軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

機会

「とにかく、乗り込んで主犯格を仕留める以外する事は無いだろ」

「その事なのですが……」

俺の指示にリーシアが申し訳なさそうに進言してくる。

まあ、何を言いたいのか見当はついているけどさ。

「なんだ?」

「もしも、もしもの話なのですが。イツキ様に遭遇し、戦う事態になってしまった場合、私に任せて貰えないでしょうか?」

「ほう……どういう風の吹きまわしだ? 女騎士……エクレールみたいに樹を説得してみたいと?」

「えっと、はい。その猶予を私に下さいませんか?」

「まあ、一応、樹は見つけたら捕縛する予定だ。殺すのはなるべく避けるべきらしいからな。だが、抵抗するならその限りじゃない」

「わかっています。私は……それでもイツキ様とお話がしたいのです」

まあ、リーシアは俺の村の為に一応は頑張ってくれているしな。

「リーシア、俺も参加させてくれないか?」

よりにもよって錬も一緒に俺に頼みこんでくる。

「俺が罪滅ぼしをする機会を与えられたように、樹にもその機会を与えて欲しい。その為に力を貸したい」

理屈はわからなくもないが……。

確定ではないが、間違いなく関わっている。

それがどうやって関わっているか、ここで判明するんだろうけどさ。

相応の嫌がらせはするつもりだが、錬や元康の様に便利な駒になるのなら考えない事も無い。

どちらにしても安易に勇者は殺せないし、説得したいというのならやらせた方が遺恨は残らない。

それにもしも樹を殺してしまっても、説得はしたが抵抗されて已む無く、という名目は立つ。

「わかった……だがリーシア、お前と錬がピンチになったらその約束は反故にさせて貰うが良いか?」

「はい!」

「ありがとう。尚文」

「気持ち悪い事を言うんじゃない」

まったく、錬の献身思考は背筋に悪寒が走るな。

これで元康みたいに壊れているのならまだ距離を置けば済むのに、変な正義感があるから性質が悪い。

というか、錬ってこんな熱血漢だったか?

まあ冷血漢とクールの違いみたいな、元々悪い奴にはなりきれないタイプだったけどさ。

「キュア!」

上から声が響き、顔を上げるとガエリオンが谷子と一緒に追いついてきた。

よく見つけられたな。

「やっと追いついた」

「残党は連行したのか?」

「うん。そこで王女様に渡してきた」

「そうか」

「で、事情を話したんだけど、ちょっとした事を言ってて、それを伝えに来たの。多分、勇者達は知らないだろうからって」

「なんだ?」

メルティからの言付け?

アイツはなんだかんだで伝承とか色々と詳しくはあるからなぁ。

女王もそうだけど勇者の伝説が好きらしいし。

その中でもフィロリアル関連が好きってだけだろうけど。

「えーっとなんだったかな。フォーブレイの大きな図書館にある古い本にしか記載されていない話で――」

谷子が思い出しながら話す。

なんでメルティを連れて来なかったんだ?

町の暴動を相手に立てこもるのがやっとだからしょうがないんだろうけどさ。

あっちは大丈夫か? サディナ達がいればどうにかなりそうだけど。

「他の物語とかだと、洗脳された人々は魔王を倒した事で洗脳が解けてめでたしめでたし、となっているけど、古い本だと倒されても洗脳が解けないんだって」

「なんだと?」

じゃあ何か?

仮に樹が主犯だとして、倒しても洗脳が解除されず、この感染性のあるパンデミック状態を解く方法は俺のプリズン以外にないと言う事か?

頭が痛い!

一人一人に魔力を込めた盾の檻を作って国民や奴隷共を救う?

どれだけの面倒な作業になると思ってんだ。

最終的にやらないといけないんだろうな。

「それは知りたくなかった」

出来れば、その可能性は無い方向で事件を解決させたい。

「ふぇええ……」

「それは……厳しいな」

「なら、降りかかる火の粉は払って厄介な者は皆殺しですね」

それじゃあしょうがないね、とハートを出すかのように言うアトラの決断の速さに俺はかなり引いた。

武闘派種族の考えが息づいているなぁ。

救う手段と被害者数が釣り合わない。

ワクチンが僅かしかない状態で感染者を全員助けないといけないとか、夢物語だからなぁ。

「とにかく、俺達は奴等のアジトを攻め込んで黒幕を引きずり出すしかする事は無い! いくぞ!」

「ああ! 最悪、後になって考えよう。もしかしたら救う手段がここで見つかるかもしれないし」

「やります! 例え何があっても私は諦めません!」

リーシアも成長したよなぁ。

たまに「ふぇえ」とか言うけど泣き言を言う事は随分減った。

ここまで素直に付き従っているのだから、樹との戦闘を任せる猶予を与えた訳だし。

説得できるかは分からないけどさ。

こうして俺達は、正面から鎧が逃げたアジトへと乗り込んだのだった。

アジトの中は三勇教の残党と、洗脳された兵士や冒険者で守られていた。

しかしどいつもあんまり強くない。

それに俺の配下だった奴隷共もいない。

ま、今まさに国を相手に革命運動をしている最中なんだから、一番戦力になる俺の所の奴隷はいるはずもないか。

鎧を乗せたフィロリアルが入口周辺でバテて休んでいたからプリズンの刑で洗脳を解いてやったけどさ。

「正義の為に、死ね!」

「魔王め! 覚悟!」

「全ては三勇教の為に!」

とか、お決まりの言葉で三勇教の残党は洗脳させた正義ゾンビを嗾けてくるけど、この布陣じゃ雑魚その物だ。

錬やリーシアに瞬時に気絶させられていく。

一応は被害者だからなぁ。

殺すのは忍びないのだろう。

「たあ!」

三勇教の残党には手加減しないけどさ。

リーシアが投擲した投げナイフが合唱魔法を唱えようとした三勇教の神父っぽい奴の腕に刺さって詠唱を妨害する。

「ぐああああ! おのれ!」

「重力剣!」

錬の剣が半透明の黒い刀身に切り替わって敵を切りつける。

すると相手が地面に押さえつけられるかのように倒れこんだ。

「うぐ……」

「新技?」

「ああ、霊亀剣に変えた時に使えるようになった」

「へー……」

試し切りにはちょうどいいよな。

俺はSフロートシールドを使っているけどさ。

やっぱり二枚目のフロートシールドを呼び出すスキルだった。

しかもEフロートと混合で発動する。

維持コストはそのままだからフロートシールド自体がそのままパワーアップした感じだ。

「尚文のその浮いた盾、少しカッコいいな」

「そうか? まあ思い通りに動くから便利だけど」

昔、こう言う二枚の盾を浮かして戦う主人公のゲームがあったよなぁ。

戦乙女が戦うゲームで。

あの主人公みたいに剣とか弓が使えたらどれだけ楽な事か。

「それで、錬。お前のそのスキルはどんな効果があるんだ?」

「重力で相手の動きを阻害出来るみたいだ。他にソウルスティールってスキルが出てる」

……フレーズが不気味なスキルだなぁ。

俺はとあるゲームで、同じ名称の技を主人公が受けて即死した事がある。

まあ、それはイベント戦闘だったんだけどさ。

うっかり終盤で現れた同じ技を使うボスにやられたのはどうでも良い補足か。

「ソウルスティール!」

そんな風に考えていると錬は迷わず使った。

相手は三勇教の連中だし、即死攻撃でも問題無いか。

「ぐふ!」

重力剣で抑えつけた相手に錬は試し切りを行った。

青い光が切った相手から漏れ出して錬に移る。

俺は錬が倒した三勇教の残党の様子を確認する。

……死んではいないみたいだ。

ただ、顔色が悪い。

「ぐ……魔力が……ぐ……」

錬の放った重力から逃げ出す術を失い、そのまま地に伏している。

さすがに即死攻撃ではなかった様だ。

まあ即死攻撃なんてあったら、そのスキルだけでいいんじゃ……って事になるしな。

「あ、これ……SPを回復させる効果があるドレインスキルだ」

「こいつの魔力を吸い取ったみたいだぞ」

というか、魔力とSPってどういう違いがあるのか今一掴みづらいよな。

「クールタイムが長いからあまり乱発は出来そうにない」

「そうか、だが便利そうだな」

くいくいとアトラが俺の脇を突く。

「なんだ?」

「錬さんに移った魔力が、おそらく武器を通じて何かに変換されたのを感じました」

「へー……」

アトラってそう言うのもわかるのか。

便利だよな。なんだかんだで。

これからはアトラの事を便利女と……いや、その名称は色々危ない。

「えーい!」

フィーロが残った連中を軽く蹴散らし、俺達は進んだ。

ガエリオンと谷子ペアはフィーロとフィロリアルペアと張り合う様に敵を倒すのを競っている。

「思いの外広い建物だな」

建物内に闘技場みたいな施設があったり、妙な像が置いてあったりと増築を重ねて訳がわからない状態になっている気がする。

洋館風の入り口だったのは驚いたぞ。

入ってその場でメルロマルクの城の入り口を疑った位の作りだったし。

所々に鍵が掛った扉がある。

ま、フィーロやガエリオンに命じてぶち壊していく訳だけどさ。

時々変な資料が転がっているのは何だろうか?

昔やったゲーム感覚で不自然な古時計の針を弄ったら壁からカギが出てきた時は呆れたぞ。

この建物を作った奴は何がしたいのだろうか。