軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仲間割れ

「さスガはフィーロタン。胸が張り裂けソウな程、響いテくル……」

元康が蹴られたのに恍惚の表情でうっとりとしている。

どうしてこうも緊張感が続かないんだろうな。

というか、フィーロの蹴り、筋肉が思いっきり軋む音が聞こえた。

確か本気の蹴りとか言ってたな。しかもラストスピアのブーストは間違いなく掛っているはずだ。ツヴァイト・オーラもまだ掛っているのだが……それを耐えた。

前の元康だったら二つに裂ける程の攻撃、幾らカースシリーズでもそこまでの防御能力が出せるのか?

わからないが、もう少しダメージを受けても良いはずだ。

なのに元康は割とピンピンとしている。

「元康ー」

「ナンデ、すか? オトウさん」

「……まあいい。強化方法を使っているのか?」

「ハい。フィーロたンのおトウサんの言う事は絶対ナノデ」

……余計な真似を!

つまり、俺が影に伝えた強化の方法をこの馬鹿は実践しやがったんだ!

実質……今の元康は俺よりも強い事になる。

ラースはまだ強化中で中途半端、しかもⅢだ。

元康はⅣで混合だ。間違いなく上。

下手に敵対すると勝てないぞ?

どうする? この状況。

しかもフィーロへの加護も相当なモノだろう。

間違いなく、カーススキルの恩威だが。

……やばくね? 元康はフィーロに本気で掛れないだろ?

でもフィーロは本気で元康を殺りに行くだろう。

今の所は元康にダメージは無いが、フィーロが本気の撃ったらやばいかもしれない。

そうなったら、フィーロは間違いなく俺に襲いかかる。

元康の命を奪った場合は弱体化しそうだけど、勇者を殺すなと言われている手前、出来れば回避したい。

「はぁ……はぁ……ん……」

フィーロが攻撃の構えを取る。

この構えは……。

フィーロを中心に魔力の渦が形成されるのが今の俺には見える。

確か魔力を回復させる時の構えだ。

あんな風に回復させていたのか。と言うか、回復ではなく増幅状態なんじゃないか?

「フィーロたんにトドけ! 俺の想い!」

そんな隙を元康が逃がすはずが無い。

が――。

フィーロの充填は俺の知るモノよりも遥かに早く終わる。

「はい、くいっくー!」

一閃!

白い残像が元康を通り抜け、光の帯が元康を幾重にも貫く演出が俺の目に焼きつく。

「ぐふ……」

ま、まさか元康、やられたんじゃ!?

「凄いヨ。フィーロ、たん!」

あ、起き上がった。

良かった。俺の身を守る壁がまだ存命した状態で本当に良かった。

「えっとー……私達はどうするべきかしら」

「あの中に行くのか? 俺でも危険だと思うぞ」

「そうね……」

このまま外野ポジで見守らないといけないのか?

逃げる手段を模索するべきだろうが……。

「リーシア、走って逃げてくれ!」

これ見よがしにリーシアだけ逃がす様に演技する。

「ふぇ!?」

「ナオフミ?」

「さあ! 早く!」

「そうです尚文様が言うのですからリーシアさんはお逃げください!」

「は、はい!」

アトラの一押しでリーシアは釣られて走り去って行った。

やがて……何故か戻ってくる。

「ふぇええええ! なんで戻ってきちゃうんですか!?」

やはりそうか。空間のループ的な場所なんだな。

逃亡不可もいい加減にしてほしいな。

元康とフィーロの戦いはまだ続いている。

どうにかする手段を模索しているんだけど、手だてが無い。

このままスタミナ切れの共倒れで終わってくれないかと淡い期待をしながら観察していた。

しかし、事態は更に悪い方向へと進んでいく。

「しねーーーーーーーーーーーーー!」

元康の配下である三匹が、フィーロめがけて攻撃を開始したのだ。

「な――なんで、ミンナ!」

元康がフィーロを庇って前に出る。

三匹はそれでもフィーロに攻撃しようとそれぞれが蹴り、魔法、そして人型がバトルアックスを持って切り掛っている。

蹴りをしたのが赤いの、魔法を唱えたのが青いの、そして人型のまま斧を担いで切り掛ったのが緑。

それぞれ目付きが怪しい。

「憎い……もっくんの愛を独占しておきながら、別の男を誘惑するあの子が憎い!」

「もーくんは私達の、モノ……」

「うん……あんな奴、認めない!」

「だ、ダメだ! みんな!」

「「「もっくん(もーくん)を食べたい! その為にはあのメスがじゃまー!」」」

元康がフィーロを守るように三匹と戦い始めてしまった。

それぞれ動きがフィーロほどじゃないが早くなっている。

「アトラ」

「はい。あの三匹の方々も黒い何かが巻きついています。フィーロちゃんよりも多く」

「ああ、そう」

見た感じ、クラスアップはしてないっぽい。

それでも元康を翻弄する程の早さを持っているとなると元康自身の援護の力だろうな。

カースシリーズも関わっているみたいだし。

色欲と、嫉妬だったか。

フィーロと同じく色欲で発情し、嫉妬を兼ね備えたって所か。

そんなのが三匹も居たらさすがの元康もフィーロを守るために防戦一方に成ってもしょうがない。

大事な娘達らしいからな。フィーロと同じく手が出せないだろ。

フィーロを守る元康、俺に襲いかかろうとするフィーロ、フィーロを殺そうとしてくる三匹。

元々は元康が敵で、フィーロが味方、そして三匹は元康の配下で敵だったはずなんだがなぁ。

現状だと、元康が味方? で、フィーロが敵、三匹は……第三勢力?

誰が敵で誰が味方なのか分からなくなってきた。

そして――。

「ごしゅじんさまー……やっと邪魔者はいなくなったよー」

元康を背に一歩一歩確実に、発情したフィーロが俺の方へ歩いてくるのだ。

とりあえず考える余裕があったから、試す手段が何個か浮上した。

その中で、確実にこの事態に対処出来るものは限られている。

案1 ラースシールドに変えて全てを焼き払う。

難点、ラースシールド自体が強化不足なのと、火力が足りない。

フィーロを倒す程となると厳しい。アイアンメイデン然り、ブルートオプファー然りだ。

しかも後者は使えない。仮に使えたとしてもフィーロに命中などしないだろう。当たったらフィーロは即死だし。

案2 1の派生で元康を仕留める。

難点、今の元康を倒すのには賭けの要素が強すぎる。

スキルも同様だ。

案3 元康に呼びかけて説得を試みる。

難点、説得に応じた前例がない。もしも思い通り頷かせるとしたらフィーロに代弁させるしかない。

だが、そのフィーロがアレでは話にならない。

案4 フィーロに呼びかけて説得。

難点、発情しててまったく話を聞かない。なので説得は無理。問題の先送りの提案を受け入れるようには思えない。

案5 元康の配下に援護魔法を掛けて、全てを片付けて貰う。

難点、フィーロがやられる。それは避けるべき。

ダメだな。

もはや事前に試す事の無い不確定な賭けをした方が実用的だ。

実はラースシールド時のシールドプリズンやエアストシールドを使った時の防御力アップに疑問を持っていた。

そりゃあ、俺自身の防御力にかなり依存した物ではあるのだけど、もっと、根底的な部分で耐久力がある気がしたのだ。

で、最近研究していたスキルに魔力を込める実験が関わってくる。

ただ……何が何でも成功させねば――。

「ごしゅじんさまー……」

俺が汚されてしまう!

それだけは。

「せ、せめて人型に!」

何を言っているんだ、俺は!?

いや、しかし巨大鳥に犯される位なら幼女に犯される方が遥かにマシだ。

「やだー」

く……フィーロの奴、懐かしい台詞を。

最初に喋り始めた頃、フィーロはこの台詞を連呼していた。

よりによって鳥の姿で汚される……死んだってイヤだ。

元康の奴なら喜ぶのかもしれないが、俺にそんな趣味はない。

これは何としても……フィーロを押さえつけるしか手が無い!

「シールド――」

全身から溢れだす力の流れを感じる。

何が何でも成功させなきゃいけないと言う覚悟が俺に力を理解させる。

これは……魔力では無い。アトラが言う気……なのか?

いや、この力はシールドプリズンを放とうと思って出た。

という事はSPという力である可能性が高い。

「プリ――」

バッと狙いを定める所に力が集まって行くのが感じ取れる。

そう……ではここに魔力を込めるとどうなる?

今なら込められる。

ただ、時間が足りない。唱えきる前に、中断!

「……」

ゆらぁっと伸びた檻になる力が俺に戻る。

が、それよりも驚くべき事が発生した!

バッと、俺が出すのを中断する直前、フィーロが横っ跳びをして檻の出現する場所を避けたのだ。

本能で回避している?

これは……魔力を込めるのに成功してもフィーロに避けられてしまう。

ただでさえぶっつけ本番、しかも相当集中しないと魔力を混ぜて放つ事が出来ないのに、肝心のフィーロに当てる事すらできない。

もはや手が無い。事前に封殺されたような物だ。流星盾を撃つ手もあるがクールタイムがまだ終わっていない。

だが――ここで諦めたら大変な事になる!

この際だ。ターゲットを元康に変えてはどうだ?