軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔物問題

帰りの馬車に乗ろうとした所で影が現れる。

「久しぶりでごじゃる」

「なんだかんだで見張っているんじゃないのか?」

「まあ、そうなのでごじゃるが」

相変わらずの奴だ。

「拙者らも勇者の捕縛に関して、女王に報告せねばならないでごじゃる」

「そうだな、実質、何処へでも逃げられてしまうからなぁ。クズに付けていた首輪で阻止とかできないのか?」

あれってしゃべれないようにしているのなら沈黙も出来そうだよな。

「確かにアレで黙らせる事は可能でごじゃるが、耐久力が無いでごじゃるよ」

ああ、そういう難点があるのね。確かに、奴隷紋みたいな拘束する事が出来ないと、破壊されて逃げられてしまうか。

クズが壊さなかったのは、壊したら女王に更に罰せられるからか……。

「では失礼するでごじゃる」

と、影は消えた。早急に対処しなくちゃいけない問題だもんなぁ。

俺の知るネットゲームだと転送禁止エリアとかそう言うのを妨害するスキルがあったけど、この世界じゃどうなんだろう。

詠唱とかあんまり必要ないみたいだし、止めるのは難しそうだ。

ただ、戦闘に使っていない所を見るに、乱発は出来ないはず。

その後、女王から有効な手段が見つかるまでは捕縛は見送るとの指示が来るのはすぐの事だった。

余計な刺激をして他国に亡命されたら困るからなぁ。

村に帰ると、新しく来た奴隷たちも少しずつ慣れ始めたようで、楽しげに仕事をしていた。

「おお、帰ってきたか」

女騎士が出迎える。

俺はラフタリアとフィーロに各々、村での仕事を手伝うように指示してから話をする。

「聞いたぞ、失敗だったんだってな」

「早いな……転移スキルで逃げられた」

「勇者は便利なスキルが使えるな。イワタニ殿は使えないのか?」

「該当する盾が分かれば使えると思うが……同様に阻止の方法がなぁ……」

かなり厄介な相手だ。どうしたら良いか見当もつかない。

自分だったらと考えると迷わず使う。

「とりあえずは……気にせずいくしかないだろうな」

前進できないような煩わしさを思いつつ、波に備えた準備をするしかないのがもどかしい。

「リーシアは何をしているんだ?」

樹の布教とかしていたら張り倒す所だが。

「一生懸命新しい奴隷の育成をしているよ」

「ほう……」

「所でイワタニ殿はこの地の領主が住んでいた町の復興はしないのか?」

「ああ、そっちの町ね」

この一帯は波の影響で廃村や廃墟になっている建物が多い。女騎士が言ったのは、この村の隣にある町の事だ。

被害がこの村よりはマシな程度で、石垣は壊され、領主の屋敷には火が放たれた形跡まである酷い物だ。

「女王からそこの復興はしないのかと尋ねられた」

「一応、奴隷以外の連中が住む町として計画はしている。補修してくれるのなら勝手にやってくれても構わない」

「そう言うだろうと思って移民を希望する連中に先行させてある」

「移民?」

「イワタニ殿の活躍でな、領地に住みたいと望む連中も増えてきているんだよ」

「現金な連中だな」

「一応、リストは作ったぞ」

女騎士から志願者の書かれた紙を手渡される。

……リユート村の連中多いな。他には……霊亀の進撃で破壊された村や町の連中とか、色々と居る。

「まあ、良いんじゃないか」

「後で顔だけでも出してほしいとさ」

「ふむ……」

舎で休憩中のフィロリアルの喉をさすりつつ頷く。

「クエエエェ……」

成鳥のフィロリアルって本来「グア」って鳴くんだよな。

こいつも変な育ち方をしている。フィーロの眷属だからか?

それともキャラ被ってるとか?

と、フィロリアルを撫でているとフィーロが恨みがましい目線でこっちを睨んでいる。

「ごしゅじんさまはなんでその子を撫でてるの?」

「ん? 別に他意は無いな」

「じゃあフィーロも撫でてー」

近づいてくるフィーロ。

面倒くさいなぁ……。

適当にフィーロの顎のあたりを撫でるのだが……普通のフィロリアルよりも羽毛が深い。

「そうだ」

「ん?」

「このフィロリアルはなんで「クエ」と鳴くんだ? グアだろ?」

「えっとねーフィーロの眷属だから少し弄ったの」

弄った……いとも容易く行われる改造行為と。

「……具体的には?」

「お腹一杯食べられるよ」

凄く、どうでも良いです。

「後ねー……泳ぎも上手でー……他の子よりも潜在的に少しだけ引く力が強いよ。その分、少しだけお腹空きやすいけど」

じゃあ、このフィロリアルは実質……新種なのか。

「ごしゅじんさまの要望があればもう少し弄れるよ?」

「うー……ん、考えとく」

燃費が他のフィロリアルより悪いとは……それも問題だよな。フィーロの目には眷属がバイオプラントの改造時の画面みたいのが映っているのかもしれない。

「クエエエエェエエ」

すりすりとフィーロと一緒に俺にすり合わせてくるフィロリアル。

名前はなんだったか。

奴隷達が勝手に名付けていたな。

「で、他の眷属と区別を付ける為にクエって聞こえるんだよ? ごしゅじんさまは聞こえない範囲で識別できるの」

人間の可聴域外での認識番号のような扱い?

確か俺の世界にもそういう動物の話があったな。

何の動物かは知らないが。

「じゃあグアってのは」

「フィトリアの眷属かなー」

なるほどねー……。

「ついでに聞くか、お前にもしもの事があった時、こいつはクイーンかキングになるのか?」

「フィーロはならないよ!」

フィーロがムッとしたように怒鳴る。

不用意な発言だったか。まあフィーロが死んだ後の話をしている訳だからしょうがないんだが。

「いや、だからもしもの時だ」

「むー……」

頬を膨らませてすねるフィーロ。

「えっとね。ごしゅじんさまが望めば……なると思う」

「そうか」

という事は最悪、フィーロにもしもの事があったら後に続くフィロリアルが急成長して補填する訳か。

いや、このフィーロの言い方だと……。

ちらっとクイーン化しないかなと考える。

「クエ!? クエエエエ!?」

ざわざわとフィロリアルの羽毛が逆立つ。

「ごしゅじんさま!? 何考えてるの!」

おお、割と思考が反映する速度は早いな。とりあえずやめておこう。

すると逆立つ羽毛が収まった。

「むー……」

フィーロはなんかすねて地面を蹴ってる。

「ごしゅじんさま最近、なんかフィーロの扱い悪くない?」

「悪くないが、ペラペラ喋る位ならクエの方が可愛げあるな。お前も喋らないでクエクエ言ってる分なら可愛がってやるぞ」

「やー!」

そこまでして喋りたい理由が分からない。

とにかく、フィーロの眷属はクエと鳴くように聞こえるらしい。

「なあ……なんかすさまじい会話をしていなかったか?」

女騎士が唖然とした表情で俺達に呟く。

「そうか?」

「フィロリアルとは不思議な生き物なんだな」

「神鳥なんだろ?」

「そう言い伝えられてはいるのだが……眉唾ものだと思っていた」

考えを改める必要がある。と、女騎士は呟いた。

フィーロで慣れてしまったが、普通のフィロリアルって馬と同じく足代わりなんだよな。

「そうそう、話は戻るが、近隣に町が出来る訳か」

「ああ、そうなる。領主なんだから管理してくれ」

「面倒だがしょうがない」

この辺りの復興も進んでいくという事なんだな。

……そうそう、最近、大きく頭を悩ませつつある問題があった。

「なあフィーロ」

「なーに?」

「キャタピランドには何もしていないし、フィロリアルみたいな社会構成は無いよな?」

「さあー?」

どうも……キャタピランドの方も成長がおかしくなってきているんだよなぁ……。

Lvは25、普通のキャタピランドにしては大きい。

横幅もあって、大きな芋虫でしかないのだけど……奴隷たちと一緒に三匹のキャタピランドが増えすぎたバイオプラントの幹をなぎ倒している。

……あれ?

一匹、二匹、三匹!?

何度数えても一匹多い!

「誰だ! 勝手にキャタピランドを増やした奴は!」

遊んでいる奴隷がハッと驚くようにキャラピランドを一匹隠す。しかも隠した奴が一番大きい。

「もうおせえよ!」

一体何時の間に!?

「やべ、ばれた!」

「ばれたじゃねえよ!」

しかもステータス画面を確認出来るってことは、俺が管理している事になっているじゃないか!

一人の新しく来た奴隷の少女が全身を使って隠れていないのに隠す。後ろにはバイオプラントの畑。

どこかで見たような光景だ。

「いないわ! そんな子いないわ」

「でけえんだよ! 隠れきれてねえよ!」

何が、いないわだ。何処の谷の少女だお前は!

後ろのキャタピランド、他の奴よりもでかくて、あの蟲みたいだよ!

「ほら、反省!」

俺が指示すると奴隷共が俯いた。

「さて、経緯を聞こうか」

「あのな……別に盾の兄ちゃんを怒らせようとした訳じゃないんだ」

キールが前に出て、女の子を庇う。

お前もか。

「というか……どうやって俺の登録を掻い潜った!」

「えっと、新しく奴隷が来た時にさりげなく混ぜた」

「お前らなー……」

「奴隷を売ってくれる人が」

「奴隷商ー!」

何時の間にやりやがった! あの時は血を混ぜたインクを登録していて、気がつかなかった。

というか、もしかしてあの自己主張はこれを隠すためだったのか?

「なんで奴隷商が……」

「みんなで最初に見つけた卵だったの!」

「は?」

話を聞くとこうだ。

みんなでLv上げに行った所、魔物の巣があって、卵を拝借したそうだ。

で、村に持ち帰ったのは良いが、どうやって育てようかと話になった。

「ラフタリアは知っていたのか?」

「知りません!」

「ラフタリアちゃんに話したら兄ちゃんに報告するだろ」

「お前な……」

魔物の親として登録していない卵を孵化させるのは危険だとさすがにみんな知っていたからどうするか悩んでいると、ちょうど奴隷商がやってきた。

そして俺が行商中に小遣いとしてやった小銭を集めて奴隷商に登録を頼んだそうだ。

すると奴隷商の奴、この中の者が登録するよりも俺の管轄にした方が丈夫で優秀に育つと囁き、結果……こうなった。

うん。意図的に大きくなりすぎないようにLv調整させたキャタピランドのはずなのに、このキャタピランドでかーい。

他の個体の1.5倍だ。どうしようか。Lvも高い。

「殺さないでー!」

「そこの谷っぽい奴! うるさいだまれ!」

「谷ってなんだよ兄ちゃん!」

ああもう……こいつ等勝手にやりやがって。

一応、損ではないが、勝手にやられると困る。ヒシっと谷の姫っぽい台詞を連呼する奴隷がキャタピランドを庇う。

「あのな、勝手な事されると、みんなは元より俺が困るの! どうしても育てたい場合はちゃんと報告しろ!」

元々奴隷商に依頼している分もあるし、二度手間になりかねない。

「あと、ちゃんと面倒みるんだぞ。他の奴に任せているのを見たら、速攻で売るからな」

「う、うん!」

まったく……次から次へと問題を起こしやがって。

「ほら言っただろ! 盾の兄ちゃんは許してくれるって」

「え、でもキールちゃんが、盾のお兄ちゃんにバレたら売られるって言ってたよ。金の亡者だから絶対売る。だから内緒にしないとダメだって」

「ちゃん付けで呼ぶな!」

「お前……」

どいつもこいつも……。

ん? さり気なく聞き流したが、さっきコイツ等『最初の卵』って言わなかったか?

「卵はコイツだけなのか?」

「ううん」

「ううん!?」

奴隷共が首を横に振る。

頭いてー……。

結局、魔物の巣と言うのを見つけるのが上手いのか、みんなが寝ている奴隷用の家の床下に魔物卵が出るわ出るわ。

「お金が溜まったら奴隷を売ってくれた人が加工してくれるんだ」

「多いな……勝手に孵化したらどうするつもりなんだ!」

それだけで大災害だぞ。

いや、生まれたばかりの魔物なんて駆除は簡単か。

「そうだけど……」

「はぁ……とりあえずは何の卵なのか鑑定しないとな」

というか……野生の卵ってあるんだな。考えてみれば当たり前だ。

使わないのは料理の材料とかにするのも手だな。言ったら怒られそうだけど。

「全部キャタピランドか?」

「さあ? いろんな所から拾ってきたから分からない」

「そうか」

色々と悩ませてくれる連中だ。安くすませそうだけど、奴隷商に後で言っておかないといけないな。