軽量なろうリーダー

もう二度と聖女なんかやりません

作者: 九葉(くずは)

あらすじ

十年間、誰かのために使い続けた手だった。その手を「偽物」と呼ばれた朝、クラーラは泣かなかった。代わりにメモ帳を取り出して、荷造りリストを書き始めた。聖女として神殿に尽くした十年。けれど「本物の聖女」を名乗る義妹が現れた日、すべてが終わる。治癒の鑑定すら許されないまま、クラーラは神殿を追われた。行く当てもなく辿り着いたのは、辺境の騎士団。寡黙な副団長は「神殿崩れは役に立たない」と言い放つ。それでもクラーラは、傷だらけの騎士たちの前に立った。祈りではなく、手袋をはめ、傷口を診て、止血してから癒す。母から受け継いだその手順が、クラーラの治癒のすべてだった。神聖さではなく、専門性で命を救う治癒師は、この騎士団にはいなかった。やがて騎士団の空気が少しずつ変わり始める。けれど王都から届く影は、クラーラを静かに追い詰めていく。そして副団長は、何も言わずに毛布を置いていく。義妹の治癒はなぜ効かなくなったのか。母が本当に遺したものは何だったのか。偽物と呼ばれた手が誰かを救うたび、真実は少しずつ形を変えていく。

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