作品タイトル不明
犯行現場
「確か追加で聞いた話だとタクトって奴がヴォルフをそこそこ勝たせた後に大口の勝負で戦って負けさせたらしいね。マッチポンプというかさ、完全にインサイダーな感じの出来試合だったんだろうね」
性質が悪いよアイツ、とお義父さんが毒づきましたな。
ふふ、永遠の苦痛を味わう生き物ですぞ。
罪に罰を与えてやったのですな!
「噂は聞いたさね。まあ闘士なんて勝ったり負けたりだから気にしたら話にならないさね」
「そういやラーサさん達の勝率ってどんなもんなんだろうね?」
「もちろん人気になるなら高いさね」
「そうですね。あまり負けは無いから人気がある訳ですし、時期によってはスポンサー契約とかして稼いでいますよ」
「お義父さんお義父さん。俺も参加して人気選手になったループもありますぞ」
フィロリアルマスクですぞ。
クエーですな。
「負けないなら割と簡単に有名人ですな」
「そりゃあ元康くんに勝てる人居ないと思うよ」
「そこでアタイ達が遭遇したらどうなったんだろうさね」
「メルロマルクで俺たちが最初の波を乗り越えた後だったのでまだパンダ達とは会わなかったと思いますぞ」
時期的にはまだシルトヴェルトに居たのではないですかな?
居たら覚えてるはずですぞ。
「ゾウもおそらく留守中だったのではないかと……思うのですが、まだ出会った事が無かったので確証は無いのですな」
お義父さんもゼルトブルで有名な商人扱いになりましたからなー。
その後にゼルトブルで戦う可能性もあるのですぞ。
ただ、あれは随分前なので結構朧気ですぞ。
「会ってたら嫌ですね……それこそ再起不能とかにされてそうで」
「まあお姉さんのお姉さんがゼルトブルの酒場に遊びに行ったりしてたので、パンダ達とはきっと顔見知りになったと思いますぞ」
「嫌だねぇ……あの酒飲みに付き合わされるってのは」
「ですが、付き合いは良いんですよね。あの人、自然と覚えてしまいますし強いのはわかりますよ」
「確かにそうさね。まあそもそも表と裏の試合があるからどっち重視かもあるさね」
「ラーサさん達はどっちに出てるタイプかな?」
「裏なんて常連で出てたら身が持たないさね」
「結構殺し合いな取り組みもあるので安易には出ませんね。人気があればそこそこ稼げますし」
確かにゼルトブルの試合は裏は金持ちの道楽の側面が強いですぞ。
そう言う意味では裏で荒稼ぎしていた俺はパンダ達とは滅多に遭遇はしなかったはずですな。
ちなみに裏の試合を荒らすタクトの邪魔として俺は呼ばれる事が多かったですぞ。
お義父さんがゼルトブルの幹部になったら裏の試合への参加も減りましたな。勝ちすぎなので調整があったのですぞ。
むしろ裏で出す危険な魔物の捕縛などの仕事があったような気がしますな。
「潜伏するには良い国ですな」
「そこは否定しないさね」
「話は良いのですが、まだですかね?」
「遠いのか?」
「ヴォッフ。そろそろ到着する」
そうして辿り着いたのは何とも形容しがたい石造りの教会跡地みたいな建物でしたな。
破棄された建物でしょうかな?
ですが何やら仮設で寝泊まりは出来そうな布などが張られているようですぞ。
「この辺りで目撃されてる魔物退治が今回の仕事……ヴォッフ」
「うん。それじゃあ目的の魔物を探そうか」
「気配で何か察知できると良いんですけどね」
「お前の耳で見つけられないのか?」
ワニ男がウサギ男に聞いてますぞ。
ふふん。俺もウサウニーなら広く音を拾えますぞ。
「それを言ったらあなただって気配とかその辺りで周囲を察知するじゃないですか」
「そうだな。妙な気配は……土地勘も無いしよくわからん」
「ヴォフ……手分けで探す前に、みんなも一緒に居て欲しい」
何やらヴォルフはここに来るのに嫌な何かがあったようですな。
お義父さんの隣で少しばかり震えているようで尻尾が下がったまま動きませんぞ。
ヴォルフのおかしな様子にお義父さんも察しているのかそっと手を握ってあげてますぞ。
「ううむ……」
「何なんですかね。理由があるなら言って欲しいですけど……なんとなーく、わかる様な気もしますね」
ウサギ男は何かを察したみたいですぞ。
ワニ男も心当たりがように一度頷きましたな。
「まったくわかりませんなー」
「元康くんはね」
「ま、察することくらいは話聞いてりゃわかるけどねぇ……わからない奴もいるさね」
「うるさいですぞ」
「ユキもわかりませんわー!」
俺たちは言わないとわからないのですぞ!
「そんな宣言されてもなー……」
とりあえずヴォルフ、行こうか……と、お義父さんはわかっている様子でヴォルフに指示を出しますぞ。
しかもそれとなく手を握っております。
「……ヴォフ」
ヴォルフがお義父さんに励まされて歩き出しましたぞ。
「ああいう所が厄介ですよね」
「まったくだ……」
ウサギ男とワニ男がそんなお義父さんに愚痴っているように見えましたぞ。
「とにかく行くしかないさね。他、行く」
「ええ、そうですね」
「何があるのかなー」
コウの呑気で元気な声に周囲が賑やかになる気がするのですぞ。
「お義父さん達、答えてませんぞ」
何があるのですかな?
俺の問いに、お義父さん達は応えずに行ってしまうのでそのままついて行くしかないのですぞ。
そうしてヴォルフの向かう先には……折れた木や倒木が多く転がっている場所に辿り着きました。
「ヴォ、ヴォフ……」
何かしらの攻撃を放った後でしょうかな?
大分風化しているようにも見えますが後はくっきりついてますぞ。
話の前後を想像するにヴォルフの兄とやらの修行後でしょうか。
で、ヴォルフはその場所の一角で立ち止まって膝をつきましたぞ。
「……ここで、兄がタクトに爪を奪われて殺された」
ああ、なるほど……ここがタクトの犯行現場だったのですな。
「……そう」
お義父さんがヴォルフの話を聞くように頷きましたぞ。
「あの日、タクトが賞金首になっているあの女を連れてやってきて、兄に向っていきなり襲い掛かって来た。勇者同士、争う理由もないのにいきなりなんだ!? いや……と、あの女を睨んだ兄にタクトは仲間を引き連れて……」
「ツメが目当てなのと、確かここで賞金首になっている人の復讐の手伝いに襲い掛かったんだろうね」
「ヴォフ」
「本当、重犯罪者だね。真実は明らかになったからお兄さんの無念も晴れると思うよ。だから気にしないでさ」
お義父さんの言葉にヴォルフは静かに首を横に振りましたな。
「ヴォフ……そうじゃない。俺は……あの時、兄さんがツメを奪われて、奴らに反撃したのにびくともしなくて、怖くて腰を抜かして……兄さんが不利を悟って、逃げるように命令したのに何もできず」
嘆き悲しむ声音でヴォルフは手にしたツメを見ながら涙声になりつつ言いましたぞ。
情けないとするにはタクトと豚共のLvが高いですぞ。
俺だってタクトと最初に遭遇した時には敗走を余儀なくされました。
未来なんて見えないのですからどうしようもないのですぞ。
ですが俺もさすがに過去の豚共の過去等の話に介入して色々とやった経験から馬鹿にはしませんぞ。
俺の時は大体豚でしたがな? ヴォルフは男ですぞ。
これも俺が居た世界でのルールという奴ですかな?
仮に俺の居た日本だったらヴォルフは豚になっていたのでしょうか?
「不利でも勇敢に飛び掛かった兄さんが……奴らのドラゴンの炎で跡形もなく……俺は、恐怖で……あの時、戦えれば……」
「……」
アレですな。
ここで励ますのがセオリーなのですぞ。
お義父さんならきっと言わなくても分かりますな?