軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

現実VS理想

「……愚かな」

ガエリオンは蔑む目で錬を見つめる。

きっと今の俺は同じ目をしているんじゃないかと思う。

「孤高を気取る愚か者よ。その最強ではやがて追いつかれるのが世の常。仮にも世界最強であったことのある竜帝の知識がそう語る。最強など砂上の楼閣である事を知れ」

残り時間1:30秒にまで来た。

「その身に刻み込め! 煉獄の炎! プロミネンス・ダークノヴァ!」

カッとガエリオンが錬に向けて辺りが火の海になるほどの高威力のブレスを吐きつけた。

「刹那・竜殺し! チェーン・バインド! チェンジチェーン!」

果敢にも錬は連続でスキルを放つが――。

「効かぬわ! 愚かなる剣の勇者よ!」

錬の攻撃の全てが高威力のブレスに掻き消される。

「まだだ! まだ終わらない!」

錬の剣がもう一段変わる。

グロウアップか?

確か、憤怒の盾がラースシールドに変わった事があった。

あれと同等の状態と見てまず間違いない。

となると錬の剣が上位の剣に変わった可能性が高いって事か。

「そうだ。新しい技を閃いたぞ! 羅刹・流星剣」

それはさっき使っただろ!

さも今まで使っていた技を今閃いたみたいな言い方をしている。

王道マンガですら、一度使った技は通用しないんだぞ。

なんなんだ。本当に。

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は神の名の元による圧潰! 我が財産を糧にし、放たれる神の一撃をその身に受けよ!』

「ゴルトアオフシュタント!」

錬が剣を天に掲げると何処からともなく、金銀財宝が集まり、上空で人の形を成す。

禍々しい造詣の、凄く趣味の悪い金で作られた像だ。

その像が形を変えてガエリオンに向かって降り注ぐ。

羅刹・流星剣はどうしたんだよ。

どう考えても別の技を使っているじゃねぇか。

段々と手段が卑劣になってきている。

これも勝つ為の強欲とでも言うんだろうか。

あれは……たぶん、プルートオプファーと同等のスキルなんだろうなぁ。

代償は所持者の財産だろうか。

ああ、だから錬の装備が貧弱なのか?

「喰らえ」

「呆れて物も言えんな。狙いは定めよ」

「い!?」

「ふぇえええええ!?」

バサッとガエリオンが羽ばたき、俺とリーシアを両腕で掬う様に飛んで逃げ回る。

錬が召喚した趣味の悪い金の像は巨大な拳の形となって降り注ぐが、既に俺達は範囲外に逃げ切っていた。

ちなみに後一分しか時間が残っていない。

かなりイライラしてきて、こっちも限界だ。

「おい。ささっと仕留めろ」

「ふぇええええ」

「ふむ、既に決着はついているぞ」

「何?」

「我が何も炎を吐きつけるだけだと思ったか?」

何を言っているのかと思った所で、空が赤く染まる。

なんと、上空から隕石の様な魔法の玉が降り注ぐ瞬間だった。

「く……」

錬の作りだした像は一瞬で溶解した。

「さて、盾の勇者よ。汝のする事はわかっておるな」

「なるほどな」

残り時間は少ないが、やれない事も無い。

ガエリオンも粋な事をしてくれる。

トドメは俺に刺させてくれると。

ククク、この瞬間をどれだけ待ち望んだことか。

「シールドプリズン!」

逃亡を図ろうとする錬に向けて盾の檻を出現させる。

おや、前使った時よりシールドプリズンの射程が長いな。

ラースシールドの影響か?

中からガンガンと音がする。

ま、今の錬では破壊するのに数秒は掛るだろうな。

それだけの時間があれば十分だ。

「チェンジシールド(攻)!」

盾はスパイクシールドに変えるとしよう。

バシンと錬にダメージを負わせる衝撃が走る。

「さて」

アイアンメイデンを放っても良いが……。

既にガエリオンが作り出した太陽は錬に向けて降り注ぐ瞬間だった。

「ぎゃあああああああああああああああああ――」

盾の檻が破壊され、錬の叫び声と太陽のごとき閃光が辺りを支配した。

永遠の様な一瞬の閃光。

実際の時間で5秒程度だったかな。

「コストの割に時間が短いのが短所だな」

俺達は焼け野原に降り立った。

ああ、ラースシールドからとっくに別の盾に変えている。

三〇秒を下回って、変化させ続けるほど俺は馬鹿では無い。

それに合わせてガエリオンは四メートルのサイズに戻った。

「跡形も残っていないんじゃないか?」

「我は加減などしたつもりはない。この程度で死するのであれば、それまでの存在だったという事だけよ」

「ふぇええ……剣の勇者様を殺しちゃいましたぁ」

ふん。知った事では無い。

「ぐは……」

声に振り向くと、黒こげになりつつ、割と五体満足の錬の仮面が焼き壊れた所で倒れた。

「タフだなー」

かなり頑丈だな、コイツ。

カースシリーズの恩威か?

これだけ派手な攻撃を受けたら跡形も無く消し飛べよ。

まったく……。

「さて、ガエリオン」

「うむ」

ガエリオンが徐に倒れた錬を踏みつけ、頭に向けて大きく口を開き、牙を立てようと――。

「何をしている!」

女騎士が怒鳴って近づいてくる。

「何って錬にトドメを刺させようとしているだけだが?」

「勇者を捕まえられるのなら捕まえろ!」

「逃げられるかもしれないだろ」

「だから逃亡を無効化したのであろうが!」

「ハッ! 俺は盗賊のボスを討伐しろと依頼されたのであって、剣の勇者を捕まえろとは言われていない」

「そういうのを屁理屈と言うんだ!」

キッと女騎士がガエリオンを睨みつける。

知った事では無いと噛みつこうとするガエリオン。

「やめて!」

今度は谷子が近づいて来てガエリオンに声を張り上げる。

「ダメだよガエリオン! 確かにその人は私のお父さんの仇だけど、そんな事はしちゃダメ!」

「何を言っているんだ! そいつは世界の害悪だ! 殺さないともっと人が不幸になる!」

俺が怒鳴ると谷子がぶんぶんと首を振って否定する。

「その人を殺したら、今度は私達が殺される側になるかもしれない。そんな繋がりなんてイヤ!」

「問題ない! コイツを殺したって喜ぶ者こそいるが悲しむ者はいない!」

「そんなはずない!」

まったく、谷子も正義面が鬱陶しい。

俺がどれだけコイツに煮え湯を飲まされてきたと思っているんだ。

「ウィンディアさん、それは違いますわ」

「え?」

「一度敵対してしまえば、もう引き下がる事はできません」

「どうしてよ!」

「今情けを掛ければ、そのツケはいつか尚文様に降り掛かります」

珍しくアトラが強い口調で言った。

そういえばアトラはハクコ種……武闘派の種族だったな。

更に言えばフォウルの話を聞く限り、武家辺りの考えを持っている可能性が高い。

どちらにしても、理想論で語る谷子より、アトラの方が俺は親しみを覚える。

「逆に答えます。今この方を殺めなければ憎しみが途絶えません」

「アトラ、貴様は何を言っているのだ!」

「では尋ねますが、どうしてこの方は尚文様に怨まれていらっしゃるのですか?」

「は……?」

「残念ながら私は尚文様の想いの全てを理解する事は叶いません。ですが、お優しい尚文様をこうまでさせるのです。相当な悪人だと思います。そして、この方が尚文様の障害であるならば、私は喜んで手を汚しましょう」

「貴様……その発想は危険だ!」

「なんとでも仰ってください。ですが、私はどんな事が有ろうとも尚文様の味方であり続けますわ」

アトラと女騎士が睨み合いを始めた。

とは言ってもアトラは目が見えないが。

「ふぇえ……やめましょうよぅ……」

リーシアはオロオロと場をうろうろするばかりだ。

理想論と現実論なんてどうでも良い。

俺は今、錬を殺したい。

「ガエリオン! トドメを刺すんだ!」

と、俺が指示した所でガエリオンは子竜モードに切り替わって俺の方へ飛んでくる。

「何戻ってんだ。さっさと殺せ!」

谷子がいるからか俺にじゃれる振りして耳元で囁く。

「我もそのつもりだったのだがな。一つ、思いだしたのだ」

「何?」

「不用意に勇者を殺してはならん。七星ならまだ良いが、四聖となるととんでもない事が起こる……はずだ。それだけは断固として阻止せねばならんと僅かな欠片にすら刻まれている」

「ガキの言葉に怖気付いたな! このヘタレ竜が!」