軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

青い砂音

実験をする為にラフタリアとフィーロ、そしてリーシアを呼んだ。

この後鍛錬や魔法の勉強などを予定しているが、一応まだ時間的余裕があるので問題は無いだろう。

「どうしたのです? ナオフミ様」

「ああ、ラフタリアにちょっと頼みたい事があってな」

俺はラフタリアの奴隷項目に入れておいた、俺に攻撃をしないのチェック項目を外す。

これを外さないと実験する前に奴隷紋が発動してラフタリアが苦しむ。

「強くした盾の防御力の実験をしたいんだ。許可は出すから俺を殴ってみてくれ」

「はぁ……」

「まずは素手で頼む。手加減するなよ」

「わ、分かりました」

躊躇いながら、だけど力を込めてラフタリアは俺の胸目掛けて拳をぶつける。

バシンという良い音が聞こえた。

が、俺は蚊に刺された程の痛みも無い。

ラフタリアの拳でこの程度なのか……。

剣で刺されたらどうなるか?

自分でも馬鹿みたいだし、下手をして怪我をしたら嫌だと思うけど、どれだけの攻撃に耐えられるのか実験したい。

「次は剣だ」

「あ、あの。大丈夫なんですか?」

リーシアが恐る恐る尋ねる。

気持ちはわかる。常人から見たら異常者にしか見えないからな。

「どこまで耐えられるのかを試しているんだ」

ラフタリアクラスの攻撃に耐えられるのなら今のところ大丈夫だと思いたい。

防御力は高いに越した事は無いからな。

「で、では行きますよ」

本気用の武器ではなく鉄の剣でラフタリアは俺に向けて振りかぶる。多少手加減しているのがわかるな。

ガキンという音を立てて、ラフタリアの攻撃は俺の肩にぶつかった所で止まる。

「か、硬いです……」

ジーンと鉄の剣を取り落として手を振るいながらラフタリアは涙ながらに答える。

おお、まったくダメージを受けない。

こりゃあ凄い。まるで身体が金属になった様な錯覚を覚える。

実際に触れれば肉感のある、今まで通りの身体だがな。

見直してみるとこの世界に来る前より筋肉が付いたんじゃないか?

Lv補正を含めても随分と戦いに適した身体になってきたと思う。

まあこの四ヶ月あまり戦い放しだったからな。

徒歩か馬車かの二択で昔では考えられない程体力を消費している。オタクだった頃とは比べるまでもないか。

「フィーロもやらせてー」

「ああ、いいぞ」

「わーい」

フィーロの魔物紋の項目もチェックを外す。

威力的にフィーロの攻撃を防げれば相当な防御力と言える。個人的に知っておきたい。

「じゃあ行くね」

魔物の姿になったフィーロが俺の目の前まで来て蹴る為に足を後ろに高く上げる。

ミシ……ミシミシミシ……ビキ……。

「お、おい……」

フィーロの足から物凄く筋肉が収縮するような音が聞こえてくる。

今までの経験が告げている。アレはやばい。

ビキ……ビキビキビキ!

「ちょ、やめ――」

「てい!」

咄嗟に盾を構える。

ドゴンという爆音がして振動と共に少し体が浮いた。全身に衝撃が走る。

「こ、殺す気か!」

構えていなかったら突破されていたんじゃないか。これは。

文句の一言でも言ってやろうと視線をフィーロに向けるとケタケタと笑みを浮かべている。

一瞬、眉が寄った気がした。

「わぁ……ごしゅじんさますごく頑丈ー」

「何なんだ今の蹴りは!」

「えっとね。実際の戦いじゃ絶対に当てられないくらい力を貯めて蹴ったの」

フィーロの本気の蹴りかよ……まったく手加減をしないってどうよ。

「槍の人だったら縦に裂けるくらいの力を入れたよ」

哀れ元康、もしもこの威力で蹴られたら終わりだな。

ちょっと見てみたい気もする。

「前のごしゅじんさまだったら地平線まで飛んでいくかも?」

「お前は自分が行った行動の先をもう少し考えろ!」

まったく、殺される所だった。

地平線まで飛んでいく蹴りって何だよ。

アニメじゃないっての……考えてみれば異世界か。

しかし、結果として防御力の高さを立証できたな。

グラス曰く勇者にも匹敵するフィーロの全力を防ぎきったんだから相当だろう。

どこまで通用するかはわからないが、今まで以上の効果は見込めそうだ。

「んー……だいじょうぶ」

「それを決めるのはお前じゃない。俺だ」

「大丈夫だとおもったもん」

野生の勘って奴か?

とりあえず二回目は怖いのでチェック項目を戻しておこう。

「たくっ……大丈夫だったから良かった物を……もしも大怪我していたら、お前を今夜の主食にしていた所だ」

「やー」

さて、徐にリーシアの方を見る。

「ふぇえ?」

「お前はやらなくても良いからな」

「は、はい」

ラフタリアやフィーロでダメージを受けなかったんだ。リーシアではどう頑張っても無理だろう。

無理をして怪我をされたら困る。

虚弱体質を扱うみたいになってしまっているような気もするけど、気にしたら負けだ。

「とりあえず波が近いから、今日も魔法の習得等の鍛錬をするように。以上」

本格的にLv上げをするには遠征をした方が良いからな。

ラフタリアは騎士団の連中と一緒に模擬訓練をしているようだけど。

「はい」

「分かりました」

「じゃあフィーロ、メルちゃんの勉強に混ざっていくね」

「ああ行ってこい」

一国の姫なので当たり前だが、メルティは基本的に城で勉強している事が多い。

ビッチが継承権を剥奪された今、次期女王として必要な物なんだろう。

帝王学とか言ったか。俺の世界にも似た様な物があった。

精々毎日勉強してまともな国にしてくれ、としか言えないな。

メルティと言えば、城で薬学や魔法を教わっていると暇な時間を見つけては俺の所へ来る。

勉強の方もフィーロと楽しくしていると話していたな。

……数日前、フィーロに勉強で追いつかれそうだと愚痴っていたのは忘れよう。

フィーロの頭が良いんじゃなくて、きっとメルティの頭が悪いんだ。うん。

そう自分を納得させた所で、後は……ラースシールドも一応強化しておこう。

ラースシールドⅢ(覚醒)+7 50/50 SR

能力未解放……装備ボーナス、スキル「チェンジシールド(攻)」「アイアンメイデン」「ブルートオプファー」

専用効果 ダークカースバーニングS 腕力向上 激竜の憤怒 咆哮 眷属の暴走 魔力の共有 憤怒の衣(中)

熟練度 0

アイテムとスピリットとステータスエンチャントは未解放の盾には行えないようだ。

それでも物凄い能力が向上している。

問題はコレに変えた瞬間、意識を乗っ取られてしまいそうで怖い。

とまあ波への備えは揃いつつある。

翌日。

波まで後3日。

「そういえば女王」

「何でしょうか?」

昼食を終え、会議に向う女王を呼び止める。

ほとんど準備を完了しており、後は波を待つだけという状態だ。

さすがに俺達だけであのグラスと戦うのは厳しい。

だから現在勇者達はどうしているのか聞こうと思っていた所だ。

「他の勇者共はどうなっているんだ? 後、俺は他国の波に参加しなくても良いのか?」

「イワタニ様以外の勇者様方はこの数日間に他国の波にそれぞれ参戦し、無事鎮圧させたそうです。イワタニ様は基本的に我が国専属という扱いになっております……大きな問題が無い限りは大丈夫かと」

「その大きな問題と言うのが不安なんだが――っ!?」

突如、ガラスを叩き割る音が耳に響く。

頭を揺らすように大きな衝撃が視界に走った。

波が起こる音に似た音だが……微妙に違う。

「今……何かが起こった!」

「は?」

周囲を見渡す。

波で転送されたのかと思ったのに、俺はどこにも転移しておらず、そのまま城の廊下にいる。

「一体どうしたのですか?」

「解らない……けど、何かが起こったのだけは確かだ」

俺は視界の隅にある波を知らせる赤い砂時計のアイコンを呼び出す。

――タイムカウンターが波まで後3日という所で停止していた。

そして、その隣にもう一つの……青い砂時計が現れ『7』という数字が刻まれている。

「もう一つの砂時計が出現している。7という数字が書かれているが、これが何を意味するか分からない」

ヘルプを呼び出して新しい項目が無いかを確認する。

しかし……それらしい情報は見当たらない。

一体何が起こっているんだ?

7……最近似た名称、七星勇者とかいう奴等の話を聞いたな。

もしかしたらソレか?

「考えられるとしたら、どこかの波で勇者が敗北したんじゃないか?」

「いえ、他の勇者様方が参加した波以外は今のところ先だったと思いますが……念のため各国に情報を募ってみましょう」

俺と女王はその足で伝令兵に指示を出し、情報を募った。

事件の始まりはここからだった……。