軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

転生教育係の告白2

* * *

「ディアナ、できたわ」

「私達も、できました」

「はい、みんなオッケーですね。それでは次にいきましょう!」

アイリス様の私室、私達は今、テーブルに花びらを一枚ずつ千切って広げている。

なにをしているのかというと、ポプリを作っているところだ。

『見てみてディアナ!お兄様が、手紙のお礼にって花束をくれたの。綺麗でしょう?』

幼等部での体験を終えた三日後、アイリス様の私室を訪れた際に、そう言って花瓶に生けられたかわいらしいバラの花を見せてくれたのだ。

バラは赤から紫のアイリス様の色のグラデーションでまとめられていて、とっても素敵だった。

『でも、しばらくしたら枯れちゃうのよね……』

寂しそうな顔をするアイリス様を見てなんとかならないかと考えを巡らせた私は、こう提案した。

モイストポプリを作ってみないかと。

ポプリを知らないアイリス様(というか、この世界には多分ポプリというものがないのだろう)に、簡単にポプリとはなにかを説明すると、ものすごく興味を持って作りたいと言ってくれた。

これならしばらく保存できるし、香りも楽しめるからね。

『もし良かったら、侍女さん達もどうですか?ミラも』

せっかくだしみんなで作ると楽しいよねと誘うと、アイリス様からも良いんじゃないと許可が出て、こうして好きな花を持ち寄り、女子みんなでテーブルを囲んでいる。

一応未知のものになるのかなと、ルッツ様に確認を取って、まあそれくらいなら良いでしょうと了承も得た。

モイストポプリの材料は花びらとハーブ、それにあら塩や岩塩。

これを瓶に詰めていけば出来上がる、わりと簡単にできるポプリだ。

前世で、園の近くにモイストポプリの教室をしているお姉さんが住んでいて、参観日に親子でやってみませんかという提案があり、私も一緒に教えてもらった。

材料も身近なものばかりだし、子どもでも作れるからととても好評だった。

保育室にも飾ってみたのだが、微かな花の香りが広がって、先生達にも受けが良かったのよね。

「これが見本です。ブルーム家に咲いている花で作ってみました」

「かわいい……」

「とっても素敵ですね!」

「香りも良いですね。甘い香りですが、強すぎなくて私も好きです」

事前に作っておいたものをみんなに見せると、みんなキラキラした目をした。

もちろんアイリス様も。

「そっか……色合いも考えて、自分で好きなように作れるのね」

「その通り!みなさん自分の好きな花を組み合わせて、素敵に作って下さいね」

お花を使って自分で好きなようにアレンジできて、香りも良くてしかも置いておくだけでかわいい。

女子ウケ抜群だと思ったのよね。

見本を見ることで、早く作りたいとさらにやる気満々になったアイリス様と侍女達。

よしよし、つかみはオッケーね。

「ではまず、使いたい花びらを魔法で清浄し、半乾燥させます」

「はん……乾燥?」

「はい、これくらいです。少し柔らかさが残るくらいですね」

半乾燥がよく分からない様子のアイリス様に、実際に目の前でやって見せる。

「微妙な調節が必要なので、結構難しいんですよ。頑張って下さいね」

「わ、分かったわ。やってみる」

もちろん数時間おひさまに当てておくだけでも良いのだが、魔法の練習も兼ねてみる。

アイリス様は殿下にもらった花束の花を使うので、失敗はできない!と真剣な目をしている。

侍女達やミラも例外ではない。

自分の分は自分で、水魔法が苦手でもまずやってみましょうと伝える。

「できたわ!これくらいかしら、ディアナ」

「どれどれ?うん、丁度良い感じです。お上手ですね!」

まさか一回でできるとは。

魔法もメキメキと上達しているのねと、アイリス様の成長を感じで嬉しくなる。

「姫様は水魔法、お得意ですものね……。私は苦手なので、乾燥させすぎてしまいました」

「あら。もう一度やってみて、難しかったら私が手伝ってあげるわ。頑張って」

そしてなんと、水魔法は苦手だという侍女にこんなフォローまで入れている。

そんなアイリス様に驚きながらも、侍女は嬉しそうにお願いしますと言った。

侍女達との関係も良好みたいだし、良かったわ。

「さて、ミラは……」

「できておりますわ、お嬢様」

くるりとミラの方を見ると、完璧に半乾燥になった花びら達が並べられていた。

「す、ごいわね……。ミラってば、魔法も得意だったの?」

「まあ、それなりに」

優秀な侍女のスキルの高さに舌を巻く。

なんでもできるミラだが、魔法も得意なのね。

そうして全員の花びらの半乾燥が終わったら、いよいよ瓶に詰めていく。

「見本のように層を作っても良いですし、ランダムに花びらと塩を混ぜても良いですよ。私が用意した花びらとハーブもありますので、どうぞご自由に使ってみて下さい」

あとはお好みで、好きなようにすれば良い。

どうしよう〜!この色素敵〜!と侍女達がきゃあきゃあ声を上げている。

「……お兄様からもらったバラも、使ってみる?たくさんあるし、構わないわよ」

そんな侍女達を見て、なんとアイリス様がそんなことを言った。

先程の発言と良い、驚きだ。

「そ、そんな!王子殿下の贈り物を使わせて頂くなど、恐れ多いです……!」

「別に良いじゃない。だったらあなた達の持って来た花びらも使わせて頂戴。ほら、それなら良いでしょう?」

そういう問題ではないのだが……。

そんな侍女達の心の声が聞こえた気がするが、せっかくのアイリス様の申し出を断るのも忍びなかったのだろう。

遠慮がちではあるが、ありがとうございますと言ってアイリス様のバラにも手を伸ばしていた。

「……なにニヤニヤしているのよ、ディアナ」

「いえ?お優しいなと思って」

勉強や技術だけじゃない、アイリス様の心の成長もたくさん感じることができた私は、終始笑顔でポプリ作りを見守るのだった。