軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脱走と発見

飯を食わせ、奴隷商も帰り、夜もだいぶ過ぎた頃。

「ねえ? 本当にやるの?」

「あ、当たり前だろ」

「でも……みんなやさしくてご飯美味しかったよ?」

「いや、あいつ等は絶対に騙そうとしているんだ!」

家の外が騒がしいな。

暗くてよく見えないが、新しく入った奴隷が何やら畑の方へ走っていく。

「はぁ……はぁ……」

なんか緊迫しているような雰囲気だな。

一体何をするつもりだ?

ガサガサとバイオプラントの畑をかきわけて行く。

……。

「「「わぁああああああああああああああ!?」」

あ、設置していた防衛策に引っかかった。

悲鳴に他の奴隷たちが家から出てきて畑の方へ様子を見に行く。

はぁ……一応、俺が出ていかないといけないんだろうなぁ。

「盾の兄ちゃん。なんか悲鳴が聞こえたんだけど」

俺が家から出るとキールが心配そうに駆け寄ってきた。

ラフタリアは先に様子を見に行ったようだな。

「大丈夫だ。死にはしない。最悪の可能性に備えて予防線を張っておいただけだ」

「最悪の可能性?」

「奴隷紋でも縛れるが、それだと細かい命令を出来ない問題があるからな。まあ、要するに脱走だ」

そう、奴隷紋で脱走自体を禁止する事は可能だ。

敷地から出たら即、死を行う事まで可能だが、さすがに安くない金銭で買った奴隷を殺すのはまずい。

それに俺が指示する奴隷の使い方は村の外へ行商もさせる予定なんだ。だから夜間に村に居る奴隷全員に掛ける程度で、罰則も胸が苦しくなるしか設定していない。

「「「わぁあああああああ! た、助けてー!」」」

脱走をしようとした奴隷三人に土壌整備用の魔物であるデューンが地中から出て、巻きつき、宙吊りになっている。

デューンに指示を出しておいたのだ。定められた敷地から逃げ出した場合はその者を捕縛するようにと。

「いきなり脱走とか、元気な連中だな」

「ナオフミ様!」

ラフタリアも状況を知って切迫した表情で合流した。

今回の脱走騒ぎはいつか起こると思っていたんだが、予想より遅かった。

というのも、ラフタリアの旧友連中はなんだかんだで俺に懐いたからな。

それに元々住んでいた場所というのも大きいのか。

「さてお前等、脱走をして何処に行こうとしたんだ?」

宙吊りのままの奴隷に向かって俺は尋ねる。

「だ、誰が話すもんか!」

リーダーをしている男の子奴隷が答える。

ふむ……元気だけはあるようだ。

キールと良い勝負だな。

「あっそ、話さない限りそいつらと遊んで貰うがそれで良いのか?」

「ぐ……」

ちなみにデューンにも個性があって、見た目はでかいミミズだけど、人懐っこく遊び好きだ。

こういう抵抗する子だったら一晩中だって遊び続けるだろう。

正直、脱走まで企てる奴隷を養う義理は無い。さっそく奴隷商に売っても良いが、チャンスは与えるつもりだ。

「ほれ、話せ」

「だ、誰が話すもんか!」

「そんな様子だと、俺の配下の餌にするぞ?」

それとなく俺は様子を見ているフィーロを指差す。奴隷共がフィーロを中心に距離を取った。

「え? フィーロちゃん人も食べるの?」

「食いしんぼうだもんな」

「盾の兄ちゃんに歯向かうと餌に? マジで?」

ヒソヒソと奴隷共が囁き合う。

人型でボケっとしているが、空気を読んで魔物の姿に――。

「やー!」

フィーロの奴、拒否しやがった!

ここにきて教養を学んだとか? まさか……余計な知識を。

ラフタリアが奴隷共に小さく囁く。

「ナオフミ様は……あんな事を言いますが……」

「やっぱり?」

「盾の兄ちゃん、なんだかんだで甘いもんな」

「聞こえてるぞ。お前等!」

まったく、これじゃあ威厳も糞もないじゃないか。

「……」

捕まった奴隷のリーダーも微妙な顔している。

空気を読めっての。

「だが、魔物の餌にするのは本当だぞ? 命令すれば餌にする奴が居ない訳じゃない」

キャタピランドにしろ、デューンにしろ、餌だと言えば食うかもしれない。

魔物舎の方に目を向けるとキャタピランドが寝息を立てている。

あれって、蝶とかになるのか?

余計な考えを捨てろ。

デューンは子供奴隷を相手に遊んでいる。

でかいから脅しには良いだろ。十八禁のゲームとかだと芋虫やワームって凌辱に使われたりするし。

「さあ話せ」

「ヒィ!」

「ほら、話さないとデューンが腹が減ったと食いかねないぞー」

村出身の奴隷がデューンに名前を勝手に付けて『食べないよね?』と囁き合っている。

土しか食べないとほざいているが、それは余所でやれっての。

「最悪、もう一匹のフィロリアルがお前等を食うぞ」

「クエ!?」

舎から視線を感じる。

なんかブンブンと首を振っている。

どいつもこいつも甘い育ちをしやがって!

「ほら、今か今かと待ちわびているぞ!」

「クエ! クエ!」

違うと叫んでいるような気もしなくもないが、村での生活を知らない奴からしたら興奮しているように見えるだろう。

最初からこの手を使えば良かったんだ。

「答えはどうだ?」

「……分かった。だけど絶対に、俺以外の奴は助けろよ!」

脱走奴隷のリーダーは渋々話しだした。

なんでも奴隷の中での噂話なのだが、メルロマルクの港や各地には奴隷解放を謳う派閥が存在するらしい。

その派閥は亜人の奴隷ならば無条件で奴隷紋を外して外国へ逃がしてくれるという噂が実しやかに囁かれているのだとか。

シルトヴェルトの連中か?

いや、仮にシルトヴェルトやシルドフリーデンみたいな連中でもそこまで同族意識が強いだろうか。

俺がもしも無条件で外国へ逃がすという謳い文句を付けたとしたら、何か自分が得する魂胆がある。

善意でそんな事やっている奴なんているはずが無い。

船を使えば輸送するには都合の良い。

無難な所で外国での労働力にされる、辺りか。

それも唯の奴隷よりも酷い扱い……非合法だな。

あるいは、奴隷商共が流したリサイクル商法かもしれない。

少なくとも、コイツ等が望む様な結末は待っていないと見た。

だが、商売としては無難な手法だ。笑顔でやってきた奴隷共をダシに使うんだからな。

そういえば奴隷商が帰る前言っていたな。

なんでも霊亀の影響で孤児が増えたとか。

孤児の行き着く先の一つとして奴隷がある訳だし、人間奴隷は少ないらしいが、国外には人間を奴隷にする所もあると聞く。

そんな経緯で奴隷商は忙しいそうだ。俺の作った飯を平らげたらさっさと帰りやがったしな。

「お前等知っていたか?」

「言われて思い出したぜ」

「そうそう、そう言うお話があったよね」

知っていたなら先に教えろ……まったく。

「盾の兄ちゃんの所は居心地が良いからすっかり忘れてた」

「うん!」

良い傾向なんだろうけどさー……どうも舐められているような気がする。

「今度からそういう話は必ず報告しろ」

「「「はーい!」」」

どこで金になる話が転がっているかわからないからな。

何より今までは事が起きてから行動に移していたが、先読み出来れば被害を最小限に抑えられるだけでなく、先手を打つ事だって可能だ。

情報は力だからな。

「さて、脱走は重罪だ。だが、俺も鬼じゃない。ここに来たばかりの奴だからな、少しの間だけ猶予をやる。じっくり考えろ」

デューンに奴隷共の拘束を解くように指示を出し、ラフタリア達に受け取らせる。

「そいつらの教育をちゃんとしておけ。以上だ」

反抗的で敵愾心のある脱走奴隷が俺を睨みつける。

反省がないようなら、次に奴隷商が来た時にでも売るとしよう。

Lvを上げておけば多少金銭も取り戻せるだろうし、盾補正で普通より強いと言えば喜んで買って行きそうだ。

……それまでにラフタリア達と仲良く出来る事を祈っておくとしよう。

「大丈夫、ここはね、今までの様な苦しいだけの場所じゃないから、私たちの……村の手伝いをしてほしいの」

「……」

奴隷三人がラフタリア達に囁かれ、居心地が悪そうに顔を逸らす。

「とても辛かったんだよね。だけど……少しだけ、ほんの少しの間だけで良いから、今までの主人と比べて欲しいの」

「……」

「あの人はね、盾の勇者様なの」

「え!?」

「噂には聞いたことがあるでしょ? この国を救ってくれた人だし、亜人の国じゃ伝説にもなっているそうよ」

「う、うん。聞いた事がある。何時の日か……私達亜人奴隷を救ってくださる聖人様だって」

「そう、あの方はね、口は悪いけど、こうして奴隷を救うために村を再興なさってくださるの、その力になってほしいの」

「でも……」

「今はまだ信じなくて良いよ。少しずつ、嘘じゃない事を証明して見せるから」

ま、とりあえずはラフタリア達に任せておこう。

俺は部屋に戻り、調合の勉強を再開した。

大分、難しい調合も出来るようになってきている。材料さえそろえば出来なくはない。

女王が用意した素材にあったから挑戦するか。

翌朝。

「イワタニ殿はいるか!」

女騎士が朝早く押しかけてきた。

「なんだ? また霊亀でも出たか?」

「あんなのがそう何度も湧いてたまるか!」

俺は療養中だ。今度は七星勇者にでも頼むんだな。

まあ……どちらにしても俺も参加する事になりそうだが。

「それで? 何か急ぎの用みたいだが」

「女王様からの伝達だ。直ぐに伝えよと言われている」

「内容は?」

「槍の勇者の仲間が見つかったそうだ」

何? 元康の仲間が見つかった?

言葉からビッチでは無いみたいだ。

となると女1か女2か。

この表現だとどっちがどっちかわからないな。

というのも、俺アイツ等の名前知らないし。

「死体でか?」

「違う。なんでも貴族をしている父親が娘の心配をしていたそうなんだが、家に戻ると当たり前のように母親の家業を手伝わされてうんざりしている娘がいたそうだ」

……どこかで聞いた事がある話だな。

アイツの事だ。今回の件で元康を切り捨てたって所か。

それで結局実家に帰って仕事の手伝いか。

手伝いも積極的では無い所がアイツらしいのか。面倒くさがりだったもんな、アイツ。

「保護したりしないのか?」

「事情は聞いたそうだ。で、だ。イワタニ殿にはその仲間に会って、槍の勇者をおびき出して貰いたい」

なるほど……元康が合流を図る可能性があると。

上手く行くかどうかは賭けだが、元康を捕まえられるのなら良いか。

「その作戦に元康の仲間は協力してくれるのか? 裏切られたら元康に情報が筒抜けという事になるんだが」

「既に影の監視を付けている。本人も今の所は協力的だと報告を受けている」

「ふむ……」

まあ俺の予想が正しければ、アイツは切り時は弁えている奴だ。

司法取引の要領で自分の立場を守ろうとしていると言った所か。

「分かった。何処へ行けばいいんだ?」

「ああ、地図を渡す」

女騎士に地図を渡され、俺はラフタリアとフィーロを連れて出発の準備をする。

「お前等、新しく来た奴のLv上げをしておいてくれ」

「うん。分かった」

「分かりました」

リーシアが先頭に立って頷いた。

「悪いなリーシア。樹の情報が来たら優先して誘う」

「はい。お待ちしております」

最近、リーシアのLvが35にまで上がった。

もうすぐクラスアップ時期だ。

とはいえ、他の連中と一緒にクラスアップさせたいから少し後になるだろうが……今は元康の捕縛を最優先にするとしよう。