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作品タイトル不明

短編1「王宮の精霊騒動」コミカライズ化配信記念!

それはリアーナがハルシュタインの王宮に上がって間もない頃のお話。

「陛下からお部屋から出てはいけないと言われてしまっていたのですが、ずっと同じお部屋の中にいると退屈ですし、体がなまってしまいますわ」

リアーナは聖女の務めがある時以外は、部屋に閉じ込められるような形でいた。

本人は閉じ込められているという感覚はないが、それでも窮屈な思いはしていた。

「でも勝手にお部屋の外に出ると怒られてしまいそうだわ。夜にこっそり散歩しましょう。それなら陛下にも使用人にも見つかりませんわ」

そうしてリアーナの小さな冒険が始まる。

「夜は少し肌寒いです。でも上着はありませんし……そうです! シーツをかぶっていきましょう! それなら少し暖かいです!」

夜の宮殿を月明かりに照らされて歩く。 リアーナは少し恐怖を感じながらも、宮殿内を探検することにワクワクしていた。

「月明かりに照らされてみると、絵画って美しいんですね」

歴代の国王がずらりと並ぶ絵画を見てリアーナは微笑む。

「あ、こっちの方から美味しそうな匂いがします」

厨房から美味しそうな匂いが漂ってきて、そちらに足を向けた。

厨房では、パティシエ長と見習いが国王のための夜食を作っていた。

その時、弟子は指を包丁で切ってしまい、料理長はお湯で火傷してしまった。

「まあ大変、 最大(マクシムム) ・ 回復(ベッセルング) 」

リアーナは遠くからこっそりと二人に回復魔法をかけた。

「陛下には人前で魔法を使うことは禁じられてるんですけど、これぐらいはいいですよね」

グーキュルルル……。

その時リアーナのお腹が鳴った。

「お腹が鳴ってしまうなんて、淑女としてあるまじき行為ですわ。でもお城のお料理は公爵家で食べてた時より量も少なくて、デザートもないんですよね」

テーブルの上には熱々のクッキーやパウンドケーキやシフォンケーキがずらりと並んでいた。甘い香りがこちらまで漂ってくる。

リアーナは「はぁ〜〜」とため息をついた。

「そこに誰かいるのか!?」

リアーナの気配に気づきパティシエ長が叫ぶ。

「大変、見つかってしまいました!」

リアーナは急いでその場を後にした。

パティシエ長が外に出た時見たのは、銀の髪をたなびかせ白いシーツをかぶった小さな子供の姿で……。

「子供がなぜこんな時間にこんなところに……? 宮殿にいる子供は王子殿下のみ……! もしかして……ゆ、幽霊……?」

パティシエ長がブルリと震える。

「パティシエ長、幽霊ではなく精霊かもしれませんよ」

「精霊?」

見習いの言葉にパティシエ長はパッと後ろを振り返る。

「田舎のおばあちゃんが言ってたんです。月夜の晩には精霊様が出るって」

「何をバカなこと」

「でもさっき包丁で切ったはずの手の怪我が治ってます。料理長の火傷も治ってます。きっと精霊様が直してくれたんですよ」

パティシエ長は自分の手を見ると、火傷の跡が綺麗に治っていた。こんなことは実際にありえるわけがない。

料理長はまたブルリと背中が寒くなった。

なぜなら精霊の類は気まぐれで有名だからだ。

人間に味方してくれるものはいるが、恩を仇で返せばどのような報いが返ってくるかわからない。

ある意味、悪魔やモンスターより厄介な存在なのだ。

「か、仮に怪我を治してくれたのが精霊だとして、お前の古里ではどういうお礼をしてたんだ? べ、別に俺は信じていないが、念のために聞いてやる……!」

「そうですね、精霊様にはお礼としてお菓子やお料理なんかをお供えしておきました。夜お供えしておくと、いつの間にかなくなってるんです」

「そうか、お菓子だな! 分かった!」

料理長は王様の夜食に出す分以外にまた料理を作って、そっと厨房の端に置いた。

◇◇◇◇◇

翌日

「昨日は危うく見つかってしまうところでした。今日は気をつけなくては」

リアーナは今日も部屋を抜け出し、こっそりと城内を散歩していた。

そしてまた甘い匂いに誘われて、厨房に向かっていたのだった。

「まあ、こんなところにマカロンが。『よろしかったら食べてください』と書いてあるわ。どなたか存じませんが、とても親切な方がいるようですね」

リアーナはマカロンを持ち帰り、部屋で食べた。

それからリアーナは時々夜抜け出しては場内を散歩して、困ってる人や怪我をしてる人がいたらそっと治療していた。

城内で子供の精霊が出る、お供えにお菓子をあげると幸せになれる……と一時期噂になったという。