軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

盾の勇者異聞録 槌の勇者と狸の里

ラフタリアが行方不明になり、神狩り……精霊からの力が上手く干渉できなくなって俺の世界が劇的で妙な変化が起こってから数日……。

「ちょっと尚文!」

昼前、ラフタリアを捜索する合間、大学に行こうと家で準備をしているとテレビを見ていた母さんが携帯を片手に俺の元へと駆け込んできた。

「なんだ……俺はこれから大学の講義があるのとラフタリアを探さないといけないんだが?」

一応、ラフタリアの行方がつかめないと説明していたしある程度理解は示しているはずなのにどうにも緊迫した表情で母さんが口を開く。

「あの子の学校が……迷宮化しちゃったのよ! ほら! 尚文、ニュースでやってるでしょ!」

と、ニュースの動画を母さんが俺にまじまじと見せつける。

そこに映っているのは弟が通っている高校と野次馬、そしてニュースキャスターだ。

迷宮化ねー……なんか数日前からアングラな俗称でそう呼ばれる現象が確認されているって話だ。

迷宮は……例えばどこかのビルの内部の空間が歪み、外で見るよりも大きな内部構造になってしまう。

これをゲームなんかに例えられて迷宮化現象と呼ばれるようになっているわけだ。

そこから謎の生物、政府は危険な謎の野生生物と呼称する……すでに魔物とネットでは呼ばれている生き物が跋扈している。

もちろんケガ人は元より世界基準で死者が出てしまっている状況な訳で……いったいどうしてこうなったのか俺もアトラもまるで分っていない。

神狩りの力が使えればまだいいのだけど、それもうまく使えないし……。

しかも迷宮化の影響なのか各地での交通網も一部断線しており、飛行機や船での移動も難しくなってしまっているらしい。

「あんたお兄ちゃんでしょ! 助けに行きなさい!」

「なんで俺がここで行く流れなんだよ。こういうのは警察か、冒険だって騒いでる連中に頼めよ。せっかくの迷宮だって駆け込んでいく奴らが映ってるだろ」

どうしてここで俺が文武両道の弟を助けに行かなきゃいけないんだ。

ああいう状況なら普段から稽古をしている弟の方が役に立つだろうに。

兄だからと言って現代日本では一般人をしている俺に頼むのはどういう了見だよ。

「何言ってるのよ尚文! あんた昔から親戚界隈で引っ張りだこじゃない! 漁業でも狩猟でもみんな助かったって言ってたわ! よくあんただけで行ったでしょ!」

「いや……そりゃあ田舎に長期休暇で遊びに行くことはあったけど……」

確かに両親の田舎に俺だけ呼ばれて手伝いさせられたけどさ。

だから異世界で魔物を解体するくらい簡単にできた。

田舎に行く際、両親は仕事で弟は塾があるから後で合流とかさ……逆に家族旅行の時はお金あるし友達と遊ぶって断ったりもしたけど。

「魔物だっけ? あんたならどうにかできるでしょ? だけどあの子はそういうの向いてないから助けに行って!」

薄々思ってたんだが家族の俺への謎の評価は一体何なんだろうか?

大学卒業して就職できなくても専門学校までは好きに行って良いから、将来は料理人になるか親戚の家業を受け継ぐかどっちかにしろとかこの前言われたっけ……。

もしや親戚に俺の身請けというか仕事の斡旋まで計画されていたのか? 遊びまくって就職失敗すると思われて。

バイト先でも正社員にならないか誘われるくらいには評価はしっかりとしてるというのに。

母さんの脳内で俺はもしや普段は遊んでいる狩人か何かとでも思ってるのか?

「俺は行方不明のラフタリアを探すので忙しいの! 母さんが思ってるほどアイツはやわじゃない。ケロっとした顔でかえってくるだろ」

「ああ……尚文、そんな事言わないで、あなたにとってたった一人の弟でしょ? あんなに懐いてるじゃない。大事にしなさいよ」

懐いてるって……俺のギャルゲを無断で持っていく奴なんだが……俺がクリアしたギャルゲしかやらない外れは絶対にしない主義なんだぞアイツ。

嫌がらせに大外れのクソゲーをやらせた際、俺がプレイしたか、どの子を攻略したのかを何故かしつこく聞いてきたがな。

「もしかしたらあの子の学校にラフタリアさんがいるかもしれないでしょ?」

「無理やり関連付けるなー……だからって俺が行って無事と思える確信はどうなんだ」

母さんの脳内の俺はどんな超人なんだ?

……なんだろ、脳内で様々な連中が俺なら出来るとか信じる目で見てくる気がする。俺はそこまで万能じゃねえよ。

現に迷宮にちょっと足を踏み入れて見えるようになったステータスを確認したら相変わらず盾の勇者って感じで攻撃力が無い防御特化ステータスだったし。

これで助けに行けとか無理だろ。

弟はともかくラフタリアは一体どこにいるんだろうか……。

……まったく、ダンジョンってのが見つかって交通網から何までマヒした日から、この世界はどうなっているのやら。

「尚文様ー!」

……で、アトラはラフタリアが居ぬ間に洗濯とばかりに毎日押しかけてきやがる。

いや、ラフタリアが居た頃から毎日押しかけていたか。

「あら、アトラさんじゃないの。アトラさん、ニュース見た? あの子の学校が迷宮化して大変なのよ。尚文にあの子を迎えに行って貰おうと思うのだけどあの子が一人で帰ってこれるって言ってて行ってくれないのよ」

「尚文様が行きたくないならしょうがないですわ。私も兄が居ますがあの程度の迷宮から帰ってこれないのなら切り捨てますわよ?」

アトラのズバッとした返答に母さんが絶句している。

であると同時にフォウルへの対応に涙を誘うな……まあ、信頼しているって事でもあるのは付き合いでわかる。

概ねアトラの辛辣さは、好意を持っていて、更には強く信頼している相手にしか発動しない。

だからフォウルやラフタリアは大変だな。

あるいはこれもツンデレって奴なのか……もっとマンガやラノベみたいには出来ないもんかね。

「アトラさんもそんなこと言わないで、きっと尚文が探しているラフタリアさんも迷宮にいるかもしれないじゃないの」

母さんもそのネタをいつまでも使うなぁ……。

「いても変わりませんわ。正直、私としては迷宮にラフタリアさんがいるのなら自力で帰ってくると思いますわ」

相変わらずどこまでも弱肉強食だな。

しかもラフタリアへの大きな信頼が見て取れる。

俺もこれ位平静な態度の方が良いんだろうか?

「まあ……ラフタリアは心配ではあるな。どうなっているのかわからないし、ラフタリアが帰りたくても帰れない位の問題ならこっちが向かう必要があるだろう」

「なるほど。事情は把握しました。ではそうですわね。私に任せてほしいですわ。ラフタリアさんがすぐに帰ってくるように思念を飛ばしてみましょう」

思念を飛ばすって……盾の精霊になった影響だが、言葉だけ聞くとすさまじいよな。

アトラが両手の人差し指をこめかみに充てて、広範囲にラフタリアだけしか拾えない思念が発信された。

「返事は拾えませんがきっとラフタリアさんに届くと思いますわ。ふふ……今頃ラフタリアさんは大慌てでこちらに向かっていると思います」

「いったいどんな思念を飛ばしたかんだか……」

「ふぅ……こうしておけばラフタリアさんは飛んで帰ってきますわ。じゃないと張り合いがありませんもの」

「お前、なんだかんだ言ってラフタリアの事好きだよな……」

そんな事をしていると母さんがおいおいと俺に弟を助けに行けと懇願してくる。

はあ……行くしかないのか? じゃないとうるさそうだしな。

「はいはい……わかったよ。行けばいいんだろ、行けば」

と、俺は渋々家を出ることを決めた。

†(ᐢ⓿ᴥ⓿ᐢ)

えーっと、まずは現状の整理をすべきですね。

私の名前はラフタリアです。

ナオフミ様の世界に来て一緒に生活していたのですが、ある日の朝……気づいたらよくわからない山の中で目が覚めました。

一体どうなっているのかといろいろと確認とばかりに神狩りの力や槌に干渉しようとしたのですが、槌は勇者としてステータスや強化しかできません。

そして……これは一番の問題とも言えるのですが何故か今、私はラフちゃんみたいなラフ種の姿になっています。

挙句……私が目覚めたこの山は……。

「なにぃ!? 貴様! この里から出て人里に行きたいじゃと!」

「はい。こんな所にいつまでもいるわけにはいきません」

「ならん! ならんのじゃああ!」

と、今、私の目の前で喚いているのは……この山にあるタヌキの里の里長という方らしいです。

年老いて毛並みに白髪が混じる狸みたいです。

ナオフミ様が見せた信楽焼というのをもっと年寄りにした感じですね。

あえて言いませんがある部分が大きいですね。

ええ、なんともよくわからないのですがナオフミ様の世界で謎のタヌキ達が人語を理解し、人の居ない里で文明を築いて生活しているようなのです。

あれですね。

ナオフミ様が所持するゲームや漫画というものにある人とは異なる存在の隠れ里という事でしょうか。

私の方の世界でもこういった集落は存在するらしいのですが、どうやらその里に私は紛れ込んでしまったようなのです。

で、先ほどタヌキの里と思いましたがそうです、この里の住民はみんな狸なのです。

そしてどうやら山というか里の外に出るのは里に張られた結界から出ないといけないのですが安易に出られないようにされていましてこの里長という方の許可が必要との話なのでこうして話をしようと相成りました。

ですが、まあこんな形でよそ者のはずの私が外に出ることを拒否されてしまいました。

そもそもの話としてこんな里……ナオフミ様の世界にあったのでしょうか? どうにも怪しいです。

「ワシたちは危険な人間の居る人里から離れ、隠れ住んで幾星霜。村の掟で人里へ行くことは決して許されないのじゃ!」

「そうは言いましても私は全くの無関係のよそ者ですよ? この里の事は外で話すつもりはありませんので出してくださいませんか? 私が出ても結界は維持できるでしょう?」

なんとなくですがこの里をナオフミ様が知ったら見学に行きたいと言いそうな気がするのですが気にしないことにします。

ラフちゃん達を見て微笑んでいるナオフミ様の事です、こちらの世界でもこのような場所があるのでしたらとこの里の方々を誘惑しそうで怖いんですよね。

家に帰った際に、たくさんのタヌキがナオフミ様から食事をもらい、ブラッシングされる光景は……正直、私の方の世界でラフ種たちの世話をするだけで勘弁してほしいと思います。

「よそ者かどうかなど知らん! 貴様は……名前は覚えておらんがタヌキ! 外敵によって徐々に数を減らしつつあるワシたちにとって繁殖は責務! すでに成体であるなら婿をとらねばならん……が、貴様、まだ子狸か」

タヌキ基準で私は成熟前の状態らしいです。

……成長がリセットしているという事でしょうか。ラフ種姿なのでわかりません。

「まだ子を成すことは出来んだろうが、それもすぐに出来るようになる。人間どもの言葉でいうのならば光源氏計画じゃ」

「いや、それは何か間違っていると思います」

「何にしても貴様の伴侶はすでに用意している! 子狸であろうと早く将来の為に契りをするのじゃあああああ! わかったか!」

と、里長を名乗る狸が杖を山で寝ていた私を見つけた第一発見狸に向けました。

「え、えーっと……里長の命令だから……その上手く誤魔化すから今はさ、里長の言う通りさ一端この里でしばらく過ごすのはどうかな?」

「よそ者であろうと里の者と契れば問題あるまい? わかったか? この、雌狸!」

いちいち怒鳴って騒がしい方ですね。

なんか……もんもんとした気持ちが浮かんできました。

第一発見狸はまだ温和な方っぽいのですが、押しが弱そうです。

「私にはナオフミ様という心に決めた方がいます! ですから婚約はお断りします」

ああ、ナオフミ様……こちらの世界では「さん」と呼んでほしいと仰いましたが様をどうしてもつけてしまうのですよね。

治したい癖なのですがどうにもうまくいきません。

「ほう、そのナオフミとはどんな奴でこの里のどこにおるのじゃ?」

「ナオフミ様は人間でこの里にはいません」

「人間じゃと!? ならん! ならんのじゃああああ! 里の掟に逆らうというのか! ワシの命じたこいつとの契りは里のルールにして絶対! おい! 早くこの子狸に我らの掟を叩き込むのじゃ!」

ああもう……話の通じないおじいさんタヌキですね。

なんでしょうね……ナオフミ様がメルロマルクの王様、クズさんに対して抱いた感情がここでわかってしまいそうな気がしてきました。

直後――覚えのある感覚が響いてきました。

『槌の勇者様、槌の勇者様、聞こえますか?』

「……アトラさん?」

『そうです。アトラです』

どこからともなく、ではないですね。

槌を通じて声が頭の中に聞こえてきました。

『どうも一方通行でしか届かないように感じるので一方的にメッセージをお送りしますわ』

返事が出来ないか槌に干渉したり神狩りの力が使えないかと意識しますができません。

『ラフタリアさん、どこにいるかわかりませんが早く帰ってこないと――今回から尚文様のメインヒロインの座は私が頂いてしまいますよ』

「アトラさん……メッセージを送ると言ってこれですか……」

うっ……槍の勇者に見させられた別の可能性が脳裏を過ります。

代わりは沢山いるから私は居なくてもいい、なんて言わせません。

尚文様の隣を譲るつもりはありません!

「おい、何を言っているのだ、この子狸は」

『帰ってくるにしても11巻くらい時間をかけて帰って来てください』

「11巻って……なんですかその具体的な数字は! アトラさん?」

「おい! 二度と里の外に出ようなど思わないように教え込むのじゃ」

「で、ですが……」

何やら私を最初に見つけた狸と里長が言い合っています。

そんな事よりアトラさんのメッセージです。

『もしくはどこかで彼氏でも作って来ても良いですよ? 安心してください。傷心の尚文様を私が全身全霊を持って癒して差し上げますわ』

「何を言っているんですか!」

『ふふふ、それではさようなら。セカンドヒロインのラフタリアさん』

「くっ……相変わらず安易な挑発を……なんにしてもこのまま放っておくとナオフミ様の近くにアトラさんが居続けることに……早く帰らないと! 修行をしていた時みたいになりかねません!」

変幻無双流の修行から帰ってきた時のことを思い出しました。

アトラさんがナオフミ様のベッドに潜り込む事が悩みの種となっていた時期です。

サディナ姉さんにお願いしたら悪化した苦い記憶があります。

と、苦い記憶を思い出していると里長を名乗る狸が私に下品な顔をしながら近づいてとびかかってきました。

「ぐふふ……臆病者め! 良いじゃろう。早く契らんとワシの8番目の雌にし――ふべ――!?」

思わず私は槌を力強く握りしめて殴り飛ばしてました。

「ぐぬ! よくもワシを殴ったな! 許さん! ワシ直々にヒーヒー言わしてくれよう! 子狸であってもワシの性欲は収まりを見せんぞ! ぐふふふ! ワシが直々に体に教え込んでくれるわぁあああ! 文句があるのならワシを倒してみることじゃ! 子狸、ロリは良いぞぉおお! 抵抗できるならしてみるが良い、できるのならなぁあああああああ!」

「さ、里長……」

「いや、さすがにそれは引く」

「前々から思ってましたが僕達って一夫一妻がモットーのはず。あなたも本当に狸なのですか?」

別の狸さん達が自分達の長に引いています。

「……」

プツーンと何か私の中で切れる音が聞こえました。

そうですね。槍の勇者に狸豚と罵られた時のことを思い出しました。

「ぐは! ぐげ! うぐ! ちょ――」

怒りに任せて私は襲い掛かる里長を名乗る発情した狸に教育的指導をしていました。

「ぐぬ! おのれ! 調子に乗りおって、ワシの妖術を受けるがいいいい!? な、なに!? 効果がないじゃとおおおグハ!?」

何やら抵抗してましたが謝るか降参するまで私は槌で殴り続けることにしました。

反撃に里長を名乗る狸が噛みつきや拳を振るって来たり魔法を使ってきましたがどれも弾いて殴打します。

その攻防をしているだけなのですが……なぜか記憶のナオフミ様が淡々と「どこぞのレトロなボクシングゲームか華族の女どもの戦いでノーダメージ勝利をしているみたいだな」と仰っていました。

私の記憶のナオフミ様は何を伝えようとしているのかわかりません。

ああ……クズさんに逆恨みされていたナオフミ様を改めて尊敬する気持ちになりました。

だってナオフミ様は攻撃することができない方です。

こうして暴力によって問題を解消することがナオフミ様だけではできないにも関わらず、相手に報いを受けさせることが出来たのです。それはとても大変な事ですよね。

私の暴力は甘えなのでしょうか……なんにしてもナオフミ様はすごかったんだと思います。

「調子にのりおってえええええ!」

と、振るわれた拳を片手で受け止め私はカウンターの槌でトドメとばかりに殴りつけます。

『ラフスマッシュプラズマ!』

……記憶のナオフミ様の掛け声は無視します。

「ああああ……」

何やら私を最初に見つけた狸が腰を抜かしていますが知りません。

「いい加減にしないと、あなたの大事な部分でゲートボールしますよ?」

槌を思いっきり振りかぶって寝転がる里長を名乗る狸に警告します。

これくらいしないとおとなしくなりそうにありません。

「ぐ、まいった。なんという強さを持った雌狸じゃ」

「雌狸言わないでください」

『ラフー』

魔王ラフちゃんでもないです。

「そこまでの力を持つのならいいじゃろう……貴様が次の里長じゃ! ワシは身を引くことにしよう。この里に残りみんなを守るのじゃ」

と、何やらぼこぼこにされた里長を名乗る狸が強さを認めるとばかりに話を進めていこうとしていますが全く進んでません。

「人の話を聞いてました? 私はここを出たいんです。里長になったのでしたら私の権限で里から出ます。残ったタヌキたちで里の運営でもなんでもしてください。それでは行きます」

いい加減話をする意味は全くないように感じます。

話が通じないなら強硬手段に出るしかありません。とはいえ里長と認めたのならばその権限も一応使ってみましょうか。

「ならん! 里長が里から出ようとしているぞ! みんな止めるのじゃああああ! 次世代の為、強き里長を逃すなぁあああ! 囲って捕らるのじゃああああ」

ボォオオオオン!

と、何やらほら貝のような音が里中に響き渡りました。

「全く変わらないじゃないですか! 早く私は戻らないといけないんです! もう良いです、降りかかる火の粉は払っていきます!」

私は里長を名乗る狸の腹を踏みつけ、大事なところでゲートボールをしてやりました。

「ぐぎゃ――!? アウッ!?」

泡を吹いてやっとこのやかましい狸が静かになりました。かなりタフでした。

「では失礼します」

私は駆け出し、里の結界の出入り口へと向かい飛び出しました。

「うぐう……おのれ、超強き雌狸……我が種族繁栄の為、何がなんでも、逃しはしない……のじゃ」

その先は……第二の結界としてどうやら迷宮というものがあるそうです。

まずはここから脱出しなくてはいけません。じゃないとナオフミ様の隣にずっとアトラさんがいることになります!

そして次にしなくてはいけないのは早く人の姿に戻ることです、間違ってもこの姿でナオフミ様の元へ合流する訳にはいきません。

「一刻も早く……人の姿にならねば!」

この姿でナオフミ様に出会おうものなら私は……フィーロやラフちゃん枠として扱われてしまいます。それだけは何が何でも阻止をしなくては……いけません!

脳内でナオフミ様がこの姿でも良いんじゃないか? とか成長してラトさんのみーくんさんや大きなラフちゃんみたいにならないか期待している気がします。

それではダメです!

「ナオフミ様の元に絶対に戻ってみせます! アトラさん! ナオフミ様は譲りません!」

こうして私のナオフミ様と再会するまでの冒険が始まりました。

……たぶん、つづ、かない。