軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

迷走

フィーロ達を一夜休ませてから俺達はフォーブレイの方へ行く事にした。

今は隣国の宿で休んでいる。ラフタリア達は町の銭湯に入浴に出かけた。

明日にはフォーブレイで七星勇者と対面か?

一人しかいないのかもしれないが、抗議の為にも行くべきだ。

フォーブレイの国王は俺の事を気に入っているみたいだし、七星勇者を強制集合させられるくらいの権力は持っているだろうしな。

女王が早馬の伝達兵を隣国から出させたらしいし、俺達が到着する時には集まっているだろう。

俺の達ての願いだと念を押して伝達させるそうだ。

毎度毎度気持ち悪い映像水晶を送ってくるのだから、俺の頼みを断りはしないはずだ。

しかし……本当に犯人は誰なんだ?

その一人で戦った七星勇者なら他の勇者の事を知っているかもしれない。

グラスとかが暗躍している可能性も捨てきれないが、連合軍を全滅させようと画策するような奴を許す訳にはいかない。

とはいえ……フィーロや他の足代わりの連中のスタミナも考えないといけない。

一晩の休息とはいえ、時間が惜しくてイライラしてくるような気がする。

それとは別にもう一つの感情が俺を支配してくるのを感じ、部屋で一人佇んでいると、落ち込んでしまう。

こんな真似をした奴に復讐する事だけを考えたいと言う俺と、喪失で涙する俺が同居しているのだろう。

「どうした兄貴?」

フォウルが買い物を終えて部屋に帰ってきた。

……フォウルってアトラの兄なんだよな。

前にも相部屋で寝た訳だけど。

「フォウル」

「なんだ?」

「もう寝るか?」

「……そうだな、少し疲れたから仮眠を取るか」

「そうか。所でフォウル、俺の事は好きか?」

「はぁ!?」

フォウルがなんかおかしな声を上げながら俺を凝視する。

……好きな訳ないか。

大事な妹を守れなかった奴なんだし。

「……嫌いでは無い。アトラの愛した奴を俺は、憎まないと決めた」

「じゃあ……そこで寝ろ」

俺はベッドを指差す。

「まったく、なんなんだよ」

フォウルはどさりとおおざっぱに横になった。

俺も徐にフォウルが寝るベッドに腰掛け、背中に触れる。

あ、なんとなくアトラと匂いが似ているような……気がする。

「ヒィ!」

フォウルが飛び起きた。

「い、いきなり何をするんだ」

「添い寝してやろうと思って」

なんとなくフォウルにアトラの面影を感じる。

出来なかった事を取り戻せる気がした。

「お前! ちょっと待ってろ!」

と、フォウルは青い顔をして部屋を出て行ってしまった。

それから少しして。

「ナオフミちゃーん?」

「……どうした?」

サディナが先に帰ってきたのか、酒瓶を片手に持って部屋に入ってくる。

「フォウルちゃんから聞いたわよー……これでも飲んで少し元気を出しなさいな」

「悪いが……酒じゃ酔わないんでな」

「そう言えばそうだったわねー」

サディナなりに俺を励まそうとしてくれているんだろうな。

人が落ち込んだ時は酒などで慰める、というのはどこの世界でも変わらないみたいだ。

確かに酔えるとしたら、今は酒を飲みたい様な気分だったかもしれない。

「なんならお姉さんと楽しい事でもする?」

「……そうだな」

アトラは俺の事を好きな奴に応えて欲しいと言っていた……。

ならば、前々から俺に好意を寄せていたサディナに応えるべきだ。

「ナオフミちゃん?」

「サディナ。お前は俺の事が好きか?」

「あらやだ。お姉さんにちょっと恥ずかしい事を聞いてくるのね。そうね。ナオフミちゃんの事は好きよーキャ!」

くねくねとしながらサディナは恥ずかしそうに答える。

「そうか……じゃあ人型になってふんどしを脱いでそこで横になれ」

「……ナオフミちゃん?」

サディナが首を傾げながらベッドに座っている。

「ほら、人型」

「あ、はい」

ボフンとサディナは変身を解いて亜人の姿になる。

俺はズボンを下ろし、サディナの肩を掴んでからふんどしを外し、そのまま――。

「ちょっとナオフミちゃん。ストップ!」

軽く突き飛ばされてしまった。

「ナオフミちゃん。今、何をしようとしたのかしら?」

「だから、お前が望んだ通りにしようとしたのだが?」

「……ちょっとナオフミちゃん。そこに座って」

「床に座ったら出来ないぞ?」

「良いから座って!」

なんなんだ?

サディナの機嫌が凄く悪くなっている気がする。

「先に聞くけど、雰囲気とか前座とか色々とすっ飛ばしてしようとしたわね。ナオフミちゃんは知らないのかしら?」

「知っているが?」

これでもエロゲーとか色々と手を出していた。

知らないはずもない。

ぶっちゃけ、サディナでも知らないような凄い物も沢山知っている。

……自慢にはならないが。

「その割には作業的に私とやろうとしたわよね。ラフタリアちゃんが怒るわよ」

「……かもしれないな。でもアトラが望んだら応えて欲しいって言ってたから」

「あのねナオフミちゃん。みんなナオフミちゃんの事が大好きよ。だけどお姉さんはそう言うのはどうかと思うのよ」

「……そうなのか?」

珍しく真面目にサディナが俺に答えてくれた。

さすがのサディナも俺の行動に、注意してくれていたんだな、と少し冷静になって理解した。

「ナオフミちゃん。私もね。ナオフミちゃんが望んで楽しく愛し合う、もしくは悲しくて慰めて欲しいのなら女として応えるわ。だけど、今のナオフミちゃんは、ただ子供を作らせようとしているだけのように見えるわ。ラフタリアちゃんに手を出さないのはお姉さんとの約束なんでしょうけど」

「えっと……ラフタリアには待ってくれと言っているだけだけど……」

「そう……そこは覚悟が出来たみたいだし良いわ。でも、お姉さん相手とは違うでしょ? フォウルちゃんにもなんかしようとしたみたいだし、わかってる?」

「たぶん」

「ナオフミちゃん。今の貴方は、ただ私に子供を作らせようとしているだけ、それは何か違うと思わない?」

「……違うのか? フォウルはー……まあ」

アトラが望んだのって……違うのか?

盾の勇者の子供とかそう言うのを……望んでいた訳じゃない?

なんとなく、わかる気もする。

男色の趣味は無いけど、フォウルはそう言うケがありそうな気がしたので、やろうとしたのだけど。

「あのね。ナオフミちゃん」

サディナが笑顔で、なんか俺にプレッシャーを掛けながら両肩を掴んで諭す。

ここはラフタリアと似ている。

血の繋がりは無いけど、姉と慕うだけの事はあるな。

「子供が出来てしまうかもしれないのは愛を育みあった結果であって、目的では無いのよ。経過が重要なの。ナオフミちゃんと愛し合って、楽しいと思いたいの。もしくは慰めて欲しいならね。その先に子供が出来るかもしれないと言う事なの」

「ふむ……言われてみればそうかもしれない」

「今のナオフミちゃんはね。自分は嫌でも、私が良ければそれで良いでしょ?」

「……うん」

「正直に答えたわね……アトラちゃんも、そんな事は望んでいないと私は思うのよ。だから落ちついて」

サディナの言葉に少し冷静になる。

敵が見つからないから悲しみだけが先走って、後悔しないように迷走してしまった。

サディナが望むのなら……と勝手に思い込んでしまった。

……そうだよな。サディナだって一応は人なんだ。俺がイヤだと思った様に、こう言うのは心の準備とか本人が望んでいなきゃダメだ。

強姦はダメなのは承知だ。

だから言質は取ったけど、普段の俺とは違うから拒む。本当の俺は望んではいない。

じゃあ……どうしたら……良いんだ?

「責任を持つと言うのはわかるけど、今のナオフミちゃんを受け入れたら、きっと未来のナオフミちゃんが後悔するわ。だからお姉さんは、今回は断るわ」

「……そうか」

「ラフタリアちゃんや他の子達にも注意しておくから、もう少し考えて。お姉さんも不謹慎な事を言ったのを反省するわ」

「……」

サディナの注意に、考えがまとまらなくなってしまった。

今の俺はダメ……と言うのはよくわかった。

俺の将来を考えてサディナは注意している。

後悔しないように、俺を好いている奴に手を出してはいけない。

未来の俺が後悔する。

やらずに後悔した俺に酷な事を言う。

もっと、もっとアトラを幸せにさせる事が出来たのかもしれないと言うのに。

やらずに後悔するよりも、やって後悔した方が……良いと思ったのにダメなのか。

「ナオフミちゃん。元気を出せと言うのは今は無理かもしれないわ。だけど、立ち直って……それで尚、アトラちゃんの意図を汲み取って生きる覚悟が出来たら、私やラフタリアちゃんや村の子達……フォウルちゃんは応えるわ。今のナオフミちゃんの覚悟ではダメ。私はナオフミちゃんの事が好きだから、そんな献身で抱かれるなんて、女として恥よ」

俺の頬を優しく撫でてサディナは部屋を出て行った。

……俺は、今、何処にいるのだろうか?

責任を取る……覚悟……。

ぐるぐると考えが巡って行く。

俺は……これからどうしたいのだろうか?

復讐するべき相手を仕留め、波に挑んで世界が平和になった時、どうする?

俺は、この世界に骨を埋めるつもりなんて無い。

その考えは今でも変わらない。

多分、サディナが注意したのはこの事なのだ。

中途半端な覚悟で、しかも相手を孕ませるだけにしたら……ダメだよなぁ。しかも俺自身は望んでいない。

それで喜ぶ連中とは、サディナや村の連中は違うと言いたいんだ。

俺を種馬のように扱いたくないと拒んでくれているのだと思う。

俺を想ってくれているのだと心に染みて、悲しくなる。

さっきはどうかしていたが、フォウルもさすがに男色は無いだろうし……。

俺じゃアトラの代わりにはなれない。

まあ、歪んだ兄妹愛は無いと思いたいけどさ。

「……そう、だよな」

村の連中を身勝手に区分しちゃダメだよな。

俺の事を信じてくれている、あいつ等に俺は応えたい。

だけどあいつ等の人生を背負う覚悟が必要なんだ。

今、アトラは俺の盾として力を貸してくれている。

じゃあ、俺が元の世界に戻った時は……どうなるんだ?

わからないけど、それは別れに……なるのかもしれない。

元の世界に帰りたいと言う想いと、みんなと一緒に、みんなの想いに応えて在留する想いが交差する。

答えが出ないまま、悶々とその日の夜は過ぎて行った。