軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

正夢

フィーロを連れたリーシアと別れ、俺とラフタリアは奴隷商について行く。

裏通りを抜け、見えてきたのは大きなコロシアム。

石造りのドーム球場みたいな建物で、入口には屈強な男が見張りをしている。

どうやら人気があるようで人がズラッと並んでいる。

「こちらですよ」

と、コロシアムの裏口へと歩き、そこを見張っている男に奴隷商は軽く挨拶をする。

男は道を開けて、俺たちを通した。

「ここは表面上コロシアムなのですけどね。地下には奴隷の販売を行う裏の会場なのです。ハイ」

「ほー……」

「まあ、この国のコロシアムの大半はそうなのですけどね。組合ごとに扱っている商品が異なりますです。ハイ」

「お前の所は?」

「言うまでもなく、メインは奴隷でございます」

人間も亜人も関係ないと……。

しばらく歩いていると地下へ続く階段があって、下りる。

歓声が上の方から響いて聞こえてくる。

結構繁盛しているみたいだな。

「上の方は傭兵と奴隷……後は魔物のコロシアムです。ハイ」

「いろいろと扱っているんだな」

「その日によって行われる決闘が異なりますゆえ。他に大食い大会なども開催される事がありますです。ハイ」

「フィーロを参加させたかったな」

あの食欲魔人がどれだけ行けるか見ものだ。

食費が浮いて、金も手に入るし。

まあ……負けたら相応のリスクがあるんだろうが。

「それは面白い結果になったでしょうね。どこかでやっているかもしれませんです。ハイ」

屈強な男に変な指示を出す奴隷商。お前の台詞に乗っただけなんだが。

「盾の勇者様の場合は飲み比べの大会に出るのがよろしいかと、難点はヤラセを疑われてしまうかもしれませんが」

「ここで有名になるのも一つの手だが……」

ルコルの実をそのまま食ってれば勝てるらしいけど……食っていると周りが吐き気を催す分、あまり食いたくない。

大体どの程度までアルコールが大丈夫なのかもわからん。

盾の勇者は酒の飲み過ぎで中毒死、とかシャレにもならないだろう。

元々酒は好きじゃないし、その方向はなしだな。

「で? まだなのか?」

「そろそろです」

そう言われて、階段を降り切ると、石造りの廊下の先に無数の檻が見えてくる。

奴隷商のテントよりも多い檻の数だ。中には人間、亜人関係なく奴隷がひしめき合っている。

その牢屋の先に小部屋が見える。そこには今か今かと屈強な男とここの商人が待っていた。

「おー……メルロマルクのー」

「おー叔父よー」

俺は我が目を疑う。その……奴隷商が再会を喜んで抱き合っている相手だ。

奴隷商は燕尾服を着たメチャクチャ肥満体のサングラスを着けた変な紳士なのだが、もう一人の商人もまったく同じの体型で顔も殆ど同じ。唯一の違いは眼鏡と燕尾服の柄だけ。

「ナオフミ様、私、目がおかしいのでしょうか?」

「奇遇だな、俺もだ」

一族経営だと言っても、そこまでそっくりってなんだよ。

やばい、一族全員が揃った姿を見たいとか思っちまった。

正夢になっちまったな。

どこかのアニメで似たような一族経営の治療施設のお姉さんがいたけど、これは……。

同じ格好をされたら見分けがつかないぞ。

「と言う事で、勇者様を招待した私の叔父です。ハイ」

「これはこれは盾の勇者様、はじめまして、とても楽しそうな表情とその瞳、私、惚れてしまいそうです。ハイ」

「やめろ!」

やべぇ。本気で鳥肌が立った。今すぐここから逃げたい。

意味も無く帰るのはむかつくので我慢して反転しようとする足を止める。

「奴隷の扱いが上手そうな声……ゾクゾクします。私の娘の婿になってくださいませんか?」

奴隷商を女にしたような奴を俺は想像する。

「勘弁してくれ……」

「そうです。ふざけた事を言うためだけにナオフミ様を呼んだのですか!?」

ラフタリアが怒りながら言い放つ。

ああ、同じ村の仲間を探しているんだしな。怒るのも頷ける。

もっと拒め、そうすればうやむやにできる。

「はっはっは、冗談ですよ」

「叔父も人が悪い」

「はっはっは、お前程では無い」

二人揃って笑っている。

不気味だ……。

「話を戻せ」

「おお、そうでしたな。盾の勇者様に提供したい商品はどのような物で?」

「なんだ。もうその話をするのか? もう少し勇者様と親睦を深めたいのですが。ハイ」

「それは叔父次第です。ハイ」

ハイハイハイハイ……この問答、何時まで続くんだろう。

もう本気で面倒だ。帰って良いか?

「ふむ……お前がほれ込むほどだからどんな方かと思ったら、なるほど……」

「俺の何処にそんな魅力があるんだ?」

つくづく、奴隷商の勘とかセンスが今一わからない。

理由はわからないが、俺が何をしても肯定するんだよな。

逆に何か裏があるんじゃといつも警戒しているが。

「フフフ……何処まで行こうとも、あの禍々しき気は拭えませんです。ハイ」

「俺は邪悪の権化か何かか?」

「いえいえ、奴隷使いとしての資質でございますよ。我らの先見の眼が訴えるのございます」

「この方は奴隷を生かさず殺さず、喜んで死地へ行かせるカリスマを持っていると」

兄ちゃんーごはんー。

ごしゅじんさまーごはーん。

盾の勇者様ーご飯ー。

なんでアイツ等の飯催促が頭に再生されるんだ?

あれがカリスマ?

……気にしたら負けだ。

「ふむ、ここまでのお方となると、あの話は無かった事にするべきでしょう」

「何が?」

「いえいえ、こちらの話です。ハイ」

「何かあったのです? ハイ」

「実はな――」

奴隷商同士が囁き合っている。

あれ? どっちが一緒に来た方だっけ?

「シル――ル――……」

少ししか聞き取れないな。

何を話しているのだろうか。

「なるほど、それは断るべきでしょう。ハイ」

「なんの話だ?」

「試すというのはどうでしょう?」

「それなら先方も納得するでしょうな」

「聞けよ」

奴隷商ズが俺の方を見て揃って笑う。やめろ。

「ではこちらです」

この国の奴隷商が案内を始める。

俺たちはその後を付いて行く。

一体何を話し合っていたのやら。

「こちらです」

と、案内された先の檻を見る。檻と言うか牢屋か。

見た感じ、牢屋の中に……鬼みたいな角の生えた亜人の女性が座っている。

肌は褐色で、顔のつくりはかなり良い。

体格はやや大柄だ。

胸も大きく、絶世の美女と呼ぶに等しい見た目……か?

顔色も妙に良いな。

こう言うのって、俺が望む奴隷じゃないな。

「俺は性奴隷に興味が無い」

「いえいえ、亜人種の中でも戦闘は出来るキキ種でございますよ」

「あれでか?」

何やらこっちに営業スマイルを浮かべて手を振っている。

なんか寒気がするぞ。あの奴隷。

思わずぶん殴りたくなるタイプの顔だ。

いや、アイツからすれば迷惑な話だろうけどさ。

「高そうだし、いらん」

俺の返答にその奴隷がムッとしたような表情になる。

「いえいえ、お安く提供させていただきますよ」

「それでもなぁ……」

なんかイヤ。というかアイツを奴隷にしたくない。

奴隷でも何か、後に引っかかるというか、ビッチを彷彿とさせる不快感が強い。

「では次の奴隷にしますか?」

「ああ、悪いが断る」

「なんでよ!」

奴隷が怒鳴る。

プライドでも傷付けたか?

性奴隷の分際で言動が全く理解できないな。

「お前は俺の好む奴隷じゃない。それだけだ」

「ロリコン!」

罵声が五月蠅いな。というか……。

俺は奴隷商ズを睨む。

サッと目線を外された。

「ロリコンとは、まるで俺の事を知っているみたいな物言いだな?」

俺の返答に奴隷の奴、口を噤む。

やはり何か裏があるのか。

これでも自分を客観的に見ているつもりだ。

購入する奴隷はみんな子供、そして女であることが多い。

全くの偶然だが、最近の悩みだ。

「あの、ナオフミ様? あの方は何処の国の言葉を使っているのですか?」

「ラフタリアにはわからないのか?」

「はい」

そう言えば盾で翻訳する機能があるんだった。

この世界にも複数の言語があるみたいだが、便利な事に盾はその全てを翻訳するみたいだ。

で、メルロマルクの公用語って確か……人間の多い国で使われている言語のはず。

もしや……。

「まあ気にする必要は無いな」

「どうしてよ! なんで私を拒むのよ!」

とか、怒鳴る自称奴隷を無視して俺は奴隷商ズに続いた。