軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

世界融合

「で? お前の武器は馬車で良いのか?」

「クエ」

コクリとフィトリアは頷く。

「前会った時には取り外しが出来たよな?」

「クエクエ」

「一時的に外す事は長年使えば出来なくはない。そうです」

羨ましい話だな。

俺も真似したいが、眷属器と四聖じゃ次元が違うかもしれないし……。

盾も特例で休眠していたような物だから、意識的に出来たら良いんだけどなぁ。

「ラトが作った戦車型のボディをコピーしたな? あれも馬車のカテゴリーなのか?」

「クエ」

「うん。コピーできると思ったから、利用させてもらった。そうです」

「そうか」

火力はどれだけ差が出るか分からないけど、ラトの戦車もコピーできるとは中々優秀じゃないか。

これならラトに武器型魔物の製造を急がせるのも手かもしれないってそれは良いんだ。

しかし……戦車って馬車の分類なのか?

どちらかといえば乗り物とか、そんな感じか。

「つまり本来、四聖と呼ばれる聖武具の所持者が四人、そしてそれぞれの眷属器が二つずつで八つ、計十二の武器がこの世界には存在したんだ。グラス、お前の世界もそうだろ?」

「そうですね。私達の世界にも十二個武器が存在します。私はその中で『扇』の眷属器の所持者です」

「そうか」

「こちらの世界は……特に喪失は無いようですね。守護獣はどうなっておりますか?」

「守護獣?」

そのまま話を続けそうになった所をクズがグラスに向かって尋ねる。

そういえば守護獣という役割は先程ガエリオンが教えてくれたんだったな。

まあ、クズみたいな勘の良い奴は気付いていたかもしれないが。

「波と呼ばれる……世界融合を阻害する為に作り出された獣の事です。世界を守るため、その世界に住む者達の魂を集める性質があります。禁忌の手段ですが……」

「四霊の事じゃな?」

「そうだ。この世界では三匹、既に討伐されてしまっている。その性質や説明は過去の勇者や伝承が尽く、何者かの手で握りつぶされてしまっているがな」

「……こちらの世界は既に全部討伐されてしまいました。残る手段はそちらの世界の勇者を……全員殺すしかなかった」

グラスはほっとするように胸をなでおろす。

殺したくて殺している訳ではない。

そんな意思が汲み取れる。

俺達からすれば勝手な話だが、同じ事が俺達にも言える訳だ。

なにせ、四霊を使えないならグラス達を滅ぼさなければいけないんだからな。

「少しですが、世界が融合してしまいました。現状、我等はそちらの世界の住人、という事に僅かながらなってしまった、と言った所でしょうか」

「そうなるな。それで、お前達が望む事はなんだ?」

「世界融合を可能な範囲で抑える事。その上でしたらこちらからの犠牲も厭いません」

犠牲……ね。

つまるところ、グラスの世界は全てではないが、融合が完了してしまった。

その所為でグラスは結果的に俺達の協力者、という事になる。

「守護獣に捧げる命も半分までなら出しましょう」

「……正気か?」

立場上グラス達が頼む側だからしょうがないとも思えるが、自分達の仲間の半分を捧げられるとか……。

もちろん、グラスが喜んでそんな提案をしている訳じゃない。

苦渋の選択だったのは想像に容易い。

あれだ。昔読んだSF小説に似た様な話を見た事がある。

汚染されて人が住めなくなった地球を極一部の人間だけ宇宙に脱出させて人が住める星に移住させる、だったか。

おかしな事に現在の状況とそのSF設定が被っている様にも思える。

それだけグラスの世界が切羽詰った状況なのだろう。

当然だが、それは俺達とて変わらない。

俺達だって手を拱いていれば世界が崩壊するという危機的状況にいるんだ。

大を取るか小を取るか、みたいな選択が俺達に課せられているって事か……。

そういう意味では素早く決断を出したグラス達の方が危機的状況を理解している訳だ。

「わかっています。最終手段なのは重々承知です。ですが、世界の一部が融合してしまった今、貴方達の世界と私達の種族を延命させるには最悪の手も視野に入れておかなければなりません。そちらに何か手段があれば別ですが」

そんな物があれば既に使っている。

しかし、世界人口の三分の二を、はいどうぞって殺せる訳もない。

――だが、やらなければいけないかもしれない。

俺だってこれまで生きてきたからわかる。

世の中、綺麗事だけでは片付けられないって事を。

誰かが得をすれば誰かが損をする。

両者得をするなんて旨い話、中々無いもんだ。

三分の一を生かす為に、三分の二を殺す。

本当……嫌な世界だ。

それでも、選ばなければいけない。

もちろん、それは本当に最後の手段だ。

「……お前達の世界は?」

俺の問いにグラスは視線を逸らした。

「敵の尖兵たる前世所持者によって私達の世界は混乱を極めています。誰が前世所持者か疑心暗鬼にまで陥る者が出てきています。世界の危機に味方同士で殺し合い……笑ってくださっても結構ですよ」

どうやらグラスの世界はタクトの様な転生者によって、四聖を含め、眷属器の所持者の大半がやられてしまったらしい。

俺達も一歩間違えば同じ事が起こっていただけにバカにできない話だ。

「大笑いしてやりたい気もするが、こっちも似たり寄ったりだ。なんならお前が俺達を笑ってみないか?」

七星勇者の暗殺。

タクトの暗躍。

フォーブレイとの戦争。

本当、見事にハメられているな。

こんなバカ共が世界を救うなんて妄言も良い所だ。

「さて、アホな話は程々に、そっちに残されている情報はどんなもんだ?」

敵の世界の情報か。

グラスの態度を見るに、俺達とそう変わらないだろうな。

「辛うじて、波とはどんな物であったかという事だけは私達の世界に強く残されていたのですが、それ以外は大半が焼失してしまっていて……何度……波から世界を救うために他の世界と戦ってきたか」

「そうか……グラス、お前の世界の波は……何度目だ?」

これは俺が考えていた最悪の可能性だ。

相手の世界を滅ぼしたとして、終わりのある戦いか否か。

数百年単位なら、まだいいだろう。

数十年単位でも、苦渋の決断としてはいいだろう。

だが、数年、数ヶ月、数週間だったらどうだ。

そんな終わりの無い戦いを続けられるのか?

いや、続けなければならないとしたら……。

「もう、数え切れない程の世界と戦って来ました。最初はナオフミ達の世界と戦っていましたが、ある時から別の世界と戦いました。おそらく、この世界の守護獣が張った結界の所為でしょう?」

「ああ。そうか……俺とお前が出会ったのは……四ヶ月も前か」

「あの時は、まだ私も波とはどんな物かくらいしか存じていませんでした。今とは強さに雲泥の差がある程に……」

確かに今の俺達なら、あの時のグラスを容易く返り討ちに出来るだろう。

それはグラスだって同じだったのかもしれない。

実際、先程共闘した戦いでのグラスはかなり強かった。

「あの、尚文さん。どうしてこれ以上、世界融合をしてはいけないのですか?」

樹が質問してくる。

そう言えば波とはどういう物かを説明したが、何故阻止しないといけないのかを説明していなかった。

「わかりやすく言うと……世界はシャボン玉のような風船だと思ってくれ」

「はぁ……」

「このシャボン玉は四つまでは引っ付いて浮かんでいられる。だけどそれ以上となると破裂する。わかるか?」

「なんとなく……」

「なるほど……波とは世界が融合する現象。過去の伝承で勇者達は生き残る事は出来ても、波自体を抑える事は出来なかったという妻の手記を照らし合わせると」

クズが俺の話したい事の真髄を突いてくる。

「元々聖武器一つに眷属器二つの世界が引っ付いて、聖武器二つ、眷属器四つ……そして前回の波で――」

「ああ、聖武器四つに眷属器八つになった」

「つまり、過去の伝承に亜人が出てこないメルロマルクの伝説は波以前を表し、世界融合によって亜人との世界とつながってしまった。イワタニ殿とカワスミ殿の持つ盾と弓は……亜人の世界の聖武器だったのでしょう。だから我が国メルロマルクでは印象が悪いのです」

「僕もですか? あまり尚文さんのような扱いは受けませんでしたが?」

「長い伝承の中で弓の勇者様は活躍なさって、宗教が受け入れたのでしょう。ですが盾の勇者様は……」

「亜人の単一世界の武器は盾だったんだろうな。あまりメルロマルク内では活躍しなかったって所か」

物分かりが早いな。

俺が言わなくても結論を直ぐに導き出す。

覚醒前と比べると果てしないな。クズ。

「詳細は不明だが、前回の波では亜人との世界が繋がってしまった。今回はグラスとの世界に繋がりかけている。それで良いだろう」

「ええ、その考えで間違いありません」

「しかし……何故、波は長い時を必要とするのじゃ? これは妻の手記には存在せず、ワシも可能性しか提示できん」

「言ってみてくれ」

「ふむ……まず、一番高いのは先ほどからイワタニ殿達が言っている前世所持者と言う今回の事件の首謀者の影にいる存在」

クズは腕を組んで考え込む。

「あり得るのは……四霊が行う融合阻止の様な現象が波毎にあって、まるで果物が熟すのを待つように、首謀者は待っている場合……しかし、この考えはその首謀者が長命過ぎる」

「いや、間違いは無いかもしれないぞ? もっと可能性を広げてくれ」

「……わかりました。首謀者は世界を滅ぼすことによって利益がある。だから波を起こせる世界同士をぶつけて、滅ぼす……もちろん、四霊の様な波を妨害する効果のある存在は前世所持者を送り込んで処分する。しかし……この考えでは先がまだ不明瞭ですな」

「そうだな」

何故、その首謀者が直接乗りこんでこないか、だ。

乗り込めない理由があると考えるのが無難か。

仮にこの仮説が正しかったとして、導けるのは。

「その首謀者はこの世界に来ることが出来ない。もしくは……そう言う物ではなく、魔法的な、精霊的な存在なのかもしれませぬ。世界の寿命を定めるシステムの様な……」

「樹、お前は心当たり無いか? タクトが前世所持者だとわかっていたんだろ?」

「そうなんですけど、僕の世界ではこう言うのは目覚めていなかった能力と言う事になるので……なんとも」

俺の世界で、俺が読んだことのある小説とは若干内容が違うんだな。

という事は俺の考えも間違っているかもしれない。

しかし、それに似た話を見た事がある。

「俺の世界での物語で、転生というものを斡旋してくれる存在がいる」