軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ニックネーム

「よくよく考えてみればこうすれば良かったんだよな」

その日の夜。

俺はフィーロをベッドに招き入れて当たり前のようにラフタリアのベッドに居るアトラと酒を飲むサディナに告げた。

「えへへー……ごしゅじんさまに撫でて貰っちゃったー」

人の姿のフィーロが機嫌よく、俺に抱きついている。

「わかっているなフィーロ?」

「うん。アトラちゃんがごしゅじんさまのベッドに入ったら追い出すんだよね」

「そうだ。見逃したらお前を追い出すぞ」

「うん! わかった!」

変に連携を取られるのなら片方を優遇してもう片方を拒めば良い。

なんだかんだでフィーロは散々だったからな。少しは慰めてやらねばいけないだろう。

41まで下がったLvをあげ直さなくてはいけないし、本人のやる気を出さねばならない。

「ああ、尚文様。どうしてそのような試練を私に課すのですか?」

アトラがなんか悔しそうに言う。

そんなにまでして俺と一緒に寝たいか。気持ちがわからん。

「フィーロちゃんとは夜伽を成すなんて、私……とてもうらやましいです」

「夜伽ってお前なー」

俺は元康じゃないんだぞ?

アイツはフィーロがこんな状況だったらきっと犯罪にまで発展するような真似をするかもしれないが。

というかあの役立たず、結局フィーロの危機に現れなかった。

今度出てきたら文句の一つでも言ってやろう。

と、俺に寄り掛かってご機嫌のフィーロの頭を撫でていると、コンコンと扉を叩く音がする。

「なんだ?」

「失礼するぞ、盾の勇者」

……さも当然のようにガエリオンが扉を開けて入ってきた。

その後ろには呆れ顔にラトが同行している。

谷子がいないな? どうしたんだ?

「おい。お前の子供がいないじゃないか」

実子か養子かは知らんが重要な谷子がここに居ない。

「寝たのを確認してきたからに決まっておろう」

「私は研究所で研究してたら、いきなり誘ってきたのよ。伯爵と一緒に話を聞けって……驚いたわよ」

まあ、そうだよな。

ガエリオンがいきなり人の言葉を喋って付いてこいとか言われたらさ。

「正直、そこのサディナさんだっけ? あなたの変身を見た時よりも遥かに驚いたわ」

「あらー、お姉さんよりも驚愕ですかー」

後はアトラの反応か。

「アトラはわかるか?」

「はい。ずっとわかっていましたよ。ガエリオンちゃんの中に、いえ、根底にそのお方がいると言うのを」

「ああ、そう。何故言わなかった?」

「最初は気づきませんでしたが、あれ以来禍々しい気を放って、それからもう一度会った時に、確信に変わりました」

「へー……」

必要無かったから言わなかったとかそんな所か。言え!

「あなたも隠す様にガエリオンちゃんの中に潜んでいましたし、無理に呼び出す必要はないかと」

「ふむ……さすがはハクコか、我の状態を見抜くとはな」

「むー……」

フィーロがガエリオンを睨む。

「フィロリアルの次期女王か、我の核を貪るからそうなるのだ。愚か者」

「フィーロの経験値返して!」

「ふむ……しょうがないか。とはいえ大半が混ざってしまったから我慢するんだぞ」

ガエリオンは何をするかと思うと、腹を抑えて大きく息を吸い……ってモーション的にブレスじゃね?

ペッと飴玉のような大きな塊を吐き出した。

「それを舐めれば少しは戻る。だから黙っておれ」

「ぶー」

フィーロはガエリオンが吐き出した飴玉を手に持って見つめながら抗議している。

まあ、返す量が少ないよな。

「で、俺に話とはなんだ? ガエリオンはお前が演技していたのか?」

「話は色々とある。この体の持ち主は、一応、お前の知るガエリオンでもある。いずれ成長した時、我と自我を融合していく事になるがな」

「無理やり?」

「な訳なかろう。体の持ち主も求めているのだ。盾の勇者、お前が卵を温めた時からな」

「ああ、そう」

そういや、なんか変な夢を見たような気がする。良く思い出せないがコイツの声だったと思う。

「元々、我との自我融合を少しずつしていたのだがな、我の核の欠片を食らった途端、汝の憤怒が我を乗っ取って暴れ出した」

「古巣へ飛んで行ったのは?」

「我の記憶を確かに、飛んで行ったのであろう。あそこで汚染された大地の気を吸収し、力を蓄えたら殺すべき相手を探して暴れ回るようであったぞ」

「殺すべき相手?」

「汝が何よりも憎い相手、と言えばわかるか?」

ああ……そう言う事ね。

ヴィッチとクズを探して飛びまわる予定だったと。

間接的に俺の怒りが国を滅ぼす事になるはずだったんだな。

色々とヤバイ状況だった訳だ。

「こうして表面に出ていられるのも、長時間は無理だ。だからある程度簡潔に説明するぞ」

んー……要約すると、二重人格状態で、普段は子供の方のガエリオン。状況によって、このガエリオンが出る訳か。

「ちょっと待って、ドラゴンって死んでもそうやって意識を継承できるわけ?」

「一部はな。一応我は不滅に等しい」

「不滅って……純血種!? あの山奥で縄張りを作っている。あの純血種?」

ラトがイヤなものを見る目でガエリオンに尋ねる。ああ、ドラゴン嫌いだものなぁ。

「どんな言い方をしようが、我はその純血種だ」

「へー……その割に、錬、剣の勇者に殺されたのな」

多分、時期的に40前後の錬に負けた事になる。

しかもアイツは他の勇者から強くなる方法を実戦できていない。

つまり、元々のガエリオンは相当弱い。

「しょうがあるまい。我は竜帝の欠片の中で最弱なのだ」

「は?」

~~は四天王の中で最弱。

という有名なフレーズを思い出す。

自分で言っては話にならないと思うのだが……。

最弱を自慢するドラゴンってカッコわりぃ。

「竜帝の欠片?」

「……どうやらドラゴンの生態を知らぬようだな。そこから説明するとしよう。いや、そこの巫女に聞いた方が早いか?」

ガエリオンはサディナを指差して呟く。

「巫女?」

「見た所、他の竜帝から加護を受けた者であろう? 違うか?」

「はーい、巫女でぇーす。だからお姉さんは龍脈法を使えまーす」

ぐー、ぱー、と、手を開けたり閉じたりしながらサディナは雑魚寝気味に答える。

やる気が感じられねぇ。

「私も聞いた話だけどね。竜帝ってのはずいぶん昔にフィロリアルの女王様にバラバラにされているのよ」

「へ、へぇ……」

既に没している存在な訳か。

派閥争いでフィロリアルとは仲が悪いらしいからなぁ。

「でもドラゴンの生命力っていうか……ドラゴンって元々、始祖は一匹の存在で、それ以外は全部雑種。純血種が竜帝と名付けられていただけなのよ。どんな生き物とも交配出来て、子孫を増やす。そして駆逐しようがどのような方法でも必ず生き残るしぶとい生命力を兼ね備えている」

「なんともしぶとい生き物だな。ゴキブリみたいだ」

「だから、バラバラにされた程度じゃ死なない訳。たぶん、そこにいるガエリオンちゃんはそのバラバラにされた竜帝の一部を継承しているって事かしらね」

「ふむ、大体間違いが無い。我も自身の弱さは確信しているからこそ、同じ竜帝に奪われないため、人里近くに巣を構えていた訳だ」

弱くて仲間はずれにされたから、人里に下りてきた熊みたいな奴だな。

話せば話すほど情けないドラゴンだ。

偉そうに語ってコレかよ。最悪だな。

「ここからが重要なんだけどねー。純血種同士が争うと勝った方に竜帝の欠片が移るらしいわ。そうやって数百年の時を掛けて欠片を集めて復活しようと頑張っているみたいよー」

「そう言えば……勇者の伝説で復活した竜帝を倒すって話が何個かありますよ尚文様」

「……欠片を争奪する戦いで同族同士の殺し合いはせぬな。次世代への繁殖能力を失うが」

「狙われるのがイヤなら渡せば良いだろ」

「それがイヤだから逃げてきたのだ。さすがにどの竜帝の欠片も人里に下りるなどと言う愚かな真似はせぬ。下手に欠片を集めようものならまた引き裂かれるのでな」

情けねー。

この竜帝自体が既に負け組じゃねえか。

「私の知る情報はこんなもんよー」

「では我が補足をするとしよう。我はその竜帝の欠片の一つ、だからこうして継承し、今の我は存在する。本来は交代する器を探す予定だったのだがな。あの状態では理性など無い」

錬や他の連中は、要するにガエリオンの前世を素材としてしか見ていなかった。

だから体内を潤滑している竜帝の欠片には気づかなかった。という事か。

で、その欠片の魔力で肉体を再構成させて動き出した所を俺とフィーロに倒されて、封じられていた訳だ。

結果、盾に吸われた竜帝の欠片が盾を介して子竜の卵に移り、欠片を集めて完全復活……するはずが盾に眠っていた俺の憤怒に乗っ取られたと。

なんとも情けない。

コイツの評価を下げねばならないな。

「まあ、我の事など良いのだ。よくぞ、ウィンディアを助けてくれた。そして立派に育ててくれた事を感謝するぞ」

「ウィンディア? そういや、お前が呼んでいるその名前、誰の事だ?」

一応、見当は付くが判断材料が足りない。

「ぬ? まさか汝、ウィンディアの名前を知らずに育てていたとでも言うつもりか?」

「あの魔物馬鹿の奴隷だろ? そんな名前だったのかってな」

「いやいや、伯爵。もしかしてこの村に居る子達の事、名前を知らないの?」

「知っているのも居るが、知らないのも多いな」

ラフタリアは除外してキールとかフォウル、アトラとかその辺りしか覚えていない。

それ以外は結構あやふや、別に名前を呼ばなくてもどうにかなるし。

言われて見れば知らない奴の方が多いな。

結構話をする女騎士ですら名前を知らない。

「伯爵、ウィンディアの事を心の中でなんて呼んでるの?」

「たぶん、谷子」

「なんで!?」

「凄いニックネームねー。私はふんどし? それともオデブ? そ・れ・と・も愛人子?」

うっぜー悩殺ポーズでサディナが俺に尋ねてくる。

これで人型になっていたら殴りに行っているな。

「ちゃんと俺の前で名前を名乗ったり、他の奴が呼んだりすれば覚える。あいつは何時も名前で呼ばれていない」

「あー……そういえばそうねー。あなたとかそこの、とかで呼んでいる事が多いわね」

「ねえナオフミちゃん。他になんて呼んでいる子がいるの? お姉さんに教えて」

「料理担当、イミアの叔父、ババア、他にも色々だな」

「わぁ大変ねーナオフミちゃんってこだわらないから良いのだろうけど、その名前で呼んじゃダメよ」

「ババアは良いだろ」

「誰かわからないわよ」

「戦闘顧問」

「確かにおばあちゃんね」

「尚文様、私やお兄様はなんて呼んでますか?」

「アトラはアトラだな。フォウルはアルプスと呼びそうになった」

「だからなんで!? 伯爵の名づけの由来がわからない」

「そりゃあそうだろうよ」

俺の世界のアニメを基準にしている訳だし、推理できるとしたら他の勇者だろうよ。

しかもアイツ等の世界にそのアニメがあるかは未知数だ。

「フィーロはー?」

「聞きたいか?」

「んー……」

「ちなみにガエリオン。お前はピンポンダッシュだ」

「名前よりも長い! 名前の由来がわからん」

ピンポンダッシュが呆れながら抗議する。

ピンポンダッシュがピンポンダッシュしたのはどっちのピンポンダッシュだったんだろうな?

う~ん、この名前は使い辛いな。

「まあそんな話は良いんだよ。で、一応聞くが、あいつってお前の実子?」

「そんな訳なかろう」

「じゃあ犯す為に赤子のうちから誘拐したんだろ。お前情けないし」

谷子のドラゴン妄信具合からそうなってもおかしくはない。

それこそ小さい頃から如何にドラゴンが高貴で崇高な種族なのかを語り、娶るつもりだったんだろう。

仮にガエリオンにその気が無かったとしても近親相姦になったのは確実だな。

こういうタイプはああだこうだ理由を付けておきながら、最終的にくっつくのがお約束なんだよ。

「貴様が言うのか! 殺すぞ! ウィンディアは小さな頃に――」