軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

仮面の男

「と言う訳で、Lv上げもしたし、盗賊狩りをしようと思う。宝を奪った後はLv上げを再開すればいい」

「ちょっと待て! 盗品をどうするつもりだ!?」

翌朝。

キャンピングプラントで休んだ俺達は盗賊が住み着く街道近くの山で準備を整えていた。

ちなみに突っ込みを入れてきた女騎士は無視した。

盗賊の宝は俺の物だ。

「精々40が限界だろうからな、盗賊は」

クラスアップは信用が無いと出来ない。だから盗賊のLvはそこまで高くない。

もちろん、ゼルトブルとかでクラスアップをした流れ者とかが居るかもしれないけど、今まで遭遇した試しはない。

コロシアムで実績が必要なんだろうな。

しかしコロシアムで稼げる奴が盗賊になるかと言われると微妙だ。

まあ知った事ではないけど。

「とりあえず、二人一組でアジトを探してくれ。ボスに関しては、まだ情報が足りない」

また聞きだし、盗賊は脅しで情報を聞かねば話にならない。

手始めに数名捕えないとな。

「えっと、リーシアとアトラ、女騎士と谷子で探してくれ」

「理由は?」

「特にない。イヤなら好きに別れてくれ」

「なんでガエリオンはアンタとなのよ」

「ボスは一人の奴を狙うらしいから、ガエリオンを偵察に出して、防御力の高い俺は囮だ」

「ああ、そう言う事か」

「そっちでも見つけたら魔法なり、照明を撃ちあげろ。ガエリオンに乗った俺が急いで追いつく」

「ガエリオンに危険な事をさせないで」

「空を飛ばすにきまってるだろ、メンバーの回収がガエリオンの役目だ」

「キュア!」

「なるほど、わかった。では行こう」

女騎士が納得して谷子の背に手を当てて歩かせる。

「アトラ、お前は察知能力が高いから頼りにしているぞ」

「お任せください」

「では、行ってきます」

リーシアも落ち着いているのか、アトラと一緒に探し始めた。

「さて……」

ガエリオンと俺も、盗賊のアジト探しを始める。

「ふむ……人の手が入った山だな」

「街道が近いからな、どこにあるか特定できるか?」

「多少は……だな、自然に出来た洞窟なのか、それとも砦でも作っているのか?」

「盗賊によりけりだな。今回の連中は洞窟だと思うぞ」

「なら難しい。この辺りは洞窟が非常に多い」

「そうか」

なんだかんだでガエリオンと話をする機会が増えている。

普通に話が通じるし、情けないドラゴンだけど頼りにしているのかもしれない。

というか、フォウルを除けば希少な男だからな。

正直、話していて楽なんだよ。

「では我も上空から人影を探すとしよう」

「任せたぞ」

「ああ」

バサァっとガエリオンは高らかに羽ばたいて飛んで行った。

ま、俺が盗賊の不意打ちで傷を負う事はないはずだから、この依頼も余裕だな。

なんて散歩気分で一人、山道を歩いていた。

そこに突然――

「アサッシングソード!」

「グハッ!」

いきなりの声と共に後ろからグサっと刺されて痛みが走った。

まあ、すっげー痛いで済む程度の攻撃だった訳だけどさー……。

血は出たな。鎧はなんか壊れたような音が聞こえた。

俺の防御を突破するって、なんだよ!

他の奴等だったら死んでいるんじゃないか?

「いってえな! いきなり何すんだ!」

ブンッと盾を振り回して俺を後ろから突き刺した馬鹿を凪ぐ。

バッと俺を突きさした奴の姿を確認する。

「正々堂々勝負だ……!」

「な――」

俺は自分でも信じられない者を見たと自覚し、絶句してしまった。

怪しい骸骨を模した仮面を付けて顔を隠しているが、体型、声、武器の構えから、仮面の人物の素顔が浮かんだ。

天木錬、剣の勇者が真っ黒な禍々しい剣を握りしめて構えていたのだ。

「チッ!」

気のせいか前見た時より装備が凄く貧相になっていて、仮面の隙間から見える目付きもやさぐれているのかおかしい。

いや、俺が言うのもなんだけど、そんな次元じゃない。

精神的に擦り切れているのか、瞳孔が開いているように見える。

「れ、錬!?」

「……ハイド……ソード」

ゆらぁと錬は陽炎のように姿を消した。

なんだ? 何か幻覚の魔法でも掛けられて変な幻でも見てしまったのか?

とりあえず、ハイドなんてスキルを使っている所であやしさ抜群。

だから俺も交戦状態に入る。

そもそも正々堂々勝負とかほざいておきながら、背後から突然切り掛かったり、姿を消すスキルを使うとか、どういう神経をしているんだ?

ゲームシステム上正々堂々とでも言うつもりか?

それにしても、妙に覇気の無い声だったな。

まあいい、今は敵に集中しよう。

「ヘイトリアクション!」

魔物を引きつけるこのスキル。実はもう一つ隠し効果があるのがカルミラ島で判明している。

それは軽度の潜伏魔法やスキルで隠れている相手を引き摺りだして正体を判明させる事が出来る。

ラフタリアが幻影剣を放つ時に、俺がヘイトリアクションを使った時だった。

ラフタリアの潜伏状態が解除されてしまったのだ。

だから隠れている場合は発見できる。

また俺の背後に回り込もうとしていたのか、錬が俺の左後方に移動している最中だった。

ちょっと間抜けな光景だが、逆にイラっとくる。

その手のスキルを使うなら一度離脱しろよ。

「く……」

「お前……錬だろ」

「…………」

これが幻覚だったら良かったんだがなー……まさかこんな所に潜んでいるとは。

もしかしてヴィッチが盗賊の親玉でもやっているのか?

……すげぇ似合う。

アイツは王女の器じゃない。

どちらかと言えば海賊とか盗賊がお似合いだ。

「羅刹・流星剣!」

流星剣のモーションで錬が俺に剣を振るう。

すると流星剣で飛び散る隕石のような剣の残滓が黒く俺に向かって飛んできた。

「チェーンバイント! チェーンニードル!」

ぐ……盾で構えたが、鈍い痛みが走る。

その隙に、錬が連続でスキルを放つ。

『その愚かなる罪人への我が決めたる罰の名は処刑による斬首也。叫ぶ暇すら無く、自らの首と胴体の分離に絶望するが良い!』

「ギロチン!」

いきなり地面から現れた鎖に体を縛られ、しかも鎖がとげのついた物に代わって俺の肌に突き刺さる。そして俺の頭上に巨大な刃の付いた処刑具が出現した。

この攻撃……雰囲気から憤怒の盾にあるアイアンメイデンと同系統の攻撃だと思う。

く……受けてたまる物か。

「ふざけんなぁああああああ!」

鎖を引きちぎって、降り注ぐ刃を手で抑える。

いってぇな。血が出たじゃないか。

だけど耐えられない攻撃では無かったようだ。

ぐ……だけどSPがごっそり削られてる。

「錬……いい加減にしろよ!」

俺もラースシールドに変えるか? 簡易的にメニューを開き、精錬画面を呼び出す。

実戦範囲は+4とレアリティR程度で十分だろう。

プルートオプファーを使うまでもない、アイアンメイデンで仕留めてくれる。

ボキンボキンと精錬失敗が連続する。

ふざけんな!

「ギャオオオオオオオオオオ!」

ガエリオンが異常事態を察知して降ってくる。

よし、そのまま錬を押さえつけろ!

「転送剣!」

「あ、てめぇ!」

俺が掴むよりも早く錬は転送スキルで跳躍して消える。

な、なんだったんだ?

錬のフリをしていた魔物か人か?

いや、俺の防御を突破出来るって相当の化け物のはず。

もしくはババアみたいな防御無視や防御力比例攻撃でも使わないとダメだろ。

真後ろからアサッシングソードというスキルを放ってきた。

スキルや名前から察するに隠蔽状態、ステルス、ハイディングからの必殺攻撃と見て良い。

しかも……なんかカースシリーズ臭い、禍々しい剣持ち。

突然、背後からの襲撃って……アイツはネットゲームに出没するPKかなにかか。

錬だと判明し、盗賊のボスがこの世界の住人では無いとわかった今、完全にやっている事がPK……プレイヤーキラーだ。

まあVRMMOとか言う怪しいゲーム出身だからな、アイツは。

そもそも、あれだけ酷い目にあって、未だにゲーム気分なのか。

俺じゃなかったら即死を通り越して、真っ二つになっているんじゃないか?

本当、反吐が出るな。

「大丈夫か?」

「ああ……だけど」

「そうだな、我も見ていたぞ」

ガエリオンが殺気を放つ。

谷子との生活、そして自分の命と妻を奪った宿敵だからな。

「なんなんだ、この山は」

とりあえず、受けた傷の回復をするために、俺は回復魔法を唱える。

ああ、ちなみにプルートオプファーの呪いの所為で、あのギロチンってスキルの攻撃は凄く痛かった。

しかも回復が遅い……。

谷子と合流して、サディナから教わったという聖水の能力向上魔法で辛うじて完治させるに至った。

盗賊探しをして僅か三十分。俺は今回の任務の先行きが非常に不安になるのだった。