦力アップを期待できるな。やってみるのは悪い手では無いぞ?」

「それよりお義父さん、目隠しを解いてください。すぐにでも大きなフィロリアル様に抱き付きたいですぞ!」

「えっと……元康くん、ごめんね」

おや? お義父さんが俺の耳を塞ぎましたぞ。

しょうがないですな。若干聞こえる小さな音を拾いますぞ。

「イワタニ殿がキタムラ殿を抑えつけてくれたお陰で、伝説のフィロリアルは逃げずに済んだ。ユキ、コウ、サクラ、それぞれ勝負を挑んでみろ」

「強くなることで元康様に認められるのなら頑張りますわ」

「面白そう! 頑張る!」

「サクラはみんなを守れれば良いんだけど……?」

「強くならなきゃみんなを守れないでしょ? 実力を認めさせれば良いみたいだから頑張って」

「わかったー」

お義父さんがサクラちゃんを説得したようですな。

しかし、これでは何も見えませんぞ。

この元康、理性を吹き飛ばして大きなフィロリアル様にダイブしたいのですぞ。

「じゃあ順番だね。最初はユキちゃんからで良いんじゃない?」

「わかりましたわ」

と、その後はよく聞き取れませんでした。

やがて空気が振動するような音が何度も響いたのですぞ。

お義父さんの言いつけなので、この元康、見たい衝動を必死に我慢して永遠にも感じる時を堪え切りましたぞ。

そして……ウトウトと眠りそうになった頃、お義父さんが目隠しを外しました。

辺りには既にフィロリアル様達はいませんでしたぞ。

更にキョロキョロと見渡すとユキちゃん達がへとへとになったように倒れ込んでおりました。

「凄かったね」

「そうだな、ユキ達も善戦した。それでもあの伝説のフィロリアルが強すぎたのだ」

「そのフィロリアルがわき目も振らずに逃げようとした相手である元康くんは一体何者なんだろうね……」

「言うな。虚しくなる」

ユキちゃん達の方へ駆けより、様子を見ますぞ。

回復魔法を掛ける必要はなさそうですな。

全員の頭の上に冠羽が付いておりますぞ。

「サクラちゃんが訳してくれたんだけど、伝説のフィロリアルのフィトリアさん? が後継者候補って事でみんなを認めるんだって、後はその中で伸びの良い子……志が立派な子がいずれ後を継ぐ事になるそうだよ」

「大きなフィロリアル様……」

「元康くんはフィーロって子が好きなんでしょ? ダメだよ。浮気をしちゃ」

「ですが、比べようもありませんぞ。未来のお義父さんはフィーロたん以外で仲良くしても良いとおっしゃってましたぞ」

「浮気を推奨したの俺!?」

「この元康、フィロリアル様を等しく幸せにする所存ですぞ。浮気などではありません。頂点はフィーロたん。次点が大きなフィロリアル様、そしてそれ以外がフィロリアル様ですぞ」

「それを浮気と言わずして……もういい。キタムラ殿の相手をすると疲れる。ユキ、キタムラ殿に振りむいてもらえる為にも女を磨くのだ」

「はい……エクレール様」

よろよろと立ち上がってユキちゃんは頷きましたぞ。

「へとへとーだけど面白かったよ!」

コウが元気よく答え、サクラちゃんが寝息を立てております。

「あ……サクラちゃん。そんな体勢で寝ると寝違えるよ」

お義父さんが優しくサクラちゃんを揺り起こしましたぞ。

非常に残念でしたが、この元康がクー達と一緒に大きなフィロリアル様に出遭った時とは結果が異なる事になりましたな。

ユキちゃん達の能力が上がっている様ですぞ。

「ああ、元康くん。フィトリアさんがお土産って言ってこれをくれたよ」

お義父さんが大きなフィロリアル様の冠羽をくれました。

俺は迷いなく、冠羽の匂いを嗅ぎます。

「いや……そうじゃなくて、武器に入れるとフィロリアルのシリーズが解放されるらしいよ」

「なんと!」

未来のお義父さんが教えて下さらなかったフィロリアルシリーズを揃える方法ですな。

ですがなんと憎たらしい。

こんな豪華な宝を槍に入れたら二度と手に入らないかもしれません。

確かにループすることでもしかしたら再度入手できるかもしれませんが……この元康、この羽を槍になど入れることなど出来ませんぞ。

「……入れないの?」

「宝物にするのですぞ」

スーッと匂いを嗅いでから、槍の柄と口金の間……柄舌に羽飾りとして付けますぞ。

これで俺はフィロリアル様と共に戦っている感覚を味わえますぞ。

何より大きなフィロリアル様が与えてくれた羽。

きっと俺を、お義父さんを、そして皆を守る力となりましょう。

それにお義父さんがシリーズとして手に入れているのなら俺が使う意味などありませぬ。

仲間として、ユキちゃん達の成長に補正が掛ることでしょう。

「元康くんって……何度も思うけど色々と凄いね。今日程そう思う事は無かったよ」

「そうだな」

「はい」

お義父さんの言葉にエクレールやシルトヴェルトの使者が頷きましたぞ。

何かおかしな事をしましたかな?

お義父さん達が溜息を洩らしましたのが印象的でしたぞ。

そんなこんなで強くなったユキちゃん達の引く馬車は進んで行き、シルトヴェルトを目指しましたぞ。

この辺りだと、槍に入れた事の無い魔物が出てきますな。

「これはこれは盾の勇者様、槍の勇者様」

立ち寄った町で、大人数の亜人達が出迎えてくれましたぞ。

「我等シルトヴェルトから勇者様方をお迎えにまいりました。過酷な旅でしたでしょう。ささ、我等と共に国へ参りましょう」

何十人もの亜人、獣人に連れられて俺たちは向かう事になりました。

お義父さんは落ち着かない様子で馬車の中から同行するシルトヴェルト軍を見ています。

「イワタニ殿、気持ちはわかるが落ちついてくれ」

「そ、そうだけどさ。この数に襲われたらと思うと……ね?」

「確かに、今回の旅で何度襲撃を受けたかわからん。使者よ、信用できるのか?」

「はい。問題ありません。ただ、シルドフリーデンからのコンタクトが無いのが不気味ではありますが……」

警戒は重要ですぞ。

ですが、警戒ばかりしては進めないですな。

「何かあったらこの元康が全てを蹴散らしますぞ」

こうしてシルトヴェルトの軍と合流し、俺達は無事にシルトヴェルトに入国する事が出来ましたのですぞ。

「そういえば波っていつ来るの?」

「メルロマルクの波はー……後一週間くらいでしたかな?」

「へー……じゃあ結構危険だったんじゃない? 波の場所に召喚されるんでしょ?」

確かに危険ではありましたな。

「道中の国に一つ、ある場所があった。キタムラ殿の話を参考にするなら、そこで登録をすれば良かったと思う」

「あったんだ? じゃあユキちゃん達のクラスアップとかに立ちよれば良かったんじゃない?」

「寄り道をすると色々と危険だ。何分刺客が無かった訳じゃないし、罠を仕掛けられていた可能性が否定できないんだ」

「な、なるほど」

「それに龍刻の砂時計にはLvリセットと言う儀式も存在する。信用の置けない国でクラスアップをしたらどうなるか分からない」

「そっか……で? シルトヴェルトにもあるんだよね?」

「そう聞いているが何分私もそこまで詳しくは無いのだ。言語も違うし、日常会話程度ならどうにかなるが……」

そういえば勇者の武器には翻訳機能があったのですな。

シルトヴェルトの文字はお義父さんから学んでいた訳では無いので読めませんぞ。

日常会話はどうにかなりますが、文字でのやり取りは難しいでしょうな。

不意に馬車の外を見ますぞ。

うーむ……なんとなくですが密林と中華風な建物が目に止まりますな。

野生的な国、という印象がピッタリですぞ。

空を飛ぶ事の出来る亜人もいるご様子、メルロマルクと比べると確かに色々と違いがあるようですな。

「じゃあシルトヴェルトの波はいつ頃起こるのかな?」

「前回の波はメルロマルクの波の二週間後と聞いております」

シルトヴェルトの使者が説明しましたぞ。

「となると俺達が召喚された頃に波があったんだね」

使者は馬車の外にいる亜人達と話をしておりますぞ。

それからお義父さんの方に顔を向けましたな。

「シルトヴェルトの次の波は三週間後だと推測されているそうです」

「三週間後かー……それまでにどれだけ強くなれるかだね」

「そうだが、イワタニ殿は色々と公務に顔出しを要求されるかもしれんぞ?」