軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪評

翌日。

「うーん……」

お義父さんと樹と共に魔法で隠れて近くの村の様子を見に行くと城の兵士が立て札に人相書きで、お義父さんと俺を指名手配している様でしたぞ。

他にこれ見よがしにエクレアの手配書もついてますぞ。

「盾の悪魔であるナオフミ=イワタニと国賊エクレール=セーアエットが近衛騎士を虐殺し、第二王女を誘拐して逃亡中である。生死は問わない。賞金は――」

完全に予定通りと言った様子ですぞ。

こういうのだけは無駄に早いですな。

「本当に盾の悪魔が王女を誘拐したのか?」

「そうだ。盾の悪魔に会いに行くと告げて第二王女は行方知れずとなった。これが動かぬ証拠である」

メルロマルクに留まったお義父さんの場合、善行をしていたので村人が手配書を見た後手のひらを返したのでしたぞ。

ですが今回はそのような事はしてませんからなぁ。

「盾の悪魔の元へ向かった第二王女と騎士はそれぞれ消息を断っているのだ」

「じゃあなんで虐殺されたって話があるんだよ。行方が分からないんだろ?」

「国の命令に逆らうのか!」

本当、変わりませんな。

樹が隠蔽状態にも関わらず殺気を放ち始めたのでお義父さんがそっと抱き上げて宥めて居ますぞ。

「……懸命に戦った騎士が命辛々逃げ出して証言したのだ!」

不意打ちする前にエクレアに阻止された挙句、樹にぶち抜かれたので何とも言えませんな。

「なんて野郎だ! 盾の悪魔の所業、ぜってー許せない! 盾の悪魔が来たらみんなでぶち殺してやろうぜ!」

まあ、サクラに乗せられて村の者たちは段々と盾の勇者を殺せムードになりつつありますぞ。

「それで? 盾の悪魔は今まで何処で何をしてたんだ?」

「国中で悪さをしていたじゃないか! 奴隷商人として各町で人々を売買している悪の権化である! 国の貴族たちにも多大な被害が出ている!」

「盾の悪魔の仲間をしている亜人もいるぞ! これが人相書きだ」

とまあ……サーカスとその人員の手配書まで広がっていきますぞ。

「見慣れない鳥の姿をした邪悪な悪魔に馬車を引かせている。見たものはすぐに国へ連絡するように」

村人たちは心当たりがあるようでざわめきましたな。

「やっぱりあくどい事をしてたんじゃないか! あのサーカス!」

「噂通りだったのね!」

「あのサーカスが子供を誘拐したとか噂になってるぞ!」

「サーカスに近づいた奴が神隠しにあったんだ!」

と言った様子で村人たちは納得の形相で盾の勇者憎しを白熱させ始めましたぞ。

「亜人獣人共を殺せ!」

「おおー!」

「ああ、剣と弓の勇者様……どうか盾の悪魔を殺し、第二王女様をお救い下さい……」

なんて様子だったのを俺たちは隠れたまま村を去ったのですな。

やはり……善行をせずに行動したらこのようになってしまうという事でしょうかな?

「でもサーカス……みんなを楽しませようって頑張ってたと思うんだけどな」

「あそこの奴隷たち……周辺の魔物を倒して村を守ってくれたし」

と、一部の者は首を傾げ、いまいち信用出来ないという様子ではありましたが声は小さく、傍観をせざるを得ないという様子ですな。

「差し当たって我が国は盾の悪魔の所為で大きく国力が減退している。国民よ立ち上がれ! 我が国の兵士に!」

……そこから兵士募集の宣伝に変わって行き、義憤に駆られた者たちを徴用する流れに持って行くようですぞ。

「抜け目がないというのかなぁ……正義感を利用して兵士の募集をしてるよ」

「これだから正義なんて下らないんですよ。良いように利用されるだけじゃないですか」

「とはいえ……半分事実も混じってるんだよなぁ。盗賊に偽装した三勇教徒とか売ったのは事実だし、もっといい手は無かったのかなぁ」

薬の行商で各地の問題を解決という手立てがそれですな。

俺のワガママでこうなってしまったというのも事実ではありますぞ。

まあ、それ以外で実は俺たちが解決している事などは風聞していませんし事前に問題を排除したりして感謝される流れにはなっていないのですぞ。

これ以上、ここにいると樹の殺気が限界突破しかねないので静かにその場を後にしました。

そうして潜伏場所に戻る途中ですな。

「……尚文さんの悪評とはこういう形で広まって行く訳ですね。元々根付いた盾の勇者憎しの教育により住民は噂であろうと信じる、僕は実に道化ですね。事実なんてどうでも良いのですよ」

「あんまり連れて行きたくなかったけど放っておいたら勝手に見に行きそうだから連れてきたんだからね。そもそも事実もある訳だしさ」

だから暴れないでよ? とお義父さんは樹に注意しますぞ。

「いやぁ……こんな真似されても何もせずにその場を去れる尚文さんは聖人か何かでは無いかと錯覚してしまいますね。僕には到底できませんよ。手を出したくてしょうがありません」

「卑屈になるのも程々にね。そもそもさ……錬や樹に俺を殺すように誘導する流れなんだろうけど件の錬と樹が既にこっち側じゃさ」

お義父さんがため息交じりに言うと樹は目は全く笑ってないのに顔だけ笑顔でクスススと笑っていますぞ。

「本当、道化とはこの事ですよね。高等存在人間様は既に勇者に正体を見破られているにも関わらず陰謀を張り巡らせて操ろうとしてるんですよ。見破られた事を知った次は勇者全員皆殺しで再召喚を狙うという所でしょうかね」

おお、大当たりですな。

「まあ、錬さんの評価は国内では一番ですから、まずはその辺りに話を持っていくという所でしょうね」

「そうだとは思うけどさ……そのケタケタと目が全く笑ってないのに笑うのすごく怖いから、子供たちの前でするのやめてね樹」

確かに、今の樹は一種のホラーな所がありますぞ。

血狂いリスと言った形相ですな。

「正義が如何に愚かな事なのかが証明しているでは無いですか、僕はあんな奴らを守ろうとしていたんですよ」

「樹の悲しみは痛い程わかってるけど、あれが全ての人じゃないのだって、君は……わかってるでしょ? 現に流れに乗れないという人たちもいる……ああいう人が居る限りは頑張ろうよ」

「……そう、ですね。エミアさんやリーシアさん、ウサギの彼も尚文さんと同じように僕に諭してくれますよ」

ただ、それでも許しがたいと樹は顔で語ってますぞ。

ともかく、お義父さん達のメルロマルクでの手配度が大きく上昇したのでサーカス活動は不可能となり、俺たちは潜伏を余儀なくされたのですな。

正確にはポータルでゼルトブルの方へとサクッと移動したのですな!

「あはは!」

「待てー!」

「フィーロちゃーん」

「こっちこっちー」

ゼルトブルの方で婚約者がフィロリアル様たちと戯れて遊んでおられますぞ。

一番仲良しなのはフィーロたんのようですな。

くうう……どうしてフィーロたんはサクラちゃんでもどのルートでも婚約者とすぐに仲良くなるのですかな!

どうにかして婚約者にフィーロたんと仲良くしない方法は無いのでしょうか。

ですが婚約者と楽し気に遊ぶフィーロたんというのも絵になるので悩ましいですぞ。

ライバルと仲が良いお義父さんの姿は悔しい気持ちになりますが、婚約者は我慢できるのが不思議なのですぞ。

ええい! ラフミであろうとフィーロたんに抱擁ですぞ!

「フィーロたーん!」

ヒシ! っと婚約者と戯れるフィーロたんにアタックですぞ!

「んにゃああああああああああああああ!?」

お? ラフミじゃありませんぞ!

フィーロたんに触れて最高ですぞ! すりすりですぞぉおおおおおおおお!

「ぎゃああああああああああああああ!」

ゲシゲシゲシ! っとフィーロたんのおみ足が俺の顔にヒットですな!

「なになになに!? やー! 槍の人が引っ付いて離れない! なにこれ!? やー!」

「ちょっと槍の勇者様! フィーロちゃんが困ってるじゃない! 離れなさいよ!」

「フィーロたーん」

「やー! ごしゅじんさまー! ラフミー! 離れないー!」

フィーロたんのお声が耳に入りますぞ。