軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

挑発

さて、どうして俺達がここに居るのかと言うと、波に関しては樹と元康に任せて、他の奴らはゼルトブルの砂時計に登録している。

まあ、ゼルトブルの砂時計も国が管理しているけれど樹の闇ギルドの会員証と奴隷商とのコネでどうにかな。

それに勇者は割とフリーパスだったみたいだし。

ゼルトブルの勇者が既に殺されている事もあって、上層部はご立腹だったから喜んで協力してくれた。

あの国の傭兵ギルドも善意的に協力するし、こっちはアッサリ過ぎるほどだった。

勇者が殺されている、という事は傭兵の面子を潰されたのと同義だしな。

そこ等辺は傭兵の国の勇者って事だろう。

今は亡きゼルトブルの七星勇者に感謝だな。

金さえ積めば何でも請け負うらしいが、タクトの世界征服はその辺りに関してかなり雑だ。

こっちには奴隷商を始め、アクセサリー商までいるからな。

久々に詐欺商にもあったが、結構成功していたな。

ちなみに貴族のエレナ様(笑)は父親に連れられてクズと一緒に戦場だ。

本人は凄く嫌そうな顔をしていたが、活躍したら出世して金を稼げるぞ? と言ったら。

『出世したらあなたみたいに面倒を押し付けられるから嫌』

とか言われた。

好きで面倒な仕事である勇者や領主をやっていた訳じゃないけどな。

尚、一応エレナは商人としても国を援助していたから、戦争に勝てばお嫌いな面倒な仕事が増える訳だ。

アイツ等の事なんてどうでもいいか……。

どちらにしても所詮は武力支配の限界か……相手が喜んで死地へ向かわせるような器量がタクトには足りなかったんだな。

今では不快感があるが、俺がしたのはそう言う事だ。

村の連中も、今回の戦争に参加しているし、シルトヴェルトの連中だって参加している。

まあ、あっちはあっちで、シルドフリーデンの連中との因縁があるみたいだけど。

他にも色々と手を使っているらしい。

クズの動きにシルトヴェルトの幹部である爺さんは、複雑な表情で笑みを浮かべていたのが印象的だ。

『長年の宿敵であった英知の賢王が味方となる日が来るとは夢にも思わなかった。やはり我等は恐ろしい者を相手にしていたのだ』

とか感慨深げに呟いていたな。

ちなみに白兵戦にも色々と奇策を使っているそうだ。

後は、情報漏洩を危険視してクズ自身は話していなかった。

なんでも優秀な通信手段を用いて戦闘を行うとか。

俺達は敵本陣で大将を倒す事に意識を集中していれば良いそうだ。

尚、もしも想定よりも早くタクト達を倒せたら波の援軍に向かってくれ、とまで言われている。

敵をバカにしているのか、それとも俺にはわからない勝算でもあったのか。

それはクズの頭に聞いてくれ、としか言い様が無いな。

というか、アイツは創作物に出てくる天才軍師かっつーの。

ここまで話がうまくいくと、エスパーか何かかと突っ込みを入れたくなる。

「ならば今からでも、俺が戦場に行くまで」

「おっと、俺達を忘れてもらっては困るぞ?」

タクトは爪を取り出して今にも駆け出そうとしている。

コイツを止めて、尚且つ倒す為にここにいるんだしな。

そして、指揮系統が取れていない軍隊など無能の集まりでしかない。

あのクズにこれだけの事ができるとは……まあ、まだ戦場の方を見たわけじゃないから真相はわからんが。

「お前ら如きが、俺に勝てると思っているのか?」

「当たり前だろ? これはお前の人生が詰むイベント戦だからな。どこで選択肢を間違えたのか、戦いながら後悔するといい」

余裕を見せているようだが、その顔がどれだけ歪むのかを考えると楽しくなってきて腹も立たない。

こちらだって何の策も無しに来た訳じゃない。

十分な勝算を出してからここにいる。

「何を言っているんだ? お前等は俺を強くさせる為にワザワザ足を運んでくれたんだろう? 相手くらいはしてやるよ」

ガチャリとタクトの取り巻きの女共が銃器を向ける。

「で? また卑怯にも一斉射撃をして弱らせてから刈り取ると?」

クズの提案を述べてみる。

するとタクトはムッとした表情で眉を寄せる。

「知略と言えば聞こえは良いが卑怯その物だな」

ま、その場合も手段がない訳じゃない。

「……良いだろう。お前等程度、俺だけで十分だ。このLv350の俺だけで」

ふむ、挑発に乗った。

と言う事は正義感は人並みにあるようだな。

あるいはプライドが人一倍高いバカか。

宿敵を見つけたら、奴を倒すのは俺だ! とか言っていそうだ。

盾の勇者である俺はやりたくても出来ない話だったな。

今回は違うけどさ。

どちらにしてもクズの作戦、対タクト戦はフェイズ2へ移行した。

ここから先は俺自身の戦いで、クズは関与しない。

これで負けたらお笑いものだな。

「お前等? それこそ俺のセリフだな。俺達がお前等が行った様な卑劣な不意打ちをやり返さなかったのはなんでだと思う?」

「不意打ちなど俺には通用しない」

「どうだかな。どちらにしても、お前が積み上げてきた全てを破壊する為に、あえて正攻法で戦っているだけだ」

絶対に勝てる奥の手を使わないのは、ババアの遺志、変幻無双流の有用性と個人的な恨み。

それら全てを証明する為だ。

「俺達を逃がす為に戦った老婆がいただろう?」

「ああ、アイツか。雑魚の癖に、バカみたいに暴れるから殺すのに手間取ったぜ」

「……その人物がお前等に引導を渡す存在だ」

さて、戯言はこれぐらいにしておくか。

「偽勇者、お前なんて俺一人で十分だ」

「兄貴!?」

「すまんな、フォウル。我慢してくれ」

「だが!」

フォウルを無視して、俺が一歩前に出て杖を肩に乗せてタクトを挑発する。

「む……その杖は」

「ああ、お前が欲している七星武器の一つだぞ。現在は俺が所有者だ」

「ならば僥倖、盾を奪ったお前から武器をもう一つ、奪うまで」

「やれるものなら、やってみろ」

俺とタクトが睨みあう。

その最中、数名の女共が一歩前に出てタクトに進言する。

「タクト様」

「わらわ達も戦いたい相手がおるのじゃ」

それは前回の遭遇時、ラフタリアと敵対したキツネみたいな亜人の女、フォウルと敵対したアオタツ種の女、サディナに敵意を見せた魚っぽい女だ。

更に二人……トカゲみたいな女とフィーロみたいに背中に羽根の生えた女が立っている。

ガエリオンとフィーロをそれぞれ睨みつけている。

「トゥリナ、ネリシェン、シャテ、レールディア、それにアシェルもか。わかった。ただ見ているよりは良いだろう。実力の違いを見せつけてやるんだ。勝つのは本物の勇者と、その仲間達だと言う事を」

「何が本物ですか! こんな真似をして、ましてやヴィッチの言う事しか信じていない貴方が勇者であるはずありません!」

ラフタリアの叫びにキツネ女、トゥリナだったかが遮って答える。

「ラクーンのブスは心まで泥臭いようじゃの。長年生きる童が認めたタクトが勇者では無い? 目が腐っているようじゃ」

「お前はアトラの仇!」

「おっと、させないよハクコのガキ! お前が相手にしているのがどれだけ希少で素晴らしい人なのかを叩きこんでやる。盾の勇者なんて信仰しているからハクコは元より、シルトヴェルトは衰退したって事をね!」

「どけ! 雑魚!」

「フォウル」

「なんだ?」

「そいつを仕留めたら、コイツとの戦いに参加して良いぞ。それまでにコイツが倒れていなかったらな」

「……わかった。兄貴、すぐに行く! 任せたぞ!」

フォウルとアオタツ種……ネリシェンだったかが睨みあう。

俺の戦いにフォウルが入るのはまだ先だ。

「じゃあお姉さんと戦う相手は貴方かしら?」

「ルカ種の女……まだ生きていたのね。許さないわ!」

人魚みたいな女が、変身した。

なんかサメっぽい獣人だ。

「ノイド種とクシャ種の混血かしら? 私に何か恨みでもあるのかしらね?」

「白々しい! お前等ルカ種は私達をいつも馬鹿にしてきたのよ!」

「なんか知らないけど、お姉さんと戦いたいなら相手になるわ」

何やら種族範囲で恨みを抱いている奴がいるんだな。

知った事では無いがな。

サディナも身に覚えの無い因縁を付けられて大変そうだ。

というか、サディナってルカ種じゃないんじゃなかったっけ?

「竜帝の欠片を持つ者ね。ワザワザ私の元に戻ってくるなんてそんなに奪われたいようね」

「キュア!」

「ふ……脆弱で矮小の欠片が真の竜帝の恐ろしさを見せつけてくれる」

バキバキと音を立てて、トカゲみたいな女はドラゴンへと姿を変える。

凄く大きい。親ガエリオンよりも更に大きいだろうか。

プレッシャーが果てしない。

何だろうか、霊亀や鳳凰から感じる、ちりちりとした何かがガエリオンと敵対するドラゴンから感じる。

正直、タクト程度に錬を連れていく意味が俺には理解できなかった。

だが、クズは嫌な予感がすると入念に錬を俺と一緒に行かせるようにしていた。

それはこの為だったのかもしれない。

その隣に居た羽根の生えた女も姿を変える。

その姿はグリフィンだ。

「矮小な竜帝の欠片よ。タクトは女は生かせと言うけれど、お前は別」

「おっと、俺を忘れるなよ」

ガエリオンの隣で錬が剣を向けて構える。

「尚文、俺は誰と戦っていれば良い?」

「一番強そうなあのドラゴンだ。ガエリオンと一緒に戦え」

「わかった」

錬は頷くと大きくなったガエリオンに飛び乗った。

生前のガエリオンと殺し合いを演じた相手との共闘とは……因果なものだな。

なんて、親ガエリオンが言いそうだ。

「四聖勇者如きが我に勝てると思っているのか!」

「レールディア、勇者相手に勝てるか?」

「我を誰と心得るかタクト、我に任せれば何人たりとも恐るるに足らず」

そしてフィーロがグリフィンの女と対峙している。

「フィロリアル。地を這う我等の宿敵、女王の末裔の息の根を止めるのはグリフィンの私」

「わー、鳥さん? ネコさん? 今度はフィーロ、負けないよ」

相変わらず緊張感の無い顔をしているな。

一応フィーロよりLvが上のはずなんだが……余裕を見せているな。

「さて、じゃあ茶番を始めよう。結末が決まっている戦いを」

俺が告げるとタクトは挑発気味に答える。

「ああ! 俺達が勝つのが決まった戦いの始まりだ!」

それぞれの戦いが始まる。