軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

グレイプニルロープ

「ま、俺はそういった類の腐ったマネをするのは嫌いじゃないが、興が削がれるから人質を取るのはやめてやる。ありがたく思えよ」

少しは気が晴れるだろうが、そっちは後の楽しみだ。

それはそれで悪役臭いけどさ。

「それに、そろそろ俺も本気でやりたくなってきたしな」

やっぱり色々と便利だよな。

錬達相手じゃ本気で使えなかったからなぁ。

俺はフェンリルロッドの専用効果、グレイプニルロープを発動させる。

すると地面から鎖が現れ、ヴィッチにターゲットを指定する。

「やめ――」

フリをしてタクトを縛り上げる。

先程のダメージがまだ抜けないのか、簡単に縛り上げる事ができた。

「ぐあ……力が」

「ああ、その鎖は容易く外せると思うなよ」

グレイプニルロープの効果時間は使用者の魔力に影響を受ける。

俺の世界でも有名な神殺しの狼に纏わりついている鎖だ。

容易く千切れたら名折れだしな。

「くっ……それなら、これでどうだ!」

タクトが悔しげな表情のまま、俺から奪った盾を出して構える。

盾は、形状から察するにラースシールドだ。

俺に対して相当怒っていると考えるべきか。

ブルートオプファーとアイアンメイデンに注意しないとな。

マイナス効果が出るかはわからないが、撃たせれば多少はこちらが優位に立てるか?

いや、それよりも有無を言わせず攻撃を続けるのが無難だな。

「よし、じゃあ加減してやる。ちゃんと……受け止めろよ。じゃないと後ろの女共に当たるぞ?」

腰を抜かして動けなくなっている女共の方へ顔を向けてタクトは必死に守ると決意に満ちた目で俺を睨む。

そうそう、その顔が見たかったんだ。

アトラ、女王、ババア、村の連中、連合軍、他にも俺に関った沢山の命を奪った、お前の憎しみに染まるその顔がな。

「そう睨むなよ。まだまだお前を苦しめ足りないんだからさ」

チャージを終えた俺は、再度スキルを放った。

「フェンリルフォースⅤ!」

今度は反動を想定し、気を織り交ぜずに、耐えられるだろうと見越して放った。

杖の先端から極太のビームが縛っているタクトに向かって放たれる。

「ぐ……」

おお、さすがは俺から奪った盾だけはあるな。

タクトの後ろにいる女共は全くダメージを受けていないみたいだ。

しかし矢面に立っているタクトの方はどうかな?

「うぐううううう……」

「ああ、忘れていた。俺の持っている伝説の杖はフェンリルロッドと言ってな。専用効果に神への反逆と言う物があるんだ。その効果はな……」

これは初めて杖を手に入れて錬達と組み手をしている時に判明した事なのだが。

フォウルには俺の攻撃は加減している事もあってあんまりダメージが入らなかったんだけど錬達は別だった。

想定よりも痛いと言われてしまったのだ。

だから判明したのは神への反逆と言う効果は七星武器が四聖武器に攻撃すると、威力が高まると言う物だと見て良いだろう。

まあ普通に考えて四聖に対して性能の上がる七星の武器なんて、世界の法則からしてありえないんだけどな。

他に同じスキルの付いている武器はなかったし、杖の精霊が奪われた盾と戦う為に力を貸してくれているのかもしれない。

つまり今だけ特別みたいな感じなんだと思う。

実際フェンリルロッドは『特例武器』なんて項目だったしな。

「防御力が高い事を見越して盾にしたんだろうけど、その盾じゃ受けるダメージが高まるぞ?」

もちろん、盾自体の防御力が高いから俺だったら問題ないだろうがな。

5秒放って、止める。

するとそこには体中から煙を放って、ボロボロのタクトが息を切らして辛うじて立っていた。

フェンリルフォースの光線を受けてタクトは相当ダメージを受けているみたいだ。

「ぐ……う……」

「おいおい。まだ倒れるなよ。まだ俺の気が済んでいないし、フォウルが来るまで遊んでいなきゃいけないんだからさ」

なんかいじめている気分だ。

だが、何をしても良いような気がしてしょうがない。

鳳凰との戦いでアトラを失ったあの日から、俺はこの瞬間を待ち望んでいたんだからな。

「た、タクトを守るのよ! みんな!」

女共が我に返って真面目そうな女騎士の色違いっぽい奴の総指揮でライフルを構える。

またそれか、と言うかそれしかないのか?

と、思ったら儀式魔法も詠唱し始めている。

多少は考えているみたいだな。

俺単体じゃどう頑張っても阻止は出来ないのだ。

もちろん、こうなる事は予想済みだ。

もう随分と昔な気もするが、元康と初めて決闘をしたあの時に身をもって痛い程経験している。

この手の輩は自分達がピンチになると正々堂々だのと言っていた癖に、卑怯な攻撃といった、そういう類の攻撃を平然とやってのけるという事をな。

だから当然敵の取り巻きが攻撃や援護をしてくる事は考えてあった。

そもそもタクトが挑発に乗って来ただけで、少数対多数を前提に作戦は組んである。

幸い脅威度の高い連中はラフタリア達が相手をしてくれているし、俺は楽ができていい。

頼りになる仲間達様々って感じだな。

「撃てーーーーー!」

女共がライフルを俺に向けて引き金を引く。

銃声が辺りに轟いた。

が……俺はその中で考えてあった防御手段を展開させた。

瞬間と表現する程速い鉛玉が俺に向かって飛んでくる。

Lv250の連中が放ったライフル射撃だからな。

俺の世界のライフルにも負けない威力を発揮しているんだろう。

まあ……俺は自分の世界で本物の銃なんて見た事無いけどさ。

女共は俺に攻撃が命中すると確信しているだろう。

実際、焦りの混じった仲間を守ろうとする顔をしている。

こんな顔ができるのにどうしてわからないのか、とも思うが知った事ではないか。

その想いとやらを踏み躙らせてもらう。

俺を貫こうとする銃弾。

……その銃弾は全てタクトに命中した。

「ぐはぁ!」

「な……」

女共が絶句し、ライフルを落とした。

「な、なんで……」

「あーあ……なにやってんだよ。酷い奴等だな」

俺が笑みを浮かべながら煽る。

「なんでタクトに私達の放った弾が命中するのよ!?」

そう、俺は……アトラと一緒に編み出した技である『集』と『壁』を使って女共が放ったライフルの弾の軌道を弄って全てタクトにお見舞いしてやった。

本来、『集』は魔法攻撃のような形の無い攻撃に関して効果が高い。

実体弾は難しい。けれど、今の俺ならそれが出来る。

後は『壁』を駆使して跳弾しながらタクトに命中させた。

「どうだタクト。Lv250もある、自分の女共が放った鉛弾の味は?」

「よ、よくも! よくも私達にタクトを撃たせたな!」

女共が激昂しながら俺に向かって罵倒を繰り返している。

心地の良い空気だ。

……こんな事で良い気分になるとか、俺も変わったな。

昔の俺が元の世界で女共にギャーギャー罵声を浴びせられたら、半泣きしてもおかしくないだろうに。

強くなったともとれるが、良いのか悪いのか微妙だ。

「知らんな。むしろ多勢に無勢と言う卑怯な策略を行ったお前等が正義を語るとはどういう了見なんだろうな?」

俺の返答にハッと我に返ったように女は黙りこむ。

さすがに道理が通らない事を理解したのだろう。

「まあ俺は優しいから、そんなタクトに回復魔法を掛けてやろうじゃないか。ドライファ・ヒール」

リベレイションを掛けるのは面倒だ。

俺のヒールが効いたのかタクトが睨みつける力を強め、唇を噛みしめる。

「さて、まだまだ続くぞ。耐えきれよ」

と話している最中に上空から雷が降り注ぐ。

確か儀式魔法、裁きだったか。

Lv250にもなると合唱魔法程度の人数でも放てるんだな。

一応、裁きの威力を集中させて、タクトに当たらないようにするんだろうな。

「懲りないな」

半ば溜息混じりに、俺はミラーを上空に展開させる。

「やめ――」

お? 気付いた奴が数名いるな。

だがもう遅い。

「これでくたばれ!」

雷鳴が轟いて俺に向かって裁きが降り注ぐ。

ミラーに気を込めて反射角度を調整。

あ……さすがに威力が高いな。

ミラーが一枚破壊された。

だが、二枚目は無事、俺の予測通り、上手く反射してくれた。

「グハァ!」

「タクト!?」

「何をしているんだ! コイツには……私達の攻撃を全てタクトに命中させるだけの力が……あるみたいなんだ」

女共が絶句しながらボロボロになったタクトを見つめる。

中には駆け寄ろうとして止められている奴もいるな。

「ふむ……どうだ? お前の仲間が放った魔法の味は」

腐っても受ける義理は無い。

というか、俺は誰と戦ってんだ?

タクトと戦っているつもりが、いつのまにかタクトの取り巻きと戦っているぞ。

一応、タクトは盾を構えていたからあんまりダメージが入っていないみたいだけど、それでもこの程度か。