軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

わがまま姫様の教育係からの……?2

「お待ちしておりました、ディアナ様」

「ご、ごめんなさい、待たせてしまったわね」

学園に着き、馬車を降りてマナー違反にならない程度に早足で食堂を目指してきたのだが、もうすでにキャロル嬢達は着席していた。

ギリギリ間に合った!くらいの時間だものね。

グエンのかわいさにかまけて忘れていた私が悪いのだ、お叱りは甘んじて受けよう。

「いえ、ディアナ様はお忙しいんですもの。そんな中、私達のためにお時間を取って頂いて、嬉しいです」

ねえ?とキャロル嬢が他のふたりに同意を求めると、ふたりもそれにうんうんと頷いた。

怒られるのではと思っていたのだが、そんなことはなく、キャロル嬢達は私を気遣ってくれた。

気が強いところもあるけれど、思い遣りのある方達だなと、心が温かくなる。

「……私も、同年代の友人はほとんどいないから、誘ってもらえて嬉しかったわ」

他の令嬢達には遠巻きにされることも多いから、この三人が声をかけてくれるのは素直に嬉しい。

だからなんの考えもなしにそう言ったのだが、キャロル嬢は目を見開いて固まってしまった。

「友人……?」

「あ、ごめんなさい。勝手に友人だなんて、馴れ馴れしかったかしら?」

しまった、嬉しくてつい。

慌てて謝ったのだが、キャロル嬢はそれにいいえ!と大きく首を振った。

「その、嬉しくて!……私達のこと、ゆ、友人だって思って下さっているなんて、思わなかったから!」

そう一生懸命伝えようとするキャロル嬢の顔は、真っ赤に染まっていた。

一瞬その言葉に驚いたけれど、その一拍のち、キャロル嬢以外の私達三人から笑いが零れてしまい……。

「な、なによ!笑わないで頂戴!もうっ!ひどいですわ、ディアナ様!!」

アイリス様に負けないくらいのツンデレ具合を披露してくれたキャロル嬢を、かわいいなぁと撫でたくなってしまった私なのであった。

「みんな!元気だった?」

「あ、ディアナさまだ!」

「まあ。しばらくぶりです、ディアナ様」

キャロル嬢達との和やかなランチタイムを終え、その足で幼等部に向かった。

最近顔を出せない日も多かったのだが、今はもう子ども達も教師達も穏やかにこの時間を過ごせている。

「教師の配置人数を増やすよう、学園に相談して下さったおかげで、随分と余裕が出てきました」

「ディアナ様が試しにと持って来て下さった教材も、ほとんど取り入れることに決まりましたし、子ども達も喜んで使っています」

あとひとり大人がいれば……!!の気持ちは異世界であろうと共通だった。

小さい子のお世話や教育の大切さや大変さが、この世界でももっと浸透すると良いな。

「また色々と作ってみて、持って来ますね!私なんかの思い付きをちゃんと聞いて取り入れて下さるので、私もすごく嬉しいです」

子ども達のためにと頑張ったことを認めてもらえて、それ良いねって言ってもらえて、やってみようよ!と前向きに捉えてもらえるのは、とても嬉しい。

チームで子ども達を保育してるんだって思えた、前世のあの頃に似た気持ち。

異世界転生して、もうそう思えることはないかもなって諦めていたのだけれど、まさかこんなことになるなんてね。

「先生方もいつもお疲れ様です。みんながいつも笑顔でいられるのは、先生方のおかげです」

前世の自分が言われて、嬉しかった言葉。

毎日頑張る姿に、ありきたりだけれど、励ましのメッセージを込めて。

「……ありがとうございます」

「ディアナ様のおかげで、私達も毎日がとても楽しいです」

子ども達の成長を感じられるこの仕事は、とても素敵なもののはずだから。

「お疲れ様でした、お嬢様」

「あちこち出歩くから、俺も疲れたぜ」

「悪かったわね。若いんだからそれくらいで疲れないでしょうよ」

昼休みの後は授業をいくつか受け、私とミラ、そしてレンは馬車に乗ってブルーム侯爵邸へと戻って来た。

ちなみにユリアは学園に行く際はお留守番をしている。

一緒に行くと大人数になってしまうし、元生徒だからね、色々と面倒なこともある。

「……お嬢サマって、時々俺より年寄りみたいな発言するよな」

「誰が年寄りよ!ピチピチのもうすぐ十八歳よ、私は!」

失礼だが、あながち間違いではない発言をするレンに、内心冷や汗をかきながら言い返す。

レンは私やユリアの前世のことを知っているが、ミラはそうではない。

年齢まで詳しく伝えたわけではないが、自分より年上だったのかもな〜くらいは思っているのかもしれない。

「あなたはまたお嬢様に向かって……。はぁ、お嬢様も、そのあたりにしておいて下さい。使用人達に見られますよ」

最近ミラはレンの無礼な物言いにも少しだけ寛容だ。

寛容……というより、諦めたという方が近い気もするけれど。

「ごめんなさい、ミラ。あ、タクト!メイちゃんも」

使用人棟の近くを通れば、いつもの場所にタクト達がいた。

「あ、おじょーさまだぁ!」

「今日は制服着てるのな」

相変わらずかわいいメイちゃんと、生意気なタクト。

この子達とも一緒に色々な遊びをしてきたけれど、どれも楽しんでくれて嬉しかったな。

ちなみに幼等部に持ち込んでいる教材と同じものを、メイちゃん達、年少の子にも良かったら使ってみてねと渡している。

体を使った遊びをすることが多かったけれど、時々文字や算術なども教えていたからか、タクト達年長組の中には随分と堪能な子も出てきた。

運動が得意な子、読み書きが上手な子、計算の速い子、手先の器用な子、優しい子、元気な子……。

色々な個性を持っていて、十人十色でみんなとても良い子達だ。

「制服、似合わないことないけど、おじょーにはちょっとかわいすぎだよな」

「たしかに。真っ黒なドレスとか着て高笑いしてる方が似合うよな」

言えてるー!と爆笑する年長組の男子達。

「……あんた達、言いたい放題言ってくれるじゃない」

騎士達よりも遠慮のない男共に、いつもよりも低い声が出ているのが分かる。

「「「だって本当のことだし」」」

きっぱりと言い切られたら、怒る気も失せるわ!

「はぁ……もう別に良いけどね」

ちょっぴり口は悪いが、それだけ私に心を許してくれているのだと思えば、悪くない気もするから。

「ははっ!お嬢サマ、心ひれーなぁ」

「全く……。あなた達、少しは慎みなさい。あまり遠慮がなさすぎると、こんな大人になってしまうわよ」

からからと笑うレンを指差して、ミラは眉を顰めるのであった。