軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

癇癪令嬢とわがまま姫様3

それからしばらく、私の顔を見るなりヒソヒソと噂話をされるのは居心地が悪かったけれど、別に悪いことはしていないのだからと胸を張って無視することにした。

キャロル嬢達とは時々話をしたりランチを一緒にとるようになったが、幼等部にも行きたいので、そんな日は早めに抜けさせてもらっている。

「でぃあなさまー!ねえねえ、これであってる?」

「どれどれ?うん、よく書けているわね。すごいわ、ちゃんとお勉強しているのね」

えへへと文字を書いた紙を握り締め、得意気な顔をする年長児の子の頭を撫でる。

最近授業で字を書けるようになってきたと聞き、お手紙ごっこを提案してみたのだ。

これが子ども達の心を掴み、お友達や先生、両親に書いてみたい!と目をキラキラにさせて机に向かっている。

「すごいですわ、この一週間でみんなみるみる上達して……。各家からも喜びの声をたくさん頂いているんですよ」

「ただノートに書いて練習するだけより、渡す相手がいるとやる気もアップしますよね。おりがみで作ったものを貼ったり、絵を描いたりしても良いから、楽しいんだと思います」

お遊び感覚で文字が学べるお手紙ごっこ、年長児の遊びとしてはメジャーなものだ。

ここは異世界、もちろん日本語ではないので勝手が違うかも?と思ったのだが、意外と前世の子ども達と同じように興味を持って取り組んでくれている。

「これ、授業に取り入れられそうですよね」

「そうですね、会議にかけてみましょう」

教師達も興味深そうにしている。

どうぞどうぞ、やれることは存分にやって下さい。

子ども達もただ机にかじりつくだけの勉強よりも、楽しみがあった方が集中してくれるよね。

お貴族様だから、色々難しいとは思うけれど。

「でぃあなさま、みんなできたよ!ゆうびんやさん、だして!!」

わくわく顔の子ども達が書き終わった手紙を持って私の前に集まる。

「分かったわ、いくわよ」

ぱちんと指を鳴らすと、白い鳩が現れた。

そしてその体には斜めがけの赤いバッグがかけられている。

赤いバッグの中央には、あの郵便マークも。

「はい。郵便屋さんにお手紙を渡してね。順番に、よ?」

「「「はーい!」」」

綺麗に整列した子ども達が、順番に赤いバッグに手紙を入れていく。

中には「おねがいします!」と鳩に声をかけている子もいる。

「みんな入れ終わったかしら?じゃあ配達に行ってもらうわね」

私がもう一度指を鳴らせば、白い鳩はパタパタと羽ばたいていった。

私が魔法で作り出した伝書鳩は、渡したい相手を伝えれば、その人のところにきちんと手紙を運んでくれるのだ。

「見事ですね。一通なら分かりますが、あんなにたくさんの手紙と宛先を覚えられるなんて……」

「あーええ、まあ」

感心する教師達に、あははと笑いを返す。

意外でしょうけれど、チートな癇癪令嬢だったんですよ、私。

魔法もお手のものな私は、やりたいことがあった時には魔法に頼り切っているのだ。

できるかしら?と思いつつやってみると、意外とできてしまうのだから、自分でも恐ろしい。

全く、ひねくれずに真面目に勉強していたら、どれだけ上達したことだろう。

今更ではあるが、あまり目立ちたくはないし、ご大層な立場になりたいわけでもないのでこのままで十分なんだけどね。

アルフォンスとは無事に婚約破棄できそうだし、あとは気楽にこの生活を楽しみたい。

まあアイリス様のことは予想外だったけれど。

お姫様の教育係なんて、さすがにプレッシャーはあるが、なんとかしてあげたいという気持ちは本物なのだから、気長に私らしく関わっていこうと思う。

アイリス様のことが落ち着いたら、新しい恋を探してみるのもアリかしら?

ブルーム家で使用人の託児所を開こうかと思っていたけれど、良く考えたらグエンだってお嫁さんをもらうことになるのだから、小姑がいつまでも大きな顔をして実家にいるのは良くないよね。

平民……との結婚は許してもらえないかもしれないけれど、気の合う誰かと穏やかな結婚ができたら良いな。

まあ、今のところ年の近い親しい男性など誰ひとりとしていないのだが。

ははは……と乾いた笑いを零した時、ふっと銀髪の王子様の姿が思い浮かんだ。

「いやいや、一番ありえない人だわ。思い浮かぶだけでも不敬じゃない?」

ないない!と手を振ると、子ども達がどうしたの?と見上げてきた。

「あ、ごめんなさい。お手紙、ちゃんと届くと良いわね!」

「うん!たのしみー!」

屈託のない笑顔につられて、私も自然と笑顔を返した。

明日の休みは、いよいよアイリス様のところに行く日だ。

一週間ぶりの再会となる。

「初日から良い感じ!とはならないかもしれないわね……」

一週間前のアイリス様の姿を思い出し、さてどうしようかしらと考えを巡らせるのだった。