軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

58 切り替え上手

死んだフリを解除してルナスに声を掛ける。

「こんな状況を楽しむほど私も愚かでは無いさ」

「脅しも兼ねてる良い手だった。後続が逃げてったよ」

「それは何より。今夜はこれでぐっすりと眠る事が出来そうだ」

魔物の領域での野営ってのは周辺の魔物が定期的に襲いかかってきたりする。

その際の対処は組み伏せられないと認識させる事だ。それは多大な殺気を放つとか魔物よけの結界を張るとか色々と手はあるけど、単純に襲ってきた魔物を何体か返り討ちにすることでも達成出来る。

マシュアやルセンが居た頃にも強力な魔法を放つことで余計な後続を散らせる事は出来た。

さすがに奇襲に関してマシュアも嫌だと思ったのか魔物避けの設置魔法くらいは使ってくれたんだ。

「ヌマ、ヌマァ……」

クマールが少しばかり震えている。

怖かったんだろうな。

落ち着くように宥める。

「大丈夫だぞ。俺達がいるからな?」

「ヌマ」

徐々にクマールは落ち着きを取り戻して俺の隣で丸くなる。

まったく……危険な森だとは知ってて入ったけど、身の程知らずの魔物が多くて困るな。

「改めて思うが私達も強くなったものだ……見習いを卒業しパーティーを組んだ頃の私達は訓練を積んでいたけれど、もっとビクビクしていたというのに」

「そうだったか? あの頃のルナスはクールで狼狽えない勇者だって思ってたけど」

すごく頼りになる我らのリーダーって認識だった。

いや、そこは今でも変わらないか。

しゃべると残念だけど、頼りになる所は今でも健在だ。

「それは私が余計な事を言わないように意識していただけさ。パーティーを組んで初めての野営時など、興奮して寝付けなかったものだ」

今でこそルナスの性格を知ったからこそわかる。

ルナスなりに興奮していたって事か……よく隠していたと感心する。

ずっと黙っていた方が尊敬出来たんだろうけど……今は今で気楽に話せる間柄か。

そう考えると昔よりも仲間らしくなったとも言えるんだろう。

「君こそどうなんだ?」

「あー……死んだフリ持ちだからか、その辺りの切り替えは早く出来たな。把握もあるから俺自身のスキルに不安はあっても、昔から割り切るのは得意だったんだ」

死んだフリのファーストスキル持ちだからか、寝ると起きるの切り替えは得意だ。

だから寝る直前までしっかり勉強をして、即座に就寝とか簡単にできた。

仮眠とかもよくやってたし、逆に興奮して寝付けないという状況は起こらなかった。

まあ、スキルを授かる14歳までは普通に寝付けない事もあったから感覚はわかるけどな。

「ふむ……素直に羨ましいな」

「言うほど良いものじゃない」

「ヌマァ……」

きっとクマールは俺の感覚を理解してくれるだろう。

思い出す……14歳になったあの日……教会でわくわくしながらスキルを授かる時を楽しみにし、授かったあとの周囲の目とみんなとの違いを。

死んだフリをファーストスキルに授かった時、俺はその意味をよく分かっておらず大人達が困った顔をしていた。

そりゃあそうだろう。

誰でも何かしら取り柄となるファーストスキルを授かる所で死んだフリだもんな。

今は少しだけ前向きになれたけどさ。