軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

孤児院での決意1

あれよあれよという間にアイリス様の孤児院訪問の日程が決まり、予定通り私とミラ、そしてレンとユリアも同行することになった。

訪問までの準備は忙しかったけれど充実していて、アイリス様の侍女も加えてみんなでワイワイするのは楽しかった。

殿下に許可をもらった、王宮の庭園の花を使ったモイストポプリは、レンから「孤児院じゃこんなのなかなか持てないから、女子は喜びそうだな」とお墨付きをもらえた。

ちなみにこれには、摘花した花達を使ってみた。

他の使い道を……と以前話した時のことを思い出したのだろう、アイリス様は嬉しそうに花びらを乾燥させていた。

ところで男の子達はなにが喜ぶかなとレンに意見を求めると、「剣だろ。真剣は無理でも木刀とか?」と即答され……。

アイリス様やミラ、ユリアが本当にそんなもので喜ぶの?と胡乱な目をする中、私だけがレンに同意した。

わんぱくな男子というものは棒きれを持っただけで戦いごっこを始める生き物だと、よーく知っているから。

ということで殿下にはペンや紙、絵本の他に木刀も用意してもらうことにした。

最初は殿下も怪訝な顔をしていたが、騎士に憧れる男の子も多いのではと伝えてみると納得したようだった。

そしていよいよ明日は孤児院の訪問日。

私達はアイリス様の私室でクッキーをラッピングしている。

「アイリス様、リボン結び上手になりましたね」

「ふん、これくらいすぐにできるって言ったでしょ」

王宮の料理人に作ってもらったクッキーを袋の中に入れ、リボンで飾っているのだが、アイリス様はなかなか器用だ。

教えたばかりの時こそ時間がかかったり縦結びになったりしたものの、すぐにコツをつかんで綺麗なリボンの形を作れている。

「かわいいですね〜。王宮の料理人が作ったんだから美味しいに違いないし、絶対喜んでもらえますね!」

なんだかんだでアイリス様と仲良くなってきているユリアも、楽しそうにラッピングを手伝ってくれている。

「ユリア、口よりも手を動かしなさい。遅れていますよ」

そんなことを言いながらも、ミラも案外楽しそうだ。

アイリス様の侍女とも情報交換したりして仲良くなっているみたいだし、みんなにとって居心地の良い空間になりつつある。

――――しかし、その中でひとり、淡々とした表情をしている者がひとりいた。

「リボンとか必要かぁ?食べられればなんでも一緒だろ」

レンだ。

なぜ……と言いたいところだが、多分だけどレンの考えていることが分かる気がする。

みんなは明日の慰問を楽しみにしている様子だけれど。

“孤児院は貧しく、お金はあればあるだけ困らない”

私はレンに聞いて、知っているから。

少しだけ、不安もある。

「これは……」

「……ちょっと、予想以上でした、ね」

翌日、王都の一番近い孤児院に到着すると、アイリス様とユリアが戸惑いの声を上げた。

なぜか。

それは、ふたりが思っていた以上に子どもたちの生活が貧しかったからだ。

洋服は薄汚れているものばかりだし、痩せている子も多い。

食べさせてもらえていないとまではいかないが、きっと十分な量ではないのだろう。

しかし院長が資金を着服して……!みたいな展開かと言われると、そういうことはなさそうだ。

穏やかな表情のおじいちゃん院長先生や他の先生方もまた、質素な服に身を包み、その体型も痩せている。

子ども達もすごく懐いている様子だし、譲り合い協力しながら暮らしているのだと思う。

むしろ王都だし、こうして王族が慰問に来るぐらいの孤児院なのだから、まだマシな方なのかもしれない。

とはいえ、まだ幼いアイリス様とユリアにとっては衝撃的だったみたいで、子ども達を前に呆然としている。

このままじゃダメねと息をつき、そっと一歩前に出て口を開く。

「こんにちは、私はディアナよ。半日だけだけれど、仲良くなれると嬉しいわ」

にっこりと笑って挨拶をする。

自分でも忘れがちだが、私はキツめの顔立ちをしている。

第一印象は大事だ、少しでも柔らかい印象になるよう、普段よりも意識して笑顔を作り、話し方も堅苦しくないようにしてみる。

「わぁ……きれー……」

そんな私の努力の成果だろうか、子ども達の中からそんな呟きが聞こえた。

よしよし、第一関門は突破ね。

「そしてこちらが、我が国の第一王女、アイリス・フォン・リーフェンシュタール殿下です」

そう言って紹介すれば、アイリス様ははっとして私の隣に並んだ。

「アイリス・フォン・リーフェンシュタールです。……その、今日は、よろしく」

少し辿々しさはあるものの、アイリス様は立派に挨拶をした。

そしてそんなアイリス様を見て、今度は「お人形みたいでかわいい!」と声が上がった。

その声が聞こえていたのだろう、アイリス様は少し恥ずかしそうに俯いた。

「それからこちらが、ミラ、ユリア、レンよ。みんながどんなものを喜んでくれるかしらって、五人でたくさん考えて来たの。お絵描きや文字の勉強ができるように、ノートやペンも持って来たし、絵本やぬいぐるみもあるわ。騎士ごっこが好きな子には、軽い木刀もね。みんなが好きな遊び、私達も一緒に楽しませてね」

私がそういうと、殿下が用意して下さったものが次々と子ども達の前へと運ばれていく。

それらを見た子ども達は目を輝かせ、早速使ってみようと、それぞれの遊び場へと散っていった。

「でぃあなさま、いっしょにあそんでくれますか……?」

すると私の側にひとりの女の子がおずおずとやって来たため、もちろんよと笑顔で答える。

「おひめさまも、いっしょにあそんでくれますか!?」

そして別の元気な女の子がアイリス様のところへ行った。

「やったぁ!こっち、きてください!」

アイリス様はちょっと恥ずかしそうだったけれど、女の子に誘われて嬉しそうについて行った。

あの様子なら大丈夫かなと思い、誘ってくれた子どもと手を繋いで視線を移せば、レンが男の子達に木刀を持って連れられて行くのが見えた。

ユリアはアイリス様より少しお姉さんだけあって、すっかり落ち着きを取り戻したみたいで、持ち前の親しみやすい雰囲気で子ども達の中に溶け込んでいた。

そしてミラは……。

うん、表情が硬い。

そうよね、クール美人さんだもんね。

それにちょっと恥ずかしがり屋さんだし。

でもそれじゃ子ども達が怖がって寄ってこないよ……?