軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

215 遅くなれ

少し時間は巻き戻り……。

「ドオオオコダァアアアアアアア! リエルウウウ!」

やっと見つけたというのにリエルはクマールと一緒に一目散に逃げ出してしまった!

進路を妨害して捕まえようとしたのに藪に逃げ込んだかと思ったらすぐに姿が消えてしまい、私は周囲を探し回った。

しかし全く見つかる気配はしない。

曲がりなりにもリエルはレンジャー。

気配を殺して潜伏するのは得意とする職業だ。

クマールも幻覚を使いこなせる様になったので追跡を振り切るのは容易という事か!

おのれクマール!

リエルと逃避行などという非常に羨ましいポジションにいるとは何事だ!

将来訪れるかもしれない美味しいシチュエーション、国を追われた悲劇の勇者である私とリエルの逃避行だったのだぞ!

「オオオオオオ!」

やはり私の予想通りリエルは家出をしたと言うことか!

「ハァ……ハァ……やっと追いついた! ルナスさん落ち着いて」

そこに少年がイケメンを連れて私に声を掛けてきた。

今は少年達の事など気にするよりもリエルを探す事が先決だ。

「リェエエエルウウウウウ! 何処だぁあああああ!」

「だからルナスさん落ち着いて! まずは自分の状況を確認するんだって」

「いやぁ……これは驚きだね。そんな姿じゃ気づけるものも気づけないよ」

少年がしつこく私に声を掛け、イケメンも呆れ半分と言った表情をして居る。

何を言っているんだ? と思って私は自身の状況を確認すると……随分と蔓や葉っぱが体にまとわり着いていた。

「んむ……なんだこれは」

リエルを追いかけるのに夢中でこんなにもついて回っているとは気付かなかった。

私は体にまとわりついていた物を引きちぎる。

「やっと出てきた。やっぱりルナスさんだ……さすがの僕も別の魔物かなと思ったよ」

「いやぁ……なんて言うのかな? ウッドゴーレムとかもしくは別のアンデッド系の魔物か何かだと思っちゃう様な外見だったね」

「うわ……泥まみれ、ルナスさん。リエルに会う前にせめて小綺麗にした方が良いと思うよ」

「何を言っているんだ! リエルは先ほどまでこの辺りにいたのだぞ! 私は目撃したぞ。しかも私を見るなり一目散に逃げたぞ! 間違い無くリエルは抗議の離脱だったのだ」

「いやー……たぶん、ルナスさんだと分からず訳の分からない魔物の奇襲を受けたから逃げただけだと思うなー」

「そんな事は無い」

リエルが私を見誤る事は無いと私は信じて居る。

「さっきまでの自分の姿を見てから言ってほしいんだけどなー」

「いやはや勇者ルナスは本当、面白い人のようだね」

「ともかく少年、イケメン。リエルが近くにいるはずなのだ。一緒に探せ! いや、少年は隠密のスキル持ちだったな。リエルが何処にいるのか教えろ」

「そうは言ってもね……うん。リエルとクマールの気配はしないよ? 本当に近くにいるの?」

少年が周囲を見渡して答える。

そんなはずは無い。何処かに居るはずなのだ。

にも関わらず出てこないとは……く、完全に逃げられたというのかリエル!

「そうだ少年、そしてイケメン。お前達も一緒に来い。そしてリエルに土下座をするのだ」

過去の英雄が広めた土下座という謝罪の儀礼を私は少年とイケメンに提案する。

「どうか許してくれと懇願すればリエルはきっと私達の真心が通じるはずだ。まだ今更遅くない!」

「いやいや、なんでリエルに土下座しなきゃいけないの」

「それはリエルの我慢の限界を私達が踏み抜いて離脱されてしまいそうになってるからだ。私は今更遅くなどない。今更遅くなりたいのであれば少年とイケメンだけで今更遅くなれ。マシュアやルセンの様に!」

そうだ。私は今更遅くなど無い。

遅くなどないのだ。

「わかったぞ、少年。お前はプライドが邪魔をしてリエルに謝罪出来ないのだな? 私は出来るぞ。リエルの為に土下座など容易くな! 地面をペロペロしながらリエルの靴を舐めてくれる。土片一つ残さず舐め取ってくれる」

「それ、やってもリエルはドン引きするだけだと思うよ?」

「まだ気にしているようだね」

「ルナスさんはプライドって物があるのか激しく疑問だよね」

「ふん、そんな物必要な時に使う物であって、不要なら捨てる位で良いのだ。私はリエルの為ならプライドなど無いも同然だぞ」

いや、そこは持ってくれとリエルが言いそうな気がするけど今はリエルの機嫌を取って許してもらわねばならん。

「そこまでして勇者の怒りを維持したいんだね」

「心外だなイケメン。私はリエルの機嫌を取るためなら勇者の怒りは後回しでも良いぞ。少年とイケメンが土下座出来ないのなら丁度良い。貴様等の首を手土産にするのが良いか?」

「手段を選ばないこの姿勢は逆に清々しいものがあるね。幸いな事に私はシュタインと違って頭を下げるなど容易く出来るよ」

ほう、イケメンは土下座は出来ると言うのか。

中々殊勝な心がけだな。

「なんで僕だけ悪者扱いになってるわけ? ルナスさんもそんな事を考察しないでくれないかな? そもそもクリストが土下座をしようとしたらリエルは本気で逃げるよ! 何か企んでる……面倒だって」

少年の声が木霊する。イケメンは本当、一体何者だというのだ!

リエルは元より少年も話さないので全く分からんぞ。

「イケメン、貴様何者だ。サッサと正体を教えろ!」

「今更聞くの!?」

「ははは、秘密さ」

「ここまで隠すってどうしてそんなにこだわるの? 普段はそこまでやらないじゃん!」

「やった方が面白いからかな? 勇者ルナスの性格的に知っても平然としてるのはわかってるからね。むしろここまで露骨に秘密にした方が逆に面白いだろう?」

「というか僕をツッコミにしないでくれない? こういう所こそリエルの担当でしょうが!」

確かにリエルはこういう時に指摘をしてくるな。

若干押しは弱いがな。

マシュアやルセンが問題を起こした時も時々指摘していたが基本無視されていた。

「ああリエル……神様、悪いけど何処かでリエルと合流させてください……この面倒な二人のツッコミ役に僕がされるなら土下座くらいするからさ……」

「柄でも無い神様へのお祈りはどうかと思うがね、シュタイン」

死霊術師が神に祈るとは中々滑稽であるのは否定しない。

「とにかくルナスさんはもう少し落ち着いてリエルを追いかけてね。じゃないとまた逃げられるよ」

「そ、そうか」

そういえば随分と泥まみれだ。

何処かで洗った方が良いか。

「リエル達は東の方へと向かっている様だし、合流地点に到着して予定通りの時間に会えなかったら探すで良いじゃないかい」

「この辺りを探してもいないんじゃどんどん逃げられちゃうんじゃない? とりあえず行こうよ」

「うぐ……わかった。何にしてもリエルの形跡を見つけたら向かうのだからな! くっ……この手の追跡はリエルが専売特許だというのだから厄介だ」

「そこは私の追跡用のゴーレムに任せてほしいね。シュタインもウルフ系を死霊術で操れば疑似追跡出来るだろう?」

少年が渋い顔をする。

「出来るけどゾンビって臭いから嫌なんだよね……スケルトンウルフで良いならやるけど、リエルとクマールって本当便利だよね」

「追いかけるだけなら良いだろう? では道中でそれらしいのを探しながら行こうではないか。土下座するかは別にしてね」

何にしてもリエル!

私はお前を地の果てまでも探すぞぉおおおお!