軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

成長中

翌朝。

目が覚めた俺は夜遅くまで勉強していたラフタリアを起こさないように部屋を抜け出し、フィーロの様子を見に行く。

空腹で死なれたら困るし何より、やることが無い。

薬草の採取をしていたが、薬の調合は昨日の内に終わっていたからだ。

「グア!」

俺が馬小屋に来ると野太い声が聞こえる。

見ると、饅頭みたいだった体形が変わり、足が長く伸びて首も長くなっていた。なんていうかダチョウっぽい。

凄い変化だ。俺の知る鳥類とは全く違う成長をする。

高さは俺の胸くらい。まだ人を乗せるのは無理だな。

ぐう……。

腹が減っているらしい。だから朝一で牧場からエサを買って持ってきた。

少々、金の消費が厳しいが装備を買うよりは安い。

一日でここまで育つとか……なんかすさまじい気がしてくる。

「お前、まだ生まれて一日経ってないぞ」

「グア!」

スリスリと俺に懐くフィーロに自然と笑みが零れる。

別に動物に対する愛情が目覚めた訳ではない。

大きくなったら何をさせるか心が躍っているだけだ。

馬車代わりだからな、一体どれだけ稼いでくれるか……期待に胸を膨らます。

っと、またも羽根が生え変わってよく見ると白と桜のまだら色になっている。

掃除がてらに羽根を盾に吸わせる。

魔物使いの盾Ⅲの条件が解放されました。

魔物使いの盾Ⅲ

能力未解放……装備ボーナス、成長補正(中)

む……血じゃなくても良かったのか。じゃあラフタリアの髪をもう一度切って吸わせてみるのも良いかも知れない。

フィーロはまだ生まれたばかりだと言うのに、元気に走り、じゃれてくる。

「グア!」

犬ではないが、木の枝を遠くに投げ、フィーロに拾わせて戻ってくる遊びをする。

足は速いようで、枝が地面に落ちる前より早くキャッチして、戻ってきた。

なかなか知能がある。

ククク……やっと俺にも運が廻ってきた様だな。

とまあ、ラフタリアが起き出すまでフィーロと遊んでいた。

一種の清涼剤だよな。こういうペットって。

「む……ナオフミ様が今まで見せた事の無いさわやかな笑顔をしています」

ラフタリアが起きて俺を探して来た所、なんか不機嫌そうに呟く。

どちらかといえば邪悪な笑みだがな。

「どうした?」

「何でもありません」

「グア?」

ちょん、ちょん。とラフタリアをくちばしで軽くつつくフィーロ。

スキンシップを取っているのだろう。

「はぁ……しょうがないですね」

ラフタリアは笑みを浮かべてフィーロの顔を両手で撫でる。

「グアァ……」

フィーロは気持ち良さそうに目を細めて撫でたラフタリアに擦り寄った。

「さて、今日はどの辺りを探索するかな」

「そうですねぇ、フィーロのエサ代の節約の為に南の草原に行くのはどうでしょうか?」

「ふむ……そうだな」

あの辺りは雑草が生い茂っているし、薬草類も豊富だ。良い場所だとは俺も思う。

目下の目的は良い装備を揃える金銭だからなぁ。

「よし、じゃあ行くか」

「グア!」

「はい!」

まあ、こんな感じで気楽に草原へ行って、魔物と戦い。Lvも少し上がった。

俺 Lv25

ラフタリア Lv28

フィーロ Lv15

薬草の採取とか、フィーロのエサとかを重点的に回っていたので今日の収穫はまちまちだ。

色々と魔物を倒して盾の条件を解放しているけれど、精々ステータスボーナスを+1か2程度だ。

……中級調合レシピが出る盾は未だ見つかっていない。

その日の夕方。

フィーロが立派なフィロリアルに成長した。

「早いなぁ……」

宿屋の店主も牧場主も驚いている。幾らなんでも早過ぎるとか。

成長補正(小)と(中)が掛かっているからだろう。

「……ラフタリアを買った時にインクに気付けばなぁ……」

「あはは……」

ラフタリアも、あんなふうに成長したいと思うのかな。

ビキ……。

何か骨が軋む様な音が響いている。成長音という奴だろうか。

「グア!」

もう、人を乗せられるくらいに成長したフィーロは俺の前で座る。

「乗せてくれるのか?」

「グア!」

当たり前だというのかようにフィーロは鳴いて、背中に乗るよう頭を向ける。

「じゃあ失礼して」

手綱とか鞍とか付けてないけど大丈夫なのか?

とは思ったけど、乗れと言うのなら乗ってやるか。盾のおかげで頑丈だし。

落ちても大丈夫だろう。

乗り心地は……羽毛のお陰で悪くない。

バランスさえちゃんと取れば問題なさそうだ。

「グア!」

ずいっとフィーロは立ち上がる。

「うわ!」

かなり視界が高くなる。そうかー……これがフィロリアルに乗って見える景色なのか。

乗馬とかしたこと無かったから知らなかったけど、生き物に乗って進むって、何か感慨深い気もする。

「グアアア!」

めっちゃ機嫌よく鳴いたかと思うとフィーロは走り出した!

「お、おい!」

「な、ナオフミ様――」

ドタドタドタ!

は、早い! 景色があっという間に後ろに通り過ぎていく。ラフタリアの声が一瞬で遠くなった。

ドタドタドタ!

フィーロは試したかったのだろう。村を軽く一周すると、馬小屋の前で止まった。

そして座って、俺を降ろす。

「大丈夫でしたか!」

ラフタリアが心配そうに俺に駆け寄る。

「あ、ああ。大丈夫だ。しかし速いな」

大して疲れてもいない様子のフィーロは自らの羽の手入れを始めている。

思ったよりもスピードが出るのに驚いた。良い買い物をしたかもしれない。

「さてと、今日はこれくらいにして、部屋に戻るか」

ガシっと鎧の襟を誰かが掴む。

見るとフィーロがくちばしで俺の襟を掴んでいた。

「どうした?」

「グアアア!」

何か泣いているような鳴き方で俺を呼び止める。

「ん?」

まあいいや。

と、立ち去ろうとすると、またも掴まれた。

「なんだよ」

「グアア!」

若干地団駄を踏むように不機嫌そうにフィーロは鳴いた。

「えっと、遊び足りない?」

ラフタリアが尋ねるとフィーロは首を振る。

言葉が通じるのか?

「寂しい?」

コクリと魔物の分際でなまいきにも頷いた。

「グアア!」

翼を広げてアピールを始める。

「とは言ってもなぁ……」

馬小屋で寝るとか俺は嫌だし、こんな大きな魔物を宿の部屋には連れて行けない。

「寝入るまでここで相手をしてあげましょうよ」

「む……まあ、良いか」

コイツは体こそ大きいが生まれてまだ二日。幾らなんでも一匹、夜に馬小屋で放置するには早過ぎるか。

その日は、ラフタリアと一緒にこの世界の文字の勉強を馬小屋でした。

フィーロは大人しく俺達を見ながら巣でジッとしている。

ビキ……。

「あー……ほんと楽に文字が読めるようにならないかな!」

そういう盾があるのなら早く見つかって欲しい。

「見つからないのですからしょうがないですよ。何でも伝説の盾に頼ってはナオフミ様の為にはならないと思います」

「……ラフタリア。言うようになったじゃないか」

「ええ、ですから一緒に、文字と魔法を覚えましょう」

……くそ。

楽をして良いことなんて無いか。こういう努力が水の泡にならないことを祈りながら、フィーロが寝息を立てるまで、俺達は馬小屋で勉強を続けた。

その後、部屋に戻ると、新しく手に入った薬草で薬作りに挑戦。

……結果は、まあ、レシピの解読ができていないから聞かないで欲しい。