軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

チート

「は?」

ヴィッチみたいな女が他にもいる?

冗談じゃない。あんな女がそう何人もいてたまるか。

いや、俺の世界でも悪女が暴れまわって滅びた国、なんて話も聞く。

となると、そう珍しい話でもないか。

「私の世界にも……それと似た経緯を取る者が三人います。その者達は聖武器の勇者に最初取り入りましたが、罠にはめて毒牙にかけました。今ではそれぞれ眷属器所持者の愛人をしていますね……」

「だ、大丈夫なのか?」

「敵国ではありますし……転生者が波を軽視している今はまだ……」

「いずれ相手をする事になりそうな予感がするな」

「心根は腐っていますが直接乗り込んでくるような事はしてきませんから、注意していれば問題はないかと」

「まあ、あの手の女はそうだよな。にしても、そっちの世界って現在どんな状況な訳? 転生者だと思われる奴でいい」

本気でわからなくなってきた。

波が無い時とか何やってんだろう?

「転生者同士で戦争をしている国が二つ、最強を目指して戦いに明け暮れる者が数名といった所です」

うわ……その中でヴィッチみたいな経緯の女が三人もわかってるとか。

同情以外の感情が湧いてこない。

まあ昔の錬達やタクトを思うに、他人事では無いんだけどさ。

「今は私達の世界の聖武器所持者を探している最中です。波の最中に……申し訳ないですが処分出来たら……全て方が付くでしょう。本当は守りたかった世界、でしたが」

「そうか」

どこの世界にもいるんだな。

いてたまるかとも思うが、ヴィッチみたいな女は沢山いると知った。

そんな奴が世界をダメにしてしまったのかもしれない。

だが、なんか引っかかるな、その女共。

何処の世界にも権力を持ったクズな女がいるという事なんだろうと片付けるのは非常に簡単だけど、それだけで収めるには出来過ぎているような気がする。

この世界では、もしかしたら……タクトの取り巻きにいた薄情な女共がそれだったのかな?

所詮は推測の範疇でしかないんだよな。

答えなんて出ないか。

こうして波を鎮める戦いで、この波が終われば次はメルロマルクという、一周するのがわかっている時だった。

00:10

「この波が終われば少しは静かになるか?」

次の波まで一週間以上ある。

その間に出来る事をして戦力を本格的に増強するべきだ。

「そうですね……」

俺のLvはサディナと一緒に上げたので150まで上昇していた。

40~100まではサディナについていけば案外上がりやすいのだけど100を超えると途端に上りが悪くなる。

Lv差の高い相手を倒すのが良いのだけど、資質アップを併用すると自然とこんなもんで落ちついてしまった。

もっと強い魔物を倒してLvを上げなければ、この先の波はどんどん厳しい物となるだろうな。

海には割と魔物が多くて上げやすいというのがわかってきた。

ラフタリアは146でフィーロは155。

時々フィーロは強化方法をミスするから教えるのが大変だったりする。

他の連中も似たり寄ったりだな。

350って何年掛けたんだろうか。

転生だと俺達よりも戦いに備える期間が長いわけだから、素直に羨ましい。

まあ、今だから言えるのかもしれないけどさ。

ともかくタクトのLvを思うに、少々不安が残る感じだな。

まだタクトの戦いからそんなに二週間と少しくらいしか経ってないし、もう少しでも時間があれば、と考えるのは我が侭か。

尚この二週間、波は何回もやってきた。

一日に二回も戦った日まである位だ。

まったく……勇者が揃っていたから良かったモノの……。

海戦の時は戦える連中が少なくて困ったな。

「ラフー?」

ラフちゃんはラフタリアと同じLvに俺が調整している。

同じくらいの強さが良いだろうな。

ちなみにラフちゃんは多芸だ。

幻覚系の魔法に変身だろ? 他にバイオプラントを操る事も出来る。

俺とラトが共同で研究した結果、能力アップのアクセサリーとして頭に葉っぱを付けさせている。

バイオプラントにアクセサリー効果を付与した物だ。

ラフちゃんの細胞とフィーロのアホ毛の概念を取り込んで作った。

ま、半分はラトのお陰だ。

これでラフちゃんの能力は更に上がる……らしい。

ラフちゃんの頭の上でピコピコと動く木の葉がなんかかわいらしいな。

で、ラフちゃんは基本的にはラフタリアと連携して戦っている。

鏡合わせのように敵を挟んでの連撃は中々見物だな。

スキルまでは再現できないのが難点かな? スキル以外の技は真似できるけど。

「今日が終われば、猶予の時間は増える。そしたら準備をもっと整えるぞ」

「やっとですね。連日戦いの連続で、疲れました」

「フィーロ、寝るかメルちゃんとお話するか戦う、ばっかりだったー」

「そうだな……もっと本腰を入れなきゃいけないもんな」

イミアやその叔父、武器屋の親父に作ってもらっている武具の生産が間に合っていない。

もっと戦力を増強すべきだ。

時間が惜しい。

とにかく……これが終わればどうにかなるだろう。

今は辛抱の時だ。

「行くぞ!」

俺の掛け声に勇者全員が頷く。

00:00

砂時計が落ち切り、俺達は波が発生する場所に召喚された。

その直後、視界のタイムカウンターが出現した。

01:30

「な!」

早い!

幾らなんでも早すぎる。

今までの波で、この状況になる事は無かった。

いや、タクトとの戦いの最中にこういう事態になる事はあったが、それ以外で、しかも始まったばかりでタイムリミットが出た事なんてない。

「急ぎましょう!」

ラフタリアの声に我に返って走り出す。

空にはワインレッドの亀裂が……大きく広がっていた。

一刻も早く、波を鎮めるべきだ。

「みんな、急げ!」

「ああ!」

錬、元康、樹、そしてラフタリア達……村の連中に連合軍、そしてフィロリアル軍団とガエリオンが続いた。

01:25

え? ちょっと待てよ! 5分も経ってねぇ!

見ると波の亀裂に人影ぞろぞろと現れる。

「!?」

グラスが我先にと駆け出す。

そして人影の先頭に……俺達を背にしている者達に話しかけた。

「貴方達! 何故こちら側に?」

「眷属器の所持者達と転生者が……波に乗りこんできて……」

見れば連中はボロボロだった。

「なんですって?」

俺は波から出てくる相手を見る。

何だろうか? 人間が多いけれど、中には亜人や魂人も混じっていた。

「ここがアップデート先の世界か」

「早く始めようぜ」

「わかってる」

作業のように先頭がこちらに向かって構え、後方は波の亀裂に向かって手を当て……こじ開けるかのようにしている。

01:10

「女神様から授かった新しい能力マジチート」

凄くウザイ声が響いた。

何がチートだ。ふざけんな。

にしても、もしかしてあの作業で制限時間が短縮されているのか?

「今すぐやめさせろ!」

「わかっています!」

俺は意識を集中し、リベレイション・オーラⅩを唱える。

同時に樹がアル・リベレイション・ダウンⅩの詠唱に入った。

残りは全員で攻撃スキルや魔法を放つ。

「おっと」

先頭の転生者らしき男が手を前にかざす。

すると流星盾の様な結界が出現する。

「早くしろよ。絶対防壁とはいえ、そんなに長く持たないんだからよ」

なんだよそれは!

「チッ! あれは……転生者の異能力だそうです」

「制限付き絶対防壁!? 僕の世界にもある能力です」

グラスが補足し、樹が絶句したように言った。

色んな世界、あるいは先程話していた女神様とやらの能力か。

「どんな能力なんだ!?」

「わかりませんか? 何をしても破壊する事の出来ない防壁を生成します。それがある限り、攻撃は通りません」

「く……やっぱりそうなるよな」

なんちゅう都合のいい能力を所持しているんだよ。

樹の世界からの者か?

いや、タクトの事例がある。

神を僭称する者からもらった力かもしれない。

実際、女神様が~~とかさっき言っていた。

「難点は自分達も攻撃できないというところでしょうか。僕の世界では上位クラスの能力の一つです。最上位は常時展開できます」

「く……」

わらわらと波から魔物が出現する。

その対処と平行してグラスの世界の転生者達と戦わないといけないのか!

最上位クラスの奴じゃなくて助かったか?

いや、とにかくあの防壁を破壊しなきゃ波の制限時間を削りきられる。

そうなったら世界が滅ぶ。

「さあ、シェル様! 更なる新世界と力を授かる時です。共にがんばりましょう!」

その転生者の後方に、なんだか勘に触る女の声がする。

結界を張る転生者らしき相手に寄りそうその姿が……俺には元康に寄りそっていたヴィッチに重なって見えた。

「グラス、さっき話した女はアイツか?」

「はい!」

顔は全然似ていない。声も違う。

背格好も何もかも違う。むしろ完全に別人だと思う。

なのに、そう……俺の本能が囁いている。

あの女からはヴィッチと同じ匂いがするんだ。

贅沢を好み、世界を思い通りにし、男を利用する事しか考えていないような、そんな雰囲気が漂っている。

01:01

く……秒単位で削られていく。