軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

一長一短

さて、次にする事は……。

そう考えているとキールがワシを小突いた。

「なんだ?」

「あのな兄ちゃん。兄ちゃんは俺も強くしてくれるんだろ?」

「ん? まあ望めばやってやろうじゃないか。他に立候補者が居るのならいくらでもしてやるぞ」

今は二番塔の守護に意識を集中せねばなるまい。

戦力強化は急務を要する。

キールが強くなりたいというのなら、それを叶える事も容易い。

「じゃあ次は俺を強くしてくれよ! その分戦うからさ!」

「……キールちゃん。あんまりナオフミちゃん頼りになるのはお姉さん感心しないわよ」

「良いんだよサディナ姉ちゃん。俺はもっと強くなりたいんだ」

「今のナオフミちゃんは少し変わってるから、ちゃんと考えてからするべきだとお姉さん思うな?」

「サディナ姉ちゃん何言ってんだ? 兄ちゃん、言葉使いがおかしいだけだぜ? 現に病気の子を助けたし、今までと何も変わらねーじゃん! 兄ちゃんは兄ちゃんなんだよ」

「まあそうなんだけどねー」

「ともかく兄ちゃん! 俺を強くしてくれ!」

「ふむ……わかった」

「キールちゃん……」

キールはLvこそそれなりに高いがラフタリア達の様に飛びぬけて強いと言う程でも無い。

気の概念の習得も遅れていて、裏切った連中に一歩以上出遅れている。

ワシはラトの魔物に施した物と同じようにキールを培養槽のある場所に立たせ蓋をさせてから技能を発動させる。

「お前はどんな様に改造してほしいのだ」

「えっとなー」

キールが干渉される力を認識し、なりたい姿をワシに伝えてくる。

だが……。

「この改造はキール、亜人や獣人の範疇から逸脱する物であるがそれでも良いのか?」

「うん! 俺はこうなりたい」

「ふむ……」

出来ない範囲では無い。

キールは健康その物で、地味に改造に耐える潜在スペックを備えている。

だが、この先を行くと獣人では無く魔物のカテゴリーに足を踏み入れてしまう次元だ。

一応は……元に戻れるように弄っておく。

本来は難しいが、他ならぬキールの頼みだ。やって出来ない事は無い。

「致命的な弱点が出来る事を覚悟しろ」

「弱点?」

キールが元に戻れる範囲での改造ではそれが限界だ。

使い捨てと割り切れば弱点を無くして強力な魔物を作る事も可能だが、それでは意味がない。

決してキールや我が配下を犠牲にして、勝利を得るつもりは無い。

「この改造だと苦手な物が出来る。それを攻められたら容易く負けてしまうと言う意味だ」

「そうなのか?」

「ああ、それでも……やるか?」

改造をしてみないと何が弱点になるか分からない。

それでも改造結果画面に何が苦手になるかを判断できる。

「うん! 兄ちゃん! ビシッとやってくれ!」

「覚悟はあるみたいだな」

「もう……俺は奪われるだけの存在にはならない! 兄ちゃんの力で……生まれ変わるんだ!」

「わかった」

「ナオフミちゃん。あんまり取り返しのつかない事は」

サディナの気持ちがわからない程ワシも愚かでは無い。

キールはキールを維持したまま強く生まれ変わるのだ。

「問題は無い。新たな世界を作る時、キールもその一員として迎え入れねばならないのだ。捨て石にするような真似をワシがするはずもなかろう」

ワシは技能の発動を指示し、キールを強く作りかえる。

培養槽に培養液が満ち溢れ、ボコボコと泡立ってキールの姿が見えなくなる。

「改造には少しの時間が掛る。キールよ、生まれ変わるのだ」

やがて改造を終えた後、キールは培養槽から出てくる。

「これが改造の結果なのか?」

「ああ」

キールは自分の体を何度も確認する。

その姿に変化は無い。

「全然変わって無いぞ兄ちゃん!」

「人で無くなってはワシが困る。変身する技能にもう一段階追加した。その姿になればキールはもっと強くなる弱点は――」

ワシはキールに自らの弱点を教える。

この問題を偽者や勇者に知られたら、キールは即座に敗北してしまうだろう。

「と言う訳でフィーロと一緒に新たな力を試してくるが良い」

「うん! フィーロちゃーん! 俺の新しい力を見てくれよー!」

と、キールは元気よく走って行った。

「……じゃあお姉さんはキールちゃんやフィーロちゃん達の様子を見た後、見回りに行ってくるわねー」

「ああ、行って来い」

こうしてサディナを見送ってからワシは新たなラフタリアの創造を進めるのだった。

第二塔を守る結界のブーストが切れ、偽者達がガエリオンに乗ってやってくる。

ん? 小舟で村の奴隷共も来ているようだな。

だが、今回はそう易々と破壊されたりなどしない。

元康を筆頭に、こっちの戦闘組を大量に警護に向かわせた。

塔へ侵入した連中の数よりこっちの方が上だ。村の時とは逆に有利!

遠隔でワシは様子を見る。何かあったら指示を出そうじゃないか。

お? 偽者のパーティー内にラトが居るではないか。

ラトは非戦闘員だったはずだ。なんで奴が居るんだ?

「正面から突破は難しそうですね」

「ああ、本気を出せば出来なくはないが尚文の仲間達だし、下手に怪我させたら命にかかわる」

「……厄介な事です」

偽者と錬が愚痴っているな。

そう思うのならワシの邪魔をしなけば良いものを……。

だが、ここでワシが監視出来ていると言う事は情報が筒抜けであると知れ。

「とにかく、強行突破で早期解決を狙います! 皆さん行きましょう!」

偽者の掛け声に勇者とリーシア、ラトその他が頷いて。

前回もそんな風に入ってきたのだろう。

最上階に中枢部があると思うか?

残念だが、塔ごとに間取りが違っているんだ。第一塔は最上階だったがな。

第二塔は真ん中辺りに結界の発生装置がある。

……何処にあるか光るからもろバレか。

「来ましたね!」

元康が侵入した偽者達の前に立ちはだかる。

「元康は俺が足止めする! お前達は先に行くんだ!」

「く……」

錬が元康の前に出て偽者達を先へ行かせる。

さすがに元康でも同じ勇者である錬とは実質互角、後は三匹がどれだけ役に立つかだ。

「やるの? ちょっと面倒になってきたよね」

「もーくんがやる気なんだから私達もある程度やらないとダメよ」

「うん。じゃないと、もとやすさんが困るし」

そんなやる気の無い会話をしている三匹の前に浮かぶ生物。

「キュア!」

ガエリオンと谷子が三匹の相手をするようだ。

ああ、ちなみに塔の結界の所為で逃亡は不可能だぞ。

「元康! こんな茶番はやめて尚文を元に戻すんだ!」

錬が元康に向けて流星剣を放つ。

元康は槍を前に構えて受け流し、そのまま乱れ突きを放った。

「お義父さんを元に戻す? 何を言うのです。フィーロたんはあのお義父さんを好いているではありませんか。なら私がする事はただ一つ、フィーロたんの為にお義父さんを守る事のみ!」

「やめろ! そんな事をして、正気に戻った時に尚文がどんな事を言うか分からないのか! お前は絶対怒られる!」

こっちはあまり見る必要はなさそうだな。

侵入を許してしまった偽者を追おう。

監視カメラのチャンネルを弄って偽者を探す。

いた!

「ラフー!」

「ラフ!」

「まったく、次から次へと!」

くっ! 偽者の奴、せっかく作ったラフ種達を切り捨てながら進んで行っている。

さすがに今のラフ種では勇者や偽者相手では手も足も出ないか。

サディナは何をしているんだ!?

と思って探すと、二手に別れたのか侵入した裏切り者の奴隷の相手をしている。

ラフ種に囲まれて、今回も魔法を放てず苦戦をしているな。

しかもかなりの人数に突破されてしまった。

事前に打ち合わせをしなかったのが敗因だな。

ラフ種とサディナは別に戦わせるしかないだろう。

あ、防衛ラインが突破されてしまった。

後は結界を維持する装置がある部屋のみ。

こっちはアトラとフィーロ、フォウルが守っている。

「フィーロ!」

「お姉ちゃん、また来たの? 今度は壊させないよ」

「そうですわ、ラフタリアさん。諦めてお帰り下さい」

「俺は……俺はアトラが怪我しない為に……戦う!」

フォウルもやる気を出してくれているようだな。

やはりアトラとペアで戦わせる方がやる気がでるようだ。

「いい加減目を覚ましなさい!」

「目を覚ますのはお姉ちゃんの方だよ。だってごしゅじんさまとっても楽しそうだよ?」

「アレはナオフミ様ではありません! フィーロ、貴方はラースシールドを使った時、暴走しないように力を貸していたと前にナオフミ様は私におっしゃっていました。なのになぜ今回はナオフミ様を困らせるような真似をするんですか!」

そんな事もあったな。

憤怒の暴走を止めるには本物のラフタリアかフィーロがいなくてはならない。

本能の塊であるフィーロが味方なのだ。

つまり、今のワシは暴走していない。

ワシが間違っている道理が無い。

「それは私が説明しますわ。その力はフィーロちゃんに取って、尚文様の本質を歪めてしまう様に見えたのでしょう。ですが今回は違います。尚文様の本質に大きな違いはありません。ですから私もフィーロちゃんも、尚文様に付き従っているのです」

「うん! 今のごしゅじんさまね。とっても楽しそうでー……フィーロや皆を大事にしてくれるの。フィーロも楽しいから今のごしゅじんさまも好きだよ」

「はい。私達と違う世界に生きていた尚文様の心を、真に理解する事は誰にもできないのです。むしろ使う言葉が変わっただけで尚文様を否定するだなんて……私にはできません」

「それは私に対する当て付けですか? ナオフミ様が正気に戻った時、どれだけ嘆くかわかっているのですか?」

「だとしても、私は尚文様の敵にはなりません。例え何があろうとも」

「フィーロ、後でナオフミ様に叱ってもらいますからね!」

「ごしゅじんさまはごしゅじんさまだよ? お姉ちゃんがいないって沢山泣いてたのに、なんでお姉ちゃんはわかってくれないの?」

「な、ナオフミ様が……?」

一瞬偽者が迷うかの様に困った顔をした。

しかしすぐに元の表情に戻る。

「……メルティちゃんも怒ってますよ!」

「メルちゃんもごしゅじんさまに会えば考えが変わると思うよ?」

怒りも最高潮に達したのか偽者が剣を強く握って構える。

全体にはオーラを纏っており、女騎士の様に変幻無双流を使える事を示している。

どこで習得したのか、偽者は変幻無双流まで使えるのか。

「どうやら話し合いでは解決できない様ですね」

「話が早いですわ。いずれこうなると分かっていました」

「たぶん今のごしゅじんさまの方が楽しいよ? だっていっぱい笑ってるもん! フィーロはごしゅじんさまの笑顔を守るって決めたの」

殺気に反応してフィーロ、アトラ、フォウルも答える。

「弓の勇者さん、リーシアさん、それにラトさん。分かってますね?」

「はい」

「ふぇえ……フィーロちゃん達と本当に戦う事態になっちゃいました」

「ええ、わかっているわ!」

それぞれが見合った直後、戦闘が始まった。

アトラとフィーロがそれぞれ、偽者に向けて攻撃をする。

しかし、樹とリーシアが遠距離から妨害……のはずがフォウルに叩き落とされる。

「邪魔はさせない」

「リーシアさん、どうしましょうか? 本気で放てばフォウルさんに致命傷を与えられると思いますが」

「ふぇえ! 絶対ダメです!」

「幻影剣!」

ゆらぁっと偽者がラフタリアの真似をして姿を掻き消す。

しかし、それは無意味だ。

「無駄です!」

アトラは目で物を追っている訳じゃない。気を察知して追い掛ける事に特化しているんだ。

姿をかき消した偽者を追い掛けて突き出す。

フィーロはその点、野生の勘でやろうとするが、偽者の放つ魔法は野生の勘も鈍らせるようだ。

若干アトラより出遅れている。

「く……無双活性!」

「そんなのこっちも出来るよー」

「ええ、フィーロちゃん! やりますよ!」

アトラとフィーロは偽者が使った無双活性に合わせて無双活性を放つ。

二人掛かりでないと戦えないとは……とは思うが時々、フォウルの迎撃をすり抜けて樹とリーシアの援護がアトラ達を邪魔するからしょうがない。

決定打に欠けるな。要注意事項だ。