軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 盾の勇者のクリスマス【3】

その日の晩、短冊を集めてプレゼントの一覧を作る為に読む作業に入った。

「えっとー……何々? オレイカル鉱石製の裁縫針? なんだこれ? 書いたのは……イミアか」

それは服作りに必要な道具であって欲しい物では無いと思うのだが……この程度ならクリスマスプレゼントじゃなくても良い気がするのだがなぁ。

まあ、本人が望んでいるのだから良いか。可愛げがある。

アイツは真面目だなぁ。そこが良い所だけどな。

「次はー……」

ちなみにラフタリアは部屋の掃除をしている。

ラフタリアはおそらく俺がサンタに頼むプレゼント一覧を作っていると思ってくれているのだろう。

さて、それよりも村の連中が何を欲しているかだ。

「尚文様との熱い夜」

くしゃくしゃっと短冊を纏めて後ろに放る。

まったく、名前は書かれていないが誰か一発じゃないか。

目が見えないのにどうやって書いたんだ?

いや、アイツは精霊化しているし、見えないとか関係ないか。

それにサディナ辺りに代筆させた可能性も高い。

「えっと、次は……ナオフミちゃんとの楽しい肉欲の宴」

ビリっと破り捨てる。

「ナ、ナオフミ様?」

どいつもこいつも!

聖なる夜を性なる夜にしようとするんじゃない!

さて、と。

「兄ちゃんの作った美味しいご飯……って、キールか」

まんまだな、あの犬。

普段食ってるだろ。さすがのサンタもこれには応えられないと思うぞ。

まあ、死んだ両親に逢いたいとか書かれていたらそれこそ困るけどさー……。

そう言うのは、さすがに察するのか書かれていない。いや、サディナが書かせなかったのか?

あのシャチ女はふざけちゃいるが、その辺りは察する。だからこそ追い出していないんだ。

……今の生活に幸せを感じてくれているのなら良いのだけどな。

で、傾向として纏めた所によると、物品と食事に偏った。

物品の方はイミアのように仕事に使う物や戦闘で使う武器、もしくは服とか玩具だな。

この辺りはささやかな物で可愛げのある物が多いな。

問題は食事か……キールみたいに俺の手料理とかで具体的な、何を食べたいか書かれていないのはかなり困るんだが。

「ん? なんだこれ? 俺と遊びたい?」

これが、かなり存在する。

遊びたいとはなんだ?

しかも見覚えの無い名前だ。

ただ、文字を書いた奴は同一人物みたいだが……名前は全部違う。

これは……おそらく代筆したんだろう。

「ラフタリア、こいつ等は誰かわかるか?」

知らない名前の連中をラフタリアに見せる。

ラフタリアって人の名前を覚えるのは凄く早い。イミアのフルネームを未だに俺は覚えていない。

「えっと、村の魔物達ですね。書いたのはウィンディアちゃんだと思いますよ」

「ああ、そう……」

これは後回しでいいか。

と言うか魔物達もクリスマスプレゼントが欲しいのかよ。

で、魔物共は俺と遊びたいと言うのが半数、人間の食事をしてみたいとか願望が半分だな。

ラフ種化した連中が多い。変化でもして食えば良いだろうに。

ま、しょうがないか。

これはクリスマスの翌日とかでも良いだろ。

「ただいまー!」

ちょうどその時、元気な声と共に家の扉が開かれた。

そこには……この世界のアイドル兼ツメの勇者こと、フィーロが元気よく帰ってきた。

ま、定期的にポータルで帰ってくるんだけどさ。

「ただいま、ごしゅじんさま」

「おかえり」

「あのねー、なんかみんながクリスマスプレゼントってフィーロにいっぱい物をくれたの!」

ああ、今回はポータルじゃなくて馬車で帰ってきたのか。

家の外に荷物を満載にした馬車が止まっている。

フィーロはあれからずっとメルティと共に世界中を外交して、アイドル業をしている。

「メルティはどうした?」

「えっとねーお城に帰るって」

「そうか」

まあ、メルティにクリスマスプレゼントする必要はないか。

だってアイツは世界中の貴族からプレゼントされるだろ。

なんだかんだで世界の女王様だし。

それが本人の望むものかは知らないけどさ。

「でねーフィーロねー良いお話聞いたの」

「何を聞いたんだ?」

どうせ碌でもない話だ。

しかし下手な入れ知恵は危険だからな。フィーロが暴走する前に聞くべきだ。

黙っていると何を仕出かすか分からないのがフィーロの恐ろしい所だよな。

「あのねー。クリスマスってイベントがねー。とても楽しいんだってー」

「そりゃあそうだろ。で? フィーロはクリスマスライブでもするのか?」

「んー……メルちゃんがね。クリスマス当日はダメだけど他の日は全部お仕事だって」

「まあ、そうだろうなぁ」

「そんでねー。メルちゃんのお母さんが、クリスマスの日はフィーロはこっちにいないと後悔するんだって」

何を後悔するのやら……女王の考えはよくわからんな。

とにかく、フィーロはクリスマス当日は村に滞在する訳か。

騒がしくなるなぁ……。

こうしてクリスマスプレゼントの準備もある程度進みつつあった。

ああ、結局フィーロが持ってきたプレゼントは村の倉庫に入れた。

チェックした所、相当高価なプレゼントが混じっている。

どんだけ人気があるんだよこの鳥は。

これで正体が天使では無くフィロリアルの化け物だと知られたら相当やばいんじゃないだろうか?

「フィーロたぁああああ――」

……聞きたくない声が聞こえてきた。

この寒いのに、アイツは無駄に元気だな。

「やー!」

フィーロが逃げるように自分の部屋へ駆けて行き、鍵を掛けた。

俺は即座に流星壁を展開させ、家の中に入れないようにした。

「ふべ――! な、これはお義父さんの結界! ふおおお! この元康、どんな障害でも乗り越えて見せますぞ!」

「「「むー!」」」

案の定元康と三匹フィロリアル共だ。

あれから元康はフィロリアル育成の第一人者としてゼルトブルのフィロリアルレースの顧問をしている。

のだが、暇さえあればフィーロの追っかけをしていて、毎回ライブを応援している常連だとか。

三匹フィロリアルは時にフィロリアルレースのフィロリアル、時に元康のストッパー等、色々と舵を取っている……間柄らしい。

一番話が通じるのはみどりだ。

まあ、あの三匹の中での話だけどな。

それからしばらく、元康は俺の展開させた流星壁に悪戦苦闘していたが、三匹のコンボ攻撃によって沈黙して連れて行かれた。

なんだかんだで三匹フィロリアルも元康の扱いに慣れてきた感じだな。

いつか殺しそうだと思えるくらい、強烈な攻撃をしているがな。

それでも生きている元康のタフさは果てしない。

いい加減諦めろよ。フィーロはお前を生理的に嫌っているだろ。

それからしばらくして……。

「うー……寒い」

獣人姿に変身し、それで尚、厚着をして着膨れしたフォウルが寒そうに体を震わせながら俺の家にやってきた。

「兄貴、アトラを見なかったか?」

「アトラは今、盾に入って休んでいるが?」

俺の呼びかけに応じてアトラが盾から出て半実体化する。

「呼びましたか尚文様?」

「ああ、お前の兄貴が探しに来たからな」

「あら、お兄様、久しぶりですね」

「久しぶりだな。アトラ。うー……」

「……いや、お前等昨日もあっただろ」

フォウルは現在、村の連中の育成をライフワークにしている。

今回も、新たに村に来た奴隷や、強くなりたいと志願する連中に武術を叩きこむため、遠征に出ていた。

変幻無双流のババアが山奥に道場を構えていて、その場所にまで連れて行き、修行に耐えられるよう育てるのが仕事となっている。

村の中での評価は俺を除き、サディナの次に信頼できる兄貴分と思われているそうだ。

腐っても小手の勇者だよな。

ちなみに苦手な相手はキールだ。あのキラキラした目で近寄られると対処に困るらしい。

「相変わらず元気で何よりです。お兄様」

「そうかぁ? 今にも死にそうなんだが」

「フォウルさん。風邪でも引きました?」

余りにも重装備にラフタリアが心配になって尋ねる。

「いや……とにかく、寒くて寒くて……おかしいな、アトラの世話をしていた時は寒さなんて何でもなかったんだがなぁ……うー……」

ズズっと鼻をかむフォウル。

俺は咄嗟にフォウルに軽い回復魔法を施しながら風邪を引いているのか調べた。

が、特に異常は無い。

「フォウル……お前もしかして寒がりなのか?」

「そんなわけ……うー……寒い……」

「ラフタリア、部屋を暖めてくれ。後フィーロ」

「わかりました。少し薪を多く入れますね」

「なーに?」

「フィロリアルの姿になってフォウルを温めてやってくれ」

「うん」

フィーロがフィロリアル形態になり、フォウルに乗っかる形で羽毛を広げた。

この時期は暖かいからな。

「あー……あったかい。サンキュ、兄貴……みんな」

「いや、さすがに寒がりすぎだろ」

眠そうにしているフォウルが俺に礼を言うが、これはどうなんだよ。

筋金入りの寒がりになってんぞ。

冬眠でもするつもりか?

「いやー、寒くなってきたわねー。どうしたの?」

そこにサディナがふんどし一丁でやってきた。

お前は逆に寒さに強すぎだろ。

「ああ、サディナさん。お兄様が寒いと言ってましてね。努力が足りないのですよ」

「あらー? 気が抜けちゃったのかしら?」

「お前等と比べてもな」

アトラは精霊化しているし、サディナは皮下脂肪が分厚そうだ。

と言うかサディナは見た所、海で泳いできた感じだぞ。

どんだけ寒さに強いんだよ。

「海の中は温かいわよー? フォウルちゃんも入る?」

「それは名案ですわ」

「フォウルを殺す気か! と言うかアトラ、お前も大概にしておけよ」

「そうは言いましても、私は寒さに耐えられなかった事はありませんでしたので」

「ん?」

「確かにお兄様は昔から寒さに少し弱かったのを覚えていますわ。ですが、私は寒さに対しては困った事はありません」

病弱だった癖に寒さには強かった?

そういや奴隷紋の効きも悪かったからなぁ。

変な所でタフなんだよな。アトラって。

その感覚でいるのか。

しかし兄貴を凍死させようと言うのはどうなんだよ。

「ラフー」

「ああ、ラフちゃん。調子はどうだ?」

「ラフー!」

ラフちゃんは船の眷属器の勇者となって、サディナのサポートをしている。

サディナ自身の仕事はサルベージとか漁だから、移動に役立つ船を持つラフちゃんとはとても相性が良い。

ラフちゃんは尻尾の中から何やら黄金に光る杯を取り出して見せてくれる。

すごく値打ちモノっぽいなぁ。

「今日は大漁だったわよ」

「ラフー!」

「そうか……まあ、良いんじゃないか?」

褒めてと頭を近づけるラフちゃんを撫でつつ、フォウルの様子を見る。

コイツ……ホント寒がりすぎだろ。

「そうだフォウル。お前はまだ何が欲しいのか書いてないだろ?」

短冊を取り出して俺はフォウルに渡す。

元々武家の家だったから、知ってはいるだろう。

「ああ、クリスマスプレゼントに何が欲しいかか」

「ああ」

「プレゼントはいつも俺がやっていたんだがなー……」

眠そうに欠伸をしながらフォウルがアトラを見つめ、手を伸ばす。

フッとアトラに触れようとした手はすり抜けていた。

それを残念そうに見つめるフォウル。

哀愁が漂ってんぞ。

「で? ナオフミちゃん。村の子達は何が欲しいかの調査は済んだかしら?」

「……まあな」

「サンタさんはお姉さんにプレゼントはくれるのかしら?」

「出てけ出てけ!」

まったく……少しはフォウルに気を使えってんだ。

その日、フォウルは余りに寒そうにしていたので、俺の家で休ませたのだった。

クマかコイツは! と言う位弱り切っていたぞ。

どんだけ寒がりなんだよ。

で、クリスマス前々日まで時間は進んで行った。