軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 異聞録 盾三郎の東遊記

俺の名前は岩谷尚文、ある日、図書館でラノベを漁っていた所で四聖武器書という本を見つけて読んでいた所、本の登場人物である盾の勇者として異世界召喚という夢のようなシチュエーションに遭遇し、こうして異世界で勇者として活動する事になった。

で、色々とあって異世界での日々、期待に胸を弾ませて宿屋で休んでいた所……コンコンと扉を叩く音がして出る事にした。

「はい?」

「岩谷尚文くん。夜分に失礼するのですピョン」

俺の名前を知っている人からの来訪?

誰だろ? 王様とか国からの斡旋とかその辺りかな?

ただ、それにしてもピョンとか変わった語尾だなぁと扉を開けると誰もいない?

いや、なんか視界をフリフリと視線の下で何か振っている。

「こちらですぴょん。俺の名前はウサウニーですピョン」

するとそこにはサンタ帽子を被ったウサギが棒……を振り回して自己主張している。

「始めましてですピョン」

「あ、うん。初めましてウサウニーさん」

あ、あれか? 獣人って奴、異世界だからこういった人種ってのが居るのかも知れない。

何せ俺はこの世界の事をまるで知らないし四聖武器書に関しても大雑把な概要しか分からない。

「俺の名前を知ってるようだけど誰かからの紹介?」

「噂になっているのですピョン。ですからご挨拶に来たのですピョン」

「あ、そうなんだ?」

勇者が仲間を集めようって方針とか噂にくらいなるよね?

もしかして噂を聞いて直接俺の所に来てくれたのかな?

ウサギの獣人が仲間になるとかちょっと夢があるなぁ……見た目可愛い系だから戦力になるかはわからないけど癒しにはなるよね。

そんなウサウニーさんを見てると鼻がピクピクしている。

耳も寝かせてて……あ、なんか角度というか可愛く見えるポーズをとってるような気がする。

小首を傾げて両手を合わせるその姿は良いな。

思わずそっとほほをなでると気持ちよさそうに目を細めてくれる。

「えへへ……ですぴょん。もっと撫でても良いですピョン」

「じゃあお言葉に甘えて」

と、少しばかり撫でさせてもらった。

「むふふ……くすぐったいですピョン」

毛並みがふわふわでぬいぐるみみたいで可愛いなー。

そうして少しだけ撫でた後、ウサウニーさんは改めて距離を取ってから小首をかしげて聞いてくる。

「俺はオト――尚文くんに質問があるのですピョン」

ただーこのウサウニーさんの声、どこかで聞いたことがあるような気がするのは気の所為かなー?

気のせいだよね。

「なんだい?」

可愛いウサウニーさんが俺に聞きたい事ってなんだろ?

むしろ俺の方がこの世界に関して知らない事ばかりなんだけどなぁ。

「オトウ――尚文くんは運命をどう考えているのですピョン?」

「運命かー……今感じてる素敵な出来事の連続かなー?」

こう……しゃべる動物みたいな人が凄く可愛い感じに撫でてって来るのは素敵な体験でしょ?

なんとなく興奮と癒しが入り混じった不思議な体験を今しているのでそう答えてしまう。

実際にはあり得ない夢のようなシチュエーションからの獣人を撫でる体験ってのは貴重だ。

まあ、動物をなでるのは近所の犬猫とかふれあいコーナーの動物、ペットショップとかで出来るけれどさ。

俺に態々会いに来てくれたウサウニーさんをなでれるのも運命と表現するなら素敵な事じゃないか。

「では改めてお尋ねするですピョン」

「なにを?」

「刺激のあるのとないのではどちらが良いですピョン? 将来、俺を蹴り飛ばすような刺激を体験したいですピョン?」

「え?」

いやー……可愛いウサウニーさんを蹴り飛ばすってどんな刺激のある経験だよ。

できればそんな経験はしたくないなー。

「そういう刺激は困るかな……みんなで楽しく、それでありながらワクワクしたいかな」

だって俺はこれから仲間を集めて波って厄災に挑まないといけないんだしね。

どれだけの被害が起こっているのか今一つピンと来てないけれど来るべき時に戦えるようにならなきゃいけない。

何せ守るしか出来ない俺に仲間は必須なんだし。

「わかりましたですピョン。ではちょっと失礼しますですピョン。オト――尚文くん。おやすみなさいですピョン」

「あ……うん。おやすみなさい」

どんな質問なんだろう?

何か回答を間違えたような名残惜しさがある……。

そう思いながらウサウニーさんを俺は見送った。

「……仲間になってほしいとお願いしたらよかったかな?」

もしくはああ言った子が酒場に居たら声を掛けてみると良いかもしれない。

癒し枠って事で。

まあ、いきなり癒し枠を勧誘するのはどうなんだ? とも思うけどさ。

やっぱりまずは戦力を重視すべきか?

ゲーム風だったら剣士とか前衛の人を雇用するのが無難なんだろうか?

この世界の鉄板的なパーティーとか錬や樹たちに聞いておけばよかった。

なんか詳しそうだったし。

元康は人当たりよかったけどその手の話題に触れてこなかったんだったっけ。

あいつもやっぱりこの世界に詳しいのかな?

なんか性格悪い女に無理心中で刺されたとか言ってたけど。

なんて思いつつ、やや田舎者かな? って思いながらお金を隠して早めに就寝したのだった。

うーん……なんかごそごそと近くで音がするような気がするけど隣の部屋かな……。

チャリチャリ……。

熱いなぁ……服が引っかかる。

「…………」

なんか、声が聞こえたような気がするけど……気の所為かな?

それと天井でトタトタと音がしたような気がした。

親戚の田舎でネズミが屋根を走っているような音を聞いた事がある。

異世界だからその辺りは居ても不思議じゃない。

ユサユサ……。

「オ――尚文くん。起きてほしいですピョン」

うう……後5分……。

「起きてほしいですピョン。じゃないとお布団にもぐっちゃうですピョン」

モゾモゾ……。

「むふふ……お義父さんと添い寝ですピョン」

……んんん?

動く何かが寝ている俺の胸元に顔を出す。

目を開けるとまだ部屋は暗い。

どうなってるんだろうと目を凝らすと……。

「寝ている所に失礼しますですピョン」

「うわ!」

なぜか俺のベッドの中でウサウニーさんが顔を出して俺に挨拶をしていた。

いつの間に添い寝をしてたんだ!?

寝ている俺のベッドにもぐりこんできたのだろうか?

「う、ウサウニーさん!? どうして寝ている俺のベッドの中に!?」

「オ――尚文くんの部屋から泥棒が出て行くのを見たので追いかけて取り返してきたのですピョン。何度も声を掛けたけど起きないので部屋にお邪魔させて貰ったのですピョン」

「え!?」

慌てて飛び起きて金袋を確認するとウサウニーさんが差し出してくれる。

中身を確認……うん。問題ない。

「他に装備や服も盗んでいたので取り返しましたですピョン」

「あ、ありがとう」

ウサウニーさんが泥棒から色々と取り返してくれたようで助かった。

「ここの宿は泥棒と手を組んでいる危険な宿だったようですピョン。危険ですから俺と一緒に来てほしいのですピョン」

「いきなりそういわれても……いや、わかったよ」

鍵をかけていたのに開けられて部屋に入られたってのはそういう行為が行われていても何の不思議ではない。

仮に誤解だったとしても宿代を部屋に置いておけば問題ないだろうし、後でこういった犯罪行為をしている宿だって国、王様に報告しておけばいいよね。

「ささ、俺の槍を一緒に握ってほしいですピョン。こうすれば誰にも見つかることが無いですピョン」

「うん」

そんな訳で部屋に宿代を置いて俺はウサウニーさんに連れられて宿屋を出た。

で、宿屋から出ると……ずいぶんと兵士達が周辺を見回りしてるなー。

「今頃のんきに寝てるぜ」

「ばっかでー」

なんか宿屋を親指で指さしてヘラヘラしてるなぁ……非常に印象が悪い。

やはり兵士ってガラが悪いのかなー。

「……ギルティ、ですピョン」

「ウサウニーさん?」

俺の声にウサウニーさんはピクっと耳を動かして笑顔で振り返る。

「行きますですピョン」

「うん」

そんな訳で宿屋を出て……少しした所でウサウニーさんがなんか俺にシステムで飛ばしてくる。

PT加入申請?

ああ、パーティーに俺を入れてくれるのね。

へー、この世界だとこんな感じで結成するんだなー。

と、了承する。

「ではちょっと移動するのですピョン」

「え? うん」

フッと浮遊感と共に突然景色が変わる。

周囲を見ると草原……? どうやらメルロマルクの城下町の外へと瞬間移動してしまったらしい。

「おお」

「ポータルで移動したのですピョン」

「わー……こんな事も出来るんだ」

魔法なのか何なのかわからないけど異世界って感じだ。

ここまであっさりと移動できるなんて。

そうしてやや眠いけれどウサウニーさんと一緒に近くの森まで移動して夜のキャンプ……野宿を満喫した。

翌朝。

周辺の地図から行こうと思っていたラファン村って所にウサウニーさんと一緒に行くと……。

「みんな! しっかりと探すのだ!」

「どこだ!?」

っとなんか兵士やいろんな人が忙しなく走り回っているようだった。

どうしたのかな?

「気になりますですピョン?」

「うん。ウサウニーさんは知ってる?」

「俺の耳から聞こえますピョン。三人の勇者の行方が掴めないので探せと言ってますピョン」

「三人……」

俺もウサウニーさんに連れられて移動してるから行方が分からない勇者って事になるのかな?

「勇者たちがいきなり行方をくらませるなんて! まさか盾の悪魔と獣人どもに先手を取られたという事か!?」

「盾の身ぐるみを剥ごうとした者が何者かに襲撃を受けたとの話も来てる……本当だろうか?」

盾の……悪魔? 獣人どもって言葉に何かずいぶんと悪感情が含まれているように聞こえたな。

というかウサウニーさんと一緒に居るとあいつ等俺たちの姿が視界に入らないみたいなのは何だろう?

身ぐるみ剥ぐって昨夜、ウサウニーさんの話で俺の部屋に泥棒が入った話が思い出される。

まさか……ね。

そう不安に思いつつ……遅めの朝食を取ろうと村から出た森で焚火の前で料理をしていると。

「おお、そこに居るのは盾の勇者と聞く岩谷尚文という奴ではないか。くんくん……良い匂い。どうか俺にも料理を食べさせてくれないだろうか」

ってサンタ帽子を被ったシベリアンハスキーの子犬っぽい剣を持った獣人さんがやってきた。

なんか棒読みっぽいけど……。

「あいつの名前はイヌルトですピョン。俺の仲間ですピョン」

「そうなんだ? せっかくだし食べる?」

ウサウニーさんが倒した魔物の肉で串焼きを作っていたのでイヌルトさんに渡す。

「ふん、頂こう」

イヌルトさんは受け取ると恐る恐ると言った様子で串焼きを食べ始める。

「む……悪くない」

素直になれないと言った様子でイヌルトさんは串焼きを食べていた。

「よし、良いだろう。飯をくれた礼に俺も同行しよう」

「あ、うん。ありがとう」

「この国から出るんだな?」

「え? そうなの?」

ウサウニーさんに聞くと頷かれる。

「ここはオ――尚文くんに色々と隠している悪い国なのですピョン。ですからお送りしますですピョン。イヌルト、これから国を出るのに手伝うのならいくらでも食べさせてやるのですピョン」

「おい、何を偉そうに……ごほん。そうだと言っている」

なんか裏で話し合ってない?

結構疑わしい態度でウサウニーさんとイヌルトさんが合流した。

「盾の悪魔が行方を晦まし、潜伏中である。この顔に覚えのあるものは直ぐに報告をせよ!」

さらに翌日の朝には俺らしい人相書きと写真みたいなものが配られている現場を見かけてしまった。

ウサウニーさん達に連れられて歩かされている所で、なんか……嫌な感じに事が進んでいるような気がする。

「……やはり言った通りになったか」

「イヌルトさん、何か知ってるの?」

「……いいや?」

なんでそんな知ってそうなのに言わない態度なのか気になるんだけど?

って思いながら街道を歩いていると……。

「「「盾の悪魔と獣人どもだ! 急いで殺せー!」」」

「おわ!」

「させませんですピョン! とう!」

っとウサウニーさんが俺への殺意を向けて襲い掛かってくる連中に向かって勇猛果敢に突撃して返り討ちにしていく。

「ふん……」

イヌルトさんも駆けてきた奴の足止めをしていた。

うわ……矢や魔法で俺を狙ってきたぞ。

「うぐ……」

「く……馬鹿な……」

「獣人にやられるなんて」

ウサウニーさんにやられて襲い掛かってきた連中は全員倒れ伏した。

「これで分かっただろ? どうやらこの国はお前を悪者としたいみたいだから俺たちが安全な場所に送り届けてやる。黙ってついてこい」

「はあ……」

「その態度は半信半疑だな? 良いか? この国は幼い女の子であろうとも亜人なら拷問して苦しめる貴族が居るんだ」

イヌルトさんが眉を寄せて俺に注意してくる。

それからウサウニーさんの方も見てるけど……どうしたんだろう?

後でわかる事なのだけど、イヌルト……いや、錬はウサウニー……元康が俺の所に確認に来た晩、俺の部屋に泥棒が入る光景を見せられた後に幼い女の子を拷問する連中の所にも連れていかれて国の内情を樹と一緒に見させられたんだそうな。

もちろん女の子は救出して安全な所に預けているとか。

ただ、この頃の俺はそんなことも知らずに、ウサウニーたちのやり取りを楽しんでいた。

「さて……腹が減ったな」

「さっき食べたばかりだろ」

イヌルトさんもなんか演技っぽい言い回しだ。

こんな俺を殺そうとしている連中とのやり取りの後で腹なんて減らない。

「鈴カステラを作りましょうですピョン」

どこからともなくウサウニーさんが小麦粉等の材料を調達してきて俺に催促してきた。

「なんで鈴カステラ……」

まあ、ウサウニーさんが魔法で火を出してくれるので軽く鈴カステラを作っていると。

「くんくん。良い匂いがしてきました。ああ……そこに居るのは尚文さんですね。噂は聞いてます。どうかそのきび団子――」

「鈴カステラだぞ」

なんかサンタ帽子を被った弓を持ったリスの獣人……ウサウニーさん達と同じくらいの子がふらふらと演技っぽい口調でやってきて声を掛けてきた。

そこにイヌルトさんが説明するとそそくさとイヌルトさんの腕をつかんで距離を取り内緒話を始める。

「ちょっと、打ち合わせと違うじゃないですか」

「いきなり鈴カステラって言ったのはあいつだ」

「まったく……」

「お義父さん。撫でて下さいですぴょーん」

なんかウサウニーさんが俺の事をお義父さんと呼び始めたのは気にしないでいて上げるべきだろうか。

可愛いけどさ……さすがにこれだけ演技っぽい態度が続くと非常に気になってくる。

一体俺は何に巻き込まれているのだろうか?

「あいつの名前はリスーカですピョン。食いしん坊ポジションですぴょん」

「ちょっと! 妙なキャラ設定を作らないでくださいよ! 誰が食いしん坊ですか!」

あんまり仲は良くなさそうだなぁ。

「まあいいや、君も食べる?」

鈴カステラを串で大きく作ったのでリスの子に渡そうとする。

「ここで一細工ですピョン」

サササっとウサウニーが鈴カステラに細工をして……耳や鼻、目を槍の先で切って完成させる。

出来上がったのはリスーカさんそっくりの鈴カステラ。

「……」

「ちょっとモト――ウサウニーさん!」

「リスーカステラですピョーン!」

「フッ、そっくりじゃないか」

「レ――イヌルトさんまで何を言ってるんですか!」

なんか可愛いマスコットたちの言い争いの光景が目の前で繰り広げられてる。

最終的にリスーカステラなる鈴カステラをリスーカさんは食べた。

「なかなか悪くない味ですね。何にしても食べ物の礼です。一緒に行きますよ。これからよろしくお願いします」

「あ、うん」

どうにもこの子たちが演技をしてるのは分かるけど、いったい何をしたいんだろう。

そうしてウサウニーたちとの旅を続けていると……リスーカさんが俺と一緒に留守番をしてウサウニーさん達が手ごろな狩りへと行くことになった。

すると……。

「ヒヒーンーなのー」

なんか……変わった鳴き方をする馬がキャンプをしている俺たちに近づいてくる。

「随分と変わった鳴き声だったような気がしますが……」

「ヒ、ヒヒーン」

ブルルっとそれっぽく鳴いてるけど野生の馬……だよね?

が、俺の目の前まで来て大人しく座る。

随分と人に馴れたような感じだなー。

乗り捨てられた馬とかかな? 鞍とかは付いている訳では無さそうだけど。

あ、魔物名は見るだけでわかるはずなので確認っと。

ホース?

なんで疑問形? 俺のLvが低いからかな?

で、馬は俺をじーっと見つめている。

この目には見覚えがあるなーふれあいが出来る牧場とかで人を乗せてくれる馬がこんな感じの優しい眼をしてた。

なのでそっと手を伸ばして触って見る。

「……」

馬は特にこれといって抵抗したり不満な様子を見せずに大人しくしている。

なのでそのままなでると気持ちよさそうに目を細めていた。

「えーっとウサウニーさんに貰ったブラシがあったからこれでちょっと毛並みを整えてみよう」

「既に支給済みなんですね」

ちなみにリスーカさんはお腹がすいたのでご飯をくださいと言うので燻製肉を作って食べて貰っている。

野菜炒めも欲しいというので焚火で準備中である。

そうして馬にブラッシングまで出来てしまった。

「ブルル」

乗っても良いとばかりな様子だったのでそのまま背に乗ると馬はスタッと立ち上がった。

「野生の馬に不用意に乗って大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃない? そりゃあケルピーとか異世界だから居そうだけどさ」

「ケルピーですか?」

「うん。リスーカさんは知らない? 人を乗せるようにそれとなく誘導して乗るなりいきなり水の中に入って溺れさせて内臓を食べるって魔物、一説だと触れるだけでも引っ付くなんて話もあるけどさ」

「笑えない話になってません?」

「大丈夫じゃない? この子大人しいし」

「ヒヒーン、なのー」

パカパカって感じに馬は特に問題なく歩いてくれていた。

うーむ、ここまで人馴れしてるならそのまま載せてって貰えると旅が楽になりそうなんだけどなー。

なんてリスーカさんと馬でじゃれていると……ドサっとウサウニーさんがイヌルトさんと一緒にやってきて手土産らしき魔物を落としてしまっていた。

「お義父さん、何をしてるのですかな?」

「何って野生の馬が懐いてきたから背中に乗ってるだけだけど?」

「おい! 早くお義父さんから降りるのですぞ! 隠しても臭いで一発ですぞ!」

ウサウニーさんがなんか焦った様子で槍をブンブン振り回して近づいてくる。

ピョンをつけてないよーウサウニーさん。語尾が、語尾を付ける余裕がなくなってる?

「ヒヒーンなのー!」

「うわ!?」

そこを高らかに跳躍……じゃなく馬は背中から羽が突如生えて飛び上がった。

「どうしてもう貴様が居るのですかな!? いえ、ですピョン!」

「おお……なんだ? 知り合いか?」

「飛んでますね。尚文さん。大丈夫ですかー?」

「いや、平気そうな顔してるけど助けてくれない?」

「なの、安心するなの。なおふみに怪我はさせないなのー。ちょっと空気を読んでご挨拶なのー」

「話を聞いてはダメですピョン! お義父さん、そんな奴に乗ってはダメですぴょん!」

「ふっふっふ、なおふみを乗せてあげたなのー」

と、喋る馬……じゃなくて、徐々に姿が変わってドラゴンがウサウニーさんとにらみ合いをしながら会話をしている。

どうも俺の事を知っていて、ウサウニーさんとは仲が悪いようだ。

敵……ではないのかな?

「どうやらどこかへ移動している最中のようなの。ガエリオンの名前はガエリオンなの。協力してあげるなのー」

「あ、ありがとうガエリオン、さん。ウサウニーさんと知り合い?」

「ガエリオンちゃんって呼んでほしいなの。ほうほう、ウサウニーとは……頼まれて世話してやってるなの」

へー……そうなのか。

どうも仲が良くないというかウサウニーさん自体が毛嫌いしてるけど保護者って事なのかな?

そうして飛んでいたガエリオンちゃんはゆっくりと地面に降りて俺を降ろしてくれた。

「旅は道連れ、にぎやかに行くのが良いなの。守ってあげるなの」

「どうも、俺たちはこの国から出て安全な国、獣人の国って所へ行くらしいよ」

「なるほどなの。東の国、シルトヴェルトへ行くなのー」

ああ、そうなんだ?

「それともシルドフリーデンへ行くなの? そっちもガエリオン、詳しいなの。まあ、こっちはなおふみが行く場合、もう少し強くならないとお勧めできないなの」

「違いが分からないかなー」

だって俺はこの世界に詳しくないし。

「色々と知って行けばいいなの」

「お義父さんに教えるのは俺ですピョン! ペラペラ話すんじゃないですピョン!」

何にしてもどんどんにぎやかに仲間が増えて行って……夢があるなぁ。

だってウサウニーさんたちでしょ? それにガエリオンちゃんってみんな人間じゃない。

ああ、異世界って感じで凄くワクワクする。

「はあ……」

まあ、問題は時々「盾の勇者め! しねぇえええええええええ!」って大声と殺気を放って襲ってくる全身甲冑の兵士っぽい連中に絡まれるんだけどさ。

お前を国外に逃がすものかぁあああ! とかも騒がれたっけ。

うん……人の方が怖いとはこれ如何に。

どうやらメルロマルクって国は相当野蛮な国らしい。

召喚する国が悪って言うのは昔のアニメからある王道の一つだけどこれもそれって事なのかな。

後は……山奥の砦だったのかな? なんかひとっこ一人居ない空き砦を通過した後はメルロマルクって国から出たらしいんだけどさ。

ガエリオンちゃんが砦が安全だと断言するウサウニーさんに「やりやがったなのお前」って呆れてたけど、どうしたんだろ?

それで、ウサウニーさんがフィロリアルという魔物を育てて乗り物としてみんなを乗せてくれるようになった。

「ほらライバル! お義父さんはユキちゃんが乗せるのでドケですピョン!」

「嫌なの」

「くうう……」

「ところで……今乗せようとしてるのがユキって事は今回もフィーロなの?」

「当然ですピョン!」

「どうせあいつが来てお前は触れられないなの。たまにはサクラでも良いとは思わないなの?」

「うー……」

「あんまりあいつにやり返そうとするとまたアレで嫌がらせするなの。そんなにみたいなの? 頭からしただけフィーロなの」

「うぐ……思い出させるなですピョン……」

ウサウニーさん達にしかわからない会話をしてる。フィーロってなんかの用語かな? サクラって花の話?

ガエリオンちゃんは街道を移動するときは馬に化けて俺を乗せてくれている。

「また言い争いしてますね」

「よくやる」

リスーカさんとイヌルトさんはそんなやり取りに馴れてしまって呆れているようだった。

まあ……仲良く喧嘩してるのかな?

「グアアア!」

「グアグア!」

あ、フィロリアル達はガエリオンちゃんに威嚇の声を上げている。どうも種族的に仲が悪いらしい。

「魔物が出てきたなの。ほらウサウニー、先に倒さないとガエリオンがなおふみを乗せて倒しに行っちゃうなのー」

「チィ! ですピョン! ユキちゃん、行くのですピョン!」

「グアー!」

って、ウサウニーさんが槍をブンブン振り回して出てきた魔物を颯爽と倒していく。

「なんていうか……さ、まるでおとぎ話の世界に来てしまったみたいだよ」

「ほう。そういう発想もあるか」

「具体的にはどんなおとぎ話で?」

リスーカさんが聞いてくる。

「そうだなー……ウサウニーさんはともかくとしてイヌルトさんの演技から桃太郎かな? って思ったかな」

「ああ、それを意識した」

「僕もその流れだったんですが? 違うのですか?」

「どっちかと言うとさ、方角は逆だけど西遊記じゃない?」

この世界に西遊記があるのかわからないけど。

「西遊記……確かにそう見えなくもないですね。孫悟空はあれで、尚文さんは三蔵法師ですか」

「言いえて妙だな。三蔵法師が盾の勇者の尚文か……道中の妖怪が人間で襲ってくる流れだな」

あはは、と俺はちょっと渇いた笑いをしてしまう。

うん。そうだね。なんか俺をどうにかして殺したいって連中に毎度絡まれると思う所は色々とある。

で、孫悟空がアレって言うのは言うまでもなく槍を振り回して戦っているウサウニーさん。

武器もそれっぽいよね。棒を振り回してるみたいにも見えるし。

「聞こえてますピョン! 俺は孫悟空ですピョン。ウッキー!」

「となるとお供は沙悟浄と猪八戒ですか、僕が沙悟浄ですね」

「おい待て、沙悟浄は俺だ」

「何ですか錬……イヌルトさん。どうして沙悟浄のポジションを望むのか聞きましょうか」

イヌルトさんとリスーカさんが配役に関して意見をぶつけ合い始める。

「いつ――リスーカ、わからないのか? おい尚文、わかるよな?」

「あー……」

もぐもぐとリスーカさんは俺が作った料理をまだ食べている。

先ほどみんなで食べたのにね。

無意識なのか頬袋に入れているんだけど、本人は分かって無さそう。

こういうちょっと抜けている所、コミカルなイメージ的な感じがリスーカは猪八戒って思ってしまうんだよね。

ウサウニーさんも三人の中では血の気が多いのか一番に戦いに行っちゃって、孫悟空。

三人の中では冷静なイヌルトさんが沙悟浄、リスーカさんは猪八戒ってのがどうもしっくり来てしまう。

「確かにリスーカさんが猪八戒だね」

「文句があるなら頬袋にある物をしっかりと食い終わってから言うんだな」

「え? そういえば何時までも料理の後味がするなと思いましたが、気づきませんでした! く……沙悟浄ポジションは譲りませんよ! 猪八戒は嫌です」

「うーん……猪八戒って舞台の国の方では孫悟空より人気だったりするんだけどね」

「そうなんですか?」

リスーカさんもさすがに知らないみたいだ。

「うん。三人のお供の中で一番人間味のある経歴をしてるってのもあるんだけど仲間になってから旅が終わるまで常に勤勉な僧だったって物もあるんだよ。だから実は真面目ってね」

まあ、終わった後だと食いしん坊な役所を得たりしたりするのはオチ担当って事でもあるんだろうけど、あえて黙って置こう。

「孫悟空によくからかわれるのも猪八戒だったみたいだね」

「ああ……確かによくウサウニーに絡まれてるな」

「嫌なポジションですよ!」

「なのーガエリオンは無いなの? なんか勇者が広めた話にあったと思うなの」

「あるね。三蔵法師を乗せていた馬が実は龍、ドラゴンなんだってさ」

そう考えると狙ったような配役だな。

ガエリオンちゃん、馬に化けて近づいて来た訳だし。

空気を読んだのだろうか?

「グアー!」

「お義父さん。やりましたぞ!」

「よく頑張ったねウサウニーさん」

「えへへ、後で撫でてほしいですピョン。あ、ライバルに使ったブラシで毛並みを整えるのはやめてほしいですピョン!」

「わかったよ」

「……お義父さん。旅は楽しいですピョン?」

「うん」

質問の通り、みんなで楽しくワクワクする冒険が出来ている気がする。

ややファンシーだけど、それでも楽しいかな。

国が斡旋する仲間が一人も居ないって嫌な経験はしたけれど、こうしてみんなと旅が出来ている訳だし。

三人が実は元康たちだったと知るのは……もう少し後の事なんだけどさ。

まったく、どうしてこんな事になるのやら……とはいえ、勇者達で旅をするのはなんとも楽しいものだったのは否定しない。

この後もいろんな出来事があって、世界を脅かす波に挑むことになる。

「ゴートゥーザ、イーストですピョン!」

なんて感じに俺たちの賑やかな旅は続いていくのだった。