軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エリキシル

「アイツ等……元康くん達、精霊が選んだ子とは何から何まで違う。選ばれる事など無い傲慢な魂なんだ」

ありきたりな野望すぎて聞いたのが馬鹿だったとアークはポケットからネックレスを取り出して軽く振りましたぞ。

「精霊達よ。どうか力を貸して」

するとまばゆい光が放たれて……俺の槍が消えてアークの手に飛んで行きましたぞ。

宝石の部分がこれまでにない位まばゆい光を放っていて眩しいですぞ!

「あ……元康くんの聖武器が来ちゃった? ごめんね。ちょっと借りるよ」

ピキピキっと聖武器が形を変えて槍が盾まで精製し、ネックレスに重なる様に漂い。アークは盾と槍を同時に持って構えました。

矛と盾という騎兵装備ですぞ。俺の槍はあんな事まで出来るのですかな!?

確かに防具という事で盾は所持できますが……聖武器は可能性の塊なのですぞ。

お義父さんの盾みたいに守る力を持っていらっしゃるのでしょう。

ですが……俺にはその力を使う資格は無いですぞ。

「はは、何をムキになってんだよ。そこの猫はこっちの冗談がわかってねえみてえで困ったもんだぜ。この程度で怒る奴が神狩りとか笑わせてくれるぜ」

「相手が怒ったら冗談……割とつまらない犯罪者の弁にしか聞こえないな」

冗談でフィロリアル様を傷付けられるなどあってはありませんぞ。

何から何までゲスな連中ですな。

「もう何をしても見届けてあげるけど、元康くん達に迷惑が掛からないようにね」

ガチャリとアークが盾を前に向けた所でホー君が俺と震えて目を瞑って何も聞こえないとしているフィロリアルを守るように隣にいらっしゃいますぞ。

ふわりと先ほどよりも温かなバリアのようなものが広がりました。

「俺達をここまで怒らせた罰を受けろ! 喰らいやがれ!」

「ブヒィイイ!」

「ブッヒ!」

「ブブブー!」

転生者の仲間をする豚共達がアークへと挑んで行きますぞ。

もちろん転生者達も混じっておりますな。

「神になろうとする傲慢な連中共、お前等にその座は相応しくない。ここにいる主犯の仲間達、死にたくなくば今ここで心の底から懺悔してろ。そうすれば見逃してやる。時間は10秒だ!」

どこまでも通りそうな声とも言えない念話のようなものが周囲に届きました。

アークは転生者の仲間達に猶予を与えたようでした。アークの所持する俺の槍が禍々しい赤く黒い炎を纏って形を変えて行きましたぞ。

呪われた武器であるのは一目で分かりますぞ。

そしてこの10秒間でアークは何度も攻撃されましたが、その全てを避けたり弾いたりしておりましたぞ。

「最後の猶予は過ぎた。その身に刻め! お前等に合わせて詠唱してやる」

「わかってはいたけど、しょうがないね。本当、猫は残酷だなぁ……」

バッとアークは槍と盾を構えてスキルを唱え始めました。

『その愚かなる神を僭称する罪人への我が決めたる罰の名は死を齎す導。不老不死の血肉を貪る竜の顎により激痛に絶叫しながら滅せよ!』

「エリキシル・ブルートオプファー!」

ブシュ! っとアークの全身から鮮血が吹き出して辺りが血の海になっていきますぞ!?

「自爆!? いや、みんな! この血を飲むんじゃねえぞ!」

「チャンスだアイツの血は武器にも使えるって話だから武器に塗りたくってアイツを――」

と、転生者が周囲の豚共に助言をしていた所で……血の海から無数の竜の顎を模したトラバサミが現われて転生者を除く……懺悔をしなかったこの集落にいる全ての者たちの足下に現われて何度も噛みついて貪ったのですぞ。

「ブヒャアアアアアア!?」

「ぐ、ぐぎゃ!? い、いた! し、死ぬ――だ、誰かた、たすけ――」

「ブヒィイイ――!?」

転生者達は絶句しつつ仲間である豚共が貪られる光景を見せつけられました。

「ギャアアア――」

「ブヒャアアアアア――」

建物の外からも聞こえるほどの虐殺の断末魔が響きました。

「な――」

「て、てめぇええええええ!」

「このやろおおおお!」

スーッと血の海から出ていた……カーススキルが犠牲者達を飲み込んだまま沈んで行きました。

ふわりと俺の槍がアークの手から離れて俺の元に戻ってきましたな。

ですが俺は血まみれのアークの姿に目が離せないのですぞ。

そのお姿は……とても痛々しく教皇と戦った時のお義父さんを思い出しました。

俺自身は傷一つ無くても……。

「リベレイション・ファイアヒールⅩ!」

カーススキルによる呪いでは回復魔法は著しく効果が低い……のはわかって居ても、俺はアークの怪我を治したいと思ってしまいますぞ。

ですが何故ですかな……回復魔法が指定できないのですぞ。

施そうとしても何もない所に掛けようとしている感覚しかないのですぞ。

まるで最初からそこには何も無いかの様でした。

「よくも俺の仲間達を!」

「この……悪魔め!」

「神狩りなんて言いながらこんな虐殺して良いわけねえだろ!」

「こんな事が許されて良いはずが無い! ぶち殺してやる!」

転生者達が自らが抱え込んだ集落の者たちを皆殺しにされて激怒のままに武器に力を込めましたが、飛び散った鮮血が掛かった武器がまばゆい光を放って手から離れて行きますぞ。

「数字遊びはそろそろ終わりだ。お前等の苦しむ顔は随分と愉悦だったぞ」

おお、アークのそのお顔はなんとも神々しく感じてしまいますぞ。

魔王とお義父さんが疑っておりましたが確かにそうとしか表現できない程の実力と攻撃でした。

「ぐ……力が抜ける!?」

「どこまで俺達から奪えば気が済むんだ! この野郎!」

「どこまで? お前等が奪った分だ。命には命を。お前等の罪が罰を与えたに過ぎない」

淡々と処刑人の如く、アークは告げました。

「ぜってー殺す! ここまで俺を不快にした奴は初めてだ!」

「く……こんな結果、認めるわけねえだろ! 俺の魔法で時を巻き戻せば良いだけだ」

転生者達の眼光には見覚えがありますな。

タクトが豚共を目の前で処刑された時にこんな目をしておりました。

転生者が何か魔法を使おうとしましたがブワッと燃え上がって不発したのですかな?

「時間の巻き戻し? 今この状況で僕たちがさせると思ってる?」

ホー君が邪魔をしたようですぞ。

「邪魔すんじゃねえよ! とりぃいいいい!」

「コイツを殺さねえと巻き戻せねえってのかよ」

「殺す!」

「お前等に次は無い」

アークの手の上に無数の魂が浮かんでおりました。

その魂がどこから来たかと言えば先ほどのカーススキルで死した者たちですぞ。

ソウルイータースピアじゃなくても目視できる程の魂でしたな。

「あー煉獄の炎で焼き焦がしたい腐った連中だったのになー。今回は譲らないといけないからしょうがないか」

ホー君がアークの手で集められた暴れる魂を見て呟きますぞ。

「悪いけど、コイツ等には別の手を使うから」

「はいはい。わかってるよ」

ホー君と話を終えたアークは俺の方を見て微笑みますぞ。

この温度差は……不思議な気持ちにさせてくるのですぞ。

「元康くん、君は優しいね。あの状況で僕に回復魔法を使おうとするなんてさ」

スーッとアークの全身を蝕む傷と呪いが何事もなかったかのように消えて行きます。

それは自ら治したのかどうかは俺にはわかりませんでした。

「……そろそろ終わりだから」

アークはそう答えると集めた魂へと手をかざしました。

するとアークの背中に展開されていた光る翼の色が……様々な絵の具を塗りつぶしたような色合いへと変化し、やがて黒い……宇宙の様な色の透明な黒へと変質して行きました。

それと同時にアークが手をかざしていた魂が透明な黒に凝縮されて魔法の玉のような物へと変化して爆ぜつつ混ざって行きました。

とてもおぞましい攻撃なのは一目で分かりますぞ。

やがて爆ぜた玉が無数に分裂しております。

グッとアークが手で押し出すと転生者達に向かって分裂して飛んで行きました。