軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

分け合う痛み

前回と同じく、10時ごろに俺達は謁見の間に通された。

たく、配るのが翌日だったのならさっさと言えば良いものを……このクズ王は俺への嫌がらせに命でも掛けているのかってんだ。

ただでさえ顔を合わせるのも嫌な奴等と一緒に居るんだ。胃に穴が空いたらどうするんだ。

「では今回の波までに対する報奨金と援助金を渡すとしよう」

報奨金?

ツカツカと金袋を持った側近が現れる。

「ではそれぞれの勇者達に」

金袋の方に視線が向う。

確か、月々の援助金は最低でも銀貨500枚は確定しているはず。

支度金だけ500枚……では困る。

「やりましたね」

ラフタリアが俺に向って微笑む。

「ああ」

今回の金で何を買うか。

とりあえずラフタリアの武器あたりが妥当か? それとも、この際だから良い防具を買うという選択もある。

ああ、でもそろそろ薬の調合で使う機材の新調もしたい所だしなぁ。実はあの機材、盾が反応していて吸わせたら何になるか興味があったんだよなぁ。

ジャラジャラと金袋の音に、何を買うかの夢が広がる。

俺は金袋を手渡され、中身を確認した。

ひーふーみー……うん。500枚ある。

「モトヤス殿には活躍と依頼達成による期待にあわせて銀貨4000枚」

おい!

呆気に取られた俺は元康の持つ、重そうな袋に目を奪われる。

文句を言ったらそれこそ、何倍もの嫌味を言われそうだから黙っているが、拳に力が集まるのを感じる。

「次にレン殿、やはり波に対する活躍と我が依頼を達成してくれた報酬をプラスして銀貨3800枚」

お前もか!?

クールを装っているが、元康に負けているのが悔しいような顔つきで錬が金袋を持っている。しかも小声で「王女のお気に入りだからだろ……」と、毒づいている。

「そしてイツキ殿……貴殿の活躍は国に響いている。よくあの困難な仕事を達成してくれた。銀貨3800枚だ」

樹に至ってはこの辺りが妥当でしょうと呟きつつ、元康の方へ羨ましそうな目を向けているのがわかった。

依頼って何だよ?

「ふん、盾にはもう少し頑張ってもらわねばならんな。援助金だけだ」

名前ですらない! 誰が盾だ。

頭の血管が切れそうな苛立ちを感じる。

昨日あんだけ我侭をほざいた貴様が言うのか!?

「あの、王様」

ラフタリアが手を上げる。

「なんだ? 亜人」

「……その、依頼とはなんですか?」

ラフタリアも察しているのだろう。報酬が少ないのは目を瞑って、別の所から尋ねる。

「我が国で起こった問題を勇者殿に解決してもらっているのだ」

「……何故、ナオフミ様は依頼を受けていないのですか? 初耳なのですが」

「フッ! 盾に何ができる」

うぜぇ!

謁見の間が失笑に包まれる。

ああ、やばい。怒りで暴れだしそう。

と思ったらラフタリアの方から拳を握り締める音が聞こえて来た。見ると怒りを押し殺していて震えている。

……うん。堪えきれそう。

「援助金を渡すだけありがたいと思え!」

「ま、全然活躍しなかったもんな」

「そうですね。波では見掛けませんでしたが何をしていたのですか?」

「足手まといになるなんて勇者の風上に置けない奴だ」

苛立ちも最高潮だ。せめて嫌味だけでも言っておくか。

「民間人を見殺しにしてボスだけと戦っていれば、そりゃあ大活躍だろうさ。勇者様」

「ハッ! そんなのは騎士団に任せておけば良いんだよ」

「その騎士団がノロマだから問題なんだろ。あのままだったら何人の死人が出たことやら……ボスにしか目が行っていない奴にはそれが分からなかったんだな」

元康、錬、樹が騎士団の団長の方を向く。

団長の奴、忌々しそうに頷いていた。

「だが、勇者に波の根源を対処してもらわねば被害が増大するのも事実、うぬぼれるな!」

この野郎……お前がそれを言うのか?

城で踏ん反り返っていただけの分際で偉そうに。

そもそも勇者って俺も勇者だよ。それともアレか、盾は勇者じゃないってか?

「はいはい。じゃあ俺達はいろいろと忙しいんでね。金さえ貰ったらここには用がないんで行かせて貰いますヨー」

ここでムキになっても意味は無い。この程度で立ち去るのが妥当だろう。

「まて、盾」

「あ? なんだよ。俺は貴様と違って暇じゃないんだ」

「お前は期待はずれもいい所だ。それが手切れ金だと思え」

くっ!?

つまり、これから波の後の報酬として援助金は無い! という事を言いたいのだろう。

「それは良かったですね、ナオフミ様」

満面の笑みでラフタリアが答える。

「……え?」

「もう、こんな無駄な場所へ来る必要がなくなりました。無意味な時間の浪費に情熱を注ぐよりも、もっと必要な事に貴重な時間を割きましょう」

「あ……ああ」

なんかラフタリアが頼りになってきている気がする。

ギュッと手を握られると怒りが静まっていくのを感じた。

「では王様、私達はおいとまさせていただきますね」

と軽やかな歩調で俺をリードし、俺達は城を後にする。

「負け犬の遠吠えが」

お前が言うなと言いたくなる元康と、無言で肩を上げる錬と樹。

……うん。理不尽を共有するって、こんなにも気分が楽になるんだな。

「さて、ではあのテントに行って呪いを掛けてもらいましょう」

「え?」

城を出るとラフタリアが振り向いて言った。

「でないとナオフミ様は私を心から信じてくれませんからね」

「いや……別に……」

昨日の言葉が蘇る。

それだけでラフタリアは信じても良いと、思うんだけど。

「もう……別に奴隷とかじゃなくても良いんだぞ」

「ダメです」

「はい?」

「ナオフミ様は奴隷以外を信じられない方ですので、嘘を吐いたってダメですよ」

……俺はラフタリアの育て方を間違えたのかもしれない。

まあ、確かに奴隷以外信じられないというのは事実だけど、ラフタリアは信じても良いと思うんだ。

うん。

「あのさ、ラフタリア」

「なんですか?」

「別に呪いを掛けなくても良いんだぞ?」

「いいえ、掛けてもらいます」

……何故、この子はこんなにもこだわるんだ?

「私もナオフミ様に信じてもらっている証が欲しいからです」

「はぁ……」

第一に、変な奴だなぁ……という思いが浮かんでくる。

第二に、何故かマインの顔が浮かんで腹が立った。

何故だ? 自分でも分からないしラフタリアに八つ当たりするつもりもない。

普通だったら別の感情が……芽生えるのか? 変な感じだ。

「さ、行きましょう」

「分かった」

そこまで言うのなら止め様が無い。

俺達は奴隷を扱っている、あのテントに顔を出すことにしたのだった。