軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

番外編 先出し槍の勇者2

眠れない猫と寝起きの鳥

記憶の中にあるそれは、とある日からの出来事ですぞ。

最初のお義父さんが村で朝の日課とばかりに魔物舎で世話をしていた何気ない日でした。

俺も隣のフィロリアル舎で爽やかな朝を満喫していた時の事。

「ク……クエ」

「クエ」

フィロリアル様達が突然、落ち着き無く周囲をキョロキョロと見渡し初め、一点へと顔を揃って向けたのですぞ。

一体どうしたのかと疑問に思っていると。

「ナオフミ様!」

お義父さんが魔物舎から出た所でお姉さんの並々ならぬ声がしたので俺も思わず外に出て、お義父さん達の方へと行ったのですぞ。

村のみんなも朝食を楽しみに既に起き出していたので、お姉さんの声に首を傾げながら様子を見ておりました。

「ああ……どうやら来客のようだ」

ややため息交じりにお義父さんが呟き、お姉さんと一緒にだるそうに歩き出しました。

「あらー? 何かあったみたいねー」

夜遅くまで酒を飲んでいらっしゃったお姉さんのお姉さんも起き出しておりました。

酔いどれじゃないので周囲のみんなが危機感を抱いてますぞ。

「何か問題があったのですかな? やりますかな?」

「元康、お前は何もしなくて良い。別に問題があるわけじゃ無いから大人しくしてろよ」

「わかりましたぞ!」

お義父さんは何やら分かったご様子。

朝の散歩と言ったご様子でお義父さんが前に出て……村の入り口へと来ました。

だだだだだ! っとフィロリアル様達が揃って入り口近くで整列し、ライバルが反対側でなぜか平服しておりますぞ。

その先には……130センチ前後の身長をした……丸みを帯びた猫のような獣人と真紅の炎を連想する煌びやかで、クジャクのような長い尾羽を生やした鳥型の魔物が居たのですぞ。

猫の方の獣人を良く確認すると毛に覆われたトカゲの様な尻尾を生やし、オーバーオールを着用しています。

隣町にやってきた旅行者か何かでしょうかな? シルトヴェルト辺りからの?

ですがフィロリアル様やライバル、お姉さん達のご様子からきっと違うのでしょうな。

一体どうなっているのですかな?

「ライバル、お前、何やってるのですかな?」

「うるさいなの! 今はお前の相手をしている暇は無いなの。黙ってろなの!」

なんとも反応がおかしいですな。

あ! あそこにいるのは大きなフィロリアル様ですぞ!

普通のフィロリアル姿をしていますが、この元康アイを偽る事は出来ませんぞ!

と、俺が大きなフィロリアル様へと近づこうとした所でクー、まりん、みどりが俺を止めました。

「もっくん、ダメ!」

「あの人の機嫌を損ねちゃダメだと思う!」

「ごしゅじんさま、あの人の機嫌を損ねちゃダメな気がするよ」

フィーロたんもお義父さんに近づいて、猫獣人の隣にいる鳥型の魔物を指さして注意しております。

「思いっきり困らせちゃってるよ。君も少しは自粛しようよ」

「いやいや、別にこっちはそこまで気配出してないでしょー。いやー困ったなぁ……僕はガジュアル系なのになぁ」

と、なんと言いますか平民の所に王族がお忍びで来ましたと言った様子で猫獣人と鳥の魔物がどう切り返すか困ったとばかりに話をしていますな。

「あーまずみんな、機嫌を損ねるとか僕はそんな気難しい性格をしてないから安心して良いし、楽にしてて良いよ。こっちこそただの来訪者ってだけだからさ」

鳥の魔物は片翼を手のように広げてフィロリアル様達へと注意しますぞ。

するとフィロリアル様達はホッとしたように少しばかり緊張が抜けた様に見えました。

「そうそう、気を楽にして、連絡も無しに突然の来訪、失礼するね。たまたま近くで友人と再会して紹介がてら遊びに来ちゃったよ。せめて挨拶にと思ってさ。それにそこの鳥は直前に凄く良い事があったらしくて機嫌が良いから今は何しても怒らないよ」

「魂が腐ってなければ何をしてもいいよ!」

猫の獣人が鳥の魔物を指さしてお義父さんへと説明をしていますぞ。

魂が腐っていると何かされるのですかな?

お義父さんの話によるとここに魂が腐っている存在は居ないそうですが。

「その割に、ドラゴンとフィロリアル共に思いっきり警戒されてんな」

「ラフー……」

お義父さんの肩に乗っていたラフちゃんが鳴きますぞ。

「ああ、それはそこにいる面倒臭い鳥がね。翼を持つ者の祖として妙なオーラを自粛もせずに出してる所為だよ。迷惑だよねー」

「モテる雄はつらいものさ……そっちだって気配をダダ漏れにしてる癖によく言うよ」

「僕は感じられる相手が限られてるから良いの。じゃないと彼らも気づけないでしょ」

「……隠せるならお前がアイツを仕留めりゃ良かっただろ。それと何が一人だからさ、だよ」

お義父さんの返答に猫の獣人はサラッとした顔で答えますぞ。

「そこまで相手も馬鹿じゃないでしょ? まあ、馬鹿でもあったかもしれないけどね。あの時は、一人だったさ。嘘は言ってないし、君は人に世界の行く末を任せないだろ?」

「ああそう……」

ポンっと両手を合わせた猫の獣人がお義父さんから視線を離して後ろに居る俺達の方へと向けますぞ。

「改めまして、挨拶だね。僕は……君達からすると神狩りと呼ばれる存在かな。名前はアーク。そこの尚文くんとはちょっとした出会いがあってね。助力をした関係なんだよ」

「そうだな」

「ええ、あの時は助かりました」

自己紹介する猫の獣人改め神狩りのアークと名乗った者は仰りました。

そしてお義父さん達も頷いていますぞ。

なんと、つまり赤豚本体を倒すためにお義父さんが色々と恩がある方という事ですぞ。

お義父さんはアークの隣にいる鳥の魔物へと視線を向けますぞ。

「アークから聞いているだろうが、岩谷尚文だ。隣にいるのはラフタリア。他にも色々と後ろにいるけど自己紹介をしていたらキリが無いから後で話がしたかったらしろ」

「はいはい。僕の名前はー……まあ彼と同じく色々と名前があるけど不死鳥って呼ばれる事が多いかな? 不老不死じゃないんだけどさ」

「まあ神を自称している連中を狩ってる奴等が不老不死じゃ筋が通らないしな」

「そういう事だね。僕達は寝たり起きたりしているだけさ」

「というかそれって名前じゃないよねー」

「わかってるって。まー鳳凰とかもあるけどね。この世界にも居たんでしょ? だからここは簡易的に……次の名前になりそうなホーとでも呼んでよ」

そう言うとホーと名乗った鳥の魔物は一礼をしました。

「あ、僕も神狩りの役割は持ってるよ。こっちの永遠を終わらせる子とは別だけど」

永遠を終わらせるのと、という所でホーはアークを指さしておりました。

そんな二つ名もあるのですな。

「翼を持つ者の祖なんて言われる事もあるよね。世界新生が彼……の役目だけど安心して。この世界は新生するほど老いたり腐った世界じゃないからさ」

なんとも大きな話をしているような気がしますが錬やブラックサンダーの様な次元の連中なのでしょうかな?

「そいつと同等っぽいお前はドラゴンの祖とかか? なんかそういう雰囲気があったが」

お義父さんは頭を垂れるライバルを見つめて訪ねましたぞ。

つまりライバルの大本ですかな! そうなれば敵ですぞ!

「ううん? 僕は祖からすると兄弟の位置かなー。竜達は一応上司って認識してくれてるだけで別だよ」

「似たようなものでは?」

「うーん……義理の兄弟みたいな感じと言えば分かってくれる?」

血の繋がりは無いけど族長の義兄弟というポジション……確かにちょっと違うポジションという事でイメージ出来ますぞ。

「はぁ……」

お義父さんがかなり面倒そうなため息を漏らしていますぞ。

「あ、そこまで面倒そうにしなくても良いじゃないか。君の世界で言う所の来訪者にぶぶ漬けを出すような真似はされたら困るよ」

早く帰れの暗喩ですぞ。

あんな姿なのに日本の事を知っているのですな!

「まー……『今更何なんだ、来るのが遅いぞ馬鹿!』って思う気持ちも怒りも分かるけど、世界は無数にあるし、大丈夫だって警報が来ないようにしていた連中がいたんだからしょうがないでしょ。全知全能なんて傲慢でしかないし、穴だらけなんだからさ」

思い切り愚痴をアークは述べておりますぞ。

「ここに滞在する間、怒りをぶつける相手くらいはしてあげるよ。それだけの事をする資格を君達は有している。ただ、こっちの言い分と報告くらいは聞いてくれて良いかな?」

「なんだ?」

「今回の件の黒幕がいた世界には報いを受けさせた。もうこの辺りで波は起こらないよ」

淡々とアークは述べました。

そういえばふと気付いたのですが、このアークという者、気配から何まで感じられませんぞ?

これが神狩りという事でしょうかな?

「……そうか」

お義父さんは淡々と報告を聞いて不満そうな顔を崩しました。

「責任者がどうのこうの言い逃れをしようとしていたけどね。こっちが裏を取らないとでも思ったのか呆れるもんだよ。世界単位で完全に腐りきってたからねー。アイツらからすると僕は殺戮者そのものだろうね」

何はともあれ、と、アークは笑いますが……なぜか俺はその笑顔に見覚えがあるような気がしました。

「という訳でちょっと滞在するからよろしくね」

「はいはい。お前等が居れば面倒な連中とか来ても勝手に解決してくれそうだ。怠けるのは許さんからな」

「わかってるよ。一宿一飯の恩くらいはねー」

ホーがフィロリアル様達に解散を命じて、フィロリアル様達が思い思いにリラックスをしている様になってから話に混ざってきました。

つまり神狩りの二名が村にしばらく滞在するのですな。

村のみんなもヒソヒソと思い思いに雑談をしながら解散して行きましたな。

俺はどうしますかな? フィロリアル様達の元へ日課に戻ろうかと考えていると、ホーが俺を見てきました。

「ああ、君、見覚えがあるね。覚えてる。僕がこの前いた世界でニュースになってた人だよね? 北村元康くんだったっけ?」

「なんだ? 元康の事を知ってるのか?」

「さっき言ったでしょ。ここに来る前にお世話になっていた世界でね、彼の事を少し覚えていたんだよ。まあ言うまでもなく彼は有名人さ。ヒューヒュー色男! 僕と同じだね!」

お義父さんが俺を睨んでますぞ。

正確には俺と槍を睨んでいるようですぞ。

近くに神狩りがいたのにお前は気付かなかったのか! というかお前の世界、こんなバカしか居ないのか? とお義父さんが思っているのが俺にも伝わってきますぞ。

「し、知りませんぞ!」

「まあ気付かなくてもしょうがないよ。あの時の僕だとね……こっちも色々あったのさ。今はこんなに光り輝いているけどね!」

何やら理由があるようですぞ。

ホーの事情は分かりませんが助かりましたな。

しかし、少々ノリが寒いですぞ。

昔の俺を見ている様でむず痒い気持ちになってきますな。

「……ニュースねー」

「うん。痴情のもつれで殺されたって話だったけどこの世界に召喚されて死を回避していたんだね……今回の主犯による因果干渉の名残がある。なるほどなるほど。彼が殺されたって事で色々と関係縁者が大暴れして主犯は惨たらしい最後を迎えたらしいよ。大学の……おっとこれは僕の中のプライバシーに関わるから話していい領域じゃないや。ごめんねー」

と、ホーは俺の元の世界に関する話をしているようですぞ。

激しくどうでも良い話ですな。

「おや? 緊急時に元の性質を利用して破滅の回避を試みたりしてたんだね。なるほどね。完全な偶然だけど僕達と君が同じ世界に居たのは何かの因果だったのかもしれないね」

-------------------------------------------------

映像水晶レター

錬と樹が俺の呼び出しに応じて、俺の家へとやってきましたぞ。

「あれ? 錬、樹、こんな所でどうしたの?」

そこにお義父さんまでやってきましたぞ。

やや想定外でしたが、まあ良いでしょうな。

「ああ、なんか元康が俺と樹をそれぞれ言付けで呼びつけてな」

「何なのでしょう? と思いながらやってきたんですよ」

「へー……」

と、錬と樹がコンコンと俺の家の扉を叩きますぞ。

「……返事が無いね?」

「まったく、人を呼んでおきながら何なんですか」

「鍵は掛かって無いみたいだぞ?」

「では、先にお邪魔しますか。何か急用でしょうかね」

錬と樹はそのまま俺の家へと入りますぞ。

室内には俺がテーブルの上に置いた映像水晶と、置き手紙があるのですぞ。

「何ですかね……」

「俺達宛てだな。映像水晶を再生させろと書いてあるみたいだな」

「本当、何なんですかあの方は」

うんざりした口調で樹が映像水晶を起動させますぞ。

すると椅子に腰掛けた俺がユキちゃんを膝に乗せている映像が映し出されました。

『ウェ-イ! 錬、樹、見てるー?』

「……」

「……」

無言無表情で見つめる錬と樹が印象的ですぞ。

「なんだろう。誰か寝取られてそうな台詞だね。間男は元康くんって事になるけど寝取られているのは誰なの?」

「この映像的にはユキさんではないですか?」

「ユキは元康のフィロリアルだけどな。それにしても随分と寝取り男が似合うな」

「まあ元康くんはイケメンだからねー」

『わー何やってるのキタムラーコウも混ぜてー』

『クロもー』

撮影中にコウとクロちゃんが乱入ですぞ。

ぴょんぴょんと二人がユキちゃんを膝に乗せた俺に絡んで来ております。

「寝取りビデオから一転してホームビデオになっちゃったね」

「本気で何なんでしょう?」

「訳がわからんな」

『ちょっと今、撮影をしている最中なのですぞ。ちょっと我慢ですぞ』

『イエーイ、尚文様見てますかー?』

ユキちゃんが勇者の中で呼ばれなかったお義父さんに気を遣って呼びますぞ。

「なんでユキちゃんがこのタイミングで俺の名前を? それはどういう意味なのかな?」

「ユキさんに深い意味は無さそうですよね」

「そうだな。間違い無く意味が分かってないだろ」

仕切り直しですぞ。

再度撮影するのが面倒だったのでそのまま継続ですぞ。

『さて、お前達を呼んだのは他でもありません。とある真実を話さねばなりませんぞ。重大発表ですな』

「何なんですかね。僕たちに正面から言わずにいるってどういうことなんでしょうか」

「直接言ってもアイツは何も怖く無いって顔をしてるだろ」

「一応恐いものはあるらしいけどね」

「病んだ女性でしたっけ? 僕達じゃ無理な話でしょうに」

お義父さん達の会話に映像の俺は間を考えて答える等ありませんぞ。

想定しているのは樹と錬がこの映像を見ている姿だけですからな。

『何を隠そう、お前達に国の真実を教えるために暗躍した……ウサギは……』

パッとここで俺はウサウニー姿に変身ですぞ。

『この俺! ウサウニー元康ですぴょん! 錬、樹、この国と仲間の腐った所は身に染みてわかったぴょん? そろそろ頃合いだと思って教えてやったぴょん!』

バーン! っと俺がポーズを取りますぞ。

映像水晶を編集して集中線も入れてありますぞ。

『ウサウニー元康、分身の術ですぞー! シュシュシュシュ!』

そう言って映像水晶内の俺は高いステータスによる高速移動で残像を見せますぞ。

「……」

「……」

『この映像水晶が少しでも面白いと思った勇者のみんな!』

『忘れずにチャンネル登録』

『高評価していってくれるととっても嬉しいぴょん!』

そうして分身を解除し、俺の変化に若干驚いていたユキちゃん達にお出かけの合図を送りますぞ。

するとユキちゃんは察してフィロリアル姿になりましたな。

『それでは俺はしばらく出かけて来るので、さらばですぴょーん!』

『出発ですわー』

『しゅっぱーつ!』

『クロちゃんは錬に内緒にしておくのですぞー』

『わかったー闇聖勇者が覚醒してレンが一緒に遊んでくれるだよねー後でキールも誘うー』

そんな所で映像水晶に込められた映像は終わりました。

映像を見てお義父さんは顔に手を当てて嘆くように頭を振りましたな。

「いや、登録ボタンも評価ボタンも無いけど……元康くんに動画サイトの決まり文句を教えたの誰だろう」

流れるように手を前に出した樹が弓を引き絞って映像水晶を撃ち抜きました。

粉々に映像水晶が砕け散って消し飛びましたな。

「そうじゃないかとは思っていましたが……ね、錬さん」

「ああ、そっちの姿でやる事をして黙っていたなら見逃してやろうと思っていたがな」

「見逃していたのにこんな挑発までするとは……何が何でも見つけ出し、磔にしましょう」

「ああ」

と、錬と樹は俺の家を飛び出して行ったのでした。