軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

龍脈法

夜。

魔力水を飲みながら薬の調合を行い、研究を続行していく。

これ、全ての事に反映させられるとしたら武器屋の親父が頑張っている事の手伝いも出来るかもしれない。

最悪、素材に魔力を込めるとか、金属の精製だけでも手伝えば、良い物が出来るかも。

「またせたな」

「むー! 来るな!」

フィーロがまたも張り合っている。

ガエリオンがアトラを連れてやってきた。サディナは既に飲酒中で俺の部屋に居る。

こいつも龍脈法とやらが使えるから教わるのが手だな。

「今日も同じ部屋で寝に来ました」

「ああそう。懲りずによく来るな」

フィーロに尽く妨害されているのに、良くやる。

ちなみに錬は今日も村の中を一日中走りまわらされていた。良くやる。

村の雑務、主に肉体労働を手伝っても居た。

谷子辺りは苦手意識が強く近付きもしないが、高圧的だった性格が改善されて、村の連中とも少し打ち解けて来たみたいだ。

なんてどうでも良いか。

「で、ガエリオン。お前のその魔法は他にも覚えられるのか?」

「複数条件があるが、覚えられない事はない」

「条件?」

「まず、フィロリアルの加護を受けた者は不可だ」

クラスアップ補正の事だな。つまりラフタリアは出来ないと見て良い。

同様にアトラもか?

というかフィロリアルの魔法は俺達が使う魔法と同じ系統みたいだからなぁ。

「魔物はどうなんだ?」

「極一部の者以外はフィロリアルと同系統の魔法体系をしている」

「へー」

やっぱりドラゴン専用の魔法とかそんな辺りなんだな。

「サディナは両方の魔法が使えたな。となるとクラスアップでフィロリアルの加護を受けなければ出来るんだな?」

「そうねーそうなるのかしら?」

「いや、相当難しいと思うぞ。そこの水生獣人が異端なのだ」

「そうなのか?」

サディナがニヤニヤとしながら手をグーパーさせて余裕を見せている。

「人間、頑張れば何でもできるわよー」

「だといいんだがな」

コイツはなんでも簡単そうに言うから困る。

なんて言うか、見ている分には簡単だけど実際にやると果てしなく難しい事を難なく行っているような……事をしそう。

「では」

ガエリオンが水差しの水を指差す。

「あそこにある水から力を引きだす練習を始めるぞ、手本を見せよう」

そう言うとガエリオンは水差しに手をかざした。

『我ここに水の力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を』

「アクアシール!」

パアッと水差しから力がガエリオンに移って、魔法として具現化した。

確か水の魔法膜を作り出す魔法だったか。

使い道は火属性の魔法の効果を弱めるとかだな。

火事場に行く時とか便利そう。

応用するとしたら暑い時とか冷房の代わりになりそうだけど。

「魔法書とかは無いんだな」

「そうだな。この魔法は汝等が使う、自らの力を定められた方法で具現化させるのとは訳が違う。何しろ媒体から力を借りて放つのだからな」

「前に、自分から力を具現化させていなかったか?」

確か、ダークノヴァ・プロミネンスだったか?

「自分から引き出す方法は勧められんな」

「なんでだ?」

「何分、自分だからな、加減しないと自らの力を全て吐き出してしまう事になる。あの時は、我の中にあるブレス器官から力を導いたのだ」

ガエリオンじゃないと無理とかそんな所か?

ゲームとかだと、エナジーボールとか、生命力を攻撃にとか出来そうだけど。

「汝は異世界人とはいえ、分類すると人間故に良い龍脈法はあまりない」

「そうか」

「それに、自らの魔力を力として導くとしたら龍脈法を使うには効率が悪い。普通の魔法を使った方が良いだろう」

……なんとなくわかる。

外側から力を借りて発動させる龍脈法、内側から力を引き出して具現化させる魔法。

おそらくこれが大きな違いなんだ。

龍脈法で自分の内面から力を引き出すと言うのは遠回りであまり意味が無い。

ルーツが同じなのか?

でも、何か違うような……。

「ちなみにー龍脈法の方が魔力の消費は少ないわよ」

「それは知っている」

「ええ、力を貸して貰っているのだから、安いのは当たり前よね」

なるほど。

マンガとかに出てくる、精霊から力を借りる、みたいな感じか。

という事は、RPGで言う魔法使いと精霊使いみたいな分類があるのか。

「代償も無く使えるのか?」

「あんまり同じ媒体から使うと媒体から借りれる量が減る。ついでに回復まで時間が掛るな」

「そうか」

「後は……宝石などの貴金属から力を引き出す事も可能だ。威力も高い」

「ん? 魔力付与とは違うのか?」

「宝石加工の事だな。厳密に言うと違う。アレは宝石に込められた能力を解放させる為に魔力を注ぎ込む手法だ。龍脈法は逆に抜くのだ」

逆ベクトルか……確かにこれは習得が難しそうだ。

それから二時間程ガエリオンとサディナに教わりながら龍脈法の練習をしていた。

「だから魔力を込めるな! 見るだけで水におかしな魔力が入ったのがわかるぞ」

「見えるのか?」

「水が震えているではないか。しかも変に光っているから一目であろうが!」

「頑張ってください、尚文様」

アトラが応援してくる。

わかっているからお前は早く寝ろ。

「ナオフミちゃん。魔法を使う時のように魔力を放出しちゃダメよー。逆に空っぽにする感じで、水から力を貰うイメージ」

「それが難しいんだよな」

ニュアンスが入るから難しい事この上ない。

えっと、魔力で引き寄せるんじゃなく、水から力を貰う……。

って、うんともすんとも水が力を寄越さない。

オラ! 力を寄越せと意識してみる。

「だから魔力を出すな!」

ああもう! めんどくせー!

谷子が龍脈法しか出来ない意味がわかったような気がするぞ。

こんなの両方出来るサディナはまごう事無き変態だ。

ここにも天才がいる。

俺は天才じゃなくて努力型なんだよ。

と、四苦八苦しながら更に二時間経過した頃。

なんとなくだけどコツが掴めてきた。

魔力の流れが見えるようになったお陰か、ガエリオンやサディナが唱える時の流れを見よう見まねで出来るようになってきた。

頼み込む感じだ。

同時に自分の魔力に空洞を作る。

後はそっと、手を伸ばす様に魔力を水に触れさせる。

スーッと魔力を通じて水の清楚な流れが俺に伝ってくる。

「そうだ。それで良い。想像よりも上達が早くて驚いているぞ」

「そうねー」

「後はどうするんだ?」

「詠唱が頭に浮かんでくる。組み立てろ」

「はい?」

と、言われた所で理解する。

なんだ!?

頭に……パズルみたいな何かが浮かび上がってくる。

ふわふわと、本当におぼろげに組み合わせるパズルのような羅列だ。

この、組み合わせ次第で発動する魔法が変わってくるのだけは理解できる。

「えっと」

今の俺では完成させられる形は少ない。

アクアシールと意識して出てくる形を組み合わせようと試みる。

だけど、パーツの試行錯誤しているうちに消えて行く……。

「失敗だ。もう一度やってみろ」

おいおい。谷子やガエリオンはこれを何時も実戦でやっているのか?

ますます変態染みている。覚える必要があるのか疑問の段階になったぞ。

とはいえ、やらないで馬鹿にされるのも不服だ。

もう一度、水から力を引き寄せる。

ふわりと浮かびあがるパズルを出来る限り早く組み立てる。

前回と構築する形が変わっているぞ!

と、ケチを付ける訳にはいかないか。

ただ、必要なパーツは少ない。思いの他早く組み立てられそう。

『我ここに水の力を導き、具現を望む。地脈よ。我に力を……』

完成すると同時に思わず言葉が漏れ出した。

いや、読み取ったと言うべきなのだろうか?

どうも魔法とは色々と勝手が違って困る。

「アクアシール!」

ターゲットアイコンが出現したので、自身を指名する。

バシッと魔法が発動したのを確認した。

「ふむ、随分と早く習得したな。さすがは勇者と言った所か」

「そうねー。ナオフミちゃん天才ね」

「ふざけんな。こんな難しいとは思わなかったぞ」

「いや、一夜で習得できるほど簡単な物ではないはずなのだが……」

ボリボリとガエリオンは後ろ足で頭を掻いている。

犬みたいな事をする奴だな。

「なんだかんだでナオフミちゃんは勇者なのよ? 出来て当たり前なのかもしれないわー」

「人の努力を勇者で片付けるな」

魔法の習得よりも面倒だった。

魔法はなんだかんだで決まったフレーズを魔力に乗せて唱えれば良いだけだからな。

考えてみれば、魔法は魔法を覚える事が難しかったんじゃなくて、文字を覚えるのが大変だった気がする。

そういう意味では魔法の方が簡単なのか?

ん? 何だろう。

何か引っ掛かる。

『力の根源足る。盾の勇者が命ずる。理を今一度読み解き、彼の者を守れ!』

唱えている最中、視界に龍脈法で見るパズルのような物が勝手に組み合わさるのが、今になって感じ取れる。

……?

魔法と龍脈法は別の系統で出来ていると教わったんだが……。

何かを掴めそうだが、どうも上手く行きそうにない。

これも要研究だな。

「ん~?」

フィーロが眠気眼で唸る。

それからブルブルと全身を器用に震わせていた。

だからそれは何の真似だ? 人型でやると気持ち悪いからやめてほしい。

……大分時間も遅くなってきているからなぁ。魔法の練習で俺も疲れた。

「そろそろお開きにして寝るか」

「そうだな、上達が早くて我も時を忘れてしまった」

「褒めても何も出ないぞ」

「嘘ではないと言っているのだが……まあ、良い。ではな」

「キュア!」

言い終わった直後にガエリオンが子ガエリオンに戻って俺のベッドに侵入しようと試みる。

「ダメ!」

「キュアアア……」

そこをフィーロが蹴り落として妨害、子ガエリオンが目を潤ませて抗議の声を出す。

「諦めろ、お前はまだ悪さした罰が終わって無い」

「キュアアア!」

子ガエリオンもフィーロと同じく俺のベッドで寝たがるようになってきているなぁ。

まあ、オスだからフィーロよりも安心して寝られそうだけど。

「ベー!」

子ガエリオンが後ろ髪引かれるようにとぼとぼと歩きながら時々振り返り、家を出て行った。

「それじゃあ寝ましょうかね」

「すー……」

アトラは既に就寝していた。寝付きは恐ろしく良いんだよな。

ただ、サディナ曰く、思い出したように動き出す事があるから目が放せないとか。

なんだかんだで仕事はちゃんとしているサディナ、さすがはラフタリアが頼っただけはある……のか?

「じゃあ子供達が寝入ったのを確認してからナオフミちゃんはお姉さんと楽しい事しましょうか?」

「するか!」

どうもコイツ、飲み比べで負けてから俺にこう言う冗談を言う様になったんだよなぁ。

面白くないから続けるなっての。

「残念、でも何時でも相手してあげるわよー」

「さっさと寝ろ!」

まったく……そういやコイツも地味にLvの上りが早い。

もう62まで上がっている所を見るに、フィーロよりも効率よく戦っているんじゃないか?

海の中限定だけど……。

その日はくだらない雑談を終えて、就寝した。

まさかこの翌朝、俺が見逃していた問題の火種が、大きく燃えあがるとは夢にも思わなかった。