軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

臆病者

「狼男以外は見た事ありますぞ」

「そうなの?」

「ですぞ。ループを脱出しようと錬や樹に俺の役目を被せた際にお義父さんが購入していた奴隷ですぞ。二人ともお義父さんの右腕とばかりに忠誠を見せて頼りになる片腕と言った様子でしたな」

「へー……そうなんだ?」

因果なものですな。

こう言った斡旋で出会う可能性というのもあると言う事でしょう。

場所が場所故に買おうと思えば買える者たちでもあるのですな。

「逆に考えれば信用が置ける相手に成長出来るとも言えるのね」

「ですな」

奴隷の成長に期待ですな。

「まあ、見世物枠って事で特に訓練を求められない選定なのも大きいのかな。ラビット種とリザードマンはね。リザードマンの方は荷物運び要員も兼ねてるか。で、狼男はショー用、鞭打ちするだけって事になるけど……」

鞭を使うのは中々難しいとお義父さんは仰っていますからな。

奴隷紋で縛っていくのでしょうな。

「ヴウウウウ……」

振り返った狼男をお義父さんが見るとそれだけで唸られておりますぞ。

お義父さんは魔物商に見えないように軽くため息をしておりました。

「良いだろう。すぐにコイツ等でサーカスが開けそうだな。まあ……どちらかと言えば見世物枠で大きく稼ぐのは難しそうだがな」

「盾の勇者様の経営手腕でどのように稼ぐか、楽しみでございますです。ハイ」

「その前にコイツ等の調教が先だがな……くくく」

それからお義父さんは奴隷達の奴隷紋登録をしましたぞ。

「はぁ……はぁ……」

そしてまずはとばかりにラビット種の奴隷に近づきますぞ。

「とりあえず一人ずつ名前を言え、まずはお前からだ」

言葉は分かるだろ?

と、ドスが聞いた声でお義父さんは聞きますぞ。

なんて名前でしたかな? あの時のループでもお義父さんはぶっきらぼうに話していたのですが……古すぎて忘れましたな。

しかし、改めて思いますが仮にですぞ。このラビット種の奴隷をお義父さんが最初に選んでいて、フィーロたんを次に育てて俺と出会った場合、この奴隷を俺はフィーロたんのお兄さんと呼んだのでしょうか。

そう考えると可能性のお兄さんとも言える方ですな。あの時のフィーロたんは背丈がお姉さんくらいはありましたが……。

「ぐっ……テ、テオドール」

ほう、そんな名前だったのですな。

大層な名前にも感じますぞ。

「ふむ。テオドールか」

愛称で考えるとテオとかその辺りでしょうかな?

そう言えばこの世界はフルネームで呼んで愛称で呼ぶのはあまりないですな。

お義父さんもお姉さんをフルネームで呼んでおりましたぞ。

例外は本人が愛称で呼んだりした場合でしょうかな?

婚約者が偽名兼愛称でメルと名乗る事があるのでしたぞ。

お姉さんが愛称で呼ぶ場合は……ラフタ、は少々語呂が悪いですな。

タリアとかその辺りが無難でしょうかな。

おや? 最初の世界でお義父さんもその辺りを後年、お姉さんと話をしていたのを思い出しましたぞ。

するとお姉さんが若干困った顔をしておりました。

なんでも親にそう呼ばれていた事もあるそうで、切なくなるのだとか。

確かその所為でお義父さんはラフタリアと呼んだようですぞ。

「次、お前は?」

雑種のリザードマンにお義父さんは顔を向けて尋ねましたぞ。

「シ、シオンと……呼べ」

バチバチと奴隷紋が反応してますぞ。

本名は明かさないつもりのようですな。

「ふむ……まあ、良い」

お義父さんが許可をすると奴隷紋が収まりましたぞ。

響きが良い名前だなーとお義父さんが小さく呟きますぞ。

そうですかな? まあ、俺も日本に居た頃に豚の名前で良く聞いたフレーズですな。

シオンは多いのですぞ。

大体、花の紫苑から来る名前である事が多かったですな。別名十五夜草。

花言葉は追憶とか君を忘れない等、結構ロマンチックな言葉が多いですな。

とはいえ愛称か偽名を名乗って居るので無関係としましょう。

「後は……」

「ヴウウウ……くぅーん……」

唸っていた狼男にお義父さんが視線を向けると狼男は言葉を発する訳でも無く犬のように鳴いて答えましたぞ。

「言葉が分からないのか?」

「何分気性が荒いのが問題でございまして、まともに意思疎通が出来ないほどに本能に支配されているようです。ハイ。闘技場での登録名であればお伝え出来ます」

魔物商人が補足をする様ですぞ。

「良いだろう。なんて名前だ?」

「カゥワードと登録されていますです。ハイ」

……cowardですかな?

意味は臆病者とか腰抜け、意気地無しを意味する言葉ですぞ。

あくまで俺が生まれた世界……元の世界基準の英語では、ですがな。

闘技場で戦っていた負傷奴隷が臆病者なのですかな?

お義父さんも単語の意味を察しているのかやや困り顔ですな。

「この奴隷は負傷する前の活躍はどの程度だったんだ?」

「えー……中々に好成績だったようです。ハイ。ですが一番大事な戦いで手酷い敗北と負傷をした所為で雇用主から多額の賠償を求められてそのまま売却されて流れ流れてここに来たようです。ハイ」

「この名前の意味は?」

「何かあるのでしょうか? ハイ? 生憎と存じておりませんが、おそらくはどこかの田舎で使われる名前なのでしょう。ハイ」

この世界の言語では意味は無い様ですな。

意識して伝えようと発音すれば魔物商人にも伝わるとは思いますがな。

「cowardですぞ!」

「ガヴウウウウウウウウウウウウウウウ!」

俺が指さして意識を強く出して言うと狼男が激昂して声を上げましたぞ。

「おや、臆病者とは、槍の勇者様も挑発致しますです。ハイ」

お義父さんがなるほど、と納得の顔をしていますな。

「ガウ! ガウウウウ!」

思い切り牙を出して俺に威嚇しているのをお義父さんが庇うように立って睨みますぞ。

「ウウウ……くーん……」

「お前、名前は?」

「……」

随分と大人しくなってますな。

アレですかな? 盾の勇者というのは亜人獣人達にとって不思議な感覚を覚える相手だそうですぞ。

ゾウもお義父さんを見た際に盾の勇者と聞いて自然と納得していらっしゃった様ですからな。

武器の補正とお義父さんは時々仰っていましたぞ。

狼男は頭を抑えて横に振りましたぞ。

「ほう……さすがはです。ハイ」

魔物商人も感心してますぞ。

盾の勇者の力で荒れる獣人が大人しくしていると判断してるのでしょう。

「覚えが無いとでも?」

こくりと頷きますぞ。

「じゃあ……なんて呼んで欲しい? 今のままだとカゥワードとなるぞ。俺もここに居る奴も発音で臆病者と聞こえることになる」

「……」

ぶんぶんと狼男はその名で呼んで欲しくないと首を横に振りましたな。

「じゃあ偽名という事でヴォルフとでも呼ぶか」

「バウ!」

ドイツ語でオオカミを意味する言葉ですな。

確かに直球で良いかも知れませんな。

狼男もその呼び方で良いと言った様子で答えましたぞ。

「テオドールにシオンにヴォルフか」

このループでお義父さんの最初の奴隷ですな。

狼男のLvが高いですが他は似たり寄ったりの連中ですぞ。

「何にしても受領した。コイツ等を使って金儲けと行こうじゃ無いか」

フフフ……とお義父さんは邪悪に笑いましたぞ。

そこで魔物商人も釣られるように笑みを浮かべて居ましたな。

俺も合わせて笑っていましょう。

「……」

「……」

「くーん」

と、三人の奴隷達は俺達を見て妙な顔をしていたのですぞ。

そんな訳で三人の奴隷を引き連れる事になりましたぞ。

ちなみに狼男は気性が荒いとの事で首輪と鎖を付けられており、お義父さんが妙な真似をしないように握る事になりました。

奴隷紋の禁則も相当厳重に課せられているとの話ですぞ。

暴れオオカミ故に色々と危険という事なようですな。