軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

怠け豚の手土産

「エルメロー、コウ、歌いたい」

「大分夜も更けてきてるから朝やりましょう? もしくは賑やかな所に移動してやりましょうね」

「はーい」

そんなコウとゾウのやりとりをお義父さんは微笑ましい目で見てましたぞ。

「服の素材作りの後にユキちゃんはフィロリアル様達とお話を、コウはゾウと一緒にゼルトブルでお姉さん達の所に遊びに行くと良いですぞ。そこでゾウと一緒に楽しく歌うのですぞ」

俺が案内しますぞ。

「はいですわ!」

「わかったー!」

「移動が便利ですね。歌……ゼルトブルのちゃんとした個室でお願いします」

ゾウはあちらでは有名人ですからな。

歌が上手なのを知られるのは恥ずかしいようですぞ。

「確かに微笑ましいね。元康くん。エルメロさん。みんなありがとう。じゃ行ってくるよ」

お義父さんはローブを羽織って出かけて行きましたぞ。

一応奴隷の買い取りも行っていましたぞ。頼まれていた案件だそうですな。

後でお姉さんに確認をして貰いましたな。

これがお義父さんのサーカスキャラバンによる奴隷売買の初日の活動だったのですぞ。

俺達も打ち合わせ通りに行動をして行ったのですぞ。

サーカスの公開をして二日程経過しましたぞ。

翌日にはお姉さんが買い取りの時に同行して確認をするようになってましたぞ。

サーカステントには立ち寄らずにゼルトブルの治療院へと帰らせるのですがな。一人、村の奴隷を見つけて購入して合流出来たようでしたぞ。

で、奴隷売買を昼間の内に持ち込みでやってきた客が現われたと言う事でお義父さんが代表として相手をする事になりましたぞ。

「はいはい。いらっしゃい。サーカスへようこそ、うちは買い取りはするけど売りはまだしてなくて申し訳ない」

魔物商の真似をするお義父さんが来客を相手に話を進めて行く様子ですな。

「ばう!」

ヴォルフはそんなお義父さんの後ろで待機しておりますぞ。

「ブブー!」

「バウ?」

客が連れた奴隷がヴォルフに向けて何やら尊敬らしき声を上げており、ヴォルフは小首を傾げていますな。

「え? うちで働きたい? その手土産って……」

当たり前の様にお義父さんを相手に客として交渉してましたぞ。

「ブー、ブブブ、ブブ」

「どうしました?」

シルトヴェルトの使者がお義父さんに近づいて尋ねましたぞ。

同時にお義父さんは俺へも視線を向けたので急いで俺も駆けつけますぞ。

そこで俺は奴を発見してしまいましたぞ。

しかも連れて居るヴォルフに尊敬の声を上げた奴隷は豚なので確証は持てませんが……アレはキールではありませんかな?

なんとなくそんな気がしますぞ。

「少々お待ちを」

お義父さんがそう、奴を呼び止めて少し離れた所で俺とシルトヴェルトの使者に話をしますぞ。

「うちで奴隷としてじゃなく働きたいって手土産の奴隷持参でやってきてる人がいるんだけど」

「非常に怪しいですね。なんでよりによってこのサーカスで働きたいと? メルロマルクの息が掛かった者ではないでしょうか?」

「いや、それがね。俺と元康くんが勇者だって看破している事をあっさりと白状した挙げ句、協力者としての体裁がないと両親に怒られて困るから手伝うって堂々と言ってきてるんだよね」

「そうでしょうな」

「元康くんループとかで知ってる人?」

「そうですな……奴は怠け豚、非常に怠け者ですが、こと商売と生存に関しては恐ろしい程に鼻が利く奴ですぞ」

ここ最近のループで影も形も無かったのですっかり忘れて居ましたぞ。

思えばフレオンちゃんと再開したループで赤豚にウロボロス劇毒を飲ませた際に全力で逃げられてそれ以降は会って無かったのですぞ。

時期的に嗅ぎつけてきてもおかしく無いのでしたな。

しかもご丁寧に手土産まで持参するとは厄介極まりないですぞ。

「随分と素直に腹の内を打ち明ける方のようですね」

「親が女王派閥だそうですぞ」

「あの王と王女じゃない勢力の人って事ね」

「あんまり話をしてると奴隷にしても良いので混ぜろと言いますぞ」

現にメルロマルクで行商をした際には奴隷化までしてお義父さんの配下として紛れ込みましたからな。

「害は無さそうだけどどうなの?」

「俺が目障りだと思うのですぞ」

「うーん……」

お義父さんが腕を組んで呻いておりますぞ。

「ブブブ、ブブ」

離れた所からお義父さんに向けて怠け豚が鳴きますぞ。

「いや、コネクションでメルロマルク側の情報をリークするとか堂々と言われても……」

「役には立ちそうな気はしますけどね」

「手土産の奴隷もどこから聞きつけたのか……キールっぽいのが厄介ですぞ。奴隷だけ買い取れませんかな?」

そもそも何故キールを怠け豚が見つけて来ているのですかな?

確かに金を積んで探せば見つかるのでしょうが、簡単に連れてきますな。

再度ループした際の手土産もそうでしたが怠け豚は観察眼の化け物か何かですかな?

「ん? こっちも知ってるの?」

元康、またお前は失言をしたな? と、心の中で俺の声がしたような気がしましたぞ。

ですがここでシラを切ると後でキールを回収した際に面倒になりますぞ。

何より怠け豚がキールを子飼いにしようものならどちらにしても別口で買い取り時に面倒になるのですぞ。

怠け豚の商才がここで拒んだ所でキールを手放すか怪しいですからな。

結果は同じような気もしますぞ。

「犬っぽい亜人だよね」

「ヌイ種の亜人の子に見えますね。ヴォルフを見て興奮しているように見えますが」

当のヴォルフは声を掛けられて小首を傾げていますぞ。

カッコいいとか言われているのでしょうな。

「キールは豚から犬になれる奴隷でお姉さんの同郷の奴ですぞ」

「獣人化能力も所持となるとワーヌイ種ですか」

「豚から犬……元康くんって女性の大半が豚に見えるっぽい事から考えると……ってあの子女の子なの?」

お義父さんがキールの方を凝視しますぞ。

「あの年頃は雌雄の判断を匂いでし辛いので私たちも判断しかねますが、一見すると男の子にしか見えませんね」

「元康くんのセンサーの方が上かな? ヴォルフー」

「バウ!」

お義父さんに呼ばれてヴォルフが嬉しそうに近寄りますぞ。

「ヴォルフ、あの子。女の子だって分かる?」

「ワウ? ワーウ!?」

言われてヴォルフがくんくんと匂いを嗅いでやっと気付いたと言う顔をしてますぞ。

「どうやら正解みたいだね」

キールはルナちゃんの愛玩奴隷なのですぞ。

思えば前回の周回はキールが居ない所為でルナちゃんは暴走気味になってしまわれたのですぞ。

ずっと錬に粘着するようになり、俺に錬をイヌルトにするように要求してきました。

その剣幕は恐ろしいものでしたぞ。

ですのでキールの確保は出来ればしたい所ではありますな。

だけど怠け豚は要らないのですぞ。

「ラフタリアちゃんの友達なら出来れば購入したいけど……」

「このサーカスにメルロマルクの者は不要、早々に排除をするのですぞ」

っと、俺はシルトヴェルトの使者へとそれとなくお義父さんの仲介では無くお前がキールだけを奪って怠け豚を追い返せと念を送りますぞ。

「奴隷紋さえも受けてこちらに属する可能性があるのでしたら受けるのは良いでしょうね」

この無能ですぞ!

こっちの圧をしっかりと受けろなのですぞ!

「では私が厳しめの条件を提示して話を詰めて見ましょう」

「話を受ける方向で進めてはならないのですぞ!」

と、俺は抗議しましたが怠け豚はお義父さんとシルトヴェルトの使者、魔物商の配下のそれぞれと話を通してキールを手土産にサーカスへと所属が決まってしまったのですぞ。

主に保護ではなく売買用の奴隷管理と、必要雑貨の購入交渉を担当するとの話でした。

帳簿はお義父さんが管理しますがその補佐もするとの話ですな。サーカスの最初の演目の時もお義父さんがお疲れの時は代役をするそうですぞ。

仮面を付けて雑種のリザードマンとウサギ男に鞭打ちをする役目をしました。

怠け豚は地味に体型は良いのできわどい服を着て誘惑もするのでお義父さんとは別に男に好評のようですぞ。

家のコネクションもあるので奴隷売買のテント名を秘密裏に広げる広報も出来たとか。

土地の確保斡旋もして役には立ったそうで非常に腹立たしいですぞ!

そして……暇さえあればサーカステントの空中ブランコを予定して居る所に設置してある安全ネットの所で昼寝をするようになりました。

ぐぬぬ! ですぞ! 稽古中の上の網で寝てる姿は非常に目障りなのですぞ。