軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

その日、城下町へ戻ったらお祭りムード一色だった。

何処もかしこも勝利で住民がはっちゃけながら俺を筆頭に勇者に感謝の言葉を投げかけている。

話によると、クソ女神が降臨してから龍刻の砂時計の砂が、砂時計内で浮かんだままだったのが、沈み、静かになったらしい。

波が来る時は常時動き続けていたのもあって、沈黙と言うか、クラスアップ以外での役目を終えたのが一目でわかるそうだ。

で、空の形と言うか、何かが異なる。世界に平和が訪れたのを人々は感じ取った。

そういや帰る途中で魔物共が俺達に向かって深々と頭を下げていたのを見た。

ガエリオン曰く、魔物も世界が平和になって、脅える生活をしなくても良くなった……のを知っているから、その平和にした勇者達に礼をしているのだとか。

怪しさ抜群だが、のどかな空模様を見ると、確かにそうだと思う。

ま、クソ女神の気配は断たれているんだけどな。

同様にクソ女神の系列である神が近寄れない結界を俺は世界に展開している。

もう、神を僭称する存在によって波が起こる事は無い。

この後の事は世界中の人々と話をしたうえで決める事になりそうだ。

「ありがとー勇者様ー! ありがとー!」

そんな声がそこかしこから聞こえて来て、しかも城にはいるまでパレードをさせられた。

相変わらず慣れない。

初めて城から出た時とはまるで反対だな。

あの時は、この世界を滅ぼせる様な気分だったんだけど……。

とはいえ、メルロマルクは大きく変化したと思う。

今や、城下町には人間も亜人も分け隔てなく存在し、俺達を祝福している。

計20人の勇者か……多いな。

それはクズも理解しているのか、四聖を分割して、メインである俺を最後にさせて城に入城させた。

悪いとは思ったが力を使って先頭を確認していたら、観客が「誰? あれも勇者なの?」とか囁き合っていたぞ。

兵士共が何の勇者で、グラスの世界の眷属器だとか説明してやっと頷いていたけどな。

もちろん、グラスの世界の住民は即座に理解して祝っていた。

そりゃあ、身勝手で世界を滅茶苦茶にしていた転生者から武器を奪ったと知ったら歓喜もするか。

「ふう……」

城に入って一安心……。

「盾の勇者様の来場!」

クラッカーが鳴り響いて、世界中の貴族勢が俺を出迎える。

ああ、俺の安息の地は無いのか?

「悪いが疲れているのだがー……」

精神的にだけどな。

肉体は、神の力と精霊が力を貸してくれているお陰で、何百年だって不眠不休で戦えると思う。

精神だって、休まなきゃとかじゃなくて平和を噛みしめたいだけだ。

「それは皆、理解しておりますよ。彼らも一丸となって戦っていたのですから」

クズと女王が俺に説明する。

ま、知っているけどさ。

「ならお前等も世界が平和になったと祝いたい気持ちはわかるが休め、そのテンションで生命を燃やしつくさんとばかりにしていたら死ぬぞ」

「盾の勇者様の慈悲に感謝をー!」

「「「おー!」」」

「聞いてねえ!」

「まあまあ、ナオフミ様、皆さん。やっと平穏が訪れて喜びに打ち震えているのですから」

ラフタリアが宥める。

まあ言いたい事はわかるけどさ。

「さすが尚文様ですわ。ささ、お兄様、ここで三秒で眠る芸をするのです。武人足るもの何処でも休まなければなりませんよ」

「あ、アトラ」

あ、フォウルの奴、思いっきり困っている。

ここで横になれって無理難題を言うな……。

「ささ」

「う……」

フォウルが横になった!

「すー……すー……」

すげぇ。これだけの観衆の目がある中で寝たぞ。

素直に感心した。これは大物になる!

「あ、フォウル兄ちゃんすげぇ! 俺も寝る!」

キールが謎の張り合いを始めてフォウルの脇でワンコモードで寝始めた。

「これで静かになりましたわ」

「アトラさん……」

「お前は相変わらず酷い奴だな」

呆れて物も言えない。

精霊になっても兄で遊ぶとは。

死んでも治らないとはこの事か。

とはいえ、フォウルもアトラとこんな話をするのが好きなのかもしれない。

なんせ、寝顔がとても安らかだ。

……死んでないよな? うん、死んでない。

「あらー、じゃあお姉さんがフォウルちゃんとキールちゃんを城の寝室まで運んで行くわね。他に眠いって子は一緒に休みましょうねー」

サディナが率先してフォウルとキールを抱き上げて連れて行く。

面倒見が良いのはわかるが、この場で良い切り抜け方をしたな。

俺もついて行きたい。

無言でサディナの後を行こうとすると観衆は元より、クズやラフタリアに呼びとめられる。

「何処へ行こうと言うのですかな? イワタニ殿、主賓が宴を離れるのはどうかと思いますのじゃ」

俺は逃げ出した。

しかし、回り込まれてしまった。

まあ、本気で逃げようと思ったら逃げられるけどさ、そこまでの事じゃない。

「あ、メルティ! てめぇ! 何フィーロと一緒に逃げようとしているんだ!」

サディナの後ろをさりげなく、フィーロを連れて逃げようとしていた。

絶対に逃がさないぞ。

「メルちゃん。フィーロ、こっちが良い」

「あっち嫌な事があるのよ。ささ、サディナさんと一緒にここから去りましょうフィーロちゃん」

「えー……」

「あのな……仮にも大国の女王が真っ先に逃げると言うのはどうなんだ?」

「あら、母上が帰ってきたんだから私はお役御免よ。まだ王女でいたいの」

これ見よがしに猫を被るメルティだが――。

「安心しなさいメルティ。私は既にこの世を去った身、これからは貴方達の時代です」

「は、母上!?」

「我が夫のお陰で辛うじて現世に留まる事が出来ていますが、それが何時までなのかはわかりかねます。メルティ、貴方は世界の女王なのです」

「い、いや! 私は――」

「おや? 私の知るメルティはこう言う場では使命を優先する子だったと思いましたが? イワタニ様の影響ですか?」

「う……」

「メルティ、相応にのびのびと育って嬉しいわ。きっとこれから良い時代になって来ます。嫌でしょうが、宴に参加しなさい」

ガシッと、兵士に両肩を掴まれてメルティは浮く。

「いやぁ! 私はまだ、普通の女の子でいたいの!」

メルティ、お前は何処のアイドルだ。

まあ、フィーロがアイドル枠だけどさ。

「メルちゃん。一緒にあそぼ!」

フィーロがスキップしながら宴の主賓席へと連行されるメルティを追い掛けて行く。

「はぁ……しょうがないか」

これはもはや逃げられそうにないな。

俺は観念して、宴に参加したのだった。

考えてみれば、最初の波を乗り越えた時にも宴があったよな。

あの時は最悪だったが、今は俺を代表にして貴族連中も祝っている。

催しと言うか、宴の最中に色々なハプニングが起こっているなぁ。

「エクレール!」

若干泥酔気味の錬が女騎士を呼び止めている。

なんだ? とは思ったが、黙って状況を見守っていよう。

「私に何の用だレン?」

「あの戦いが終わったら言おうと思っていた事があるんだ」

「なんだ?」

「俺と付き合ってくれ!」

「……は?」

ついに告白したか。

女騎士も何がなんだかわからない、唖然とした顔をしている。

「あの堅物に剣の勇者様が告白したぞ」

「でもエクレールも刀の勇者になったって話だろ? 釣り合うんじゃないのか?」

「どんな結末が待っているんだ?」

周りでざわめきが起こり、好奇な目で錬と女騎士を見つめる。

「え、あ……」

さすがに状況に気づいた女騎士が顔を真っ赤にして錬から逃げるように歩きだした。

「待ってくれ! 返事を聞いていない!」

「う、うるさい! わ、私は使命があるんだ!」

「その使命も、一緒にやって行きたい!」

「だ、ダメだ。お前は世界を平和にする義務があるんだからな!」

「わかっている。今の状況だって、大きな山を越えただけに過ぎない。人々の為、死んでいった仲間の為にも俺は償いの日々を過ごす。その中で、エクレール、俺と共に居て欲しいんだ」

「は、反省が無い! その根性、叩きのめしてくれる!」

「それは……肯定と受け取って良いんだな?」

「な――違う。私はお前のようなひよっこに……」

と言った所で女騎士の言葉が詰まる。

うん、昔の錬に比べて今の錬は身長もそれなりにあるし、体つきも良くなっている。

美少年剣士から、逞しい美青年剣士になっているんだよな。

だからひよっこと言うのは厳しい。

しかも世界を救った勇者に向かって言うには、周りの目も厳しいしな。

「酒に酔ってふざけているんだな。私は失礼する!」

「待ってくれ! これは俺の本心なんだ!」

女騎士は逃げ出した。

そりゃあもう、わき目も振らず、人ごみを掻き分けて錬から逃げた。

「……バーカ」

そんな様子をやさぐれた感じの谷子が、ガエリオンと元キャタピランドのラフ種にもたれかかりながら呟いた。

昔はもっとピュアな子だったんだがなぁ……。

『何を他人事の様な顔をしている。ウィンディアがこうなったのは汝の所為だろうが!』

ガエリオンが俺を思いっきり睨んでいる。知らんな。

まあ、復讐を嫌がっている所で俺は無理矢理復讐しようとしたから……ぐれたのかもしれない。

「ウィンディア!」

女騎士に逃げられた錬は今度は谷子に向かって歩いてくる。

先程より顔が赤い。相当酔っているみたいだ。

「近寄るな」

「ギャウ!」

殺気全開のガエリオンが錬に向かって唸る。

「ウィンディア、俺は責任を絶対に持つ!」

「ちょっと、なんでこんな場所でそんな事を――」

ヒソヒソ声が強まる。

錬の奴、酒で酔いすぎじゃないか?

昔の元康ばりに節操が無いぞ。

ま、責任を持つと言うのは親を殺した責任と言う事なんだろうけどさ。

この場では錬が女好きと言うレッテルが張られ始めているぞ。

女騎士に告白した舌の根が乾かない内に谷子に爆弾発言をしているんだもんな。

「ウィンディア! お前は絶対に俺が幸せにさせてみせ――」

「これ以上、話を続けるな! 電撃竜!」

あー……谷子の堪忍袋の緒が切れた。しかもガエリオンまで暴れる始末。

錬も泥酔しながら剣を持ち、谷子のスキルを弾いている。

よくやる。

「ん?」

フィーロが機嫌よく、歌って踊り始めた。

その後ろでメルティが嫌そうに楽器を引いている。

いや、この祝いの席で俺との婚姻話とか、女王として学ぶ事を叩きこまれる状況を打破するために演奏を始めたのだろう。

「ふおおおおお! フィーロたんの歌!」

元康は相変わらずフィーロが好きだな。先頭に立って応援してやがる。

その後方を三匹が不満そうに睨むのは通過儀礼か?

「クエークエー」

フィトリアも一緒に歌ってる。

と言うかバックコーラス? アカペラも混じって、会場のテンションが上がってるぞ。

司会をしていたクズは何をしてやがる。

そう思って探すと、テラスで女王と共に酒を飲んでいる。

独特の雰囲気を醸し出していて近づけないぞ。あれは。

まあ、俺は近づくけどな。

「おや、イワタニ殿、どうしましたかな?」

「会場が凄い事になっているから止めさせるように言いに来たんだ」

「これは失礼、ですが皆様方は問題なく楽しんでいるご様子。止める必要は無いかと思いますが?」

女王が扇で口元を隠して呟く。

相変わらず口の上手い女狐だな

「むしろイワタニ様が止めに行かれた方が効果的だと思います」

「俺が止めたら歓声が起こるぞ」

俺が何を言っても民衆と言うか、会場の連中は聞き入れやしない。

経験則から俺が入ったら間違いなくヒートアップする。

「良いでは無いですか。今はただ、この喧騒を楽しむのも一興と言うものですよ。幸い、乱闘騒ぎは起こっていないようですし」

「いや……起こってただろ」

錬と谷子の戦いがさ。

ギャラリーは楽しんでいて、みんな平和を噛みしめている感じだったけどさ。

城の外も……と言うか世界中が喜びで湧きかえっている。

はぁ……クズと女王のバカップルから離れた所で、樹達を見つけた。

こっちもリーシアと一緒に寄り添い、話しあっている。

俺を見つけて樹が話しかけてきた。

「どうしたのですか尚文さん。主賓がこんな所にいては皆さんが残念がりますよ」

「俺がいなくてもみんな騒いでいるだろ」

「尚文さんがいるともっと楽しんでくださると思いますよ」

「はい。私もそう思います」

「はいはい。で、お前等は何をしているんだ?」

「僕達ですか? ゆっくりと宴を楽しみながらこれからの事を話しあっていただけですよ」

「その割には甘い雰囲気を出していたが?」

「ふぇえ!?」

これみよがしに嫌味を言ってやる。

自分達も主賓の癖に俺に丸投げしやがってここで水を差して遺恨にしてやる。

「はい。僕はリーシアさんと甘い空気を醸していた自覚はありますよ」

「ふぇええええ!?」

リーシアが更に張り上げて赤面する。

「い、樹?」

「とても身勝手かもしれません。ですが僕は、リーシアさんの好意に答えたいと思っているんです。僕は罪人です。ですが……人一人幸せに出来なくて、人を救えるとも思えません。ましてや、リーシアさんには罪は無いのですから」

「イツキ様……私は、何があろうともイツキ様の元から離れません」

「リーシアさん……」

そして、二人だけの空間が形成される。

ああ、もう勝手にイチャついてろ。

嫌味をそのまま受け入れられるとこっちが馬鹿みたいじゃないか。

「とても幸せそうですね。ナオフミさん、ちょっとこちらで話をしましょう」

「ああ」

そこへグラスがやって来て、樹達の出す甘い空気から俺を連れて行った。

「助かった。もはや俺が背景になっていた気がするけど、どう対処すべきか悩んでな」

ラフタリアが居れば逃げられたかもしれないけど、ラフタリアは今、宴の席で俺の代わりに貴族連中と話をしている。

後で交代しないとな。

アトラはフォウルをからかった事を戻ってきたサディナに説教されている最中だ。

ま、アトラが聞き入れるとは思えないけどさ。

ラフちゃんはフィーロ達と一緒に歌っている。

あ、幼女ラフタリアに変身した。

そして本物が怒っている。

「それで? どうだ、世界が平和になった感覚とやらは」

「……これからでしょうね。これから私の世界の人々と、この世界の人々のぶつかり合いが始まるのではないかと思っていますよ」

だからか、グラスの奴がこのお祭り騒ぎで浮かれていないのは。

わからなくもない。

「その点で言えば出来ない事が無い訳じゃない」

「何かあるのですか?」

「引っ付いた世界を割る手段がある。その別れる世界にいれば、余計なぶつかり合いはしないで済むだろう」

「それは……神の力と言う奴ですか?」

「ああ、俺は出来ないが、ラフタリアなら出来る。聖武器がその世界に鎮座する事になるがな」

そうなれば神が乗り込む事の出来ない。乗り込む土壌が無いからな。

まあ、俺がこの世界に結界を作っているし、別れた世界にも結界を張るから、その先も平和が続く世界が出来るだろう。

「そう……ですか」

「グラスはどうしたいんだ?」

「……わかりません。争いは確かにありますが、それを乗り越えて和解して行く事も、私は重要だと思うので」

「そうだな、この辺りは、他者を受け入れたくないと言う奴等を隔離するかのように、追放する形になってしまう」

「それでは……本当の平和が来るのでしょうか?」

「さあな。元々が異常な世界融合の果てなんだ。同族同士だって争い合うしな」

俺の世界が良い典型だ。

結局、生き物とは争いあって生きる存在だ。

同族しか人間がいなくても、結局は覇権を握ろうと争う。

同族しかいない世界だって平和とは言えない。

「難しいですね」

「そうだな。ところでグラス、お前は自分達の仲間と祝い合わないのか?」

先ほどまで、グラスは仲間と勝利を祝っていた覚えがある。

なのに、今、俺と話している。

「ええ、さっきまでは宴を楽しんでいました。ですが、フッと冷静な部分が私に歯止めを掛けてしまいましてね」

「冷静な部分ねー……」

「……私には、とても大切な友人がいたんです。その友人はとある出来事で行方知れずになってしまいまして、あの人がいない所で私だけが楽しんで良いのかと思いまして」

「友人? 好きな相手か?」

「友人として好感は抱いていますよ。ですがその方は女性です」

「ああ、そう」

「今、あの人は何処で何をしているのか……」

「死んでいるんじゃないのか? 探してやろうか?」

「そうですね。ナオフミさんに見つけてもらえるのも一つの手かもしれません。ですがあの人は必ず帰ると言っていたので、私は待ってこの場に、この世界を守っているんですよ」

世界が大変なのに行方知れずの奴がいる、ねー……。

そいつを待つグラスも大概だな。

神の力で検索してみる。

するとグラスの過去に異常な特異点があって、その友人と言う奴を見失ってしまった。

異世界人か?

死んではいないと思うが、俺でも見つけるのは難しそうだ。

本気でやれば見つけられるかもしれないが、グラス本人がこれじゃな。

「まだ私の戦いは終わりません」

「倒れないようにな」

「わかっていますよ」

それからしばらく、俺が静かにグラスと一緒にテラスで空を眺めていた。

そして宴の会場が騒がしくなっていると思ったら武器屋の親父とイミアの叔父、そしてイミアが会場で、氷像を作っているのを目撃したので近寄る。

どうやら城の魔法使いに氷の魔法を唱えさせて、氷の塊を作り、それを削って作ったようだ。

「お、アンちゃんじゃねえか」

「何やってんだ親父、と言うか城の宴に出席していたのか」

「何か芸をしろと言われちまってな、さっき来たばかりだぜ。戦いが終わったのを祝うってんで、こうして見せているんだ」

器用にハンマーで親父は氷像を完成させていく。

一分の一フィーロまで彫り上げるその技術はすごいと思うけど……何か間違ってないか。

しかも人型時とフィロリアル時をセットでだ。

「アンちゃんのリクエストがあるなら何でも答えてやるぜ。氷像じゃなくても良いぞ」

「ふむ……」

「ではワシがその腕を見込んでお願いしようかの」

何故かクズが人ごみを割って注文する。

「イワタニ殿の功績を称えて、大きな像を注文しよう。もちろん、宴のあとで大々的にじゃ」

「なに言ってやがる。このジジイ」

「あくまで隠し芸の範囲だったが、わかったぜ。大きさはどんなもんを想定しているんだ?」

「ふむ、遥か遠い……それこそメルロマルクから離れても見える巨大な像を建造したいのじゃ」

「おお! お義父さんの像ですか! 俺の世界の国でもありますぞ。自由を歌う女神の像が!」

「女神と言う所で不吉じゃが、イワタニ殿なら人々が長い事崇め称える事請け合いじゃろう」

「やめろぉおおおおおお!」

なんでそんな気持ちの悪いもんを作らなきゃいけないんだ。

クズの発想が飛躍しすぎて気持ち悪い!

元康も便乗するな!

何が悲しくて俺の巨大な像を建築する為に親父を使わねばならないんだ。

どうにか宥めて巨像建築はやめさせる。

「アンちゃんも出世したな」

「冗談はやめてくれ」

「はは、こうして平和になったって事は俺の店もやっと静かになるってもんだ」

「……悪い事をしてしまったか?」

武器屋と言うのは総じて脅威のある敵が居る時に儲かる店でもあると思う。

これからの時代、相変わらず魔物との戦いはあるだろうが、波が到来している時よりも儲からなくなるだろう。

「気にすんじゃねえぜ。平和ってのはそれだけで良いもんなんだ。それに何も俺は武器だけが商品じゃねえよ」

そう言えば……イミアの叔父は金物屋とかをしていたとか聞いた気がする。

平和な世の中になると武器屋は金物屋もするのかもしれない。

フィーロの馬車とか作ってくれたし、金属を使う便利屋として商売をしていくんだな。

「これも全てアンちゃんのお陰だ。俺も頑張った甲斐があるってもんだ。それにしばらくは俺の店は安泰だぜ」

親父がウインクして後方を指し示す。

「さすがは盾の勇者様の贔屓にしている店の店主だ! 是非、武具を作ってもらおう!」

「いや、それは我等の――」

と、武器屋の親父に依頼が殺到しそうな会話を貴族や他の国の連中が囁き合っている。

まあ、俺が今付けている鎧の大本は武器屋の親父達が作ってくれた物だしな。

性能が高すぎて、驚きだ。

その後も軽く冗談交じりに会話をしていた。

元康がフィーロの氷像を永久保存したいとか騒いでマリンだったかに無茶を要求していた。最終的に親父の了承を得てクーに溶かされたけど。

「親父さん。今までありがとうございました」

ラフタリアが来て親父に礼を述べる。

「おう。嬢ちゃんじゃねえか! 立派になったなぁ。初めて会った時がウソのようだぜ」

思えば長い道のりだった……。

ヴィッチに嵌められ、奴隷だったラフタリアを買って、親父から武器を買って……ホント色々とあったなぁ。

「さあさあ、よってらっしゃいみてらっしゃい。魔物の曲芸ショーですよ。ハイ」

あ、久しぶりに見た奴隷商が魔物を使ってサーカスのショーみたいな事をしている。

大きな虎の様な魔物に火の輪潜りをさせたり、自転車に乗るエグッグとか謎の魔物がいたりと、世界を救ってもまだ知らない魔物が居るんだと教えてくれる。

谷子が興奮気味にその様子を見ている。

好奇心からどんな魔物なのか奴隷商に聞いていた。

魔物が好きなのはわかるが、その相手は奴隷を使うし魔物をコキ使う酷い奴だぞ。

しかも謎の張り合いを始めて谷子が俺の領地の魔物を連れて来て芸をさせる始末。

ラフ種に改造された連中とフィロリアル共、そしてガエリオンの曲芸を見せて大いに盛り上がった。

あ、元康の元配下のエレナを発見。

凄い渋い顔をしながら親と会話している。

「……あら」

「久しぶりだな」

「そこまで久しぶりじゃないわよ。戦場にいたし」

「いたのか」

「当たり前じゃない。親がうるさいのよ」

そういやコイツの父親だったかがメルロマルクの軍人だったんだったか?

「目立たないようにしていたから、気づかなかったのかもしれないわね」

「ああ、そう」

「あの処刑された元王女が世界侵略をした神だなんてねー……何処かで妥協すれば良い物を、馬鹿な女」

「お前なー……」

冷徹な堕落趣味な女がポツリと呟く。

確かに、アレだけの力があるなら適当に生きるだけでも、贅沢三昧できただろうに。

まあ、上を見たら限りが無いだろう。

「ま、頑張ったじゃない。おめでとう」

「お前に言われても全然嬉しくないな」

「そうでしょうねー……あー面倒。この先も盾の勇者の領地で商売があるし、親は儲かってうるさいし、私は楽して生きたいのにどうしてこう生きづらいのかしら」

「それがお前の罰だ! 処刑されないだけありがたいと思え」

コイツはホント、他の誰よりも悪態を吐いても良い相手な気がする。

嫌がらせに特別待遇で商売に絡ませるとしよう。

何、会場の入り口で商魂逞しくアクセサリーを売りまくっている商人(ゼルトブルでデパート経営をしている奴)にでも言えばどうとでもなる。

ついでに大富豪になりつつある詐欺商(アクセサリー商と提携して城下町の宴の商店を牛耳る)とも話を付けておくか。

俺の領地はこれからどんどん発展していくだろうしな。

「ナオフミちゃーん!」

酒に酔ったサディナが背後から抱きついて来やがった。

「何やってるのー? 暇ならお姉さんと一緒にみんなを楽しませましょうよ」

アトラへの説教を終えたサディナはどうやら飲み比べ大会を始めたらしく、そっちはそっちで盛り上がっていた。

「と言う訳でナオフミちゃんが参加しまーす! 皆さん、お姉さんとナオフミちゃんと飲み比べしましょうねー」

「よーしみんな! 盾の勇者様と銛の勇者様を酔いつぶすんだ!」

「こら! サディナ、やめろ!」

「いやーん。ナオフミちゃん大好きよー」

サディナの奴が俺に寄り掛って来る。

「さあ、ラフタリアちゃんもー早くナオフミちゃんと楽しい事をしてね。その後はアトラちゃんでしょ。次は私なんだから」

「あはは……」

ラフタリアが汗を拭っている。

この女は、何処まで本気なんだ。

「早くしないと私がナオフミちゃんを食べちゃうわよ。んー」

「誰が食われるか! こら、顔を近づけるな酒臭い!」

「いいえ、私が尚文様の一番ですわ!」

アトラがしゃしゃり出てくる。

「ラフー!」

「あ、ごしゅじんさまたち楽しそう。フィーロもメルちゃんも混ぜてー! さ、メルちゃん一緒にいこー」

「わ、私はそんな事……」

とか言いつつメルティはフィーロと一緒に近づいてくる。

ならそのまま逃げろっての。

他にも村の連中や仲間達が集まってくる。

「や、やめてください! ナオフミ様は私と一緒なんですから!」

まったく、騒がしいったらありゃしないな。

こうして宴は長い事開かれた。

一度疲れて会場を後にし、城の客室で寝てから戻ってもまだ祝っていた。

最終的にこの宴は一週間に渡って開かれるのは、どうでも良い話かな?