軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見世物

「よし……準備は出来た」

サーカスの舞台裏からお義父さんは来客の様子を確認しますぞ。

客入りは……まあ、少なめと言った所ですな。

デパートの屋上などで開かれる手品ショーよりは人が入っていますが些か数は少なめですな。

無名なサーカスでは最初はこんな物でしょう。

懐かしいですな。手品師の売れない豚の親がそんな事をしていたのが居ましたぞ。

協力して人を集めるなんてやりとりをしました。

あの豚はアイドルになったのでしたかな? 忘れましたな。

メルロマルクで前座として求められるのは国民の加虐心だそうですぞ。

人間の方が亜人や獣人より優れているとアピールするためにまずはお義父さんと奴隷達の見世物虐待ショーが最初に行われる事になったようですぞ。

ウサギ男と雑種のリザードマンが各々小さめの檻に入れられております。

がっしりとしたカギが掛けられて居ますぞ。

「シオン、テオドール……」

ショーが始まる前にお義父さんが誰の目から見ても申し訳無さそうな顔で奴隷達を見ますぞ。

「……そんな顔をしないで貰いたい。やると決めた事でしょうが」

「ええ、見世物にされるのは慣れてますよ」

雑種のリザードマンとウサギ男がお義父さんにため息交じりで応えますぞ。

「……少しは痛がる演技を出来る様に努力する。ちゃんと打ち合わせ通りに言うのだ、練習中の不快そうな声音は悟られるぞ」

「フフ、あんまり手ぬるいようでしたらボクが病の力を使いますよ」

「……わかった。あんまり主人を侮らないようにな?」

軽く悪態を吐く二人の奴隷にお義父さんは嘆くようにため息をしながら表舞台に出て行きますぞ。

「ようこそいらっしゃいました! 皆様! よくぞこのロックバレーサーカスに来てくださいました。これから始まるのは皆様を楽しませるショーでございます。是非ご覧ください!」

と、最初にお義父さんの挨拶ですぞ。

団長はお義父さんという事ですからな。

「まず始まるや数奇な生まれの連中達、さあ皆様! この奇怪で哀れで愚かな生まれをしたこの世の物とも思えない化け物共だぁ!」

ちなみに雑種のリザードマンに注意されたのはこの紹介文らしいですぞ。

練習中のこの文面を言った所でお義父さんが不愉快そうにしていたとの話で注意していたらしいですぞ。

ガラガラと布が被された雑種のリザードマンとウサギ男の檻が運ばれて来て、お義父さんが布を取りましたぞ。

「「「おお……」」」

「「ぶ……」」

雑種のリザードマンが何処を見ているのか分からない眼と舌を出して異常者風の出会った当初の顔つきで観客の前に姿を現しますぞ。

「うう……」

逆にウサギ男は関節を曲げた状態且つ弱って居る風に倒れ伏して髪を前に下ろして苦悶の表情をしております。

「どうですかこの奇怪な化け物共は!」

さあ! さあ! っとお義父さんは観客達に奴隷達を見せつけますぞ。

「ぐううう……」

不快そうに雑種のリザードマンが呻きますぞ。

「なんだその態度は! 主人に逆らうと言うのか!」

パシン! っとお義父さんは鞭をならしつつ、檻を開けて雑種のリザードマンを鞭打ちしますぞ。

「ぐう! ウ――」

雑種のリザードマンはお義父さんの鞭を受けて痛がる素振りをして見せました。

「おら! 何を倒れている! 今度はお前だ!」

と、懐から水の入った水筒を出してウサギ男にお義父さんは水を掛けましたぞ。

これも予定通りの演目らしいですな。

で、追い打ちとばかりに鞭打ちですぞ。

バシンバシンと鞭がぶつけられる度に奴隷達の体に色鮮やかな痣が出来ていきます。

ちなみに鞭に仕込まれた染料ですので痛みはなかったようですぞ。

「や、やめ――」

で、ここでウサギ男が雑種のリザードマンを庇うように檻から出て立ちますぞ。

そして鞭打ちを喰らって倒れ伏します。

「……」

アドリブですな。お義父さんも俺だからこそ分かる範囲で表情を僅かに崩しましたがすぐに怒りの形相の演技に入りました。

「なんだその人間らしい態度は! お前等は――! そんな、事がある心がある訳――ないだろうが!」

バシンバシンと鞭をウサギ男にお義父さんは執拗にしますぞ。

「うぐ……ああ……ガハァアア!?」

その度にウサギ男が過剰に絶叫を上げますぞ。

雑種のリザードマンはその光景に対して若干引いているように見えましたな。

「や、やめて……お願い、どうか……命ばかりは」

ずる……ずる……っとウサギ男は這ってお義父さんの足下まで来て、お義父さんに踏みつけろとばかりの視線を向けました。

後でやり過ぎと怒られるのですがお義父さんはため息を隠して踏みつけますぞ。

「……舐めろ。そうすれば命だけは助けてやる」

「ああ……」

ウサギ男はお義父さんの足を舐めましたぞ。

「はは、舐めやがった。そんなにも命が惜しいか!」

「くうううう……」

雑種のリザードマンが悔しさで怒りで我を忘れるように立ち上がろうとした所で……お義父さんが奴隷紋を作動させつつ鞭打ちをしましたぞ。

「ぐああああ!」

ちなみに発動したのは一瞬で奴隷紋の部分を手で隠して悶絶の演技をしたとの話ですぞ。

「お前もだ! 何を怒る? お前等にそんな権利なんて無いんだ!」

迫真の演技に観客達が息をのむと同時に加虐心を満たされたのか不気味な笑みを浮かべています。

メルロマルクの国民の亜人憎悪感情を満たす演目としては満点という事でしょう。

「いいぞー! やれやれー!」

「ブブブー!」

っと観客から様々な物が奴隷達に投げつけられましたぞ。

むしろこっちの方が痛かったと奴隷達は後に述べましたぞ。

と言った感じでお義父さんは奴隷達を見世物にしつつ蹂躙する姿を見せて前座は終わり、奴隷商の配下が奴隷達を檻に入れて舞台裏へと運んで行ったのですぞ。

「では皆様……どうか、当サーカスをお楽しみください」

お義父さんは一礼してマントで体を隠して舞台裏へと戻って来ました。

「はー……これ、絶対に早い内にこの演目を没にしたい」

ぐったりした様子でお義父さんが呟きました。

「くーん」

ヴォルフがそんなお疲れのお義父さんを心配そうに見て鳴いてますぞ。

「良くやり遂げた」

「迫真の演技でしたね」

拷問役だった奴隷の二人がパチパチと軽く拍手をしております。

「君達……はぁ……」

どっちが主人か分かったもんじゃない。と、最初の世界のお義父さんが嘆くときの態度をお義父さんはしていらっしゃいましたぞ。

「前座としてはこんなもんで良いのかね」

「そうなんじゃないかと思います」

「ふむ……」

奴隷二人が揃って観客を盗み見て頷きましたぞ。

俺も同意見ですな。

「こんなんで盛り上がるのかねー」

「不快に思っている者もいたのが救いだろう」

雑種のリザードマンはどうやら演目を不快に思っている観客がいたのを見ていたようですぞ。

「そんな人が多いと良いが……」

「テオドール、感謝する」

「いえいえ、なんだか楽しくなってきましたよ。弱者の演技は慣れてますからね」

「あんまり慣れてほしいものじゃないんだけどな」

お義父さんも余裕が大分無いですな。

元々人に辛く当たるのは苦手な優しい方なのですぞ。

前にお義父さんがワシ等と仰っていた際の出来事は他者に当たる事にストレスが限界を迎え、逃避に守銭奴になっていたかららしいのですぞ。

それくらい、本来は苦手な事なのでしょう。

「さーて、ここからが本番だ! みんな、できる限り派手に演技をして観客に前座よりも楽しいサーカスだと思わせてくれ!」

「わかりましたー! ではヴォルフ、お義父さんに言われた通り派手にやりますぞ!」

「バウ!」

もちろん演目の最後は人間である俺が勝つシナリオではありますが、ヴォルフと演舞ですぞ。

俺はフィロリアル様の羽で作った仮面を装着、デュワ! ですぞ!