軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イヌルトとリスーカ

「そうだね。勇者だけが全てじゃない。問題は……」

お義父さんが言葉を濁しましたぞ。

奴隷狩りの活発化でこの通路を使う機会は訪れる事は無かったのですな。

今からでも使用する手はなくは無いですが女王が帰還すればある程度、奴隷狩りに関する問題は解決すると思うのですぞ。

まあ、お義父さんに聖人のような振る舞いはしないようにと俺がお願いしたのでメルロマルクに留まったループのような事は起こらないかもしれないという問題はありますがな。

「口コミで広めるとしてもそうなると奴隷狩りは元より国の兵士とかもおびき寄せてしまうからなぁ……亜人獣人達だけとしても上手くいけばいいんだけど」

「大丈夫ですよ、尚文さん……そんな連中はみんな殺して行けば良いんですよ」

どうにも樹の言葉遣いが過激なように感じられますな。

行き過ぎた正義が暴走しているのですかな?

反省はしている様子は無いですぞ。

「つまり尚文さん達の目的はこれで達成で良いのですか?」

「一応、そうなるね。エクレールさん。シオン、亡くなった領主の残した秘密はこういった代物だったみたいだね」

「うむ……使い道が無いわけではない……な」

「そう……だな」

無駄骨では無いですがあまり利用価値が得られない場所ですな。

そうですな。もしも俺が赤豚に騙されていた頃、婚約者の誘拐事件が発生した際にお義父さんがここが無事なモグラ達と出会えたらこの通路が役に立った可能性はありましたな。

……今後のループで使ってあげるのも手ですぞ。

せっかく作られた代物ですからな。考えておきましょう。

「次は俺たちの番かな? 樹……えっと、その、どうしてそんな姿に? それとなんでこんな場所にいるのかな? いや……もしかして、メルロマルク内で貴族を殺したって獣人が話題になっていたんだけど……」

「別にこの場で隠したり嘘を吐く必要はありませんね。ええ、僕が殺しましたよ。あの外道を」

樹が怒りの籠った口調で不気味に笑いながら答えました。

「そ、そうなんだ。なんか色々あったみたいだね」

気押されたお義父さんが絶句気味に答えました。

「その辺りの事情を説明する前に――」

「あ、待って樹、錬も俺の所にいるからさ。錬を呼んでから話した方が手間が省けるよ。もしかしたら錬が知りたい情報を樹が持ってるかもしれない」

「あの錬さんが尚文さんの所に来ているんですか? 確かに手間は省けますね。とはいえ……早く尚文さん達と合流したいと思っていましたがこんな所で遭う事になるとは」

本格的に活動する前に出会えてよかったと何故か樹は呟いてましたぞ。

何をするつもりだったのでしょうな?

で、樹が連れてきたモグラはそんな樹にちょっと困った顔をしているように見えますぞ。

「エミアさん。決めた事です、例え貴方であろうと僕は引きませんよ」

「はい……わかっておりますよ」

何やら樹がモグラに随分と気を掛けて居ますな。

で、そんな樹をストーカー豚ことリースカが怯え気味に付き従っているようですな。

「えーっと君は行方不明になっている貴族の子……だよね」

「ブブ、ブブブ」

「あ、うん。そうなんだ」

リースカは豚語を話しているのですぞ。

よくわかりませんな。

なのでユキちゃんに翻訳をお願いするのですぞ。

「ユキちゃんユキちゃん。こやつは何を言っているのですかな?」

「『そうです。私は見てしまったのでイツキ様に付き従っているメイドですぅ……助けて貰ったので成り行きでお手伝いしてます』と、仰ってますわ」

何やらこれまでのループとも関係が異なるように見えますな。

見てしまったとはなんですかな?

メイドだからですかな?

「そういう訳でリーシアさん。尚文さん達と出会う事が出来たので僕たちの件を話さないと言うのならば家に帰っても良いですよ。これまでの旅路であなたの人となりは十分理解しました。成り行きとはいえご迷惑を掛けました」

「ブブ! ブブブヒ! ブ」

「『そんな! イツキ様、私は苦労なんてしてません! どうか手伝いをさせて下さい!』と仰っていますわ」

ううむ、関係は多少違ってもリースカは樹と一緒に居たがるのですな。

「じゃあ樹……その、行こうか。ポータルスキルで帰還しようと思うんだけど」

「尚文さん達といえどポータルで僕達を突き出す可能性はゼロじゃないですね。何かあったら僕たちは瞬時にポータルで逃げますからね。騙したらしっかりと報復しますので覚悟しておいてくださいね」

何やら警戒気味な様子の樹ですな。

この疑い深さは最初の世界のお義父さんを連想しますぞ。

「そんな真似しないよ。とはいえ……どうも樹たちは賞金を掛けられているから顔や姿は出来る限り隠しておいた方が良いか……」

「ところであれは指摘すべきなのか?」

エクレアが何故か俺の方を指さしてますぞ。

どこを見ているのですかな?

振り返りましたが何も無いですぞ。

「いや、気にする必要はない。現に他の連中も見逃しているだろう?」

何の話をしているのでしょうかな?

モグラ達を始めとしてみんな時々チラッとこちらを見てますぞ。

「んー? 髪飾りー?」

「なのかなー?」

「ユキも真似しますわ」

と、何やらユキちゃんが落ちてる木の枝を何故か頭に髪留めのように刺してますぞ。

何はともあれお義父さんの提案で俺たちはサーカスに戻ってくることが出来ました。

「あ、お帰りなさい、岩谷様」

「ヴォ、ヴォフー」

ウサギ男やヴォルフも俺を見てからすぐにお義父さんの方に視線を戻しました。

よくわかりませんが一々反応しては身が持たないと後で呟いてましたぞ。

「ただいま、錬をちょっと呼んできてくれない? 重要な話をしなくちゃいけないから、それと人目のつかないように奥へ行こう」

と、お義父さんはマントの中に隠していた樹とモグラをテント内へと案内しました。

一応隠蔽スキルで姿を隠しての入場ですな。

リースカはエクレアと一緒ですぞ。

「お出かけもう終わりー……」

「あっちでみんなと遊びにいこー」

「わーい!」

フィーロたんはコウと一緒に遊びに行ってしまいましたぞ。

「ああ、帰ってきたか」

錬も何故かウサギ男たちと同じ反応をしながらお義父さんの方へと顔を向けた後に驚きの顔をしましたぞ。

ダダっと樹がお義父さんのマントの下から出て錬の元へと駆け寄り双方見つめあいましたな。

徐に頭の上にあるサンタ帽子へ視線が交差しましたぞ。

「その姿……錬さんで良いんですよね?」

「もしかして、樹か?」

「ええ、錬さん、貴方もなんですか!」

「ああ!」

と、何やら錬と樹が仲間意識が芽生えたかのように見つめあっていました。

「なるほど。すぐに理解してくれたのはこういう事だったんですね」

「そうなるね」

「尚文、どうしてエクレールたちの調査に行って樹が?」

「ああ、その件なんだけど……」

お義父さんは錬にこれまでの経緯を説明しましたぞ。

「亜人獣人との仲を取り持っていた波で死んだ貴族が秘匿していた国外脱出通路だったという事で、そこの番人と何故か樹が同行していたと」

「うん。それで樹……一体どうしてそんな事態に? てっきり俺たちは仲間たちと活動していると聞いていたんだけど……」

「ああ、俺がこんな姿になった時に樹、尚文の元へ行く前にお前の所に声を掛けに行ったんだぞ。そうしたらあいつらが樹がそんな症状になるはずがない。騙されるなとか怒鳴って話を聞きやしなかったぞ」

そう説明する錬に樹は不快そうな目つきで眉を跳ねさせてから怒りの籠った態度で首を傾けて睨んでいました。

「なるほど……あいつらはそんな姑息な隠蔽をしているんですか。実に愚かな連中ですね」