軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本当の敵

「……さすがは盾の精霊が選んだ勇者だと、他の精霊様方は述べてますわ」

「はいはい。代わりに色々と教えろ」

俺は複数ある疑問を盾の精霊とやらに尋ねようと思っていた。

この世界はまるで俺に隠し事でもしているかの様に疑問だらけだからな。

「まずは……そうだな。どうして俺を召喚した?」

「それは尚文様が勇者としての資格があるからだそうですわ。結果論ですが『どんな苦境でも、血反吐を吐きながらも前に進める尚文様を選んだのは間違いでは無かった』と言っています」

四聖の精霊共が自己アピールをする。

その中で盾の精霊が、なんとなく偉そうに胸を張っているような気がした。

「血反吐って……誰の所為だと思ってんだ!」

まったく……。

にしても、勇者としての資格、ね。

言われて悪い気分にはならないが、何か裏があるんじゃないかと疑ってしまう俺が勇者として資格があるのか? と考えてしまうな。

「剣、槍、弓の精霊様が盾の精霊様に野次を飛ばしています『いつもお前ばかり第一候補を上手く召喚しやがって』だそうです」

「その言い方だと他の奴らはなんなんだ?」

第一候補ってなんだよ。

まるで受験みたいな物を想像するぞ。

「ふむふむ……大体が三番候補辺りを上下するそうです」

錬や元康、樹は……滑り止め?

これは本人達には話せないな。

というか、一番問題ありそうな俺が第一候補ってコイツ、頭大丈夫か?

いや、高望みせず妥協しているのかもしれない。

余計なお世話だが。

「第一候補を召喚出来たとしても、直ぐに死んでしまう事も多いそうです。だから一概に言えないと述べてますわ」

そういや、シルトヴェルトに行くと陰謀で殺される危険性があるんだったか?

期待はしてないが大きく伸びる勇者もいるとか、そう言うのもあるから候補は重要じゃないと見た方が良いな。

そういう意味では錬達はここまで生き延びた訳だから、結果的に悪い人材ではなかったのかもしれない。

「第三候補なのは勇者としての資質は高いそうですが、大きく問題も抱えているからだそうです」

「ああ、そう……それで?」

「報酬を払う時には当然の義務として死を免れさせるそうです」

まあ、アイツ等は召喚される前に死んでいる訳だから、それは必須条件だろう。

苦労してこの世界を救っても、元の世界に戻った直後に死んだらたまったもんじゃないもんな。

「その論理だと俺も大きな問題を抱えているように思えるんだがな」

俺の返答に盾の精霊はふよふよと上下している。

なんだろうか? 小馬鹿にされたような気がする。

「『他者を守る事が宿命の盾の精霊が、見間違えるはずもあるまい。ましてや妨害に屈するはずもない』だそうですよ」

妨害?

何か事の原因を知っているような言い方だ。

これも聞くべきだろうな。

「ご理解なさっていないようですが、盾の精霊様は尚文様こそと指名して盾の勇者になったのですわ。尚文様は誇って良いのです」

「それはわかった。他にも聞きたい事があるんだ。教えろ」

「何分、伝説の武器は役目以外ではそこまで詳しく理解している事も少ないそうですが、それでも良いですか? だそうですわ」

「ああ、それでいい。で、妨害とはなんだ?」

「伝説の武器が本来、抗うべき敵ですわ」

「それは誰だ?」

「そこまではわからないそうです。少なくとも世界の外側から世界を滅ぼそうとする者、だそうです」

世界の外側から世界を滅ぼそうとする者。

何かの陰謀の全貌を聞いている様な気分だ。

だが、それは一体何者だ?

最初に浮かんでくるのは波から現れた女、グラスだ。

「それは……グラス、波からやってきた人型の敵か?」

盾の精霊は横に振れる。

「違うそうです。あれも私達と同じく世界を守る為に破壊しにやって来た、力を持つ者、だそうですわ」

アトラはグラスの事は知らないはずだ。

だが、盾の精霊に教わったのかもしれない。

それにしても、世界を守る為の、力を持つ者、か。

戦い辛い情報を聞いてしまったな。

「次だ。波とは……なんだ?」

「波とは――――……」

な……アトラが翻訳する盾の精霊の言葉に俺は絶句する。

「そ、それは本当の事なのか? 何かの間違いだとか、そういう事じゃないのか?」

「間違いないそうです」

なんて事なんだよ。

通りで……四聖の伝説……いや、四聖とは人が呼んだ呼び名でしか無いじゃないか。

おそらく、女王が考えた可能性はこれで合っている。

そこで俺はグラスとラフタリアの会話を思い出す。

グラス……敵の割に随分と律儀な奴だった。

それはこういう理由があったって事か。

『仲間? 残念だが違うな』

『どちらにしろ、あなたのやっていることは非道なものです』

『非道で結構、コイツ等はそれよりも酷い真似をしてきたんでね。強い恨みを持っているんだよ』

『ごしゅじんさま悪人みたいー』

『うるさい』

『敵に正論をぶつけられて返す言葉もありません……』

何故、ラフタリアはグラスの言葉を理解したんだ?

俺が理解できるのは、盾の力だと判明している。

だが、ラフタリアは違う。

異世界でも言語が違う事は証明されている。

シルトヴェルトの言葉をラフタリアはわからない。

なのにラフタリアはグラスと会話が成立していた。

つまり、盾の精霊とやらが言っている事は間違っていない。

……何故このような現象が起こっているんだ?

これは、先ほどの妨害をしている存在が関わってくるのだろう。

「今回の敵も尖兵でしかありませんわ。歴代の勇者様方、この世界の強き者が残した技術を配下の者を派遣して後に残らない様、画策しているのでしょう。それはもう途方も無い時間、何年も何十年も何百年も掛けて……」

やはりそうか。

この世界で天才は衰退と発展の象徴と言うが、転生によって召喚された異世界人を操って、波に対抗できる手段の手掛かりを潰して回っていたんだ。

不自然だとは思っていたんだ。

霊亀や鳳凰との戦い方、Lv上限突破の方法、変幻無双流の失伝。

他にも様々な情報が、まるで虫食いの様に消されていた。

今考えれば錬、元康、樹が最初から持っていた情報が役に立たなかった事も、全てはそれに繋がる。

つまり、俺達の本当の『敵』は……。

「次だ。俺は盾を奪われてしまった。どうすれば良い?」

「問題はありませんわ。あの程度の力では盾の表層部分しか奪える事はありませんわ」

「そうか……」

ふよふよと盾の精霊とやらが自己主張する。

「最初の一撃で少しだけ動きを止めましたが、既に望めば……尚文様の覚悟に盾の精霊様は応じますわ。もうあの程度の攻撃でやられる事はありません。むしろあのような雑魚、相手に成りませんわ」

「そうは言ってもなー……」

ヒュンと盾の精霊の前に別の精霊がやって来て自己主張する。

「尚文様、尚文様はあの偽者に対して、直接手を下したいでしょうか?」

「まあ、出来るのならな」

「この精霊様が尚文様に一時的に力を貸したいと述べております。その場合、盾の精霊様は再度呼び出すまで停止する事が可能です」

「つまり……俺が盾以外の武器で戦える?」

「ええ、好きな時に、盾をお呼びください。それまでは尚文様は他の七星勇者様の許可さえあれば、戦えるでしょう」

「ただ、完全に復活するにはあの雑魚に奪われた分は取り戻すのがよろしいかと思います」

一際、強く光る八つの光の玉の一つが俺の周りを飛ぶ。

この精霊が何の武器であるのか、周りを飛んで力を貸してくれている間に理解する。

そしてあの鞭の勇者……じゃないな。

世界の異物を倒す方法も、伝わってくる。

なるほど、正攻法での倒し方はこうするのか。

確かにこれなら勝てる。

いや、アトラを失って視界が狭まっていたからこそ勝てなかったんだ。

今なら、勝てる。

「『どうか、自分の持ち主を立ち直らせてほしい』と、言っています」

「……わかった。俺なりにしか励ましは出来ないぞ。結果は期待するなよ」

「四聖と、七星ではありませんわね。囚われし五つの眷属を、あのような雑魚から解き放ってください」

「わかっている。その方法も理解した。最後は……俺が異世界に飛んだ時に読んでいた四聖武器書とは……なんだ?」

「僅かな未来予測を記した書物であり、異世界の扉だそうですわ。大外れをしてしまったそうです」

ふわりとアトラは精霊達と浮かび上がって微笑む。

「いつでも私は尚文様と共に居ますわ」

「アトラ……俺はお前を守れなかった」

「大丈夫ですわ。私は常に、尚文様と共に居ます。お兄様と、ラフタリアさんと、村の方達を大切にしていてください」

「ああ」

俺はアトラに手を伸ばし……アトラと手を絡ませる。

その肌に触れ、悲しくも無いのに涙する。

「また会えるか?」

「いつも共に居ますわ」

「……そうだな」

スーッとアトラは姿を光に変えて消えて行った。

それを見届け、俺の意識は現実へと覚醒して行く――