軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

VS霊亀 最終決戦

く……打ち合わせのリミットは越えてしまっているという事か。

考えてもみれば霊亀に進入してから随分と時間を掛けてしまっている。

緊張の連続で想像よりも時間を浪費していると見て良いだろう。

早急に手を打たないと更なる被害者が出る。

「試してみたい事がある」

俺は荷物袋から魔力水をあるだけラフタリアとフィーロに渡す。

「ナオフミ様?」

「ごしゅじんさま?」

「霊亀の心臓を止めて来い。次の策を閃いた」

ラフタリアとフィーロが二人でやらねば心臓は倒せない。

だから無理を承知で戦ってもらおう。

「ごしゅじんさまは?」

「俺は外でちょっとやってみたい事があるんだ」

「外?」

「ああ、一発使ったら戦えないから即時撤退だけどな。リーシア、お前は俺に付いて来てくれ」

「ふぇえ……分かりました」

「まさか……」

ラフタリアの表情が青ざめる。

敢えて言葉を濁したが、さすがにバレるか。

あの場にラフタリアもいたのだから当たり前か。

「この作戦が失敗したら、他に手段は無い。ラフタリアとフィーロは急いで合流して連合軍を引き連れて撤退しろ」

「ダメです! 危険です!」

「危険なのは承知だ。これで倒せないのなら七星勇者を連れてきて数の暴力で生命力が尽きるのを待つしかない」

そっちの可能性が高いのだけど……砂時計の数字が霊亀の命の数だった場合はな。

だけど残念な事に何度も息の根を止めているにも関わらず、数字は7のままだ。

「ここで俺達がやらないともっと多くの人が死ぬんだ。ラフタリアなら分かるだろ?」

「……でも……」

ラフタリアの肩に手を乗せて宥める。

「大丈夫だ。死にはしない。それよりも作戦失敗時、撤退する連合軍の警護を任せる」

「ですが……」

「俺だってキャラじゃないのは理解している。だけど、俺達が止めなければこの先どんどん厳しくなっていくんだ」

これは複数の意味がある。

他の勇者共が犯した罪のとばっちりを受けるというのと、霊亀だけで終わるとも限らない波の進行だ。

赤と青という色の違いこそあるが、過去の勇者が残した碑文を読み取るに波と密接な関わりがあるのは確実。

今まで考えない様にしていた事が現実味を帯びてきている。

四聖武器が四つの力によって強化できる=敵は相応の能力を持っている可能性が高い。

ここで霊亀を倒さなければ様々な面で厳しくなっていく。

それだけは避けたい。

「わかります。それでも私はナオフミ様が――」

「俺が一度でも敵の攻撃にやられた事があるか?」

「い、いえ……」

「なら安心しろ。何度も言うが俺はこんな所で死ぬ訳にはいかない。元の世界に帰るんだからな」

「…………」

「どちらにしろ、あのスキルを放ったら俺は戦闘不能だ。それに外ならリーシアと連合軍が運んでくれるだろう」

霊亀といえど背中からいきなり必殺の一撃が飛んでくれば反撃の暇も無いはず。

後はタイミングを合わせるだけだ。

もはや最後の手段と言っても良い。これでダメなら俺が居ても変わらない。

ならば、ちょっとでも可能性がある策を使いたい。

リスクは高いが……最悪、七星勇者には本来の波で戦ってもらおう。

まあ、ラフタリア達には霊亀の心臓の熱線が不安だけど、フィーロの突撃を使えば避けられると思う。

「問題はあの部屋にもう一度行く方法か」

俺があのギミックを裏ワザで解いた訳だが……。

「それは任せるでごじゃるよ」

「何かあるのか?」

「再突入に備えて仕掛けを施しておいたでごじゃる」

「ありがたい。じゃあ二人を頼んだ」

「了解したでごじゃる」

「よし、ラフタリアとフィーロ、そして影は心臓を倒せ! リーシアは俺に付いて来い。これから行う策だが――」

俺の作戦に影とリーシアは難色を示す。

教皇との戦いでリーシアもその場にいたらしく、効果は知らなかったらしいが状況は直に見ていたからな。

「ふぇえ……死んじゃいますよ!」

「少々危険ではごじゃらぬか?」

「しょうがないだろ。ラフタリア達しか決定打を与えられないんだ。俺がやるしかない」

「ここで盾の勇者殿が戦線を離脱するという事の方が痛手を大きくするでごじゃる」

「七星勇者が頼りになるのならしなくても良いが、もう都市が目の前に迫っているんだろ?」

「……分かったでごじゃる。盾の勇者殿、カルミラ島での療養を無に返してしまい申し訳ないでごじゃる」

「こっちこそ悪いな、いつも無理を言って」

どうにか二人を説得し、ラフタリア達に再突入の指示を出した。

「行ったり来たりですまないな」

「いえ、問題ありません」

「ないよー!」

「タイミングはお前等に合わせる。厳しいとは思うが、出来る限り早急に頼む」

「わかりました」

都市までもう時間が無い。

作戦の成否を問わず、時間との戦いと言って言いだろう。

仮に失敗しても霊亀を少しでも止められればあるいは……。

「ナオフミ様、行って参ります。ご武運を」

「ごしゅじんさまも頑張って」

「ああ、心臓部を止めたらすぐに脱出するんだぞ」

「はい」

「うん!」

本当なら俺だってやりたくは無い。

だけど、犠牲を少なく倒すにはこの手しかないんだ。

おそらく、間違ってはいない。

ラフタリア達は来た道を駆け足で戻っていく、フィーロの足なら直ぐに到着するだろう。

「連合軍は身を守る事を最優先で先に行く俺達に付いて来い! 行くぞ、リーシア!」

「「「了解!」」」

「は、はい!」

俺達はラフタリア達が心臓に止めを刺す前に頭の方へ向う。

「流星盾! ほら、リーシア。お前を頼りにしているんだ。頑張れ!」

「はい!」

ギュッと手持ちの突剣を握り締めてリーシアは俺に付いて来る。

道中現れた雪男タイプの霊亀の使い魔の攻撃を受け止める。

「ツヴァイト・オーラ!」

援護魔法をリーシアに掛ける。

「すごい……体が軽い……行きます!」

リーシアが、霊亀の使い魔の目、心臓、足の筋と、連続で突く。

元々のステータスは低いが、フィーロきぐるみの加護と援護魔法によって、実用範囲にまで昇華された攻撃と化す。

状況を見る目は樹と一緒に居た頃から養っていたんだ。

魔物の弱点を見抜くことも容易い。注意するまでも無いな。

雪男タイプの霊亀の使い魔は自分がやられたと認識する前に絶命した。

「や、やりました!」

「まだまだ来るぞ! 気を抜くなよ」

「はい!」

良い兆候だ。これで自信を持ってくれれば良いのだが。

やがて町を抜け、霊亀の甲羅の淵に到着する。

……都市が目の前に迫っている。

って!

「メルロマルクじゃねーか!」

見覚えのある建物がよ~く見える。

霊亀は移動その物はそこまで早くないが、大きさが大きさだから早くてもしょうがないか。

遭遇したのがメルロマルクの国境付近だったからな。霊亀の生き物を狙う習性を鑑みれば当然、メルロマルク城下町を狙うだろう。

女王が指示していた誘導方法とは若干ズレている。

やはり人数の関係でこっちに来てしまったという事か。

目視できる範囲で避難していく人が見えた。

直線に逃げたら逃げ切れるものも逃げ切れないぞ!

まだか……!

霊亀が城下町に到着し、建物が玩具のように踏み潰されていく。

メルロマルク城の敷地から魔法が放たれた。

だが、霊亀はかすり傷一つ付いていない。

魔法防御が高いのだ。

俺達が最初に戦った時、女王の援護魔法が飛んでいたが、霊亀はモノともしなかった。

ぐ……城が霊亀の目前に迫っている。

ラフタリア! フィーロ! まだなのか!?

その瞬間、霊亀がガクリと体を崩して地震が起こる。

頭がよく見えないが、瞳に光がない。

よし! 心臓が止まっている。

ラースシールド!

目の前に数字が浮かび上がる。

残り30秒。だが、30秒もあれば十分だ。

「リーシア、後で来る連合軍に任せたぞ! 失敗したら即時脱出だ!」

「は、はい!」

ターゲットは霊亀の頭。

まだ俺達に気づいていない今だからこそ、必殺のチャンスだ。

――待て。

ここで手を抜けばメルロマルクの終焉だ。

今までどれだけ辛酸を舐めさせられてきたか。

あの屈辱、忘れたとは言わせない。

合法的にメルロマルクの奴等に痛い目を見せるのは今しか無いんじゃないか?

……違う。

ここには俺に対して良くしてくれた奴等も沢山いる。

武器屋の親父、メルティ、薬屋、志願兵の奴等、魔法屋、後……カウントしたくないが、奴隷商。

その人達から受けた恩をまだ、返せていない。

今しかない。今がこの恩を返す時だ!

「プルートオプファー!」

全身から血が噴出し、肉が裂けて骨が軋む……。

前回よりも痛みが強い。頭がガンガンする。

強化したラースシールドの所為か?

だが、以前とは違って痛みが来る事が解っている分、精神的には耐えられる。

後は肉体の方がもってくれるか、か。

「ぐふ……」

耐えろ、まだここで倒れるわけにはいかない。

代価を支払って霊亀の頭の真下から赤黒い、印象深い巨大なトラバサミが出現する。

霊亀の奴、心臓の再生に手間取って反応が遅れたな。

「―――!?」

僅かな叫び声が響き渡る。

大きな金属音が響き渡り、霊亀の頭に一度目のトラバサミが食い込む。

その直後にトラバサミは開き、もう一度……。

「!!!!????」

霊亀のメチャクチャな叫びが木霊し、暴れだす。

もう遅い。

お前はもう――終わりだ!

やがて……ビチャ! っと音を立てて、霊亀の頭は木っ端微塵に噛み砕かれる。

役目を終えたとばかりに巨大なトラバサミは地面に吸い込まれて消えた。

ドスンと大きな音を立てて、霊亀は体を地に付ける。

……まだ、再生するのか?

……。

意識が朦朧としてくる。盾はソウルイーターシールドに変化させた。

そうだ! 霊亀の使い魔は?

振り返ると、連合軍が俺の方へ向って歓声を上げながら駆け寄ってくる。

「霊亀及び使い魔の動きが完全に止まりました!」

それを聞くか聞かないかの境で俺は視界がスーッと暗くなっていくのを認識した……。

「――様!」

リーシアが驚いて、俺を抱きとめたと思う。フィーロきぐるみを着ているからどっちか分からないけど、多分リーシア。

フィーロは俺を名前で呼ばないし。語呂的に名前を呼ばれた気がする。

とにかく……意識を保っていられなかった。

やはり、早計だったか……?

「リーシア……後の事はラフタリアと……女王に……」

願わくば、次に目が覚めたときには死んでいない事を祈った。

目が覚めた時に死んでいたら嫌だけどな。