軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

復興祭

勇者達で会議をしてからしばらく経った。

最近では錬も呪いの影響が薄まり、運が悪い事や経験値が入らないと言う問題は気にならなくなってきている。

俺も呪いの所為で減少していたステータスの低下も、殆ど完治したと言っても差し支えない。

波まで後一ヶ月か……。

イミアの叔父が中々の名工で、みんなの武器や防具を色々と作って貰っている。

錬は弟子兼素材調達班として、国中を回って集めている感じだ。

今じゃ村の連中も相当強くなってきている。ババアも村で稽古をして奴隷共を少しでも強くしようとしてくれている。

いい加減、そろそろ俺自身のLvを上げる頃合いか? 長期遠征で強い魔物の生息する地域にでも行くか。

とか考えている時だった。

「復興祭?」

メルティが書類を持って料理中の俺の所にやってきた。

「そうよ」

「何をするんだ?」

「一応はこの領地が完全に復興した事へのお祝い。後は三勇教の洗脳事件が解決した事への労いかしらね」

「へー……そんな事をする余裕があるのか?」

鳳凰の封印が解けるのが後一ヶ月後に迫っているのに祭りとか。

とは思うけど、こう言う世の中だから、楽しめる時に楽しみたいとか思っているのかもしれない。

「勝手にやればいいんじゃないか?」

「良いの? かなりの収益が期待できるのだけど?」

「幾らだ?」

「見積もりだけで、こんなもんよ」

メルティが金額を俺に提示する。

それはもうべらぼうな金額だった。

「なんでこんなに?」

「色々な催し物をするのと賭け事の元締めをこっちでやるからよ」

賭け事か。

そういうのは好きだぞ。

無論、俺はギャンブルが嫌いだがな。

誰かにギャンブルをさせるのは好きだ。

しかし問題が無い訳じゃない。

「危険じゃないのか?」

「そっちは問題ないわ。コロシアムとは別のフィロリアルレースとかを予定してるし、ナオフミの所には駿羽が多いから」

フィロリアル共か。

無駄飯食らいな気もするし、こういう機会に稼がせてもらうのも良いとは思う。

「なんかそう言う組合から勝負を挑まれてるのよ。儲けは確実だわ」

「……ふむ。わかった」

「他にフィーロちゃんの歌唱ショーを予定してるの」

「歌唱?」

「ええ、なんだかんだでフィーロちゃん。酒場で歌ってた事があるみたいなの。それが口コミで有名になってね。詩人とよく歌っていたら、声を掛けられてね」

確かにフィーロは歌が上手いよな。

詩人と全く同じに歌う事も出来るし、音感もあってリズムもある。

踊るのも好きで、人型の時は美少女だ。

さながら……。

「ファンも多いみたいなのよ。この前、フィーロちゃんが町の酒場で歌った時なんて酒場の中に人が入りきらないくらいだったし」

「アイドルか」

「今じゃフィーロちゃん目当てに町に来る人もいるみたいよ。画家からモデルの依頼が殺到してるけど、描かせる? 良い値で取引されると思うわ」

元康がどんな顔をするか楽しみではある。

フィーロを食いものにしているような感じで切れるか?

むしろ、アイツの財布を空にする勢いで売り払うのも手か。

「この際、撮影会でも開いて水晶一個金貨1枚で売るのも手よね」

「ふむ、良いんじゃないか?」

金はあって困る物じゃない。

最近は領地からの税金も少しずつ徴収してある程度手に入っている。

ま、イミアの叔父の為に作らせた工房の代金、その他武器防具作成の雑費とか、ラトの研究所の設備、薬品の調達でかなり使ってしまっているけどさ。

しかしメルティの奴、親友で金稼ぎか……。

自覚は無さそうだが、あの親の血をしっかり受け継いでいる気がする。

いや、フィーロが輝く場所を作る……プロデューサーみたいに考えれば親友で優秀とも言えるのか。

「わかったわ。とはいえ既に商人組合が準備を進めているから三日後には開催されるわ」

「俺も参加した方が良いのか?」

「領主なんだから当たり前じゃない。まあ開始の合図さえしてくれればこっちが勝手にやるけどね」

「わかった。儲けの出る奴だけ許可を出せよ」

そんなこんなで三日後。

「ではこれより復興祭を始めます」

町の広場で盛大に開催式をして、復興祭とやらは始まった。

隣町は現在、拡張がかなり進み、メルロマルクの城下町の次に活気のある大きな町へと変貌している。

僅か二ヶ月程度でよくもまあ成長して行ったと感心する物だ。

三勇教の洗脳事件で結構痛手を受けたはずだと言うのに……。

まあ、キャンピングプラントで建てた家がかなりの数を占めているから、仮設住宅で建てられた町なんだけどさ。

町の連中が喝采をして開始の合図に答える。

あんまり良い話を聞かない国の現状だ。

こう言う催し物をするのはガス抜きの意味でも良いのかもしれない。

「じゃあフィーロ歌うねー!」

メルティの合図に頷き、町の広場に設けられた特設ステージに今回のイベント用に特別に用意された衣装を着たフィーロが駆けあがっていく。

「「「おー!」」」

先ほどの喝采よりも更に大きな声が辺りに木霊する。

見渡すと俺のよく知るアイドルの追っかけ見たいな連中がチラホラ所じゃない数だ。

おいおい……どんだけファンが居るんだよ。

後ろに居るのは詩人か?

楽器を沢山持った詩人がフィーロの歌に合わせて奏でる。

普通にハープみたいな優しい音なのに、まるでライブみたいな雰囲気だ。

「L・O・V・Eラブミー! フィーロたん!」

……そのファン共の後方で元康が旗を振っている。

気持ち悪いなぁ。

お、元康と一緒にいるのはクーとマリンとみどりだったか。

三色フィロリアル共が物凄くつまらなそうな顔をしている。

元康との温度差が凄いな。

「ああ……生きてて良かった」

「フィーロたんの歌声を初めて聞いた時から俺達、あの子の歌を聞かなきゃ元気が出なくなっていたんだよな」

「そうだな。人間や亜人だなんて下らない。みんな彼女の歌を聴くために、この町を盛り上げてきたんだ」

これは知らなかった出来事だ。

俺が注意したから喧嘩をしなくなった、差別が無くなったのかと思ったのだけど、フィーロ目当てに差別意識を放棄した連中も居るのか。

というかフィーロの正体を知って尚、そう言っているのか?

「ああ、早くフィーロたんの神鳥になる呪いが解ける事を俺達は祈らずにはいられない」

……呪いでフィロリアルになっていると思っているのか。

都合のいい発想だ。

後でメルティに詳細を聞くと、フィーロの設定が独り歩きをしているらしい。

なんでもこの呪いを解くためにアイドル活動をして金を集めている……とか。

アイドル系TS主人公にでもありそうな設定だな。

真実は正体がフィロリアルで、人の姿に変身しているんだがな。

「さあ、みんな! 全力で応援するんだ!」

「「「おー!」」」

町の広場が会場と化している。

ん? 広場の隅でボロい服を着た連中もフィーロを応援している。

俺はそっと広場から離れた。

「フィーロの人気は凄いですね」

ラフタリアが人ごみを掻き分けて進む俺の後ろで言った。

俺は素直に頷く。

「そうだな。メルティが言っていたけど、グッズの売れ行きも凄そうだ」

絶対に売れると言うのでアクセサリー商と提携してフィーロを象った公式グッズの販売を行った。

かなり高めの料金設定だが、あれだけのファンが居るのなら確実に完売するだろう。

こんなに人気があるなら握手会とかで、一回金貨一枚で稼ぐのも手だな。

で、最終的に枕営業を……無いな。

「ああ……これを買ったら……明日の飯はどうしよう」

先ほど居たボロい服を着た連中が購入を迷っている。

買うような懐事情じゃないだろうに……命を優先しろよ。

餓死しても俺は知らんぞ。

ちなみに後で聞いた話なのだが、あの後、元康の三匹が乱入ライブを行い。

フィーロの歌唱ショーは大いに盛り上がったらしい。

「今日もなんだかんだで忙しくなりそうだ」

村の連中も一緒に参加したいと色々とやっていたみたいだし……。

と、思ったらキールが開いた屋台に人が集まっている。

何の店なんだ?

と、思って覗くとクレープ屋だった……。

「あ、兄ちゃん!」

「お前、クレープ作れるのか?」

「あったりまえだろ!」

大興奮で犬の姿になったキールが手際よくクレープ生地を焼いては食事係をしている奴隷と一緒にクレープを売っていく。

むう。戦闘馬鹿の食いしん坊に育ったかと思ったら、食いしん坊で料理も好きと。

ここに来て、まさかの女性らしい能力が判明した。

「兄ちゃんのクレープに俺独自のアイデアを入れたオリジナルクレープだ!」

とキールが取り出したのは焼いた魚……。

その魚の身を解して、ツナみたいな素材にし、他バイオプラントの実をスライスしてクレープ生地で包む。

「クレープはデザートだけじゃないぜ!」

「ああ、はいはい」

俺の世界でもそう言う食い方はあるから別に不思議じゃないけどな。

なんともキールらしい料理だ。

「次はイミアちゃんのお店がありますよ」

バザー区画でイミアが開いている出店を見つけた。

店内にはこの日の為にと作った服が並んでいる。

目利きをするとどれも高品質、それでありながら値段はリーズナブルで、飛ぶように売れている。

「あ、盾の勇者様」

「こんなに売れるなら少し高めにしたらどうだ?」

「でも原価はもっと安いので、これより値段を上げたら悪い気がして……」

「善良な事だな。だが技術料としてもっと請求しても良いんだと学べ」

「はい」

従順な子だよなぁ。

ラフタリアも安いと服を吟味しだしている。でもそれ、下着だぞ。

微妙にイヤな所を見てしまった気分だ。

アレだ。ランジェリーショップに俺が入ってしまうとこんな気持ちになるのかもしれない。

「欲しい服でもあるのか?」

「そうですね。もう少し良い素材で、防御力を維持したい所です」

「あの……下着に防御力は必要なんですか? むしろラフタリアさんにはこんな下着はどうでしょう?」

と、イミアが取り出したのは真っ赤な……勝負下着?

変な所に穴があいているぞ。

「なんでそんなモノを売っているんだイミア」

「あ、はい。先生がこう言うのは需要があるから取り扱った方が良いと。盾の勇者様にもありますよ」

「……何故、俺用に勧めた下着にも穴が空いているんだ?」

しかもこれってケツの穴の方だぞ。

シッポのある亜人用下着にしても穴の位置がおかしい。

「おかしいですね……先生が盾の勇者様にはこれを穿いて欲しいと言ってましたけど……」

洋裁屋め、何処まで脳ミソが腐っているんだ。

と言うかそう言うジャンルの存在が無いはずの異世界でここまで腐敗出来るとは。

恐るべし、洋裁屋。お前は天才だ。発酵している意味で。

お前は俺の世界に来たら、食うに困る事は絶対に無いとだけ宣言してやる。

「こう言うのがカッコいいのではないのですか?」

「イミア……お前はその意味を知らずに育てよ」

「……? わかりました」

「ナオフミ様! これ、私が着たらどう思いますか!?」

ラフタリアが若干興奮した様子で勝負下着を抱き寄せて尋ねてくる。

なんだかんだで中身はまだ子供なんだ。こんな刺激物を見たら変に興奮してしまうのもしょうがないか。

「ラフタリアは元が良いから変に着飾らない方が際立つと思うぞ?」

「そうですか!? ってナオフミ様?」

「ラフタリアにはこんな感じの普通の奴が似合うと思うのだが、どうなんだ?」

俺は普段使っている下着に似た物を指差す。

「あの、ナオフミ様、つかぬ事をお聞きしますが、興奮とかはしないのですか?」

「何が?」

娘に欲情するような物だろ?

そんな過激な下着を着るよりも自然体でいて欲しいと思うんだけど。

「あ、やっぱり良いです。答えなくて大丈夫です」

俺が言う前にラフタリアは下着を戻してしまった。

どうしたんだ?

察してくれたと言う奴だろうか?

物分かりが良くて助かるな。