軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

旗揚げ

それから数分だっただろうか。

リユート村へ向かう途中で避難中の連中らしき人々に遭遇した。

兵士が見張りをして、人々が上手く避難できるようにしているっぽい。

「あ、盾の勇者様!」

兵士が俺の顔を見るなり、安堵した表情で話しかけてくる。

「一応、確認だ。お前等は何をしているんだ?」

「城下町で起こっている革命派の暴挙から国民を避難させている最中です。槍の勇者様のおかげで大分、無事な者を救助できました」

「そうか。今、城下町の広場で革命派の起こした洗脳を解除させている。直にこの騒ぎも収束するだろう」

「そ、そうなのですか!」

俺の言葉に兵士を始め、避難しようとしている連中の顔色が明るくなる。

「女王は何処だ?」

「先ほどまで避難誘導の指揮を行っていましたが、現在は休憩中です」

と、避難民の近くに駐車している馬車を兵士が指差す。

「お呼びいたしましょうか?」

「いや、俺が直々に行くから問題ない」

フィーロから降りて馬車に近寄る。

するとそこにはラフタリアとババア、そしてフォウルと一部の奴隷が休んでいた。

「ナオフミ様!」

「アトラ!」

俺の顔を見るなりラフタリアが嬉しそうに駆け寄ってくる。

尚、フォウルが同じ要領でアトラに駆け寄っている。

そっちは、どうでもいいか。

「久しぶりだな」

「ええ……本当に……会いたかったです」

「まあ、積もる話は沢山あるが、なんでラフタリア達がここに?」

「あ、はい。ナオフミ様にクラスアップの許可を頂く為の移動中、たまたま通りかかった草原から城の方を見ると煙が上がっていたので、急いで駆け付けたのです」

「そうですじゃ。まさかこのような面妖な事態に遭遇するとは思いもしませんでしたじゃ」

ババアが補足する。

お前には聞いていないんだが……。

正直、この婆さん苦手なんだよな。

「アトラ! アトラー! 兄ちゃんは逢いたかったぞ!」

「ちょっとお兄様、あんまり近寄らないで、ください。尚文様が見ています!」

アトラが本気でイヤそうに頬ずりまでするフォウルを押しのける。

久しぶりにフォウルを見たが、なんか大きくなっているなぁ。

アトラはまだ幼い感じなのに、フォウルはもう青年に近づいている感じだ。

見比べると如実だ。

アトラは十歳前後なのに対し、フォウルは十六、七歳くらいだろうか。

そういや顔立ちが何処となくクズに似てきているような……。

女王の話だから気にしない方が良いか。

「じゃあ女王を助けたのはラフタリア達だったのか?」

「はい。革命を起こそうとしている方々に正面から乗り込んで――」

「これはイワタニ様……」

ラフタリアが話をしようとした所で馬車の扉が開いて女王が降りてくる。

「今、事情を聞こうとしていた所だ」

「そうでしたか。では私も報告を致しましょうか」

「クズは?」

女王は無言で馬車の中を指差す。

すごく微妙な顔をしたクズがぼんやりと馬車の中で佇んでいた。

「愛しい娘が革命を起こしたのです。嫌味を存分に呟くと良いでしょう」

「お前も大概だな」

「慰めはしましたよ?」

本当か? 冷めきった夫婦みたいな関係にしか見えないんだが。

この二人の関係は本当わからん。

「そんな事は良い。事件の始まりから終わりまで話を聞かせてくれ。一部は洗脳を解いた城の兵士からは聞いているが……まずはこっちの朗報から話した方がいいか」

俺は行方不明だった樹、城の兵士からの話、俺の領土や革命派の本拠地、リーシアが洗脳を解除出来るようになった事を女王に伝えた。

それにともない、リーシアが手に入れた謎の武器についても話す。

おそらくは七星武器だと睨んでいるが、実際はどうなんだろうな。

「弓の勇者様の弓から出た勇者の武器っぽいモノですか?」

「ああ、見た感じ投擲武器というカテゴリーに見えた」

投げナイフや投げ斧、槍、スリング、ブーメラン、矢、他に手裏剣があった。

特徴をまとめると、投げる武器が多い。

おそらくは間違っていないはず。

「おかしいですね。投擲武器の七星勇者は既に存在するはずですが……」

「死んでリーシアの物になったとかは?」

「四聖勇者の生存がわかるように七星も生存がわかりますので、それは無いかと」

「ふむ……」

どういう理屈なんだ?

「まあそこは後で判断しよう。そっちの方を教えてくれ」

「では――」

女王は城での出来事を語りだした。

途中からラフタリアが補足する。

城下町で正義ゾンビによる暴動が起こり、ヴィッチが革命派を代表して城の前の広場で旗を掲げた。

「私、マルティ=メルロマルクは、メルロマルクの伝統を軽んじ、人種差別を行う女王ミレリア=Q=メルロマルクから王権を奪取し、国を治める為、剣を握る事を誓います!」

ヴィッチという名前変更を無かった事にするかのように高らかに剣を掲げて宣言。

その周りには三勇教の残党や革命派の貴族、そして洗脳された国民を引き連れていたそうだ。

「「「おー!」」」

正義ゾンビ達は声高らかにヴィッチの宣言に同意した。

一応、城門は閉まっており、女王も迎え撃つ準備を進めていたらしい。

竜騎兵が時々、城内に侵入しようと試みるが、迎撃が間に合っていたそうだ。

だが、城内にも正義ゾンビが存在し、準備が不十分な段階で兵士は城の門を開けてしまった。

「いけ!」

ヴィッチの命令でローブを着た怪しい人物が先駆けで城の中に侵入した。

もちろん、このローブを着た奴等は俺の洗脳された奴隷だ。

どうやらヴィッチの奴が考えていた筋書きは、予想通り城に乗り込むと女王は俺が育てた奴隷に殺されていたという計画を考えていたようだ。

「待ちなさい!」

正義ゾンビ達をなぎ払ってラフタリア達がそこに到着したのはその直後だった。

「一体何をしているのですか!」

ラフタリアが剣をヴィッチに向けて宣言する。

「あら? そこに居るのは盾の魔王の腹心ではありませんか?」

悠々とヴィッチはラフタリアを睨みつけて答える。

「本当に貴方と言う方は……呆れて物も言えません。あんなに被害を出しておきながら革命まで行うなんて!」

状況を察したラフタリアはヴィッチを睨み返して宣言する。

「あんな被害? 私は被害者ですわ。槍を持った偽者に剣を持った偽者、そして……これはまあ、後にしましょうか」

ヴィッチはラフタリアを、飛んで火にいる夏の虫とでも思ったのだろう。

にこやかに笑った。

「ではどちらが正しいか。ここで証明するとしましょうか」

見覚えの無い、おかしな短剣を空いた手に持ち、ヴィッチはラフタリアに剣を向ける。

「二剣流……?」

「ここで私が直々に盾の魔王の腹心を改心させて見せましょう!」

辺りに歓声が巻き起こる。

勝負に臨まなければこの場に居る者全てが襲い掛かってくるだろう。

見た限りでは勝てない数ではなさそうだが、あの怪しげな短剣が気になるし、なんでこんなにもヴィッチに同意する者が暴れているのか理解が追いつかない。

「……わかりました。師範や他の方々は黙って見ていてください」

ラフタリアは下手に多勢に無勢を力で解決するよりも、ヴィッチの提案に乗る方を選んだ。

ヴィッチも馬鹿だよなー。

ラフタリアに勝てると思ったんだろうか?

……良く考えてみればヴィッチとラフタリアって一度戦っているんだった。

あの時はラフタリアがクラスアップ前でヴィッチはLv差によるごり押しを行っていた。

その後の事はヴィッチもラフタリアの事を見ちゃいなかっただろうし、俺が突然強くなってもラフタリアはそこまで強くないと思っていたのだろう。

革命派や三勇教の残党が集めた資料に目を通したのだろうか?

……無いな。人を利用する事だけに知恵を巡らせているヴィッチが、そんな計算を自分でするとは思えない。

大方、この時もラフタリアを、一対一とか言いながら罠にでも掛けるつもりだったんだろう。

というか先導者の短剣で洗脳するつもりだったんだ。

一撃でも当てれば勝ちだから、例え能力的に劣っていても、一発位当てられるとタカを括っていたって所か。

「では尋常に……」

革命派の貴族が手を上げて――。

「勝負!」

開始の合図を始めた。

「てりゃああああああああああ!」

ヴィッチがラフタリアに向けて大ぶりで剣を振りかざす。

「はっ!」

それを紙一重で交わし、剣の柄でヴィッチの腹部を殴打する。

「うぐ――」

「これはナオフミ様を罠に嵌めた分です」

そのついでに蹴り。

「これはナオフミ様に罪を着せた分です」

そして肩口に剣で突き。

「ギャアアアアアアアアア!」

「そしてこれは槍の勇者を唆してナオフミ様と一騎打ちさせた揚句、卑怯な手を使った分です」

剣を引き抜き、今度は足を切り付ける。

「まだまだありますよ。これはナオフミ様を賞金首にし、そしてメルティちゃんを殺そうとした分です」

「ひっ!」

拷問の如く続けられる攻撃にヴィッチは悲鳴にもならない、息を吸い込んだ。

しかしラフタリアは手を緩めなかったという。

まあ俺じゃなくても、散々辛酸を舐めさせられたからな。