軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

わがまま姫様の憧れ2

「ちなみにその人物は女性でね」

女性かぁ、自分と同性の方が近付きやすい感じはあるもんね。

「アイリスと同じように、幼い頃は不遇な思いをしたらしいのだが、それにも負けずに心身ともに成長したところが、あの子の胸に響いたのだろうね」

自分に似た境遇ってことね、それは共感しやすいわ。

「ちなみに私も最近まで知らなかったのだが、彼女はなかなかユーモアのある一面も持ち合わせていて」

親しみやすさまで兼ね備えてるってこと?

じゃあアイリス様とも仲良くなれるかしら?

「うん。彼女、悪女の物真似なんかも得意だったな」

「そうなんですね〜って。ちょ、ちょっと待って下さい。そ、それって……」

なんだかものすごく心当たりがあるんですけど……!?

「そう、君のことだ」

わ、私!?

なにゆえ私!?

「ルッツ様!?」

「はい、殿下のおっしゃる通りです」

ぐりんと首を捻ってルッツ様に尋ねると、頷きが返ってきた。

「ディアナ嬢に憧れていると実際に聞いたわけではありませんけどね。ですが、言葉の端々から、そうじゃないかなぁと。先日は『私もディアナが着ていた騎士服、着てみたい』とおっしゃっていましたよ?攻撃魔法もいつか習ってみたいとも」

騎士団訓練でのあれか……!

たしかにアイリス様の目がなんとなくキラキラしていた気はしたが、まさかだ。

「そういえば君、アイリスの前でものすごい速さで算術の問題を解いたことがなかったかい?『お兄様よりディアナの方がもっと早く解いていたわ』と言われたことがあるんだよねぇ。君が算術にも明るいなんて、知らなかったなぁ」

そういえば出会ったばかりの頃、アイリス様に『ディアナ、これ分かる?』って算術の問題を出されたことがあったっけ。

『お兄様は簡単に解いちゃうのよ』って言ってたし、たぶん難しい問題を出して私が解けずに悔しがる姿を見て、お兄様はすごいのよと言いたかったのだろうけど……。

前世での義務教育レベルの問題、しかも公式さえ知っていればすぐに解けるものだったので、さらりと解いちゃったのよね。

たしかにそんなことはあったけれど、私に憧れているという話とは関係なくない?

ちょっとばかり殿下の嫉妬が入っている気がするのだけれど、気のせいかしら。

「まあとにかく、そのしばらく後にアイリスも『私もそろそろ算術習ってみようかしら……』って言い出したんだ。さらさらと難しい問題を解けるのがかっこいいと言ってね」

まぁ知的さに憧れを持つ時期ってあるよね。

小学生くらいって、運動ができる子がかっこいい、頭が良い子がかっこいいってなぜか思ったもんね。

「簡単な計算問題をたくさん解く練習をして、アイリス様もかなり計算が速くなったと聞いておりますけど」

「計算問題の勉強法についても、君から進言があったと算術の教師から聞いているよ」

そうだ、アイリス様に算術を教えるインテリ眼鏡なイケオジ教師に相談を受けたことがあった。

どんな風に進めていくと興味を持ってもらえるだろうかと聞かれたのよね。

ただ問題を解いていくだけだとあまり達成感が感じられないから、シール表を作ってみてはと伝えてみた。

プリント一枚終わるごとにシールを貼っていき、〇枚たまったらご褒美があります!みたいなやつ。

たまったシールを見ると、「私、こんなに頑張ったんだ!」って目に見えて分かるから、達成感を感じやすいのだ。

それと、計算問題は単純なものを繰り返し行うことで速さと正確さを身につけられるものだと思うということも伝えた。

どうやらイケオジ教師はその両方を取り入れてくれたみたいで、アイリス様が時々私に自慢気にシール表を見せてくれる。

「どう?ディアナに追いつく日も近いわね!」とか言って胸を張る姿がかわいいのよね。

「誰も知らないような知識を持つ上に、魔法や算術も得意だったなんてね。君は一体どれだけの才能を隠しているんだい?」

「か、隠しているわけではないのですが……」

まずい、嫌な流れになってきた。

前世のことを話せない以上、色々と説明するのが難しい。

どうしても隠したいわけじゃないが、「実は私、ここじゃない世界で生きていた記憶があるんです~」と言って誰が信じてくれようか。

頭がおかしいのかなと思われるのが関の山だろう。

この殿下のことだ、なに言ってんだこいつという目で見られるに違いない。

さっと目を逸らしたが、殿下からの視線をものすごく感じる。

黙秘を決め込むが、無言のこの空気がものすごく重い!

「まあまあ殿下、そのあたりで。誰にでも言いたくないことのひとつやふたつくらいはあるでしょうから、無理矢理聞き出そうとするのは良くないですよ」

そんな痛いくらいの視線を浴び縮こまる私を助けたのは、意外にもルッツ様だった。

「……ふん。別に無理矢理聞き出そうとはしていない。気になったことを聞いただけだ。おまえも言っていただろう、本人に聞いてみてはどうかと」

「言いましたよ、言いましたけどね。だからってそんなに圧をかけられてはディアナ嬢が不憫です。全く……姫様にディアナ嬢の方がすごいと言われて嫉妬したからって、八つ当たりするのは大人げないですよ」

「や、八つ当たりなどしていない!」

……なんだ、やっぱりただのシスコン兄の嫉妬か。

私のことを怪しんでいるのだったらどうしようかと思ったのだが、そんな感じではなさそうだ。

ギャーギャーと言い合いをするふたりを眺めながら、ほっと安堵する。

「ふふ、殿下は本当にアイリス様をかわいがっていらっしゃるのですね。大丈夫です、あの時はたまたまピンときて速く解けただけですから。魔法もある程度使えるってだけですし、殿下の明晰な頭脳と堪能な魔法には遠く及びません」

警戒されての話ではなかったことに緊張がとれ、もっともらしいことを言って謙遜する。

くすくすと私が笑うと、殿下は頬を染めて気まずそうに顔を逸らすのだった。